【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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45話 サイファー・アルマシー

 

俺達は人工的に組み上げられた海洋探索島の中心地にある、ドーム型の施設に入る。

ここからは任せてくれ、そう言い切るクレイズはこの島に詳しいらしい。

元々はこいつの提案でここまで来たんだ、俺にしては珍しく少し任せてみる気でいた。

 

クレイズがみんなは入り口付近で待っていて欲しいと言う。

風神雷神にカメラを渡して撮影を頼んでいる目の前の男が言うには、戦いになったらその時は俺とスコールの出番のようだ。

 

 

「おいおい、ホームビデオが撮りたいならガーデンでやったらどうだ?」

 

「いやサイファー、ここはマジで凄いから記録に残さないのは勿体無い。絶対に損はさせないから期待しててくれ!」

 

緊張が隠しきれない真剣な表情、こいつのこんな顔は見た事が無かった。

不覚にもワクワクさせてくれる。

期待感が高まる中、スコールの野郎が冷めた表情で言った。

 

「さっさと用事は済ませたい、できれば早くしてくれ」

 

この色ボケ兄ちゃんは相変わらず、な〜〜〜んにもロマンって物をわかってねぇみたいだな。

時が経とうが環境が変わろうがそこに変化は無いらしい。

 

 

意気揚々と斥候役を買って出たクレイズが、「ここからは私に任せて入り口付近で待っててくれ」と言って施設の中に入って行く。

薄暗いドームの中は植物の蔦で覆われ、施設の中心には得体の知れない青白い輝きを脈動させている巨大なガラス菅があった。

そこに向かって何やら一歩づつ立ち止まり、意味がわからないぐらい慎重に進んでいるクレイズ。

謎の施設よりその行動を見て俺は疑問を口にした。

 

「スコール、あれは何だ」

 

「俺に聞かれてわかる訳無いだろ……」

 

「クレイズよくあんな薄気味悪い物に近づく気になれるもんよ」

 

「撮影、開始」

 

クレイズが無駄に長い時間をかけながら光輝くそれに到達する……と同時に、得体の知れない声が響き渡った。

 

『我との戦いを望むか……試させてもらおう』

 

戦い……やはりモンスターの類い。

やけにはっきりとした意識で喋ってるからG.F.か……?

まあなんでも良い、そろそろ俺の出番って訳だ。

そうして中心の光が強く輝き赤いドラゴンが現れる。

いきなり出てきたが、これがどういう仕組みか検討もつかないし興味も無い。

 

ルブルムドラゴン、珍しいモンスターだ。そしてこいつは俺が己の夢を決めた映画に出てくる敵役だった。

クレイズが言うには映画では野生の本物を撮影に使用したらしい。

なんにせよ出会えたのは運が良い。

 

「来るぞ! 散開しろ!」

 

スコールの指示が出る。

俺はその言葉に従う訳も無く、ドラゴン目がけてとつげきした。

ファイガが俺に向かって放たれるが、発動の直前にクレイズがかけたリフレクが魔法を反射し、竜の体を炎による爆発が襲う。

目の前の竜は己の体が燃えても平気そうにしていた。

 

 

「まあ当然だな」

 

反射で対処されることも想定済みでファイガを牽制に使っているんだろう。

思わず俺は口元が吊り上がる。

無論、引き攣った訳ではなく、歯応えのありそうな強敵と出会えた興奮による笑みだ。

 

俺が指示を無視して突っ込む事は織り込み済みだったのか、スコールが即座に方針を変更して対応する。

普段は頭が固い癖に戦いに関しては柔軟な奴だ。

こいつの判断力と決断力に何度煮湯を飲まされたか。

だがあの頃と違って今は味方だ、悔しいがこれほど手の内を知り一緒に戦いやすい奴も居ない。

 

時間差をつけて交互に切り付ける俺とスコールのリンチに、ルブルムドラゴンは成す術が無い。

竜の繰り出す爪をハイペリオンで弾き受け流す。

こんなのはガーデンにいた時スコール相手に何度もやってきた事だ。

数年のブランクがあっても今更ビビる訳がない。

少し離れて俯瞰で見ていたクレイズは急速に接近して切り付け、離脱を繰り返しては竜の出血を増やしていく。

その行動を俺は嘲った。

 

