【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。 作:速射弾
スコールがSeeDになったと聞いた私は、嬉しい気持ちが半分、危ない事をして欲しく無い気持ちが半分だった。
彼は私の弟みたいなもので、小さい頃は一緒に孤児院で過ごしていた事がある。
スコールに一言お祝いを言いたくて、ガーデン内を探していた。
夜も遅くなり、人が少なくなって行くガーデンの中を見回す。
そんな時、キスティに合った。
昔の面影を残して大人になった彼女はふらふらと人探ししていた私に声をかけてくる。
「もうすぐ消灯よ、こんな時間に何か用事でも?」
「あっ、その……探してる人が居て……スコールの事、キスティなら知ってるかな?」
「? 失礼だけど私達、何処かで会った事あるかしら……」
一緒に孤児院で過ごしたキスティは私の事を忘れていた。
G.F.の副作用、それは私も知っていたがどんな理由であれ忘れられるのは悲しい。
もしかしてスコールも私の事を忘れてるのかもしれない。
「そっか、忘れちゃってるよね……ううんいいの、スコールにお祝いを言いたくて……」
「スコールのファン? 彼、無愛想だけどああ見えて結構人気あるものね」
そうなんだ……。
甘えん坊でよく一緒にいたので無愛想なイメージは無かった。
「スコールは今日、実地試験で色々大変な一日だったから流石に部屋で休んでるんじゃないかしら? 本当は教師が生徒の個人情報を教えちゃダメなんだけど、もう0時すぎちゃったから特別よ」
ウィンクして今日の事を少しだけ話してくれた。
いつも私にくっついていたスコールが、戦いの世界に身を置いている。
なんだかその事実は現実感が無いけど、キスティが太鼓判を押すぐらいには優秀な成績を残しているようだった。
「はい仕事納め終了! 私は部屋に戻るけど貴女もそろそろ部屋に戻った方が良いわよ? 夜更かしは健康と美容に悪いから」
去っていくキスティはなんだか私より大人の女性に見える。
見ない内にとっても素敵な女性に育っていた。
(そっか……もうみんなと離れて暮らす様になって10年以上経つんだもんね)
時の流れを感じて少し寂しい気持ちになった。
スコールも私より身長が大きくなっていたし多分、他のみんなもそうなのだ。
大好きだったラグナおじちゃんとキロさんも、今はもっとおじさんになっているのだろう。
クレイズはどんな風に成長したのかな、なんて部屋に戻りながら考える。
懐かしい事を思い出してしまった。
ウィンヒルから離れて孤児院に行く前に、お別れの挨拶をしたのが彼との最後の思い出だ。
近所に住んでいる男の子。
ラグナおじさんが来るまでクレイズと顔を合わせた記憶は無かった。
第一印象は大人っぽい男の子だったのだ。
しかし付き合って行くうちに、面白くて変な男の子だという認識に変わっていった。
彼はよくモンスターを食べて母親から叱られていた。
「いやいや、母さん、これ美味いから食べてみてよ」
日課のモンスター退治のパトロールが終わったら、迎えに来た母親にそう言って芋虫モンスターの肉を勧める。気持ち悪いからやめなさいと怒られて家に連れ戻されるまでがワンセットだった。
「クレイズのママさ〜ん、美味しいからマジでそれおすすめ!」
クレイズの言葉に乗っかったラグナおじさんは『息子が変な物食べるようになったのはお前のせいか』と疑われ、注意を受けていた。
しかし真実は逆だ、クレイズが嫌がるラグナおじさんに無理やり芋虫肉を食べさせていたのを私は知っている。
それで味を知ってからは2人で良くオヤツがわりにして、最終的には周りの人達にも勧めていたのだ。
当然、私とレインにも美味しいからと勧めてくる。
どうしてもあの気持ち悪いぶちゅぶちゅを食べる気にならなくて私達は拒否していた。
二人は美味しいのにと残念そうだったが、結局ウィンヒルでは全然流行っていなかった気がする。
保護者からの追求に違う違うとラグナおじさんが説明しようとするが、クレイズは怒られたくないので「ラグナの知識は凄いよ」と責任をなすりつけていた。
「おっ! クレイズも俺の知的な部分に気付くとは、こう見えて結構知識が豊富なんだぜ〜? これからは物知りラグナと呼んでくれ!」
勘違いして得意気になり、元凶である事を確定させてしまうラグナおじさん。
今思えばそれに疑いを持たれない辺り、どうやらご近所さんからは子供に責任転嫁しかねない大人だと思われていたようだった。
そんな2人はいつも元気で仲良しで、キロさんが来てからは直ぐにラグナおじさんから鞍替えしていたクレイズ。
多分、今もウィンヒルでモンスター退治をして暮らしているのだろう。
もしかしたらもう結婚して家庭を持っているかもしれない。
既に私の事もラグナおじさんの事も忘れてるかも……。
17年という歳月はそれだけ重たい。
そのときの言葉やそのときの気持ちはどうしても忘れて行く物だ。
私のように過去を覗き見て覚えていられる方がおかしい。
時間は待ってはくれない。
キスティもスコールも、クレイズだって大人になっていくにつれ何かを残して、何かを捨てていく筈だ。
なんだかいつまでも過去にしがみついている自分だけが、置いて行かれている様な気がした。
(いつか、またみんなで話せる時が来ればいいな)
そして……寝床に入った私は明かりを消した。
エルオーネが原作であの場所にいた理由を補完したかっただけ。