【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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37話 リノア・ハーティリー②

 

たまたまガーデンで出会った知り合いと一緒にお昼を食べながら、私は言った。

 

「ねぇクレイズ、今の私、魔女になっちゃったんだ」

 

それは正直勇気のいる告白だったが、彼は何の気無しに頷いた。

 

「うん、魔女ってどんな事出来るの?」

「え? それだけ?」

 

頷きの一言で情報を飲み込んだらしい彼は、実は大物なのかもしれない。

 

「あ、あの時はリノアを置いて逃げたみたいになって、その……申し訳ありませんでした」

 

クレイズは何か謝罪を催促されたと勘違いしたらしい。

確かにそんな事もあった。

まだ1年半経たないかどうかぐらいな出来事なのに、あれが遠い過去の出来事に思える。

 

あの頃と比べて私の周りの環境は一変してしまった。

森のフクロウに入った時もそうだったのに、それよりも激しい変化が起きるとは思っても見なかった。

 

 

「それはもう良いから許してあげる。今はその話じゃなくて……私が魔女な事は納得できたの?」

 

「実は……魔女になった知り合いが居るんだ……。正直それに比べれば全然納得できるよ」

 

それってアルティミシアから力を受け継いだっていうカード狂いの人だよね?

なんだろう、クレイズと再会してから驚かされてばっかりだ。

もう少し私の変化に驚いてくれても良い気がする。

 

魔女の魔法は基本的に、今まで使ってきた擬似魔法と出来る事に違いは無い。

威力や規模が大きくなるというだけだ。

難しい事はわからないから、私がまだ力の使い方を理解してないだけかもしれない。

それに理解しても、洗脳や壁を通り抜ける魔法なんて使う必要も無いし……。

 

そう伝えると少し残念がっていた。

そんないつも通りのクレイズは、魔女というものに忌避感が無いみたいだった。

 

「その……怖かったりしない?」

 

「うーん、まあリノアは魔女じゃなくても凄かったから」

 

「あの頃から超越者だったよね」と笑いながら彼は言うけど……それってどういう意味?

全く失礼してしまう。

でも、知り合いを一人無くさなかったのは嬉しい事だった。

 

 

「そういえば……アルティミシアと付き合ってるってほんと?」

 

「あー……ほんと、と言えるのかなぁ……。私は好きなつもりだけど、向こうがどう思ってるのか分からないし、そこら辺曖昧になっちゃってるかも……。今は騎士見習いと元魔女って感じ」

 

しかし、付き合っているのが本当だというのは驚きだ。

私を操り、途方もない怒りに支配されていたあの魔女が、これと付き合っているというのは想像できない。

クレイズのしっかりしてるのか頼りないのかわからない所は変わらないみたいだ。

 

 

「そういう時は強引に俺が守ってやる! って言うぐらいじゃないとダメだよ」

 

「ふーん、リノアはそう言われて好きになったんだ?」

 

「うん」

 

実際は少し違うが似たようなものだ。

頼りになる言葉というのは、いざ窮地に陥った時に言われてみると、思いの外効果的面だったのだ。

クレイズももう少し頼りになる姿を見せれば良い男になると思う。

 

 

「実はもう似たような事言ってみたんだよねぇ、でもしもべなら当たり前だろって言われちゃった」

 

「それって多分信頼してくれてるんじゃない?」

 

「それはわかるんだけど、まだまだしもべと騎士との間にある壁を越えられてないみたいなんだ」

 

比喩表現なのか実際に騎士になりたいのかよくわからないが、二人の間には独自の線引きが存在しているようだった。

 

 

「うーん、もうそこまで信頼されてるのに騎士として頼りないと思われるなら……足りないのは、純粋な強さ?」

 

クレイズは結構戦い慣れていた筈だ。

今の私達から見て彼の実力がどれほどの物かはわからない。

しかしサイファーとやり合えるのは、忘れられないような数々の戦いを経験した私から見ても、相当な物だと思う。

やはり普段の行いにそれを感じさせない事が問題な気がする……。

 

 

「女性から出てくる発想じゃないよリノア……」

 

「あ、それ男女差別!」

 

「違うよ、魔女差別さ、魔女は差別されるものだからね」

 

上手い事言ってやったみたいな顔が腹立つ。

口の端にケチャップつけたまま言ってもカッコつかないよ。

 

 

「でもさ、魔女の立場から言わせてもらうと実際、魔女だった人が昔の自分より弱い人に騎士として守ってあげるって言われても……なーんかピンと来ないんじゃない?」

 

「んーなるほどねぇ、一理あるかもしれない。そっかぁ、魔女を倒すぐらい強くなきゃ駄目かぁ……」

 

うんうん唸りながら本気で考え出した彼は魔女より強くなる気らしい……。

もしかしてこのままだと私、戦ってほしいとか言われちゃう?

