【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。 作:速射弾
父親に反抗するようになったのは何時からだっただろうか。
誕生日の時に大好きな母が事故で死んで、家に一人でいる事が増えた時からだろうか?
父は仕事が忙しく、私に構ってくれる時間は少なくなっていく。
そんな毎日に不満を抱いた私は、それが我儘だと理解していたけれど納得していたわけじゃなかった。
私は大好きな家族との時間を奪う親の仕事を嫌うようになっていった。
でも、ある時思ったのだ。
(父親がどんな仕事をしているのか詳しく知らない)
軍で働いているのは知っていたし、それなりに偉いのも知っていたが、その程度でしかない。
仕事の内容を詳しく知り、人のために貢献している事を理解できれば忙しさで構って貰えない事にも納得ができる筈、そう思った。
私は父の仕事を調べ始めた。鞄に入っている資料を盗み見たりもした。
わからない事も沢山あったけど、わかった事も沢山あった。
それはガルバディア国が周辺国に対して何をして発展していったのか。
この国の軍人が植民地となった地域にどういう横暴を働いているか。
反対意見や批判を封殺するような国の方針。
それを決めているビンザー・デリング終身大統領と、その権力を支える軍の存在。
それは人々を虐げる悪そのものだった。
政治の事なんて全くわからない子供だった私が見ても、良い事をしているとはとても思えない。
ショックだった。
誇りに思っていた父親がやっていたこの国の仕事は、とても誇れる物じゃなくて……。
そんな仕事に時間を取られて私は毎日寂しい思いをしている。
次第に父との言い争いが増えていった。
何故家にもっと帰ってくれないのか? こんな仕事で忙しいなんて恥ずかしくないのか。
私も母も、他人を虐げる様な仕事で稼いだお金で暮らしていたの……?
悪い事をしたらいけない。他人の嫌がる事をするのは良くない。人を傷つけてしまったら謝ろう。
そんな当たり前を教えてくれたのは他でもない両親だった筈だ。
人に優しくできる子に育って欲しいと言うその口で、一体どれほどの悲しみを生み出してきたのか。
私が当たり散らすその言葉を、黙って聞いては保身にしか聞こえない返答をする父親に失望した。
ある日、いつものように言い争った私は衝動的に家を飛び出した。
今まで何度もやった流れだった、どうせ暫くしたら父の部下が探しにきて家に戻る事になる。
夜に出歩いてもこのデリングシティは明るくて治安も良い。
父の仕事の成果がここにも現れてると思うと、それがなんだか無性に腹立たしく思えた。
そうして歩いている時に出会ったのがクレイズだった。
雑誌記者だと書いてある名刺を見た時に私はこれだ! と名案を閃いた。
この国が悪い事をしてるともっとみんなが知れば、ガルバディアも良い方向に向かうし、それを変えたいと思う人が私以外にも出てくるはずだ。
私は彼の手を掴んでホテルのフロントにチェックインし、早速部屋で話を持ちかけた。
でも……クレイズは私の話に乗り気じゃなくて、さも大人の対応をしていますという態度で接してくる。
なんだか見くびられているみたいでそれに腹が立った。
私は冷静に諭された結果、軽率な行動をしていると少しづつ自覚してきてなんだか恥ずかしくなってきた。
閃いた考えなんて全然名案じゃなかったし、確かにホテルに連れ込んだのはちょっと…………かなりよくない選択だったので急に反省の心が芽生えてくる。
そんな私の気を晴らそうと、自己紹介を始めた彼に私はあまり期待していなかった。
だってさっきまで取り合ってくれない様な対応をしていた人間だったから。
彼がただその場凌ぎの為だけの、慰めの言葉をかけてきたと最初は思った。
「何より私だってガルバディアの政治をこのまま放っては置けない気持ちはあるんだ」
でもレジスタンスという人達の事を教えてくれて、ついて来てくれるというクレイズのその言葉を聞いた時、私は不安から解放された気がした。
私の目指す不確かな道筋を照らし、この国を変えようという意志のある大人が側に居る。
その事実はとても安心感をくれた。
カッコよくて頼れるお兄さん、ティンバーに来るまでの私の中でのクレイズの印象だ。
