【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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42話 魔女アルティミシア

 

エルオーネ、私が過去に追い求めたその女は今頃になって目の前に姿を表し、敵として立ちはだかった。

 

私が大切にしていたウルフラマイターのカードをつまらなそうに奪って行ったあの女は、今度は私のしもべを奪っていこうとしていた。

窓から見る外の景色は、仲良く手を繋いで歩く二人を私に見せつける。

 

感じた思いは怒りより焦燥が大きく、心音が直に聞こえる程に心が激しく脈動している。

何故、彼は私をここに連れてきた……? これが罰なのだろうか?

敵地の真っ只中で唯一のしもべを失う……。

いいえ、そんな事は許さない。

 

どうすればいい……。今の私は魔法も力もない……。

様々な考えと焦燥感に苛まれながら寝床に入り朝が来る。

そんな時、頭の中で何かが動いた気がした。

 

瀕死のグリーヴァが長い時間の経過によって脳内で復活を果たしたのだ。

SeeDとの戦いで存在ごと消えて、時の流れの中に溶け込んでいったものと思いこんでいた。

 

(グリーヴァ……。貴方は再び私の味方をしてくれるのですね……)

 

力を手に入れた私は、あの女の所に行く。

殺してしまいたいのだろうか? それともカードで這いつくばる姿を見たいのか。

既に生きる目的が消えたのに力を手にした私は、それで何をする?

己の気持ちが纏まらない中で身体だけは動いていた。

 

そうして部屋の扉をノックした私は能天気な声を聞いた。

 

「はーい今開けるから待ってくださ〜い」

 

緊張感の無い泥棒猫の声が私を苛立たせる。

 

「あ! アルティミシアさん! ずっと2人で会いたいと思ってた! ほら入って入って」

 

この女は二人で話したい事があると言う。

 

(宣戦布告かしら? 受けて立つわ……)

 

これでも私はSeeDと壮絶な殺し合いを経験している。

一般人と比べて戦闘技術は申し分無い筈……。   

魔女では無くなった今、あの頃の力はもう消えたが、G.F.をジャンクションしただけでも目の前の小娘を捻り殺すのには十分だ。

それにグリーヴァは短時間しか顕現できないそこらの木端自立エネルギー体とは訳が違う。

私の操る本物の魔法が生み出した、消えることの無い真なるガーディアン・フォースなのだ。

 

簡単には殺さない。

殺すにしても誰かに見つかっては、すぐにSeeDが駆けつけて私は殺されてしまうだろう……。

それに死ぬ前に跪かせて懺悔でもさせないと、私の気が休まらない。

 

しかし、思いがけない提案がエルオーネから出てくる。

クレイズの人生を一緒に見ないかと誘ってきたのだ。

 

悔しい事に……私はその誘惑に抗えなかった。

 

「それじゃあ始めるね?」

 

そう言われた直後、耳鳴りの様な音が強くなっていく……それは魔女だった頃何度か味わった事のある感覚。

私の意識が過去の人間に飛ばされる合図だった。

 

 

 

意識を送り込まれた先の少年は異常だった。

平凡な村で生まれ育ったクレイズという子供は、平凡とはかけ離れた思考を持って過ごしている。

何やら『FF8』と呼んでいるその知識の源は、未来を垣間見える特別な物のようだった。

 

 

FF8では〜、FF8では〜、これはFF8ではわからなかった、FF8では知り得ない事を知れて嬉しい。

ひたすらにそのような事を考えている奇妙な子供。

思考回路が子供のそれとは思えない程に成熟しているのも不気味だった。

どうやら一度死に、人生が連続しているらしい。

 

(そんな事もあるのね……)

 

日々を過ごしていく中で、現在エスタの大統領をやっているあの間抜け男が村にやってくる。

内向的だった少年の心は彼に影響されて、徐々に外へと目を向け始めた。

この空間は私が既に忘れていた幸せという物なのだろう、そう思わせるような平和な日常が続いていった。

冷めた目で少年の中からそれを見る。

 

そうして彼は『FF8』の事をあまり詳細に考えなくなっていった。

あれほど頭の中で巡っていた大人びた思考能力は形を潜め、子供らしくなっていく。

 

しかしその日々は長くは続かない。

 

幼少期にエルオーネが拐われてから全てが狂い出す。

罪悪感に塗れながら故郷で平穏な毎日を暮らすこの少年は逃避を始め、嘗ての『FF8』に縋るようになっていった。

 

今日何度目かわからないジャンクションが終わり目が覚める。

いつのまにか窓の外は暗闇に包まれていた。

 

 

エルオーネは何やら驚きを隠せないみたいだ。

確かに驚くべき異常を持ち合わせた人間だったので、その反応も当然だろう。

 

今日はこれぐらいにしようと言うこの女狐。

まさか危険を察知して、自分の価値を示すことで生き永らえようとしているのかしら?

