【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。 作:速射弾
アルティミシアの体が回復してから、私には悩みがあった。
現在彼女と一緒に滞在している大統領の賓客が宿泊する施設で、パンフレットを見ながら考える。
FF8の主要パーティメンバーとの交流が難しいのである。
物理的な部分なら押しかけていけばどうにかなるかも知れないが、問題はアルティミシアだった。
彼女を放置して「SeeDと会ってくるね」なんて言った日には、機嫌が悪くなる事間違いなしだろう。
ラグナ達は医療という外すことのできない目的があったのと、あまり魔女時代の彼女から意識されてない存在だったというのがセーフ条件をクリアしたのだと思う。
しかし、スコール達に会うのはどう考えても……。
そんな時、私は今年のバラムガーデンの学園祭が世界を回り、ツアー公演をするという情報をラグナから手に入れた。
世界が平和になったのでガーデンは傭兵を育てる必要性が薄れ、大規模な経営方針の転換をする。
授業のスケジュール変更に伴い、長い準備期間が必要になったので、その間は学園祭をやろうという話になったらしい。
エスタの大統領として各国への訪問を兼ねて、ラグナも乗りこみ世界を周るようだ。
行きたい。
大統領のコネでバラムガーデンに長期滞在したい。
その時にたまたまSeeDに会ってしまったら不可抗力だし、仕方ないよね。
そんなおこぼれを目当てにミシアさんをデートに誘う事に決めた。
「豪華客船に乗ってゆっくり世界一周旅行しながら、夢のアバンチュールが出来るツアーがあるんだけど一緒に行かない?」
返答は芳しくなかった。
「世界一周? あまり興味がそそられないわ……」
「ラグナのおかげで豪華クルーザーでの世界旅行が無料だよ? こんな機会ないよ、アルちゃんとデートしたかったな〜」
「アルちゃんはやめなさいと何度言ったら……」
「行ってくれなきゃ一生アルちゃんって呼ぼうかなー」
「世界一周なんて何時でも行けるでしょう。身を粉にしてそれぐらいは稼ぎなさい」
そうじゃないんだ。
スコール達が乗っているバラムガーデンは今しかダメなのだ。
私はいつしか見たセルフィの力押しを見習って、強行突破する事にした。
「行きたい行きたい行きたい!」
これでもワガママを言わないお利口なタイプの子供だったのだ。
今まで親にねだった物なんて、モンスター狩りの許可と、調理器具と、武器と、万能薬と、カードと、ウィンヒルを出て行く許しと…………。
とにかく、たまにはこういうのも良い筈だ。
そんな気持ちで駄々をこねる私に眉を顰めるアルティミシア。
「ハァ……騒がしい……」
荷物の準備と運搬は全部貴方がやりなさい。
彼女は気怠そうに吐いたため息と共に、旅行の許可を出してくれる。
「良いの?」
「そう言ってるでしょう」
私は何時ものようにコヨコヨをリスペクトしてお礼を言った。
彼女には感謝しなければならない。
私の無様な作戦は功を奏したが、だからといってここで調子には乗らないのだ。
魔女アルティミシアが折れてくれた、その事実に対する私なりのお礼をしたい。
こんな時はウィンヒル出身らしく花でも贈ろうか。
ベタすぎて逆にダサい選択だがそれもまた一興。
騎士として女性を守るというようなベッタベタな立場なので、これぐらいが丁度良いだろう。
結局私は感謝の気持ちよりも、遊び半分で思いついた事をやりたいだけなのだった。
エスタのネット通販サイトのカタログページで商品を検索する。
…………。
一つも花の種類がわからない。
私はウィンヒル出身だ……。
誰がなんと言おうとウィンヒル出身なんだ……。
武器を振るう事で害虫を駆除する事にかけては、あの村で私の右に出る者は居なかった。
これも立派な園芸であり、花を育てているといえる。
花の砂糖漬けは良く食っていたし、その道の玄人ではある筈だ。
どうやらまたG.F.に記憶を取られたらしい。
くそっ……大事な記憶を消しやがって……絶対に許さんぞ.……。
幼少期から花の事など憶える気が更々無い私は、G.F.に責任転嫁しながら懸念していた。
今の所はまだ前世の記憶が身代わりになってくれているが、そのうち記憶障害を恐れてG.F.の使用をやめる事になるかもしれない。
長年脳内に住むコヨコヨとの別れの時を想像してアンニュイになった。
それを察したのかコヨコヨが出てくる。
光となって頭からふよふよと漂い、地面にたどり着くと元の姿形が現れた。
「お前とも長いよなぁ」
水色の小型宇宙人が、何やら文字に書き起こせないような音で喋っては頷いている。
そういえば彼(?)は故郷の惑星に帰らなくて良いのだろうか?
