【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

36 / 57
30話 エルオーネ②

 

 

ウィンヒルに帰って、ラグナおじさんと一緒にレインのお墓参りをした時の事だ。

クレイズの実家に挨拶に行ってみた私は、おばさんから聞いた話に驚いた。

彼はもう何年も前にこの村を飛び出して行ったらしい。

 

せっかくエルちゃん来てくれたのにごめんねぇ……と申し訳なさそうに言うおばさんの話では、家に帰ってくるのは何時になるか分からず、その頻度は3年に1度ぐらいなようだ。

 

そんなクレイズから手紙が来た、とラグナおじさんから知らされたのは1ヶ月前の事。

久しぶりに会って話が出来るこの日を私達は楽しみにしていた。

 

 

「や、やぁ……久しぶりだね。エルオーネ……だよね?」

 

「う、うん久しぶりだね、クレイズ……だよね……?」

 

誰……?

そう言いたくなる程大きく成長したクレイズとの会話は、探り探りに始まった。

確かに顔をよく見たら面影がある……気がする。

 

 

「おいおいどうしたんだよ? ぎこちないじゃねーかお二人さん。エル、どう見てもこりゃ大きくなったクレイズだろ? 師匠の俺は見た瞬間に直ぐわかったぜ」

 

「はいはい……大きくなってからラグナに会うのはこれで2度目だ。月の涙の時にエスタの市街地で一緒にパトロールしただろ? その時は絶対に気づいてなかったね」

 

「パトロール……あ、ガンブレード使いの兄ちゃんじゃねーか! あれクレイズだったのかよ!」

 

道理でなーんか見覚えある気がしてたんだよな〜と笑うラグナおじさんに、嘘つけと言うクレイズ。

二人の距離はあの頃のままだった。

なんだか私まで嬉しくなってしまう。そして少し羨ましいとも思う。

 

 

「大きくなっても変わらないね……うふふ」

 

「そういうエルオーネは随分変わって、お淑やかで可愛い女性になった」

 

元気そうで安心したよ、そう言って心底ホッとした顔をする彼。

その表情の移り変わりが感情に素直すぎて、私は笑ってしまった。

 

 

「それを言うならクレイズだってカッコいいお兄さんになったよね、驚いちゃった」

 

「正直自分でもそう思うけど……なんか大人になったエルオーネから言われると照れるね……」

 

「えー? どうして照れるの?」

 

「そりゃ魅力的な女性に褒められたからだよ」

 

その返答を聞いて私も照れる。

なんだか私が言わせたみたいになってしまった。

お互いに恥ずかしい気分になっていると声が割り込んできた。

 

「くだらないお世辞の応酬はそれぐらいにしてもらっていいかしら?」

 

話に入って来たのは、彼の後ろからついて来た車椅子に乗っている綺麗な女性。

誰だろう? クレイズと一緒に居るってことは……恋人? まさか奥さんだったり……?

 

 

「さっさと私の用事を済ませなさいクレイズ、その為に此処まで来たのでしょう」

 

「蚊帳の外にしててごめんね、思い出話は後にして今はその話をしようか」

 

「話に入れない事にわだかまりを感じたのではありません、勘違いはやめなさい」

 

車椅子に座っていて尚、堂々としたその振る舞いは、気高さと気品を感じさせる。

そして……彼女のルージュが引かれた唇から、思いもよらない自己紹介が出た。

 

 

「私はアルティミシア、全ての存在を圧縮し、全ての存在を否定しましょう」

 

私はいきなりの事で混乱していた。

クレイズは今までの私達の戦いと無関係だと思っていたからだ。

そんな彼の側に最重要人物が居る……驚かない訳がなかった。

 

この女性が私を追い求めて魔女とガルバディアを操り、世界を圧縮しようとしていたあの未来の魔女アルティミシア?

