【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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32話 バラムガーデン②

 

バラムガーデンがエスタの港までやってきている。

エスタ代表のラグナと愉快な仲間達は、ここまで運んでくれた大統領専用飛空艇を降りた。

 

教員スタッフを伴った学園長夫婦にお出迎えされる。

丸眼鏡をかけた優しそうな中年男性と、長い黒髪の美しい女性。

現在仲睦まじくガーデンを運営しているシド・クレイマーと元魔女のイデア・クレイマーだ。

 

今まで来たくても中々来れなかったガーデンに入れるだけでは無く、シドとイデアから歓迎までされて、しばらくの間そこに滞在出来てしまうという至れり尽くせりなこの状況。

私は権力の蜜の味を知った。

 

 

バラムガーデンに乗る事を知らずに騙されてついてきたアルティミシアは、私と腕を組んで支えるようなふりをしながら二の腕の皮膚を抓る。

彼女の怒りはごもっともだ。

 

(でも行きたいんだもん……! バラムガーデン楽しそうだもんよ!)

 

今は魔女時代の化粧もしてないし、服装も違うので秘密にしとけば大丈夫……な筈だ。

警戒している彼女は、やはりSeeDに殺されかけたのがトラウマになっているのだろうか?

だとしたら偽名を使ったり、エスタの方に戻るという選択肢もあると、こっそり彼女に提案してみる。

 

「私を愚弄しているのかしら?」

 

強気な言葉が返ってきた。

仮にそれが痩せ我慢だったとしても、彼女はプライドを奮い立たせ、絶対に負けないと強がる事を選んだようだ。

バレても今は魔女の力を失った一般人だ、同じ立場のイデアが居るのだから拒絶されはしても殺される事はない筈……。

しかし、まぁ。

 

「いざとなったら私がどうにかするから大丈夫だよ」

 

こういう時こそ主を守る騎士の本領発揮だろう。

所属生徒全員がG.F.を所持している戦闘要員育成機関で、私一人がどうにかできるとは思えないが、頼れる男アピールする為に少し見栄を切った。

 

 

「貴方は私のしもべなのだから当然です」

 

まだ騎士となるには早いらしい。

警戒心が強かったあの頃に比べて、1年と少しの僅かな期間の内によくここまで信頼してくれるようになったと思う。

カードゲームって凄い、私はそう思った。

 

 

 

「うぉー! これが間近で見るガーデンか……すっげーぜ!」

 

ラグナが喜ぶ声をあげる。

キロスとウォードもTPOをわきまえて何時ものようにツッコミを言葉や態度には出さないが、なんだか嬉しそうだ。

どうやらウィンヒルにお墓参りしに行った時バラムガーデンが近くを通ったらしく、乗ってみたいという話はしていたんだとか。

笑顔のエルオーネが教えてくれた。

 

 

すげーすげーと喜ぶラグナに、「エスタの未来都市の方がすげーだろ」と私は思った。

しかし、バラムガーデンの素晴らしさは技術云々ではないか……。

 

風情。

ここはその要素が飛び抜けて素晴らしい。

 

校内は白とクリーム色を基調とした優しい色合いに、薄い橙色の大理石でできた床。

閉鎖感を減らす為に通路を囲むように水が流れており、観葉植物の緑が嫌味無く配置されている。

高級感と安心感を兼ね備えたこの世界はずっと過ごしていたい場所だ。

 

 

私達は人が全く居ない中、景色を見ながらゆっくりと校内を進んで行った。

前回私が来た時は普通に人が居たが、流石に大統領が来るとなったら生徒に一時的な外出制限の通達が出されている。

 

まあ学園長が言うには最初だけの配慮なようだが、貴重なガーデンで過ごす時間を奪ってしまった。

自分のせいでは無いが、こんなしょうもない事を心苦しく思うには理由がある。

学生さん達は20になったら、住んでいたこの世界から出ていかなくては行けないのだ。

ガーデンで過ごすその時間が例え一日だとしても貴重な物だと思うのは、私がFF8好きだから故の考えかもしれない。

 

 

みんなが一緒に青春時代を過ごした世界。

孤児は子供の頃から家代わりとしてここに所属し、育っていく。

20歳になった時、SeeDか教員以外は絶対に出ていかなくてはならない。

例えSeeDになったとしても所属期間が伸びるのは数年だけだ。

いずれスコール達、仲良し幼馴染パーティも世界中に散り散りになるのだろう……。

そんなの悲しすぎて私なら泣く、すぐ泣く、絶対泣く、ほぉーら既に涙が出てきてる。

 

少し出てきたそれを誰かにバレる前に指で拭い取る。

無駄に想像を膨らませて涙が出るのは良くない癖だ。

でもこればかりは私の責任じゃない、良すぎる雰囲気の学校を作り出したFF8および、F.H.の技術者とクレイマー夫婦が悪い。

お前らのセンスの良さどうなってんだよ。

 

 

 

というわけで丁度学園長夫妻がいるので自身も紹介を済ませ、バラムガーデンのデザインについて聞いてみる事にする。

自己紹介で私の職業に反応したシドが、雑誌記事の事について喋りかけてくれた。

 

 

「おや、連載しているのはモンスター飯のコーナーですか……。あれは楽しく読ませて貰ってますよ。

荒事は苦手でも職業柄戦いの知識は入れておいて損は無いですから、軽い勉強がてら専門の雑誌も見るようにはしているんです。」

 

朗らかな雰囲気で楽しそうに話す彼を、横でイデアが微笑ましそうに見ている。

 

 

「モンスターについての観点が独特なので、感心する事も多かったのですが……豊富な知識や見識を感じさせる内容だったので、想像よりクレイズさんが若い人で驚きましたねぇ」

