【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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36話 スコール・レオンハート

 

バラムガーデンでリノアと一緒に過ごす日々。

 

そんなある日、俺はこの学校でクレイズ・オクトーと再会した。

再会は劇的なシチュエーションがあるわけでも無く、食堂でパンを食べているソイツをたまたま見つけただけだった。

 

「何故こんな所に居る?」

 

それは俺が幾度もこの男に感じた言葉だ。

想定外の場所で名前を聞いたり、顔を合わせる謎の人物。信用できるかどうかは未だによくわからない。

 

 

「スコール、こんな所で出会えるなんてね……。いや、バラムガーデンに居るからおかしくは無いか。

私はエスタの要人関係者としてラグナについてきたんだ」

 

エスタの関係者……?

つまりこいつはラグナがエスタに居るのを知っていたのか?

時間圧縮の時でも、いつの間にかリノアが俺の彼女だと知っていた。

今思えばティンバーで最初に出会った時からおかしかった。

人は握手を無視されただけで泣くだろうか? ましてや他のやつが無視されたのを見ていたのに、だ。

俺の何を知り、俺に何を感じている?

 

 

「そういえば聞いておきたい事があった、どうしてアンタは知り得ない知識を持っているんだ」

 

あの時は切羽詰まった状況だった。

答える気がなさそうな返答を追及する暇はなかったが、今は違う。

 

「……え〜と、妖精さんが教えてくれた……って言ったら信じてくれるかなぁ……」

 

「何?」

 

妖精さん、それはラグナ達が良く言っていた未来から意識をジャンクションされた事を表す言葉。

未来から干渉を受けているのか? そういえばこいつはエルオーネと幼馴染だった。

だとすれば彼女が何かを変えようとしたか、クレイズの過去に知りたい事でもあったのか……。

しかし、エルオーネのジャンクション単体では過去に影響を与えるのは不可能なはずだ。

もしかして未来の魔女が関わっている……?

なんにせよそういう事なら、これは今俺が考えて答えが出る類いの問題では無いか……。

 

もう一つ疑問がある。

 

「アルティミシアを助けたのは何故だ」

 

何やら目の前の男はモジモジしている。

少し間が空いてから沈黙に耐えきれなくなったのか口を開いた。

 

 

「好きだから……」

 

「は?」

 

「好きになっちゃったからしょうがないんだ」

 

まるでアーヴァインが言いそうな言葉。

そんな理由と世界が終わるかもしれない状況を天秤にかけたのか……?

 

 

「そんな目で見るなよ……しょうがないだろ、似たような事をしたスコールならわかる筈だ」

 

こんな奴にしては痛い所を突いてくる。

誰だ、この男に俺の恋愛エピソードを語り聞かせた奴は……。

キスティス、セルフィ、ゼル、アーヴァイン、エルオーネ、そして俺の恋人であるリノア。

 

(当事者が多すぎるな……)

 

この話は不毛だ。

これ以上はやめておこう。

 

結局聞ける話が無くなってしまった俺は、まだ寝ているリノアと一緒に過ごす為に寮に戻る事にした。

……のだが、この男、何故か学生寮の廊下までついてくる。

 

 

「ついてくるな」

 

「たまたまこっちに用事があるだけだよ、それとも何かついてこられたら不味い事でもあるの?」

 

「……べ『べつに』」

 

……?

クレイズは何故か俺の言葉を予測して被せてくる。

 

「スコールは今日これから何するの?」

 

「お前には関係『関係ないだろ』」

 

何だこいつは……気持ち悪い……。

このやりとり、何か憶えがあると思ったらキスティスと昔そんな会話をした気がする。

そういえばこの男はキスティスと関わりがあった筈だ……。

 

(どうやら俺について余計な事を喋ったらしいな、そんな事だから教師を辞めさせられるんじゃないのか……?)

 

それにしても厄介な奴に俺の情報を教えてくれた物だ。

 

クレイズ、こいつ俺に対して何か思う事でもあるのか?

悪意は感じないが油断は出来ない。どこかで恨みを買った可能性も捨てきれない。

まさか森のフクロウに居た時からリノアに惚れていたんじゃないだろうな……。

彼女を好きにならない理由を探す方が難しい。

 

アーヴァインみたいな奴だ、同時に複数の女を好いても不思議じゃない。

それで恋仇を逆恨みするとしたら俺を付け狙う理由になるか……。

最悪俺を狙うのは良い、だがこれだけは言っておく。

 

「リノアに近づくな」

 

その時、寮の方角からリノアの声が聞こえた。

 

 

「あっ! スコール! もう、どこ行ってたの!? 起きたら居なくて寂しかったんだから!

ほら、お姉ちゃんとおはようのハグハグぎゅーってしよ!」

 

俺は思わず自分の額に手を当てて前髪を握りしめた。

頭が痛い。

痛むのは頭の中なのか、この額の傷なのかもわからない。

 

 

 

とりあえずリノアに寂しい思いをさせた事をまず解決しよう。

そして彼女には、普段の生活の話を外でしないように頼みこむ。

余計な男に余計な事を知られてしまったが仕方ない。

今はただ抱擁を見せつけて恋敵を追い払おう。

 

 

……しかしいつまで見てる気だこの男。さっさと失せろ。

 

どれだけ経ってもクレイズがその場から離れる気配が無い。

用事があると言っていたのはどうした? やはり変だ、何かある。

 

俺の胸元から愛する彼女の頭が離れたその時、リノアが奴の存在に気づいた。

 

 

「あ! クレイズ!? えーと……恥ずかしい所、見られちゃった……?」

 