 

 

「ここに来たもう一つの理由は彼女の治療を頼みたいんだ」

 

今の彼女には魔女の力が無いから警戒しなくて大丈夫だと説明される。

急展開の中で繰り出されるクレイズの言葉に、私の思考は追いつかなかった。

 

 

 

「貴女、私に何か言いたそうね? 今までの人生について思う事でもあるのかしら? それとも……幼馴染の男の話?」

 

勝ち誇ったように言う元魔女は、何故か私に敵対心を抱いているようだ。

彼女は懐からカードを取り出して言った。

 

「これで貴女の心に癒えぬ傷をつけてあげると言うのも一興ね。さぁ、やりましょう」

 

「その……はい……一回だけなら良いですよ」

 

私は誰かと話す事が特段上手いという訳じゃない。

どうやって接したら良いかわからない人、こういう時そんな相手にカードをする選択肢があるというのは本当に便利だ。

彼女だって私とどう接して良いのかわからないから提案してきたのかもしれない。

 

 

 

 

青一色に染まった盤上。

それは私の完全勝利を意味していた。

 

「ば、馬鹿な……。嘘よ……こんな筈、私が……ここまで……負け?」

 

盤面は終盤まで彼女の有利だった。

しかし、最後に私の置いたスコールのカードが、プラスとセイムを経由して盤上を青一色に染め上げた。

それはまるで暗雲立ち込める空を切り裂き、世界を晴天に変えるかのような感動的な物語の終わり。

私がラグナおじさんから奪ったカードが、この試合の勝利の鍵になったのだ。

 

「……eeD…」

 

アルティミシアさんが何かを呟き出した。

 

「SeeD……SeeD……」

 

その声量は次第に大きくなり、語気が荒くなっていく。

 

「SeeD、SeeD、SeeD!! 気に入らない……なぜ邪魔をする! なぜ私の自由にさせない!? もう少しで完全なる私のゲームが完成するというのに……」

 

信じられないという表情で震える腕を押さえて、狼狽える彼女からレアカードを貰う。

ウルフラマイターのカード。

もう何枚か持ってるから正直要らないけど、他に欲しい物が無いしとりあえず今はこのカードで良いかな……。

 

 

「これは何かの間違いです……もう一度私とやりなさい」

 

プルプルと震えながら再戦を要求してくる彼女は納得できない様子だ。

申し訳無く思いながらそれを断る。

少し失礼かもしれないけど、今の彼女の実力では多分何度やっても一緒だと思うのだ。

 

 

「その、そろそろ私もクレイズと話をしたいし……ごめんなさい、やるならまた後で……」

 

「ほら、医療機関への搬送の準備ができたってさ、さっさと用事を済ませようね」

 

少し離れたところでラグナおじさんと話をしていたクレイズが、こちらにやってきて彼女の車椅子を押す。

勝負は一旦預けると言うアルティミシアさんに、私はまたやろうねと約束をした。

 

 

「まずは魔女の力についての検査だってさ、心細かったらついて行こうか?」

 

「子供扱いするのはやめなさい……。しかしここの者達が何をしてくるか信用できないが故に、貴方がついてくるのは当然です」

 

「エルオーネ、ごめんけど思い出話は後になりそうだ。じゃあそういう訳でちょっと行ってくるね」

 

「うん、今度またいっぱいお話ししようね」

 

船で移動しながら生活していた今までとは違い、そのための時間は沢山ある。

好きな人達と過ごせる時間が自由にある。それが今の私には何より嬉しい事だった。

 

 

 

 

アルティミシアさんが病院で検査をして入院する事になり、クレイズに時間の余裕が出来た頃。

私はラグナおじさんから与えられた大統領官邸の一画にある居住スペースで、彼と一緒に話しをしていた。

 

相変わらず彼はモンスターを食べているらしい。その道を生業にしているとか。

モンスターを食べるお仕事ってなんだろうと聞いてみたら、退治から雑誌記者まで明確には決まってないらしい。

「定職についてないような物かもね」と笑っていたが、昔からのあれがお仕事になるとは思ってもいなかったので正直びっくりした。

 

私はエスタの研究者や魔女から逃げる為に、船の上で生活する事が大半だった。

だから陸地の事には疎い所があった。

その点クレイズの旅の話は私にピッタリで、時に面白く時に予想できない、そんな興味を惹くような話が多い。

想像以上に色んな所を巡っていたし、実家に帰らない理由がわかった気がする。

きっとそれだけ色々な場所を見るのが楽しくて、好きで堪らないのだ。

 

 

ある日、彼は私にお願いをしてきた。

 

 

「エルオーネに頼みたい事があるんだけど……いいかな」

 

「なぁに? 私にできることなら何でも言って?」

 

私は周囲の人間に助けられてばっかりだったから、子供のお世話以外で歳上に頼られる事が少ない。

誰かの役に立てるチャンスを与えられるのは、認められてる気がして嬉しかった。

 

 

「エルオーネは過去にジャンクションできるだろ? その力で見てみたい過去がある」

 

その真剣な表情に少しだけドキッとした。

 