私がそれを質問すると、コヨコヨは何やら眉を寄せニヒルな表情になって肩を竦めた。
もう帰る事を諦めてる……という事だろうか?
いまいち良くわからなかったが、これからもついて来てくれるらしい。
この宇宙人は久々に娑婆の空気を吸えて喜んでいるのか、しばらくの間私の部屋で活動していた。
エスタのショッピングモールで貰ったG.F.用のお菓子を食べながら、床に広げた雑誌を読んでいる。
コヨコヨはオカルトファンが好きで、今も読みながら超常現象に怯えて震えているが、これは何時もの事だ。
私が幽霊を苦手だと思うようになったのも、一緒に読んだその雑誌の怪談特集のせいだった。
そうやってペットとの交流を楽しんでいると、ふと思った。
私はコイツを召喚していない。
一般的なG.F.を取得した事が無いのでわからないのだが、所有者が召喚するのが普通なのではないだろうか。
勝手に出てきて勝手に動くのはおかしい気がする……。
エスタの研究機関に見つかったら良くないかもしれない、マッドサイエンティストの興味を惹きそうだ。
G.F.は宿主を媒介に召喚される精霊のようなエネルギー生命体な筈である。
その顕現する時間制限はある程度決まっている筈だ。
しかしコイツはずっと出ている。
別れが寂しければジャンクションせずに一緒に暮らせば良いのだと、先程の懸念事項は解決した。
いつまでも存在が消えないG.F.、私はそれに心当たりがあった。
アルティミシアがスコールとの最終決戦で魔女の力を使い召喚した、グリーヴァと呼ばれるG.F.である。
スコールが最も強いと考える存在を具現化したそれは、G.F.の領分を超えて消える事無く戦い続け、宿主が逆にG.F.にジャンクションする事も可能だった。
(私もコヨコヨにジャンクション……出来るのか?)
水色宇宙人の着ぐるみを装着した己の姿を想像する。
当然その姿で強くなれる気がしないが、やってみる価値はある。
そんな訳で丁度雑誌を読み終わったようだし、頼んでみることにした。
「コヨコヨ、お前今暇か?」
呼び掛けにエナジーバーを食べながら振り向く宇宙人。
彼に口らしき器官は存在しない。
正直目の前で見ても、どうやって食べているのかわからない……。
「なあコヨコヨ、お前の中に私を入れさせて貰うこと、できるか?」
私の質問に固まった未確認生命体。持っていたエナジーバーが手からこぼれ落ちて床の上をバウンドした。
そして何故か焦り出し、必死に首を横に振る。
ただ質問に答えるだけなのに、こいつはいつでも必死だった。
……それにしては異常に怯えている。
「そっか、やっぱり私がコヨコヨにジャンクションするのは無理か」
私のその言葉を聞いた瞬間、泣きそうになっていたコヨコヨの震えが止まった。
なんだか照れたような表情で額の汗を拭っている。
先程の態度とはうってかわって、任せてくれと言わんばかりに己の胸板を叩く謎の水色生物は、何やら目を閉じた。
頭に一本伸びたアンコウの触覚の様な器官の先っちょが光り出す。
私達は互いの身体が光に包まれ丸くなっていき、引き合う様にして合体した。
G.F.に人間が融合した姿がそこに顕現する。
頭の上が重い。
私に乗り、掴んだ髪の毛を動かす事で動きの指示を出すコヨコヨ。
これが私の第二形態だった。
(これは……ジャンクションか……? 乗っただけじゃないか……)
鏡で見たらコヨコヨの下半身が私の頭と同化しているのがわかった。
何となく上からの指示も理解できるし、相変わらず言葉は通じないながらも以心伝心といった感じである。
それが逆に怖い。
世間一般では宇宙人に寄生されて体を乗っ取られそうな状態、と表現されるんじゃないのかこれは……。
アルテマウェポンの下の人になった様な気分だった。
多分アルティミシアがグリーヴァにジャンクションした状態と似たような物なのだろう。
しかしコヨコヨが表に出ている状態は弱点を増やしただけで、むしろ弱体化しているだけだった。
上の操縦者の醸しだす雰囲気によると、この状態だから特別な技が使えます、という訳でもないらしい。
せめて想像してた様な着ぐるみ状態になれたら、万が一の時に服代わりにできるという使い道があったのだが……。
どうやら戦いは無理という事がわかった、少し残念だがやはり魔女に産み出されたグリーヴァとは違うのだろう。
私達は合体を解除して元に戻る。……断然こちらの方が動きやすかった。
