【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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44話 スコール・レオンハート②

 

「一生のお願いだからラグナロクを貸してくれ! あと、ついでにスコールに来て欲しいんだ! 頼むよ……」

 

こいつは一体何を考えているのか検討もつかない。

縋り付いてこようとするその両手を掴んで阻止する。

恥も外聞も捨てた情けない大人。

よりによって、俺はこんな人間に多大な恩がある。

 

 

「私について来たくなーる、ついて来たくなーる……ダメ?」

 

イライラする。

リノアを馬鹿にするようなこいつの態度と、願いを断りきれない自分に、だ。

 

(そのやりとり、何処で知ったんだ……)

 

クレイズ・オクトー。この男には謎が多い。

知る筈の無い知識を知るこの男は、どうやら俺とリノアの出会いすら知っているようだった。

 

 

「俺はSeeDだ、無料で請け負う気は無い」

 

理由をつけて断ろうとすると、何かを思いついたような表情でクレイズは言った。

 

「…………あっ! あの時貸したカード、そういえば返して貰ってないよね……?」

 

貸した……?

リノアのカード、それは俺がクレイズから受けた恩の大部分であり、命を救われた思い出の品だった。

あの時譲渡された物だと思っていたが……そうか、こいつは貸したつもりだったのか……。

いや、やはりおかしい。

確かにあの時あげるとは言われなかった、しかし貸すとも言われていない筈だ。

G.F.で記憶が混濁していない限り間違い無い。

徹夜で一緒にカードをした時もそんな話は出てくる気配すら無かった。

 

「あれは渡す事が前提の行動だった筈だ。見え透いた嘘だな、そうやって要求を呑ませるつもりか?」

 

「………………」

 

俺の予測は当たったらしい。目の前の男は図星で言い返せないまま黙って俯いてしまった。

 

(子供かこいつは……)

 

リノアがやるならまだしも、成人した男性がやっても可愛くもなんとも無い。

見苦しいだけだからやめてくれ。

 

「はぁ……一度だけだ、そのかわりカードは返さない。それで良いな?」

 

「ありがとう!」

 

嬉しさで飛び跳ねるこの男が俺より6も歳上だとは到底思えなかった。

大人ならもう少し落ち着くのが普通じゃないのか?

……よく考えたらこういう喜怒哀楽の激しい人間には何人か心当たりがある。

セルフィ、ゼル、ラグナ……そして恋人であるリノア。

 

(該当者が多すぎるな……)

 

前にも同じような事を思った記憶が蘇る。

もしかして俺の周りはそんな奴ばっかりなのか……?

 

「そうそう、もう一人メンバーが居てさ、すぐ連れてくるからラグナロクに乗って待っててよ」

 

「……了解」

 

俺は軽い気持ちで口から出したその返事を後悔する事になる……。

 

 

 

F.Hに駐機してあるラグナロクに乗り込む、どうやら操縦は俺がするらしい。

もし飛空艇だけを貸し出していたなら、あいつはどうするつもりだったのだろうか……。

 

これはついて来て正解だったかもしれない。

適当に操縦されて墜落でもされたらたまったものではない。

セルフィがラグナロクを操縦できたのは、普段から乗り物に関する知識を幅広く予習していた趣味人としての下地があったからだ。

それ相応の知識があの男に備わっているとは思えなかった。

 

余計な人間の事を考えていたその時、コックピットへとつながる昇降機が上がってきて、ずかずかと複数の足音が入ってきた。

 

 

「おお! ラグナロクの操縦席すげ〜もんよ! ルナティックパンドラで見た時も実は乗ってみたいと思ってたもんよ!」

 

「喧」

 

もんよもんよとはしゃいでいた雷神の脛が風神によって容赦無く蹴られる。

それはこの二人がバラムガーデンを退学する前に、頻繁に目にしていた懐かしい光景だ。

雷神は……少し老けたな、中身はかわらないようだが濃くなった髭のせいで既に中年の風格が漂って来ている。

風神は、少し髪が伸びたか? 普通に喋れる筈だが今でもそれを変える気は無いらしい。

どちらにせよ、こいつらがいるという事は……。

 

 

「まさか俺がこの飛空艇に乗せられる羽目になるとはな、皮肉だとしたら良い趣味だぜクレイズ」

 

サイファー・アルマシー。

昔から俺に突っかかってくる厄介で面倒な奴、そして魔女に操られガーデンを攻撃したり月の涙を引き起こしリノアを魔女に差し出そうとした男。

よりにもよってクレイズはサイファーと交友関係があったらしい……。

そういえばどちらも森のフクロウの関係者だったなと思い出す。

 

 

「久しぶりだな、スコール……。いや、今は魔女の騎士様と呼ぶべきか?」

 

「…………」

 

サイファー、今どんな気持ちなんだ……?

