【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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21話 ティンバー②

 

森のフクロウに入ったからといってライターとしての仕事を辞めるわけではないし、モンスター狩りを休憩するわけでもない。

普段何してるかと聞かれたら大抵カードか取材用にモンスター狩りと答えるしかないのが私だ。

そのスローライフ経歴に清掃ボランティアが加わり、今後の就職が有利になっただけで、あまり変わり映えのしない毎日。

しかしゾーン達と自由に話す日々も悪くはない。

 

 

「へークレイズさんはバトルシリーズで連載もってるッスか。モンスターとか狩れる腕前あるんッスね、凄いッス」

 

ワッツはとてもしゃべりやすい好青年だった。

トレードマークの青いバンダナが個性的な彼は、元気な働き者で人当たりが良いので実は少しモテるらしい。

まあ残念ながらそれを当人は知らないみたいだが。

 

 

「いやいや、こっちこそみんなの活動を知って驚いたよ。その年齢から地域貢献を考えて地道にやるなんて素直に尊敬した」

 

「へへへ、でしょ? 姫様が来る前でも俺たちなりに頑張ってた訳ッス」

 

姫様というのはリノアの事だ。

 

彼女は既にアジト列車の車両を一つ手に入れて自分の部屋に改造している。

そろそろ本格的に住む場所を決めた方が良いと思っていたのだが、

車両を丸々ひとつ徴収して、住宅費用を大幅に軽減させる驚きの節約術を披露していた。

 

自らのおこづかいを使い、設備を一新されて部屋として改造された専用車両。

そのホテルのような豪華さは流石お嬢様といったところで、メンバーからは姫や姫様と呼ばれるようになっている。

カーウェイ大佐は一体どれぐらい小遣いあげているのかと、私を含めた一同はその娘に対する溺愛っぷりに住む世界の違いを感じるのだった。

 

 

森のフクロウは街の人からの評判が良い。

当然ながら街の為にボランティアしてくれる元気な若者達を嫌いになる人間は、ごく一部の特殊な人ぐらいである。

 

地域に密着し地道な活動を続けた森のフクロウは街の人達から信頼を得ていた。

応援の声と共に活動に役立ててくれと贈り物を頂く事もある。

 

そうして過ごしていく中で、リノアはティンバーの良い所を知っていった。

ティンバーの人達も元気で性格の良いリノアの事が可愛くて仕方がないみたいだ。

 

「リノアちゃんを泣かすんじゃないよ!」

 

それはレジスタンスの面々が、この数ヶ月で何度も街の人から言われた言葉だった。

安心してほしいです街の皆さん、むしろ泣かすのはリノアちゃんの役目です。

 

 

 

困っている観光客を助けたり、声かけ運動をしながらの清掃を繰り返して一年たった夏の日、ティンバーに休暇旅行でやってきた人物がいる。

たまたまワッツがガルバディア兵にイチャモンをつけられ、カツアゲされそうだった所を助けてくれたのが彼と我々の出会いの始まりだった。

 

 

サイファー・アルマシー。

原作主人公のライバルのガンブレード使いであり、宿敵……の筈だが最後の方は空回りを繰り返して登場人物達から哀れまれていたキャラクターだ。

 

サイファーは森のフクロウメンバー達に対して好意的だった。

レジスタンスはティンバー独立という叶いそうもない巨大な夢を持っていたからだ。

夢追い人のサイファーと私達は思いのほか相性が良く、夏の間行動を共にして友情を育んだ。

 

みんなでモンスター狩りをしたり、浜辺に行ってキャンプや海水浴をする。

メンバー達は意外にもこのような経験が少なく、シンプルなイベントながらとても楽しんでいる。

 

 

各々武器を買い、彼の隣でハウリザードを退治する経験は森のフクロウのメンバーに自信をつけさせた。

 

私も保護者枠で同行していたが、ガンブレードを使うという事がサイファーにバレて何度も模擬戦をさせられる事になり、戦いに関しての議論をしていると仲良くなってしまっていた。

魔女の騎士を見て、実際に撮影地のトラビア渓谷まで行きドラゴンと戦った話をすると彼はとても羨ましがった。

その姿は年相応で、私が知らない彼の一面を沢山垣間見る事ができた。

 

 

私達は2人とも既に強いし戦いのセンスもあるので、適当にやってればそのうち勝手に戦闘技術は上達していく。

なのでまじめな戦術議論は早々にどうでもよくなり、どう構えればカッコいいかという方に話が逸れていった。

サイファーは憧れの映画である魔女の騎士を参考にして、フェンシングのような前に突き出した構え一筋らしい。

 

私は主にスコールのような肩に担いだり斜め下から切り上げを用意する形になる事が多いが、たまに遊びで色んな方法を試してみたり、サイファーと同じ構えでやる事もある。

キロスの構えをガンブレードで再現した物を見せるとサイファーは爆笑していた。

どうやらこの構えを使いこなすには、今の私では分不相応なようだ。

 

彼は十字にこだわりがあるらしく、いずれは十字の剣を表現して相手の運命を決定づける様な技を開発したいと言う。

自分の本名にもサイファーとアルマシーの間に、ダガーの記号を入れたいのだとか。

 

 

「俺の夢が真に叶った暁には改名してその証を刻み込むと決めた、今から楽しみで仕方ないな……ククク」

 

そんなアイデアが思いつくセンスの良さに驚き、私は少し悔しくなる。

自分には他者を真似るセンスはあっても、自ら生み出すセンスが欠落しているような気がしていたのだ。

その独創性が羨ましい。

 

 

「クソっ、記号を名前に入れるのは盲点だった……。しかも夢が叶った証とかカッコ良すぎる……」

 