事実、目の前で幼馴染の過去に困惑しているこの女は、唯一過去にジャンクションを行える存在なので生かす価値がある。

なんであれ、憎たらしいが既に私の中で殺す選択は消えてしまった。

 

 

エルオーネはクレイズの過去を一緒に見るだけでは無く、私の事も知りたがった。

まるであの不出来なしもべが『FF8』を知りたいが為にするような質問。

うんざりさせられる。

 

それはこの一年で嫌というほど味わってきた感覚だ。同じ事を何故繰り返さなくてはならないのか。

不本意ながら私はバラムガーデンに来てから、このエルオーネと一緒に過ごす時間が増えている。

馴れ合うつもりは無かった、しかし敵意が欠片も無い相手に対してこちらが敵対心を持ってムキになるのは、空回りでしかない。

すると必然的に会話が増えていき、まるでクレイズと同じようなやり取りになってしまう。

 

(厄介……)

 

しかしそんな厄介者に頼まなければ、しもべの過去に接続出来ず、見せてもらえない。

歯痒い思いをしながらも交換条件として質問に答え、仕方なく過去の続きを所望するしかなかった。

 

 

『FF8』に逃避し続けた狂人は、私の影響すらも思い悩み、ついには村を出て開き直った。

そこからの人生も逃避には変わりなかったが、悩む事は減っていった。

 

ナンパ……。

そんな事にかまけられる程には精神が回復したようだ。

鼻の下を伸ばしながらSeeDの悩みを聞くクレイズ。

教員として解雇され悲しむ女の未来を想像して凹む思考が私に流れ込んでくる。

イライラさせられる。

そんな意味の無い配慮よりも、今見ている私を苛立たせないように心配しながら生きろと思ってしまう。

 

出会ってもいない時からそんな要求は無理難題だというのはわかっている。

しかし、この男ならそれが出来るかもしれない知識の下地がある筈だ。

私の騎士になりたいのなら、しもべとなる前から予測して未来の主人の顔色を伺うぐらいはやって然るべきだった。

 

 

その覗いた過去はいつも通りモンスターを狩り、食事をしている何の変哲も無い一日だった。

やたらと私の裸を想像している事以外には……。

 

普段のおかしな考えとはまた別の種類の異常。

男の性欲とはこのような物なのかもしれないが、それにしても異質だった。

 

(まるで猿ね)

 

私が髪を下ろすかどうかのメリットとデメリットを延々と考える愚か者。

真剣に考慮するべき内容とは思えず、全く理解が出来ない。

時たま植物モンスターが頭を過ると、また逃げ込むように私の事を考える。

それは今まで見た中で最も理解不能な過去の一日だった……。

 

 

そうして飛び飛びに過去を見た。

色々旅をしながらカードと狩りを繰り返し、時間圧縮に飲み込まれる。

私の城は未来にあるため、エルオーネのジャンクションでは見る事ができなかったが、過去に当たる私を助けた場面は見る事が可能だった。

 

 

結局この男の大半は私の起こす事柄で、勝手に悩んでいた人生と言っていいだろう。

そしてその悩みを生み出した私を助けた。

クレイズが私を助けたのは魔女の過去や気持ちを知りたいからだと言っていたし、私もそうなのだろうと思っていた。

しかし、覗いた心の内側は違った。

無償の救済。

彼は何も求める気が無く、ただ私の事を助けたいと思っただけだったのだ。

 

 

それを知った時、不思議な感情だった。

充足感とも呼ぶべき感覚が私の心を満たした。

 

既にエルオーネは用済みだ。

しかし、今はもう彼女を殺す気にはならなかった。

共にクレイズの心理状態を知ったこの女は、既に親しさを感じる知人という枠組みに収まっていた。

だからといって私のしもべを渡す気は更々無いが、命は許してやることにする。

それに……定期的な監視にその能力は必要不可欠だ。

 

(せいぜい彼が私へと思う愛情を、指を咥えて見ていなさい)

 

 

後日ジャンクションで騎士の裏切りの内心を知った私は怒りが煮えたぎり、エルオーネは赤面しながら気まずい表情をする事になる。

そんな未来をこの時勝ち誇っていた私は知り得なかったのだ。

 

 

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