【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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40話 シュミ族の村②

 

シュミ族の村。

わざわざここに寄る事を提案したのは私とラグナである。

学園祭という名の大掛かりな国際イベントの為に、シュミ族の職人達の力を借りてみるのはどうだと意見した。

シュミ族の人達はあまり騒がしくされたくはないだろう。

でもたまにはこういうのも良いじゃないかと、私とラグナの意見は一致した。

 

一応、少し前までガーデンを運営していたのはノーグというシュミ族の者だ。

人格に少々問題があったとはいえ、資本金と運営という重要な部分では世界平和に貢献している。

そういう訳で、彼が仲間はずれになるのは少し可哀想だなと思ってしまう私の個人的な同情心もあった。

村に行く事でノーグのその後の手がかりも掴めるかも知れない。

 

 

取り継ぎをしに行くのは言い出しっぺの私とラグナ、そしてガーデン代表兼、護衛にスコールだ。

全員がシュミ族との交流経験があるので適任だった。

元々親子だけでよかったのだが、二人の交流を見るついでにシュミ族にお礼も言いたかったし、自らの長期滞在経験をアピールしてシド学園長にねじ込んで貰った。

 

ガーデンの校内放送で呼び出されるスコール。

SeeDの戦いが終わっても頼りにされる事には変わりないらしく、最近たびたびシド学園長からスコールくん呼び出しの校内放送が流れている。

結局呼んだら来てくれる彼は面倒見が良いのだろう。

ラグナは息子が学園長に呼び出されまくっている問題児なんじゃないかと心配していた。

例え問題があったとしても、多分ラグナよりは問題児じゃないから安心して欲しい。

 

 

そんな訳で抜擢されたこの3名のパーティメンバー間の空気は、中々に気まずい物となる。

 

スコールとラグナ、どうやら彼等はまだ互いが親子という明確な意思表示を行なっていないらしいのだ。

 

公然の秘密であり、当然スコールも父親がラグナだという事には気づいている。

しかしラグナがヘタレて言い出せずにいるので、なあなあの関係に収まってしまっているようだった。

 

エレベーターに乗り込み、中に設置された椅子にそれぞれ座った所で、ラグナが何やら口を開き出した。

このエレベーターは非常に長いのだが、その間の沈黙に耐えかねた訳ではなく、ただお喋りがしたくなっただけのようだ。

この場合のお喋りとは当然、ラグナが一人でマシンガンのように一方的に話す事を言う。

私はこの二人のやりとりが気になるし、極力見ている方が面白いと判断して黙っている事にした。

まさにキロスと同じ気分だった。

 

 

「そういえばよぉ〜お前の彼女のリノアちゃん、可愛いよなーって思ってたんだけどジュリアの娘でびっくりしたぜ。

歌手のジュリア、知ってるか? 俺昔大好きで惚れてたんだよなぁ〜。

やっぱ親子で女の好みって似るんだなって思ったわ」

 

いきなりこんな話題で親子関係の証明をぶっ込んできたラグナ。

目の前で息子の彼女を可愛いとか好みのタイプとか言うか普通……。

血縁に関してそこら辺言い出し辛いような、気まずい関係じゃなかったのか?

絶対凌ぎきれないのに、こんな早くから切り札を出すな、まだまだエレベーターが到着するのは先だぞ……。

 

「…………」

 

スコールが眉間に皺を寄せて顔を逸らし、ウォードのように黙りこくっている。

こうしてみると彼が沈黙の裏で何を考えているのか怖い物である。

ウォードとは違い、その心の内はラグナに伝わらないようだった。

 

 

「俺達親子の呼び方どうするか想像つかねーんだよな。

パパとか親父とかダディとか色々あんだろ? 俺のおすすめは父上一択なんだが、キロスとウォードが似合わないって言うからどうしたもんかなって……」

 

「…………」

 