ちょっとお酒の匂いはしたけど……。
この日から私は、父との決別の意味も込めて母の旧姓であるリノア・ハーティリーを名乗る事にした。
流石に私だって、レジスタンスに入るならカーウェイという苗字を名乗らない方が良い、という事ぐらいはわかるのだ。
森のフクロウに入り、レジスタンス活動で国と父を変えるんだと名前を変えて意気込んでいた私とは反対に、クレイズは呑気だった。
モンスター狩りをする傍ら、適当な頻度でレジスタンス活動に参加する彼からはあまりやる気があるようには感じない。
勿論、みんないつもレジスタンス活動に精を出しているわけじゃない。
生活があるのでお仕事をしつつ活動する人も居る。それを批難するつもりは無い。
それでも活動内容には不満があった。
けれどクレイズはもう少し頼りになると思っていた。
彼が森のフクロウの活動のアイデアや、方針に関する意見を述べている所を見た事が無いし、自ら積極的に何かをやろうともしない。
言われた事は文句を言わずにやるけど、初めてやったミーティングは基本的にただ微笑みながら話を聞いているだけだった。
デリングシティから連れ出してくれたあの日の頼りになる彼は何処に行ってしまったのか。
まあティンバーのおばちゃん達には評判が良いから別に貢献してないわけじゃないんだけど……。
外面だけは良いのよね……。
ワッツから「ティンバーのマダムキラーッスね!」と謎の褒められ方をされて喜ぶクレイズに少し腹が立つ。
たまにゾーンと真剣な表情で話をしていると思ったら、えっちぃ本について語ってるだけだった。
私達は何しにここに来たと思ってるの? もう!
そういうわけで私は自分から率先して動く事にした。
言うなれば我慢ができなかったのだ。
とは言ってもみんなで作戦会議する以外に何をすれば良いのかわからない。
結局やる事の大部分は今までと変わらない地域の交流だった。
ティンバーの人達はとても優しい。
それに優しさだけじゃなく、ガルバディアに対する不満を隠そうとしない強さもあった。
ほとんどのレジスタンスは今は活動を停止している。
でもそれは本当にやめちゃった訳じゃ無くて、今でもチャンスさえあればいつでも動けるようにしている。
そういう事を知っていく内にこのティンバーを好きになっていった。
段々と街での活動が楽しくなってやりがいを感じるようになり、ゾーン達とも仲良くなった。
気づいた時にはすっかり私の心は森のフクロウの一員となっていたのだ。
そんな日々を過ごしていた時、ティンバーにアイツ……サイファーが来た。
サイファーはまるで嵐のようで、全てに逆らうような彼の無鉄砲さは私の止まっていた日々を無理矢理動かした。
街中で偉そうにしているガルバディア兵に、平気で喧嘩を売るサイファーは怖いもの無しだった。
援軍が来ても蹴散らして、奪った鍵で軍用車を盗んでデリングシティまで暴走しに行ったり、
「部下共にエリートの実力見せてやれ」とかなんとか言って上官の兵士を車に括り付けて街中を走らせた事もあった。
あの兵士の人、凄い頑張って走ってたっけ……。
挙げ句の果てに騎士のパレードと称してたくさんガルバディア兵を鎖で結んで、人力で車を引かせたりしてやりたい放題。
ガーデンから来た事がバレなきゃ問題ないと、白昼堂々犯行に及ぶサイファーはとても楽しそうだった。
そんな滅茶苦茶な彼の隣で一緒にそれを見ていると、私はなんでも出来る気分になった。
なんだか少し前の自分を思い出した気がした。
(そうだ……私、森のフクロウに入ってガルバディアを変えたかったんだ)
私はティンバーの待遇を改善するために入りたかったわけじゃない。
変えたかったのはガルバディアであり、父親だ。
でも、この街に来て週に2回のミーティングを続けた私はあの頃とは少し考えが変わっていた。
今は父親をなんとかしたい気持ちよりも、デリング大統領をどうにかする事とティンバーの独立の方を強く願うようになっている。
サイファーがバラムガーデンに帰ってから、私達、森のフクロウは変わった。
ミーティングにも熱が入り、ついに大統領誘拐作戦も考えてSeeDを雇う事にした。
全部嵐のようなアイツのおかげだった。
リノア回と見せかけたサイファー回