【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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41話 バラムガーデン⑥

 

ガーデンがトラビア大陸からフィッシャーマンズ・ホライズンへと向かう最中、すっかり寒い地域から抜けて、暖かい日差しに包まれていた今日この頃。

ププルンシリーズという本を読んでみたいと思い、図書館へ行くと知り合いが居た。

 

 

「クレイズ、図書館に来るなんて珍しいね」

「あ、エルオーネ、ちょっと読んでみたい本があってね」

 

手に持っている本を見せる。

さよならププルン、それは妖精と犬の出会いと絆を描いた感動物語。

表紙には小さな妖精が犬と一緒にいる暖かいイラストが書いてあった。

 

「感動する名作らしい」「じゃあ次は私が読みたい」そんな世間話をして受付に行き、本を借りる。

返却期限は守ってくださいね、と受付をしていた三つ編みがトレードマークの女子生徒に念を押された。

 

これがゼルの彼女……。純粋で良い人そうだ。

キチッとした遊びの無い三つ編みでも、可愛さを損なっていない。

この図書委員ちゃんは顔の可愛さを除いても、おそらく真面目で良い人だろう。

なんだか真っ当な感性でまじめに生きている人を目の前にすると、自分の悪い部分が浮き彫りになり少し凹む。

相変わらずルッキズム全開なのは、この世界に産まれてからの私の悪い癖だった。

 

同じく本を借りたエルオーネが思い出したように言った。

 

 

「そういえば……アルティミシアさんと2人でお話ししてみたいんだけど、どうかな?」

 

ミシアちゃんは現在カード修行中である。

どうやら以前カードでエルオーネと対戦した時に、ショックの大きい負け方をしたらしい。

大事なカードを取られて、それを取り返す為に私とやったり1人回しで試行錯誤したりと努力していた。

 

私と一緒だったら多分人嫌いな彼女も会話をしてくれるだろうが、それはエルオーネのNGに引っかかってしまった。

曰く「女同士の話だからごめんね」との事。

何でも言う事を聞いてくれそうな雰囲気のエルオーネから拒絶されるのは、なんだかショックが大きい。

 

 

「そうそう、クレイズはラグナ様FCっていうのがあるって知ってる?」

 

「知ってる……かもしれない。セルフィがやってる学園内サイトのホームページの事だったらわかるけど……」

 

「そういうのもあるんだ。私は最近ラグナおじさんのファンクラブが本人公認で発足したって聞いたの」

 

それが最近バラムガーデン内で広まってきている、らしい。

ラグナは無駄に面白い奴だし、良いルックスと嫌味の無い性格は人を惹きつけるものがある。

バラムガーデン内で普段何してるのか詳しく知らないが、そういうクラブが新しく出来る事もあるのか。

しかし部外者の癖に変な物を公認して良いのだろうか?

まあ……権力者だからガーデン内の教師達はヤマザキ先生以外逆らえ無さそうだ。

 

 

「ラグナのファンクラブねぇ……多分会員No.001はキロスだろうなぁ……」

 

「あ、やっぱりクレイズもそう思う? 私もキロさんなら入ってそうだなって思った!」

 

私はエスタの関係者としてついてきたが、別に普段からラグナと一緒に行動している訳じゃない。

嫌ってる訳じゃ無いし、以前感じていた後ろめたさはもう無い。

ただガーデンを彷徨く時以外は人嫌いのアルティミシアと居る事が多いので、必然的に一緒に動くタイミングが合わないのだ。

そうで無い時の自分の自由時間は、ガーデン内部探索に充てられる。

 

みんなで一緒に仲良しこよしでラグナの行動を見るのも悪くない選択だが、キロスに聞けばどのような事があったか詳細に語ってくれるので、他より優先順位を引き下げてしまっていた。

本当に気になる場面があった場合はエルオーネに頼んで後から見せて貰えばいい。

彼女のジャンクションを活用した見逃し配信システムは神だった。

 

 

「会員に情報流してる奴がいるとしたらキロスだろうね、ファンクラブ作ったのがキロスという可能性まである」

 

「ラグナおじさん面白いから、多分会員メンバーが知れる情報も面白いよね。私も入ろっかな」

 

「最近ラグナと会う機会減ったし丁度いいから一緒に入ろうよ、キロスに聞けば入会方法も分かると思う」

 

多分関係してるからとりあえず会って聞いてみようという話になった。

しかし部屋まで戻ってみたが、現在はラグナと補佐二人は出かけているのでここには居ないとエスタの人が教えてくれる。

 

仕方ないのでエルオーネと一緒に校内を歩いて探す事にした。

話しながら一ヶ所ずつゆっくり見て回る、それはまるでデートのようだった……。

 

 

 

 

改札口を抜けた先には青空と海が広がっていた。

人が少ないのは授業中だからだろう。

バラムガーデンを二人占めした気分、まるで自分達だけになってしまった別世界に居るようだ。

カラッとした空気と太陽の光が私達を歓迎する。

 

 

「授業中にサボって遊んでるみたいで背徳感があるね」

 

「クレイズは……もしガーデンの生徒だったら良くサボってそう」

 

