【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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34話 アーヴァイン・キニアス

 

ガルバディアとエスタが手を組んだお陰で戦争が無くなり、ガーデンの生徒である僕たち傭兵の仕事もすっからかんだ。

各国のガーデンは傭兵学校の役目を一時的に終え、これからはモンスター退治を基本とした学校としてやっていく事に方針を決定したらしい。

 

しかし当然、再び悪い魔女が現れた時のために訓練して備える事は怠らない。

「未来の魔女を倒してもそれは変わりません」とシド学園長が優しい声で生徒たちに言い聞かせる。

 

 

僕はスコール達と過ごす時間の為に、ガルバディアガーデンからバラムガーデンへと転校して来た。

SeeD達と肩を並べる凄腕スナイパー転校生、アーヴァイン・キニアス。

魔女アルティミシアを倒して生ける伝説のガンマンとなり、僕はモテモテだった。

 

今日も訓練施設でモンスターに苦戦していた新入生のかわい子ちゃんを助けて、ハートを撃ち抜いてしまった。

お礼の言葉をくれる女の子達に、手で銃を撃つような仕草をしながら手を振る動作に繋げる。

これが今、僕の中ではマイブームのカッコいい挨拶だ。

 

もっともゼルからは「何だそりゃ」と不評だったけど……。

やれやれ、男の嫉妬は見苦しいよね。

 

 

魔女の事件が片付いた翌年のバラムガーデンの学園祭は、各地を移動して公演する本格的な物となった。

世界を救った功績があるセルフィたっての希望である学園祭の開催に、文句を言える人は居ない。

むしろみんなは浮かれた空気だった事もあり、特に反対意見も出ずその願いは可決された。

 

どういう内容にするかを煮詰めている時に、せっかくだから世界平和という事で、各地のガーデンと合同で開催するのはどうだろう? という話になる。

どうせならバラムガーデンの動く機能で世界を回りながらツアー公演するのが良い。

ガルバディアガーデンも動くから一緒にやろうと、後付けで規模がどんどん広がっていった。

トラビアのガーデン生を乗せる為にF.H.で居住施設の増築までしている気合いの入りっぷりだ。

 

 

バラムガーデンがエスタのモンスター退治を精力的に行った結果、都市内部にモンスターは居なくなり、

すこーし大統領と知り合いだったお陰でエスタから大幅にお礼の予算が頂ける事となる。

 

ついでに世界平和記念の各国訪問も兼ねて、両大国の大統領もガーデンに乗って世界を周ろうという計画が追加された。

これが学園祭なんて信じられない、笑ってしまう様な規模だ。

 

当然そんな話を学生だけでやる訳が無いし、年内にまとめきって開催に漕ぎ着けるのは無理だ。

普段やっていた授業は大幅にスケジュールを変え、学園祭の準備に充てられる事となる。

僕達は外部の専門家や業者を発注し、特別顧問としてウェンブリー・ダナーという前年度の学園祭実行委員を雇い入れた。

 

「皆さんなら力を合わせてなんとかしてくれると信じています」

それはシド学園長が新年度の挨拶で言った無責任にも思える言葉だったが、実際に僕達はそれで世界を救ったのだ。

スコール達が頑張った分、次は自分達の番だとみんなは張り切っていた。

 

 

 

 

人の少ないガーデンの校庭へと続く道。

澄んだ空気と肌寒さに包まれながら差し込む朝陽を浴びるのが心地よい。

学園祭実行委員の一人として、朝早くから校庭の設備と計画予定の場所の下見を済ませて校内に戻る道すがら。

 

そこで木陰のベンチに一人で座る女性と出会った。

顔付きはどことなくキスティスやリノアに似ているが、彼女達とはまた違った雰囲気の色っぽい女性。

施してあるお化粧や髪型、全体の服装は控えめなのに、美しさが隠しきれていない。

灰色の長い髪はキューティクルが輝いており、手入れを欠かしていないのが一目瞭然だ。

 

一見年寄り染みた雰囲気になりかねない髪色にも関わらず、そう感じさせない大人の女。

しかし若くも見えるので年齢不詳であり、不思議だった。

魔性の女というのは彼女の事を言うのかもしれない。

なんといってもスタイルが良い。

 

(ボインボインなバストのフェロモンに、ふらふらと引き寄せられた僕はまるでバイトバグ……)

 

おっと、図らずしも良い歌詞ができた。これも目の前のマイハニーのお陰だ。

額に手を当て、天を仰ぎ見ながら言う。

 

 

「オーマイゴッド! 僕はたった今、一目見た時から君にゾッコンラブなんだ……。

これは運命、大いなるハインのイタズラとしか言いようがない! 僕のハートは恋の魔法にかけられてしまったようだ!