「この前エスタ代表としてガルバディアの大統領に挨拶したんだけどよ、そん時は気づかなかったけど、確かカーウェイってジュリアの旦那だよなって思い出してな……。

んで“それ”がリノアちゃんのパパだって言うから、そりゃもう驚いた。

スコールはこのままだと多分リノアちゃんと結婚すんだろ? 俺は昔好きだったジュリアの旦那の所に改めて挨拶に行くのかと思うと、正直言って今から緊張で足が攣りそうだぜ……」

 

息子の義父になる予定の大統領を“それ”扱いしたラグナはベラベラと一方的に喋る。

とりあえず頭に浮かんだ事を全部出してるだけなのだろう。

本当に不安に思ってるのかは非常に疑問だった。

 

 

「結婚といえばプロポーズの言葉とかシチュエーション考えたか?

俺はウィンヒルの丘で……星空満点の夜空の下、男らしくプロポーズしてさぁ……。

モンスターが来ないようにクレイズとキロスに周り一帯を害虫駆除してもらってだな……」

 

「…………」

 

よくもまあ相槌も打たない相手にここまで喋れるものである。

あと私は原作知識とエルオーネから見せて貰ったお陰で知っているが、感動的ではあるけど男らしくは無かった。

一回指輪渡すのが恥ずかしくなってやめようとしてたのを、察したレインに引き止められてようやくプロポーズしていた筈だ。

 

 

「結婚式って多分スピーチとかするって事だろ、俺そういう文章考えるの苦手なんだよな〜。

何書けばいいんだ? 『わたくし、ジュリアさんの大ファンでして、そんな自分の息子とジュリアの娘さんが結ばれたのは、なんだか世代を超えて自分がジュリアと結ばれたみたいで感激であります。結婚おめでとう!』とかか……?」

 

披露宴でそんな文章読んだらカーウェイ元大佐とリノアは気まずい思いをするだろう。

会場もダイヤモンドダストで冷え冷えになるに違いない。

 

それにしても何か違和感がある……。

よく喋るのは何時もの事だが、こいつこんなにベラベラと自分の恋愛に関して話すような奴だったか……?

そこに関しては結構シャイだったはず。

天然でしょうもない事を言うにしても、もう少し下品さは少なかった気がするが。

 

 

(…………ああ、そうか)

 

ラグナは緊張してるんだ。

良く見たら片脚を抑えながら座っている。それはこの男の緊張がピークに達した時に出る合図だった。

産まれた時から17年間ずっと会う暇が無く、捨てたみたいになっていた実の息子とどう接して良いかわからないらしい。

そんなの、私にもわからないのでこれに関して責める事はできない。

 

 

「はぁ……先の事は俺が考えてやるから、アンタは目の前の事だけ考えておけばいい」

 

それを見かねたスコールが根負けした。

うるさい男を落ち着かせる為に、リーダーシップを遺憾なく発揮する。

経験上このまま放って置くと確実に一人で余計な事を思いつき、それを実行に移すのがラグナなのでこの選択は正解だ。

そして息子からの呼び名は『アンタ』で決定したみたいだった。

 

「頼りになるぜ!」

 

喜ぶこいつは頼りにならない父親だが、まぁ悪い奴では無いのだ。

こうして複雑ながらも独自の親子関係が形成された。

それは親子というよりは少し微妙な仲のパーティメンバーという扱いだったが、何も進展しないよりは良い筈だ。

 

 

 

 

村に通じるエレベーターが開き、地下深くの目的地にたどり着いた私達を早速ムンバが出迎えてくれる。

オレンジ色の小型獣人は二人に駆け寄り「ラグナ! ラグナ!」と再会を喜んでいた。

 

 

「もしかして俺はラグナと間違われていたのか?……不服だ」

 

スコールが不愉快そうに言う。

恐らく血縁だからその匂いとかDNA情報的なのを獣の嗅覚で読み取られて、似た存在に思われているだけだろうとは思う……。

それが不愉快なんだと言われたなら擁護しようも無いが。

 