実際逆ジャンクションが出来るだけでも凄いと思うが、その筋の専門家じゃないのでその凄さも、珍しいっぽいから凄いとしか言えない。
落としたエナジーバーを拾って再び食べ出したこいつは、相変わらず謎に満ちた存在である。
スコールが想像する最も強い存在と比例するように、コヨコヨは私の知る中で最も弱い存在だ。
正直似たシチュエーションなのでパワーアップを期待してしまった。
まあ別にG.F.として私にジャンクションする分には、問題無く優秀な相棒だ。
なのでそれで十分なのだが、少しラスボスごっこをしてみたかったなと思うのが本音であった。
結局アルティミシアには花の砂糖漬けをあげる事にした。
商品紹介の項目に記載されていたが、わざわざウィンヒルから取り寄せているらしい。
大統領が愛して止まない逸品だという……。あいつも物好きだ。
私が言うのもなんだが、花の砂糖漬けなんて結晶化した花弁の色とザクザクした食感が楽しいだけで、別に美味しくは無い。
三つも食べれば砂糖の味に飽きるような代物である。
紹介をスクロールしていくと生産者の写真が載っていた。
近所の婆さんと一緒に明るい笑顔で私の母親が映っている。
まさかこんな所で家族の安否を知ることになるとは予想外の出来事だ。
実家……今度帰る時はアルティミシアも一緒なのだろうか……。
余所者を嫌う村人と、人嫌いなアルティミシアが嫌味を言い合う絵面を想像する。
ただでさえ普段から帰省して無いのに、なんだか更に帰りづらい気持ちだった。
(今は帰る気無いし、代わりにお歳暮でも贈ろうかなぁ……。ミシアさんと一緒にカタログ見て決めるのも楽しそうだ)
私は2人の時間を作れる口実を手にして、彼女の部屋に行く。
カタログを見せて一緒に決めない? と提案した。
「実家への贈り物? まったく興味がそそられないわ……」
「ついでに自分達が欲しい物も頼もうよ、ほらバラムフィッシュとかもある。中々水揚げされない高級魚だからこんなチャンス滅多にないよ? ミシアさんと一緒に決めたいな〜」
「私の欲しい物は貴方が考えて持ってきなさい、魔女の騎士ならそれぐらい出来て当然とは思わないかしら?」
「確かにそうかもしれない……。とりあえずカタログ見て良さそうな物があったら言うね」
私は手元にある端末から出てきた半透明なカタログページを見た。
おすすめ商品が紹介されている所から良さそうなページをタップする。
「うーん、これなんかどう? 高級お寿司セット」
「生魚は嫌です」
この世界、意外にも寿司がある。異世界設定はどうしたおい。
アンジェロの好物であり、私もついでに良くリノアから貰って食べていた。
魂の故郷の味はお気に召されず、一言で却下されてしまったので、次のページにスライドする。
「こびとのパン焼き立てセット、げんこついものシチューと特製のピーナツバターもついてるんだってさ」
「地味ね」
反応がよろしくない。派手な方が良いのかもしれない。
「お! これは気にいると思うよ! スタールビー 1.7ctネックレス!」
「何故急にアクセサリーになったのかわからない……。
貴方に任せたら、なんであろうと同じ事になりそうだから私が選びます」
そう言うと彼女は私が見せていた端末を引ったくる。
ネックレスを買い物カゴに入れ、食料品ページを漁り出した。
結局2人で同じソファに座りあーでもないこーでもないと言いながら、実家へのお歳暮と私達の欲しい物は決まった。
日が暮れかけていた部屋の中で私は思い付いた事を聞く。
「そういえばミシアさんは未来で過ごしてた時、実家への帰省とかどうしてたの……?」
「………………覚えてないわ」
(げっ……地雷踏んだか……?)
何気なく聞いたが、デリカシーの無い話題だったかもしれない。
声のトーンが下がった彼女の表情は先程までとは違い、心なしか元気が無さそうに見えた。
「数多くのSeeDとの戦いで過去を忘れてしまったの。
魔女であった私ですらもG.F.を使わなければ生きていけない程に奴らは群がってきた」
彼女は被害者ではなく加害者の立場だ、その扱いに同情はできないのかもしれない。
しかし悪人と称される者にも人生はある。
「全て殺し終わって、気づいた時にはもう憶えていなかった……。
それは魔女になる前の子供の頃の記憶であったり、幸せだった筈の故郷の思い出さえも……」
儚げな表情で話すアルティミシアは、主の心を推量れなかったしもべに対して罰を言い渡した。
「今から貴方がこの寂しさを埋めなさい……」
こいつらジャンクションしたんだ!