「私が知ってる人しかできないけど……うん」

 

クレイズはノートを出してきた。

 

 

「体験してみたい過去を少し書き出して見たんだ。どれも甲乙つけ難くて大変だったけど……とりあえず、どれでも良いから一回体験してみたい」

 

「えーと……まずはスコール編? そっか、クレイズもスコールが産まれた時一緒にいたから知りたいよね」

 

その気持ちは痛い程よくわかる。

彼もレインとラグナおじさんの子供を気にかけてくれていたらしい。

離れていても同じ気持ちだったと分かり、胸が温かくなった。

それだけの事なのに、自分と一緒の考えを持ってくれる人が居たと知り、涙が出そうだ。

 

めくった次のページは細かくさまざまな記載がなされており、スコールが幼少期から現在に至るまで、何処で何をしていたのか普段の生活や直近の事まで、知りたいと思っている部分が優先度と時系列順に見やすいように並べて書き出されている。

 

 

「うーん……でも、その……リノアさんとの生活まで詳しく見るのは、なんだかスコールに悪い気がする……」

 

「悪い事なんて無いよ、良い事だよ。今までずっと会えなかったからその分知りたいだけなんだ」

 

彼はあの時スコールと私を送り出す事しか出来なかった自分を悔いていると話す。

それは少し前の私と同じような悩み。

クレイズも似た想いを抱いていたのだ。

 

 

「それじゃやってみるね」

 

私はクレイズとスコールのイメージを頭の中で働かせ、集中してジャンクションの力を使った。

目の前には昔暮らしていたママ先生の孤児院が見える、無事に意識を送り込む事に成功したらしい。

能力を使用している間は私もこの光景を一緒に見る事になる。スコールの過去……正直私も気にならないと言えば嘘になるだろう。

 

 

『ウッヒィ〜これがジャンクションの感覚かぁ。うわ……これ孤児院時代スコールの視点だ。 ちっちゃい原作メンバー達可愛すぎ……。オホっ……ヤッベ、ヤッベ、オ゛ッ……!』

 

『エルお姉ちゃんに抱っこされてりゅうううう! 大好きなお姉ちゃんを独り占めしたいスコールきゅん尊い……』

 

(うっ、クレイズ煩い……)

 

心の内がこんなに騒がしい人も珍しい、外見からは想像もできない中身に驚く。

とりあえず彼が凄い興奮して喜んでいるのはわかった。

 

そうして、何を言っているのか理解不能に近い脳内の騒がしさを体験しながらも、何度か接続を繰り返し、見る年代を調整しながら時間を進める。

ママ先生の孤児院は私にとっても懐かしさの象徴の一つだ。

そんな在りし日の光景を見ていると、いよいよ子供時代の私が孤児院から居なくなった。

 

雨の日でも構わず、スコールが私の帰りを毎日のように待っている。

1人で頑張るという誓いを泣きながら呟く幼い少年。

それに同調したクレイズが、同じ事を思いながら泣き出した。

 

『…………グスッ……グスッ。僕……1人で頑張るよ……。お姉ちゃん居なくても頑張るよ……グスッ……ズビビ……』

 

(あ、これダメだ、私も泣いちゃう……)

 

涙と鼻水で見苦しい顔になった私とクレイズは目を覚ました。

鼻を啜りながら語ろうとする彼は、言葉が上手く纏まらないみたいだった。

 

「スコール頑張ってたね……」

 

彼の絞り出したその言葉。

私も頷いて一言にも満たない返事を返すのが精一杯だ。

 

「うん……」

 

「子供時代スコール良いよね……」

「良い……」

 

「続きもお願いできるかな……?」

「うん……」

 

私達は再び過去の世界へ旅立つ。

今までラグナおじさんの過去を変える事ばかりに使用して、この不思議な力をこういう風に使った事は無かった。

他人の心の中を覗くのは良くないと思う気持ちはある。

だけど正直もうちょっとだけ見てみたい。スコールなら許してくれる……よね?