しかし辛辣だ。

声に出さず心の中で思っていた方がいい事だってあるのだぞ青年。

 

「普通そういうのを本人の前で言葉に出すかぁ……?」

 

ラグナが片手で後頭部を掻きむしりながら、能天気に参ったなという表情をした。

どうやら滞りなく親子と言える関係性になるまでは、もう少し時間がかかりそうだった。

 

 

 

長老の屋敷に案内された私とスコールは驚愕の光景を見た。

 

 

「あ、どうもどうも、長老お久しぶりです。その節は大変お世話になりました。

あれから色々ありまして……。今はエスタの大統領なんかをやらせてもらってます。

お陰様で大出世で感謝の気持ちでいっぱいですよ」

 

つまらない物ですが良ければこれ食べてください。

そう言って持ってきた茶菓子を渡すラグナ。

 

嘘だろ……?

緩い雰囲気が抜けきれてないとはいえ、あのラグナが比較的まともに大人の挨拶をしている……!

てっきり、「よう、久しぶり! また会えてうれしーぜ!」みたいな、元気ハツラツ少年のような挨拶になると思っていた。

一応大統領の仕事を普段やってはいるんだなと、少し見直す。

 

 

「堅苦しい挨拶は抜きにしてください、いつも通りで構いませんよラグナ殿」

 

「あ、マジ? いやーしっかりした喋り方疲れんだよな、そう言って貰えると助かるぜ」

 

まあ、長くは持たないのはわかっていた。

それにしても、さっきのはしっかりした喋り方……か?

ご近所付き合い程度の対応だった気がするが……ラグナにしては頑張った方か。

シュミ族の長老もそれを理解しての提案みたいだった。

相変わらず心に寄り添うのがうまい種族である。

 

この中で1番頼りになるスコールがリーダーとなり、端的に要件をまとめて話してくれる。

長老お付きの小柄なシュミ族がそれを聞いて、長の反応を伺った。

 

 

「一大プロジェクトですねぇ……どうするんです? 長老」

 

「……丁度良い。この話は次期族長を目指す者として、お前が同胞を集めて指揮して見なさい」

 

「ええっ! わたしがしちゃって良いんですか? ……いやーありがたい話ですけどねぇ、ちょっと荷が重いですね。という訳で断らせて頂きます」

 

畏れ多いといった言の葉だが、その真意は『面倒臭い』だろうか。

お付きの殊勝な態度の中にはありありと怠惰な意志が見えた。

 

 

「側で見ておいてあげますから、失敗を気にしなくも良いですよ。これは族長命令です、やりなさい」

 

「えー……ちょうろー、もしかして自分はイベントを楽しむ側になりたいから押し付けてません?」

 

「その気持ちが無いとは言わないですが、あなたが長になる為に経験を積む又と無い機会なのは確かです。長老候補の為を想っての事には違いありません」

 

「もー……そうやって言い返せない正論で煙に撒くのは上手いんだから……。本音なのが厄介す。

へ〜へ〜やるですよ、やりますよ……。どうせ拒否したらムンバに頼んで断れなくするのは分かってますからね」

 

何やら観念した彼は不満を隠そうともせず上司の命令を承諾した。

 

「んじゃ早速人材集めてくるす」

 

そう言って長老のお付きは屋敷から飛び出して行った。

俺もみんなに顔見せてくると、お付きの後を追うラグナ。

残された我々3人はお茶を飲みながらまったりと保護者会を始めた。

早速族長が先程のお付きの態度をフォローする。

 

「先程はああ言ってましたが、本当はとてもやる気になっていると思いますよ。何せこの村で一番ラグナ殿の力になりたいと思っているのは彼ですから」

 

「なるほど、だからあんないい加減な態度だったのか……」

 

スコールが何やら私を見ながら納得している。

 