「…………………リノア久しぶり! 元気してた? 恥ずかしい所って何の事? 今来たばっかりだから……何かあったの?」

 

わざとらしい演技はやめろ。

しっかりと目に焼き付けるように先程からずっと見ていただろう。

 

 

「ううん、何でもないの……! 久しぶりだねクレイズ」

 

リノア……今のに誤魔化されたのか? 可愛いな……。

俺はハグハグタイムが終了してしまった事にガッカリしながら、彼女の可愛さを再確認し、手櫛で前髪を整えた。

 

そうして3人で当たり障りの無い世間話をする羽目になった。

無駄な時間だ。

 

それにしても意外だった。

先程の見苦しい俺の恥部を馬鹿にしてくると思っていたが、それについては何も言って来ない。

揶揄ったりしてくる物かと『けいかい』していたが、案外気遣い出来る奴なのかもしれない。

そんな事を考えていると、見知らぬ女性がこちらの方に歩いてきた。

 

 

「クレイズ、何をしているの? 貴方は私のしもべなのだから休みの曜日は一緒に居なさいと言った筈。

それに毎朝の騎士叙任の儀が今日はまだです。私の騎士になりたいのでしょう」

 

「I beg your pardon, my lord.」

 

そう言って片膝を突き、女性に顎の輪郭を撫でられてから頬をはたかれるクレイズ。

 

なるほど……そういう事か。

 

用事ができてしまったと、この場から離れていく奴の姿を見送る。

やはり俺についてくる以外の用なんて無かったらしいな。

 

そして、俺は先程自分がしたクレイズへの質問を思い出した。

別れ際こちらを一瞬睨んできたあの女……。

まさか魔女アルティミシア……か?

これは学園長に確認をとった方が良さそうだ。

 

 

 

 

「えぇ、貴方の考える通り彼女はアルティミシア……だそうですね」

 

シド学園長は俺の問いを簡単に肯定した。

 

「実際に魔女時代のアルティミシアに会った事は無いものですから……半信半疑ですが、どうやら本当のようです」

 

学園長が話すには、今のアルティミシアに何かできる力は無く、一応念の為に魔法の使用を抑制するバングルを装着しているから安全、らしいが……。

 

 

「あんた、恨みはないのか? 自分の人生を壊された相手だろう」

 

「恨み……ですか、無いとは言い切れませんねぇ……。

簡単にそれを許すには、私と妻の失った時間はあまりにも大きすぎました。

ですが……SeeDに怯えながらもクレイズさんに縋るその姿と、彼女を安心させようとする彼を見て、私も魔女を守る騎士の役割を想起してしまったのでしょう。

優しいイデアは許しているかもしれません。

しかし私は許しているというよりは、魔女の騎士の様な立場に身を置いたクレイズさんの力になってあげたい、と言った方が適切かもしれません。

いやはや……長々と語ってしまいましたね……」

 

本人がそれで良いなら俺には関係ない事だが、それは結局許している様なものだろう。

何故連絡が無かったのかと聞くと、ハンカチで汗を拭く学園長は言い訳をするかのように語り出す。

 

 

「内緒にしていたのはですね……。

しばらくの間、余計な事を気にせず愛する人との時間を大切にして貰いたいと思ったのです。

……というのは私の勝手な押し付けに過ぎないですかね?……ははは」

 

ハァ……そういう事はせめて事前に言ってくれ……。

 

 

「ですが同じ気持ちの人は意外と多いのですよ?

貴方に感謝しているのは私だけでは無い、ということです。

しかしどうやら余計な気遣いだった様です、これからはまた頼りにさせて貰いますよスコール」

 

そう言うシド学園長の眼鏡が反射して光った。

早速相談があるらしい。

ガーデンの教育をどう変更していくのか俺の意見を伺いたいと言う。

そんな事、生徒の俺に聞かないでくれ……。

 

「きっとスコールなら良い案を出してくれるでしょう、期待してますよ」

 

俺に頼る癖が抜けないシド学園長は、いつもの様に無責任な言葉を発した。

あんたの期待に応えるの……大変なんだぞ……。

 

 

 

 

「シドさんとお話ししてきたんだ?」

 

アンジェロをブラッシングしながらリノアが俺の帰りを出迎えた。

 

 

「ああ、気になる事があった、アルティミシアの話だ」

 

「アルティミシア……もう、終わったんじゃ……ないの?」

 

予想もしない名前だったのだろう。

不安そうに見つめてくるリノアを安心させるために笑いかける。

 

 

「大丈夫、もうそれは一旦終わった事だ。だがクレイズと一緒にその元魔女がガーデンに居るらしい」

 

「そういえば理由はよくわからないけど、アルティミシアを助けたんだっけ。じゃあ今朝見たあの女の人がアルティミシア?」

 

「……らしいな。本人から聞いたが、理由は……好きになったからと言っていた。

それも眉唾物だと思っていたが、どうやら今朝のやり取りを見る限り本当の事みたいだ」

 

腕を組み不思議そうに首を傾げるリノアが愛おしい。

 

 

「でもなんでアルティミシアはガーデンに来たんだろう? 魔女時代迷惑かけてごめんなさいって謝りたい……とか?」

 

「さぁな、今朝の雰囲気を見るとそういう感じでも無かったが……今度あの男に会った時にでも聞いてみるか」

 

なんだかいきなり考えなくてはいけない事が増えた気がする。

二人の時間に割り込まれてくる懸念事項が鬱陶しい。

 

学園長が気を効かせてくれていた意味は有ったのかもしれない。

 





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