かける言葉が見当たらない。

 

「おいおいだんまりか? 旧友との再会でそれはあんまりじゃねぇかスコール」

 

「そうだな」

 

「まさかそれだけか?」そう言って肩を震わせるサイファーは、何が面白いのか笑いが堪えきれないみたいだった。

ルナティックパンドラ以降会っていなかったが、煽り気質は昔とあまり変わってないようだ。

 

 

「相変わらずスコール暗いもんよ」

 

「ククク……」

 

「二人とも仲良いね」

 

「良……?」

 

どういう風に世界が見えているのか知らないが、クレイズはこれを仲が良いと捉えたらしい。

風神も困惑している。

ニコニコしながら俺達を見るその能天気さは全く理解不能だった。

ガーデンで出会ってからの短期間の付き合いでわかった事がある。こいつの事は気にしても仕方ないということだ。

ダラダラと喋っていても仕方がない、さっさと出発するとしよう。

 

「目的地は何処だ」

 

「行きたいのは海洋探査人工島って所なんだけど……ここらへん……かな?」

 

指を差されたマップの位置は何もない大海原の端だった。

遠いうえに目的地と言える場所なのかすらわからない。

これは一日で終わるとは思えないな……。

 

 

「そもそもそんな所に行って何がある?」

 

「この間抜けが寄越した手紙によると歯応えのあるモンスターがいるらしい」

 

「めっちゃ強いモンスターが居るけど、まあ俺達イケメンガンブレード三銃士に敵う相手はいないよな!」

 

「ちっ……そのダサい呼び方はやめろ」

 

俺とサイファーが肩を組もうとしてくるクレイズの手を払い除ける。

鬱陶しいノリだ、それほど仲が良くないにも関わらず馴れ馴れしい。

 

 

「せっかくガンブレード使いが三人集まったんだから記念撮影しようよ」

 

クレイズはカメラを雷神に渡して撮影方法を説明している。

 

「やっぱりみんなガンブレード出してポーズ決めて撮るのが一番良いよね。各々が最もかっこいいと思う決めポーズをしよう」

などとのたまう奴の戯言を聞き流し、俺は今後のプランを提案した。

 

「目的地を見つけるまで時間がかかりそうだからまず物資を補給しておく。近場のティンバーに寄ろう」

 

「ちょうど良い、俺も久々に森のフクロウの連中に顔を見せるか」

 

サイファーと喋っている方がマシだと感じる事になるとは思わなかった。

結局、今後の方針を二人で決めている所を、無理矢理仲良し三人組という集まりに偽装されて記念盗撮が行われた。

 

次は風神雷神と撮りたいとはしゃぐクレイズ。

雷神だけがノリノリだった、と見せかけて意外と風神もしっかり参加している。

俺もサイファーも手を貸す気が無いので、クレイズは召喚したG.F.にカメラを任せてシャッターを押してもらい撮影していた。

勝手に機内でG.F.を召喚するな。

 

 

「風神は眼帯似合うよね、それって何処かの高級ブランド品だったり、オーダーメイドだったりするの?」

 

「否、軍事用品、購入」

 

「なるほどお洒落を意識したわけじゃないのか……美形だと眼帯も似合うってのは盲点だったよ、参考までに何処の会社の商品か教えて貰いたいんだけどいいかな」

 

「頷、型録、常時持歩、勧、弐壱壱番型」

 

こいつらは初対面だと聞いた。

人懐っこい雷神は言うに及ばす、少しとっつきにくい雰囲気の風神とも既に仲良くなっている。

よくもまあそんなに話したい話題があるなと感心してしまう。

 

 

「雷神は釣りが上手いんでしょ? バラムの釣り具屋に飾ってあったバラムフィッシュの魚拓、印象に残ってるんだよね」

 

「あれは今まで生きてきた中で一番の獲物だったもんよ、釣れた時は滅茶苦茶嬉しくて泣いちゃったもんよ」

 

「私は釣りが下手だから羨ましいよ」

 

「サイファーより釣りが下手な奴は居ないから安心して良いもんよ!」

 

後ろを見なくても何が起こるかわかる。

雷神、相変わらず蹴られる事を学習しない奴だ。

 

 

 

 

人工島はやはり想像通り、その辺に行けば直ぐに見つかるといった場所では無かった。

スピードをあげたラグナロクで海の上をひたすら移動する事数日。

着陸する場所がないので、何度も陸地と海上を往復してようやく見つける事ができた。

2日目からは実在を疑いだしたサイファーや風神がイライラしていたが、本当に怖いのはその2人ではない。

ラグナロクに入ってきた無線から聞こえるリノアの声。

彼女は2日経っても帰ってこない俺を心配して連絡してきたらしい。

その声を聞いてクレイズが怯える。

 

この男、とりあえず俺を連れ出す為に、リノアには直ぐに終わるからとしか説明していなかったようだ。

リノアが私も行くと言っていたのを、頑なに男同士の友情だからと謎の理屈で拒否していたのだが、

それはクレイズなりに、サイファーと会わせると気まずくなることに配慮した結果なようだ。

 

俺とサイファーが気まずくなるとは思わないのか? と聞くと、

「なるかもしれないけどイケメンガンブレード三銃士を揃えるロ〜〜〜マンティックな絵面が見たい」

とかなんとか理解する気にもなれない戯言をベラベラと語っていた。

 

今も本当はラグナを呼んで四銃士にしたかったとサイファー達に語っている。

何故かそれにはサイファーが乗り気で、次は絶対連れて来いと念押ししていた。

 

こいつとラグナとサイファーが一緒に居る空間なんて想像もしたくない。

 

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