 

しかしそんな日が来る事は無く、いつも通りガーデンの日常は過ぎていった。

 

 

 

今日は私にとって大事な一日だった。

ガルバディアの大統領という立場になった父が、ガルバディアガーデンに乗り込む前にこのガーデンに来る。

どうやらラグナさんに挨拶をする為らしい。

どちらが挨拶に行かなければならない立場なのかで、両国の力関係は一目瞭然だった。

 

シドさんが教えてくれたその情報は彼の気遣いだったのだろう。

しかし自分にとっては複雑な話。

 

父親と向き合わなきゃいけない。

それは親との関係をどうすればいいのか悩んでいるスコールだけじゃなく、私も同じだ。

意を決してアイツが待つ部屋に入る。

 

 

「久しぶり……だね」

 

「ああ……そうだな……」

 

気まずい空気だ。

喋りたい事もなく、言葉の数さえ極力少なくしたいという家での態度が、自然とこういう状態に形成されていった。

私が今までで培ってきた親子間のわだかまりが、このやり取りに全て表れていた。

しかし、今日はそれを壊して再び話をする為にやってきたのだ。

 

 

「お父さん……私ね、今お付き合いしてる人が居るの」

 

私が「あれ」とか「アイツ」じゃなくて、「お父さん」と呼ぶなんて何年ぶりだろう。

父はまずそれに驚いたという表情で目を見開く。

真正面から顔を見たのは随分と久しぶりだった。……随分と皺が増えた気がする。

 

 

「お前の方から話があるなんて随分久しぶりだ……それで、まだ続きがあるんだろう」

 

後ろで手を組みながら落ち着きなく揺れる私は、クレイズを頼りないと説教できるほど出来た人間じゃないかもしれない。

こんな時スコールに側に居て欲しい。

でも自分の力でやるべき事だと思ったのは間違いじゃない筈だ。

 

 

「今……私と付き合ってる彼のお義父さんがエスタ大統領で、多分そこにお嫁さんとして籍を入れる事になると思うの」

 

「そうか……結婚か……」

 

驚いた様子は無い、どうやら既に私がスコールと付き合っているという情報は手に入れているらしい。

しみじみとした雰囲気で私の話を聞く父の顔はなんだか寂しそうだった。

思えば親不孝な娘だったかもしれないと反省する。

 

 

「お父さんのお仕事ずっと嫌いだった、でも多分政治って綺麗事だけじゃ、どうにもならないんだよね……?

頭ごなしに誰かを否定するのは良くないって小さい頃教わってた筈なのに、忘れてたの……ごめんなさい……」

 

私の言葉を黙って聞いていたガルバディアの現大統領が口を開く。

 

 

「…………リノア、確かに私は酷い父親だったかもしれない。

事実、お前の怒りに言い返せた事は無かった……。

それでも道を変えられなかったのは、私がリノアに強いた負担だ。

ずっと頭の中で考えていた……謝らなければいけないのはこちらの方だ。

親として胸を張れない事をしてきたと思う。

許して欲しいとまでは望まない、それでも謝らせてくれ……。

今まで辛い思いをさせてきて本当にすまなかった……!」

 

頭を下げる父の姿を初めて見た。

今まで溜め込んだであろう思いの丈が爆発する、その言葉と行動は紛れもない父の本心だった。

私は頭を上げて欲しいと促して続きを話した。

 

 

「もう良いよ……。そうじゃないの……。

私、実際にエスタを見て回ったけど、とてもガルバディアの軍事力じゃ敵わないような国だったの……。

だから……お父さん。

デリング大統領の時みたいに、今の内から私にも媚を売っておいた方がいいと思う」

 

「……ん?」

 

「賄賂として欲しいものがあるんだけど……。ティンバー、くれるよね……?」

 

何を言われているのか理解したらしい父の顔は、血の気が引いて青ざめていく。

 

武力と権力をどう使うか、私はそれを知らない内に父から教わってたのだ。

それに、ガルバディアを率いるというのは魔女の役目としてピッタリ……な筈だ。

 

 

「これからは前みたいに家族(ファミリー)で“仲良く”したいです。今まで辛く当たってごめんね」

 

同盟相手と仲良くするのは政治の世界では基本中の基本だった。

それぐらい私にもわかるのだ。

 





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