そういえばカードが好きすぎてカードクイーンという名前に改名した女がいた事を思い出した。

私も名前にFF8を入れてみても良いかもしれない。

 

 

「ハハハ! まあいつの日か生まれ変わった俺の名前を見せてやるから楽しみにしてろ!」

 

そう言いながらハイペリオンというガンブレードで空中を切りつけるサイファーは夢に燃えていた。

まあ夢に燃えるのは良いのだが、戦いの最中でも無いのにいきなり刃物を振り回すのは危ないからやめて欲しい。

 

 

私は元々サイファーを見てみたい気持ちはあったが、深く関わる気は無かった。

あくまでもレジスタンスメンバーの一員その3ぐらいの立ち位置で、溶け込みながら観察していくつもりだったのだ。

まかり間違って仲良くでもなってしまったら、彼の未来に対して申し訳なく思うだろうからだ。

 

しかし実際にサイファーと接してそんな事が杞憂なのだとわかった。

自信に満ち溢れ、揺るぎない態度。

夢に一直線な彼から感じる信念とプライド。立ち昇るカリスマ性と人を率いるオーラは私の考えを改めさせた。

 

今後どうなろうと彼が選んだ道は彼が足掻いて掴み取った結果なのだ。

その結果に勝手な責任感や罪悪感を抱く事は彼に対する侮辱だ。

つまらない同情や哀れみで寄り添われる事こそ、最もサイファーのプライドを逆撫でする行為だ。

だからこそ一緒についていきたい、こいつとならどこまでも行ける気がすると人に思わせる実力と魅力があるのだろう。

 

 

そんなサイファーの事をみんな大好きになり、当然リノアも大好きになる。

 

一緒に過ごしていくうちに二人の男女は自然と距離が近くなり、ついに姫様専用列車で良い雰囲気になりかけていた頃、アンジェロがやたらとテンションを上げて専用車両に駆け込んでいた。

 

 

「ぎにゃぁぁぁぁ!!」

 

 

聞いた事もないようなサイファーの悲鳴が響き渡る。

アンジェロが偶然にも発情期で、テンションを上げまくった結果二人の邪魔をしてしまったらしい。

 

良い雰囲気になっている女の犬にマーキングされて、当たり散らす事も出来ず項垂れるサイファー。

その隣で珍しくリノアに怒られるアンジェロの悲しそうな鳴き声が車内に木霊したのだった。

 

彼はそれ以降、犬を避けるようになってしまった……。

 

 

 

「俺にはでっけぇ夢がある……。叶いそうもねぇ夢だ……」

 

別れの際にサイファーは語り出した。

ここに夢を持つ彼を茶化すような無粋な人間は居ない。

 

 

「だが、同じように叶いそうも無い夢を持ってるお前らを見てたら、俄然やる気が出てきた」

 

森のフクロウのメンバー達は別れを惜しんで男泣きしていた。

当然その中には私も入っている。

 

 

「感謝するぜ! またな!」

 

私達から見るサイファーはゲームとは違ってとても気持ちの良い奴だったのだ。

 

 

 

 

サイファーが帰ってからの我々の活動は停滞していた。

まあ元々大それた事はやってないから当然だ。

 

そこでそろそろ何か行動に起こす為の取っかかりとして、SeeDを雇ってみるのはどうだろうという意見が会議で出た。

 

バラムガーデンが世界的に誇るあらゆる任務をこなす実践傭兵部隊SeeD。

プロを雇って彼等の意見や行動を参考にできれば、今後何をすれば良いのか、どういう方針で動けばいいのかという部分を具体的にできるのではないかという発想だ。

 

「そういえばサイファーもSeeD試験を受けるって言っていたな」

「サイファーみたいな凄い奴なら当然受かってるはずッス!」

「もしかしたらSeeDを雇えばサイファーが来てくれて、また一緒に楽しく過ごせるかもしれない」

「私はその意見に賛成!」

 

そういう話の流れになっていった結果、みんなで金を出し合いSeeDに依頼する事が決定した。

 

はっきり言って子供の遊びのような理由を含んだ依頼だったが、メンバー達にとってこれは明確な反政府活動を始めるための一歩であり、狼煙だったのだ。

我々は度重なる会議の末にデリング大統領を誘拐する作戦を決定し、それに向けた準備と予行演習を煮詰めていった。

 

 

 

しかし、幾らSeeD派遣要請を依頼をしても連絡が無い。

リノアがサイファーに手紙を出して相談してみた所、シド学園長を紹介してくれるという。

 

サイファーは手紙で森のフクロウが本格的に行動を起こすと知り、とても喜んでいた。

ガーデンに入構許可を貰い、SeeD就任パーティの時期に行くことが決定した。

 

いよいよ原作の始まりを感じていた私は、バラムガーデンに行く時のリノアについて行けばガーデンのダンスホールで例のシーンを見れるのではないかと思い、便乗して彼女についていく事にする。

FF8好きにとって切っても切り離せない名シーン、スコールとリノアの逆ナンパダンスパーティは見れるならどうしても見たい。

 

 

バラムガーデンのパーティに行くなら、ダンスの練習もしておこうという事になった。

17歳になってすっかり少女からレディに変わったリノアとダンスを練習する日々。

もっとも上流階級出身のリノアはダンスを習っていたので、大半は思い出す作業だったようだ。

 

私はそんな彼女から社交ダンスを教えて貰う。

今までは心の中で勝手に師匠扱いして敬ってきたが、本当に私の先生となってしまっていた。

原作ヒロインと何度もダンスができるのが光栄すぎて、理性を飛ばさない様にするのが大変である。

 

G.F.の学習力ブーストで素早く覚えられるのは本当にありがたい事なのだが、

この時ばかりは、もう少し習得時間が長引いても良いかなと思ってしまう私だった。

 

 

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