 

「多分彼はラグナに充てられてああいう雰囲気になったんだろうね、その気持ちはちょっとわかるよ。

私も一緒の村で暮らしてたおかげで、お付きの彼ほどじゃないけどほんの微かに影響受けてるから」

 

まあ殆ど影響なんて無いに等しいけどね。

そう笑いながら言った私の言葉を聞いて、スコールの額の皺が深くなる。

長老と二人で私が話をしていると急に彼は声を上げた。

 

 

「俺はイヤだからな……」

 

 

「なに……? どしたのスコール。なんか怒ってる?」

 

「俺はお前達と同じようになるのはごめんだ……!」

 

そう言って突然立ち上がり、家から出て行くスコール。

普段からまともな彼にしては理解できない突拍子も無い行動。

戸惑いつつも私は長老に失礼を謝罪した。

 

 

「どうやら機嫌が悪かったみたいで……すみません。

彼はラグナの息子なんですが、ここに来るまで殆ど会話もした事がない複雑な家庭環境でして……。

そのせいでストレスが溜まっちゃったのかも知れません。

基本的にはとても良い子なんで、放っておいても問題を起こしたりはしないのでご安心ください……」

 

「いえいえ、彼は彼なりの悩みがあるみたいですね。少しそっとしておきましょうか」

 

私は世間話ついでに、昔フェニックスの羽に助けられた事の御礼を言って、気になっていた話を聞く。

 

 

「所で長老は、バラムガーデンの経営者をしていたノーグというシュミ族をご存じですか?

実は、個人的にですが……今回の学園祭に運営として関わるとは言わないまでも、楽しむ為に彼も参加してくれたら良いなと思いまして」

 

「その者の事なら知っております。今は村の奥でひっそりと隠れて暮らしています……」

 

何やら深刻な表情の長老は続けた。

 

「彼は一族の中で異端であり、恥ずべき精神の持ち主でした。

己の欲の為にしか動かない拝金主義がその身を滅ぼす事になったのでしょう」

 

故郷の村の中にも居場所が無いノーグ。

烏滸がましい考えだが、なんだかその境遇が私には共感してあげられる様な気がした。

 

 

「我々の中にも外の世界を旅する者がおりまして……。

その者達がガーデンで見つけた時には、既にノーグは変身を終えた後でした。

変化したその姿はあまりにも醜く、出会う者に金銭をせびりながら見苦しい生活をしていたので、人前に出す事をシュミ族の恥と考えた『旅する者』が村に連れ帰って来たのです」

 

長老はあまり気乗りがしないであろう渋い顔付きのまま溜息を吐く。

 

 

「見るに堪えない容姿となってしまいましたが……。ノーグと呼ばれていた者に一目会って行かれますか……?」

 

私は頷いた。

FF8では知る事のできないノーグのその後がどうなったのか、純粋に野次馬としての興味もあるのだ。

 

 

 

ムンバに案内されたそのドーム状の家は、壁際にへばりつく蜘蛛の繭か何かのように、村の隅の方にひっそりと存在していた。

周囲は雑草が生い茂り庭の手入れがなされていない。

普段から誰も近づいていないのがありありと理解できてしまう。

おそらく本人もあまり外出していないだろう事が伺えた。

 

扉をノックするとムンバが恐れて私の後ろに隠れる。

出てこない。

もう一度扉を叩くと、ようやく中から玄関に向かってくる足音が聞こえてきた。

 

面倒臭そうに扉を開けた背の低いそれは、全身白い毛むくじゃらで悪魔を連想させる小さなコウモリの羽を生やしていた。

媚びる様な卑しい目をして、二足歩行のぬいぐるみの様な獣が鳴き声を発する。

 

 

「クポ?」

 

私はゲームのちしきとエルオーネが持っていたレアカードから、それが『コモーグリ』と呼ばれる生き物である事を知っていた。

 

 

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