 

スコールはその後も1人で頑張ろうと努力して、それでも全然大丈夫じゃない心の内がジャンクションによって理解できてしまう。

その度に私とクレイズは鼻水を啜る羽目になった。

 

 

年齢と共にG.F.によって段々と記憶が消えていくスコールの孤独は、徐々に孤高へと変化していった。

SeeDになり初めての任務に赴く彼は、そこでリノアさんと再会し、クレイズと出会った。

握手を無視されて泣いているクレイズが目の前に見える。

私には彼の気持ちがわかる。

成長して目の前に現れたスコールにこんな対応されたら、私だって泣いてしまうかもしれない。

 

 

状況が進んでいくにつれて、自分の置かれた立場が理解できずに、困惑して項垂れるスコール。

私はガーデンで再会しても何も分からず教えてあげられなくて、弱音を吐き出す彼に言える言葉は「ごめんね」だけ。

それがどれだけ彼にとって心細かったか……。

スコールがとっても大変な状況なのはわかってるつもりだった。

それでも心の何処かで彼なら大丈夫だと楽観的に思っていたのだ。本当はいつ折れてもおかしくなかったのに……。

この時の私はお姉ちゃん失格だった。

わからない事も共有するべきだったのだ。

最初はあんなに頭の中が煩かったクレイズも、いつのまにかすっかり黙りこくっている。

 

 

そうして人生の節目をかいつまんで2人で視聴する事、数日。

目を覚さないリノアさんを背負い、長い線路を歩くスコールが初めて仲間に心の内を吐き出した。

 

私とクレイズの頭の中が啜り泣く音で煩くて、スコールの話が途中から全然聞き取れず、この過去は何度も何度も見返した。

そこから始まるスコールとリノアの恋模様。

宇宙で奇跡を起こし、魔女になったリノアさんを助け、そして時間圧縮の世界で魔女アルティミシアを倒したらしいスコールは、時の渦に巻き込まれて過去の孤児院に戻ってきていた。

 

幾度目の涙かわからない。

クレイズから渡されたカードを見たスコールは、荒野で歩き疲れて倒れているリノアさんを見つけ出し、抱き締める。

その瞬間、全てを覆う曇り空が晴れて花畑に包まれ、世界に平和が訪れた。

そっか、全部こういう事だったんだ……。

 

目を覚まし、「ここからは絶対リノアにジャンクションした方が良い」と力説するクレイズ。

私はその言葉に従った。彼が言うなら間違いないと思ったからだ。

そしてバラムガーデンのバルコニーで私は、憑き物が落ちたスコールの笑顔を見た。

 

(あぁ……良かったよぉ……スコール。……ほんとに良かったね。……良かった。……うぅ……1人にしてごめんね)

 

ホッとした。

当然、目と鼻から出てくる水が止まらない。

今の私の顔は酷い事になっているに違いない。

 

人に心を開く事ができる様になったスコールとリノアが顔を近づけて──────これ以上は2人の時間だ。

流石に自主規制して私はジャンクションの接続を切った。

 

 

「ふぅ……」

 

「はぁ……」

 

私達は凄い物に晒された衝撃で部屋で放心状態になる。

見始めた頃の彼のリアクションを少し大袈裟だと思っていた。

でも今の私ならその気持ちがわかる。

 

誰かの人生を盗み見る罪深さ。

まるで、一度服用すると歯止めが効かなくなる良くないお薬のようだった。

私自身まだまだこの力を使いこなせていない事を実感すると同時に、スコールの人生を見て疑似体験していたこの数日で、随分と自分が成長したような錯覚を起こす。

 

 

ご飯を食べることも忘れて、数日間精神を過去にジャンクションしていた私達は、栄養失調と水分不足で良くない事になっていた。

この能力は一日にそう何度も繰り返す物じゃないんだけど……ついつい気合いで頑張ってしまった。

私とクレイズは入院し、アルティミシアさんと同じ病室で栄養食を食べる羽目になりながら点滴を受ける。

 

 

「私のしもべという自覚はあるの? そんな事では騎士になる日はまだまだ遠いわね」

 

何日もお見舞いに来なかった事を、向かいのベッドでクレイズに怒っているアルティミシアさん。

スコールからの目線では全く知る事のできなかった、この人の想いや人生は一体どんな物だったんだろう?

彼女は未来からきた存在だ。過去を覗き見る事しかできないこの力では知る事ができない。

 

私は彼女を現代に連れ帰って来てくれたクレイズに感謝していた。

当事者として是非とも知りたい。それは今の私が心の内に秘める情熱の灯火だった。

 

クレイズ、彼がどう過ごしてきたのかも知りたい。

スコールが不思議がっていた彼、何故色んな事を知っていたのか、どういう気持ちで魔女アルティミシアを助けようと思ったのか。

幸いその過去を一緒に見てくれる人には、心当たりがある。

目の前で痴話喧嘩をしている光景を見ながら、私は彼女への取引材料を練り始めた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。