 

流石は学園の長だ、例えお世辞や社交辞令だとしても嫌味無く持ち上げてくれる彼の言葉は心地良く響く。

 

しかしながら実際に読者と出会って思うが、自分の記事を読んで楽しんでくれる人がいるというのは、思いの外嬉しい物だった。

まあ私の記事はその筋のモンスター専門家の研究内容に比べれば浅いものだろうが、戦闘面に重きを置いているというのはガーデン関係者にはウケが良いかもしれない。

広く浅くというのもそれはそれで新たな視点での物の見方が加わるので、FF8という俯瞰した情報を持って各地を回った事が、この世界の人々には持ち得ない自分の良さを獲得したわけだ。

 

 

なんて考えている私は、既にシド学園長のお上手な言葉に乗せられてしまっているらしい。

調子に乗って早速当初予定していた質問をしてみた。

 

 

「バラムガーデンのデザイン大好きなんですよね……。これって何かモデルとかあるんですか?」

 

「あぁ、ここの見た目ですか……。これはセーブポイントからインスピレーションを受けているんです。

海が綺麗なバラムに建てるという事で、まず船や海産物を取り入れたような爽やかな見た目にしよう、という話になりまして。

そこに心の休まる帰る場所、という意味を込めてセーブポイントを取り入れて参考にしてみたんですよ」

 

「中々良いでしょう?」と語るシド学園長は誇らしそうだ。

セーブポイント。

不思議な十字のデザインを中心として青と黄色の光輪が回転するそれは、この世界ではゲームシステム上仕方なく作られた記録場所という存在では無い。

では何なのかというといまいちよくわかってないようだが、特に害がある物では無いという。

どうやらドローポイントと似たような物であり、特定の条件下で起こる魔力を介した虹のような現象の一種だとか。

 

珍しいような珍しく無いような現象なのでたまに街中とかでも見かける。

これが発生する物件などは、少しお値段が割り増しされたりもするのだ。

見ていると落ち着く綺麗なセーブポイントは、安らぎの意味を持つ人気の縁起物だった。

 

 

案内板のある広間を通り抜けてエレベーターに乗り、3階に複数ある要人用の客室にエスコートされる。

当然の事ながら、学生寮で寝泊まりする訳じゃないようで少し残念だが、人嫌いなアルティミシアにとってはこちらの方が嬉しいだろう。

彼女は部屋を私の隣に決め、早速足が疲れたと休憩しに入って行った。

 

 

 

みんなが部屋に入った後、学園長夫婦との別れ際に私はシドから小声で言われる。

 

「貴方の気持ちは良くわかります……。応援してますよ……」

 

どうやらアルティミシアの事は知られているようだ、責任者として当たり前か……。

その一言は彼女の今後を思うと嬉しい発破だ。当然私にとっても。

 

 

強い人だった。

先程の言葉の重みが私には必要以上に理解できる。

 

自分の妻を長年に渡って操り続けたアルティミシア。

その敵対する魔女が幸せになる事を応援する。

それが魔女の騎士として生きてきた境遇と重なったのだとしても、若造である今の己には出すことのできない結論だ。

 

それだけではない。

私は実体験で未来の知識を持ちながら、他者に過酷を強いる苦悩を知っている。

その境遇は未来を僅かに知るシド・クレイマーと同じだ。

いや、同じというのも烏滸がましいか……。

 

彼の日常は私とは比にならないほどの重圧だったに違いない。

奥さんを殺す為に、愛する孤児達や生徒達にG.F.の使用を強要して刷り込み教育を行い、戦場に送り込む。

未来を一部知るが故に運命に身を捧げ、人道に反する行為に手を染める。

それはただ諦観していた自分とは比べ物にならない程、苦痛に苛まれる日常の筈だ。

 

 

そんな彼の言葉を聞いた私は尊敬の念が込み上げ、涙腺が決壊した。

まるで自分が泣き虫のようだが、これは男泣きだからセーフだ。

 

 

言い訳させて貰うとゲームで味わうのと現実で接して心身で経験するのとは訳が違う。

ここ数年、ゲームですら泣かせてくる世界が現実になった場合の真の恐ろしさを体験していた。

そんな止まらない涙を見てシドとイデアが慰めようとしてくれる。

 

 

「こ、これは困りましたねぇ……そんなつもりではなかったんですが……」

 

「大丈夫……? 一人でお部屋まで帰れる?」

 

イデアがハンカチで涙を拭いてくれる。

良い年した大人がされるには恥ずかしいやら嬉しいやら。

自分がどうしようもないだけなので、あんまり優しくしないでください……。

 

 

言葉には出さないが、大丈夫だよママ先生と伝わるように何度も頷きながら部屋に戻った。

……と思ったら間違えて自室の隣の部屋に入ってしまったようだ。

イデアの心配は的中して、私一人でお部屋まで帰れなかったのである……。

部屋の主と目が合った。

 

 

「……何故泣いているのか訳を話してみなさい」

 

アルティミシアはまだ気持ちが落ち着いていない私を見て、しもべが学園長に泣かされたと憤慨していた。

文句を言いに行こうとする彼女を必死に止めて、シド学園長の言葉と自分なりに想像した意味を伝えると、珍しく申し訳無さそうな顔をする。

 

 

「全く……貴方が泣く必要はないでしょう。これは私と彼等の話な筈です」

 

「ミシアさんの為に泣いた訳じゃないよ……シドさん達の懐の深さに泣いたんだよ……」

 

そう涙ながらに話すと「何故主の為に泣かないのか」と今度は私に対して憤慨するアルティミシア。

自意識過剰だが可愛いご主人様なのであった。




この小説、異常に自己紹介と泣くシーンが多い……。
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