「いやー私ほど真面目に授業受ける人間も珍しいよ、今だってできるなら受けてみたいぐらいさ」

 

「そうかなぁ、先生に怒られてる所しか想像できないかも」

 

私の言葉におっとりとした彼女が冗談で反応し、可愛く手を口に当てて笑う。

戦闘に熱を入れあげていた自分と比べて、ゴツゴツしていないお淑やかな手だ。

細い指先に付けられた薄い色のマニキュアがつるんと太陽光を反射した。

青のノースリーブから出た二の腕と肩が艶めかしく映る……。

彼女の汗と混じった上品な花の香水臭が私の鼻腔をくすぐった。

 

 

「手……繋ごう」

 

エルオーネの女性らしさと可愛さに影響されて、とんでもない事を口走ってしまう。

雰囲気に流されて、私は何を言ってるんだろう。

しかしこれはうっかりではあるが紛れもなく本心であり、明確に色気に負けてそうしたいと口に出してしまった言葉だった。

 

「えっ!…………うん、……良いよ」

 

戸惑いを隠せないエルオーネは少し考えてから受け入れた。

 

(了承されてしまった……)

 

すべすべした手を握ると、普段意識していなかった女性らしさをダイレクトに感じて、胸の鼓動が早くなる。

しかし、それすらも二人の親しい空気で中和され落ち着いていき、会話の中で心地よい心音となっていった。

もっぱら話題はラグナ達やスコール達の事だったが……。

まあそれも私達らしいだろう。

 

 

「私、船の上で過ごしてたんだけどね、たまーにおっきな鯨が通るの。

それを見た子供達が騒いで授業にならないから、その時は勉強の時間を中断してた。

ガーデンのみんなも鯨が来たら授業を中断して校庭に集まるのかな」

 

「多分授業を中断して見に行った人は減点されるだろうね」

 

「えー、夢が無い……」

 

「減点されながら何かするというのも、楽しいかもよ?」

 

「ふふ……おばさんに怒られながらモンスター食べてたクレイズが言うと説得力あるね……」

 

怒られながらモンスターを食べてた記憶……そういえばそんな事もあったか。

バイセージという砂と泥で出来たモンスターを食べ、体が石のように動かなくなって母親に治療されたのを思い出す。

あの時は本当に万能薬の存在に感謝したし、ジャンクションで石化対策だけは絶対にしようと決意したものだ。

 

 

海が見たくなったから近い所まで行きたいと言うエルオーネの要望に私は頷く。

手を繋いで学園の外を歩く二人。

もう既にラグナFC会員登録所探しは、こうして一緒に歩く為の名目上のものでしかない。

玄関口まで来て外縁部から流れていく景色を瞳に映す。

カモメの鳴き声、波の音。

ガーデンの周囲を輝きながら回転する美しい金色の円陣が、海の中から透けて見えた。

 

 

何気なく二人の目が合った。

真剣な顔で私の顔を見つめた彼女は言った。

 

 

「昔の事思い出すよね。私……本当は好きだったの」

 

エルオーネからの愛の告白。

意表を突かれて頭の回転が停止した私に、少し間を置いて続けた。

 

「海の事」

 

文脈が一瞬理解できずに腑抜けたような声が出た。

そんな私を見て、してやったりと言うような表情で笑う小悪魔。

エルオーネは見た目に反してお淑やかなだけでは無い。

ウィンヒルに居た頃、ラグナと一緒に色々やんちゃをしていたのは私だけでなく彼女もだったのだ。

靴の中に大量のジャムを入れてラグナを泣かせたJの悲劇は今でも尚、語り継がれている。

 

 

「そんな事だろうと思ったよ……。それでもドキッとさせられたなぁ〜」

 

「ドキッとさせられたのは私もだからお返し」

 

そう言って繋いだ手を持ち上げてニギニギするエルオーネ。

悪戯する気は無かったが、確かに元はと言えば私の方が先だ。

それでも、ごめんというのも違う気がして「そうだね」と気の利かない一言を返すのが精一杯だった。

なんだか汗を掻いて来たので握っていた手を離す。

これ以上掴んでいたら、後先考えず取り返しがつかない事をする。

予感では無い、確定した未来だ。

 

そうして私は校内に戻るまでの時間、まともにエルオーネの顔を見れなくなってしまった。

先程のイタズラは効果的面だったのだ……。

 

 

結局ラグナと出会えず部屋に帰った私は、心ここに在らずといった状況だった。

私はアルティミシアの事が好きな筈だ。

しかしながらエルオーネとのドキドキが今も残っている。

彼女はどうして手を繋ぐのを了承してくれたのか。

浮気のような事をした私を咎めなかったのは何故だ。

もしかして……。

 

なんて、そんな思春期の男子学生みたいな考えが頭から離れないのは、ガーデンという環境に充てられたせいかも知れない。

この心のしこりは裏切りになるのだろうか。

 

(なるよな……)

 

ならない筈がない。

裏切りの騎士。

言葉の響きとは裏腹に、その内情は非常にかっこ悪いのであった。

 

 

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