イケナイ恋の魔女が道を誤ってしまう前に、君を守る騎士として立候補させてくれないかな?」

 

精一杯のボディランゲージでこの感情を表現する。

僕は誰かに愛を伝える時は言葉だけじゃ足りないと思う。

それは時にダサく映る事だってあるだろう、でもどんな結果になろうとも、どれだけ好きかは出来る限り伝えたい。

じゃないと抱いたその感情と、ここまで積み上げてきた自分の人生に失礼だ。

 

 

「失せなさい」

 

冷めた目。

綺麗な女性にそんな顔されると迫力あるよねぇ。

でも僕は、これぐらいじゃへこたれない。

普段から似たような扱いをされているので慣れっこだ、僕の人間力を高めてくれるキスティスには感謝だね。

それにこの程度で簡単に躓いてたら、さっきまでの自分を否定している様なものだ。

選んできた人生の選択を大切にするってそういう事でもあると思う。

 

……いや、それでもショックを受けない訳じゃ無いんだけどね……?

 

 

「隣に座っても良いかい?」

 

「はぁ……同類ね……」

 

同類……? もしかして彼女は僕に自分と同じ匂いを感じてくれたのかな?

だとしたら相性抜群って訳だ。

 

 

「そう、僕達は同類。惹かれ合う運命なのかもしれない……」

 

その時、彼女は訝しげに僕の顔を見て、上から下まで眺め回した。そして何かに気づいた様子だ。

僕の魅力に気づいてくれたのかな。それともどこか変な所でもあった?

ガーデンの制服に似合ってないかな? 塵でもくっついてた?

 

 

「惹かれ合う運命……そうね、そうかもしれないわ……」

 

……何と! 脈ありだ! 

その反応は僕が今まで女性に声をかけた中で1番手応えを感じるものだった。

 

(ごめんよキスティ、セフィ……。君達という幼馴染がありながら、他の子猫ちゃんに靡いてしまう意気地無しを許してくれ……)

 

それでも3人を平等に愛する事を心の内で誓った僕の喜びとは裏腹に、少し緊張した表情の彼女。

運命の相手に緊張してしまう気持ちはよくわかるよ。

でも僕は君に危害を加えたりしないから安心して欲しい。

 

 

「貴方、SeeD?」

 

「うーん残念、SeeDじゃ無いんだよね〜」

 

「そう……惹かれ合う運命では無かったみたいね」

 

何故かホッとしたような顔をした運命のマイハニーは呟いた。

ベンチから立ち上がり、僕を置き去りにしてこの場を離れ校舎の中へと戻って行く彼女。

 

 

「あれれ? 今回は調子良いと思ってたんだけどなぁ……」

 

僕がSeeDじゃないのがダメだったのだろうか? こういう時はスコール達が羨ましい。

いや、待てよ? 考え様によってはこれはチャンスだ。

この悲しさで生まれたアンニュイな雰囲気で、セルフィの気を惹くというのはどうだろう?

そうと決まれば行動開始だ。

 

まだ朝早いから起きて無いかもしれない。その間にシャワーを浴びて身だしなみを整えよう。

 

 

 

汗を洗い流して身綺麗にした僕は寮を出て一階の廊下を歩いていると、お目当ての幼馴染を見つけた、のだが……。

 

あれは……セルフィ?

何だあの男……見た事ないけどどこのクラスだろう? 少し大人っぽいからもしかして生徒じゃない?

二人で何をはなしてるんだ?

楽しそうだ。

 

僕は気になって廊下で話している2人の間に割り込んだ。

 

 

「やあ、セルフィどうしたのこんな所で」

 

「アーヴァイン、おはよ! 昔お世話になった人と再会したから、お礼してあげるって話してたんだ〜」

 

「あっ……あっ……アーヴァインさん!? お噂はかねがね、私はこういう者です……」

 

「もっと楽に呼び捨てでいいよー、よろしく、ていうか多分僕の方が年下ですね。あはは」

 

そう言って差し出してきた名刺を受け取り、握手をする。

彼は両手で大事そうに何度も僕の右手を握り、包み込んで摩った。

この人がどれだけ僕の事を尊敬して敬ってくれているのか、その真剣な表情と仕草からわかる気がした。

やっぱり言葉も大事だけど、動きで伝えると言うのも大事だ。

まあ……彼には申し訳ないけど、これが女の子だったらと思わざるを得ない。

そろそろ離して欲しい。

 

 

「あ! クレイズの変な握手だ〜、なんか懐かし〜! 長い間大切そうにやるからちょっと照れるよね〜」

 

私もやるやる! と握手するセルフィ。

先程の握手は第三者視点だとこんな風に見えるのか……。

僕の目の前でセルフィの手がベタベタと触られているのは、正直あまり良い気分では無かった。

 

なんだかいやらしくない? 気のせい?

 

 

「誰にでもやってる訳じゃないよ、本当に好意を抱いた相手には自然と長く握手してしまいたくなるだけさ、ずっと触れ合って居たいからね」

 

そのクレイズの言葉にセルフィは元気に笑って茶化す…………あれ?

いつもなら元気な反応をするセルフィがやけに大人しい。

 

 

「トラビアガーデンの人達を助けたいと思ったのも……実はトラビアの学園祭でセルフィのライブを見たからなんだ……。

あの素晴らしい演奏をする君の悲しい顔は見たくない。

その一心でやった事だから、今のセルフィが笑顔で過ごしているだけでもう十分お礼は貰っているよ」

 

(……何だそりゃ)

 

僕ならボツにしてるような口説き文句だ。

もっと他の何かに例えて、心の内をロマンチックに演出する事が大切だ。

それにボディランゲージでも深く響くように体を動かして表現しなきゃ。

 

しかし、セルフィの顔は真っ赤になっている。

えー、何? そんな訳ないよね……? こんな反応された事ないんだけど!!

幼馴染だよ僕達! 一日二日で積み上げてきた絆とは訳が違うよ!?

 

(おーい! セルフィ〜! おーい!)

 

あと……ちょっと握手の時間長くないかな? 僕の時の倍ぐらいやってない?

 

 

「でも、良ければ今度セッションしてみたいな。君の学園祭を見てから楽器を始めてさ、今まで一人で弾くだけだったから、最初はセルフィと一緒にやってみたい」

 

「…………うん、あたしで良ければ……」

 

セッションだって!?

恋のセッションしようという文言は比較的ポピュラーだと思っている。

僕も女の子に声をかける時良く使うので、これは黙っちゃ居られない。

 

 

「あー、お二人さん……楽器の演奏なら僕も一緒にやりたいなー……」

 

惚けた振りをして邪魔をしてみる。

 

 

「アーヴァインもそう言ってくれるなんて……! 是非一緒にやろう!」

 

裏表の無い友好的な彼の反応。

どうやら口説いてる訳じゃなかったみたいだ……早とちりして焦ってしまった。

でもだからと言って油断は出来ない。そろそろセルフィの手は離そうぜ。

 

 

 

セルフィの鳴らすアコースティックギターの音色が僕のベースに支えられ、メロディを分厚くした。

そこに飛び込んで来るヴァイオリンの弓を引く音。

誰かと初めて演奏するというクレイズが、タイミングを見計らってぎこちないながらも入って来たのだ。

僕とセルフィは誘導するようにゆっくりとリズムを馴染ませて彼の手助けをする。

 

王子様っぽいからヴァイオリンを選んだという彼のスラリとした演奏風景は、確かにその思惑にピタリと当てはまっている。

先程話していた時とは別人の様に真剣な表情が、冷く感じさせる貴公子然とした雰囲気を作り出していた。

 

演奏が進むに連れてクレイズの表情は段々と良い意味で崩れて来た。

余裕が生まれ楽しそうに弓を引く彼は、いつのまにか王子様なんて柄ではなくなってしまっている。

 

(でも僕はこっちのクレイズの方が好きだな)

 

肩の力が程よく抜け、一体となって楽器を鳴らす僕達三人は既に一つのパーティメンバーとなっていた。

 

充足感を得られて心地良さそうなセルフィは一緒に写真を撮りたいと言う。

彼女を挟んで三人で記念撮影。

 

まだあまり知らないけど、話したりセッションしたりする内にわかってきた事がある。

クレイズと僕達は波長が合うらしい。

それは音楽にしてもそうだし、ノリの良さもそうだった。

僕達は仲良くなれる気がして嬉しかった。

撮影した写真を欲しいと強請る彼も、多分同じように思ってくれてるんじゃないかな?

 

そんな彼とまた遊べる日が来れば良いと思う。

まあもっとも……。

 

(女性の好みも合うかもしれないって所は少し危機感を覚えるけどね〜)

 

僕はセルフィに近づく彼の事を、もっと良く知らなきゃいけない気がしていた。

 

 

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