「全く(こす)い奴だ。男らしさの欠片も無いな」

 

「あれと真正面から打ち合う方がどうかしてるんだって」

 

戦闘の最中に掛け合いをしていると、目敏く隙を見つけたスコールがドラゴンの首に切り込む。

銃声。

アダマンタインで加工された青い刃がその切れ味を遺憾無く発揮して、いともたやすく竜の首が処された。

 

「もう少し遊ばせろよスコール、ちまちま傷をつけてたクレイズの地道な努力が無駄みたいじゃねぇか……ククク」

 

竜の死体が薄まって行く。

先程戦ったルブルムドラゴンは夢かまぼろしか、勝利の証であるモンスターの死体が忽然とその場から消え失せた。

 

 

『愚かなる者よ、何故に“闘い”に身を置く? 』

 

俺達は現象に困惑していると再び正体不明の声に話しかけられる。

「自分が答えたい」と一気に煩くなったクレイズは駄々をこね始めた。

俺は顎をしゃくりあげてやってみろの合図を出し、スコールはそっぽを向く事で関わりたく無いと意思を伝える。

要望通りに任された斥候役が少し間を開けて先程の問いに答えた。

 

 

「………その存在が、意義がわからないから……、闘いに身をおいている……のかもな」

 

『……こしゃくな奴め。心の内とは異なる言辞で私を欺くつもりか』

 

「やべっ……」

 

クレイズが何かを間違ったらしい。再びルブルムドラゴンが光の中から現れて牙を剥いた。

雑魚が何匹来ようが変わらない。

さっさと正体を表せ、どんな敵でも俺達が退治してやる。

誠に癪な話だがスコールと組んでいると負ける気がしない。

おまけにクレイズまで居ると来た、伝説のドラゴンでも神様でもなんでも持ってこいだ。

 

『人間共には過ぎたその力……何故さらなるそれを得んとする』

 

「…………なんかこの世界で生きるなら強くなった方が良いと思って。あとそっちの方がカッコよくてモテそうだし……。彼女に良い所見せたいなって……」

 

『グルル……』

 

またもやルブルムドラゴンが現れ、ガンブレードの錆になる。

そんな事を何度繰り返しただろうか?

最初は何か戦う理由だか力を得る理由だかを聞いていたような気がするが、謎の声は満足いく答えが得られないまま話題が尽きたのか、話す内容が変わってきていた。

既に正体不明の声とクレイズの会話は恋愛話の様相を呈してきている。

クレイズの野郎は、聞こえてくる声の言い回しを徐々に理解できなくなり困っているようだった。

 

『明確な意志を持たず求める事に、己が不義を恥じる気は無いか……迷いは何れ自身を引き裂くだろう。如何とする?』

 

「その……ちょっと言葉が難しくて……。もう少し私めの知性に合わせていただければ幸いです……」

 

赤い竜が毎度の如く姿を現す。何度目か数えることも億劫になった。

 

足を揺すり、肩に担いだハイペリオンでリズムを刻みながら苛立ちを誤魔化す。

俺は待たされるのが嫌いなんだ。

 

「まだか? くだらない質疑応答はそろそろ終わらせろ」

 

「ごめん、いやもうちょっとだから! もうちょっと付き合って!」

 

『グルルル……』

 

嘲るような鳴き声が聞こえる。

 

『我が愚かな貴様の軌跡を特等席で鑑賞してやろう』

 

その言葉と共に何やら戦いの気配が遠ざかっていく気がした。

ふざけるな。

 

 

「ここまで来ておいて話だけで終わりなんて冗談じゃねぇ……さっさと姿を見せろ。メインディッシュは気持ちよく喋ってないでいい加減に襲ってこい、待ちくたびれたんだ」

 

『…………』

 

再びルブルムドラゴン。

即座に俺達は首を刎ねる。最初はあんなにワクワクさせてくれたアトラクションが、今はもう飽き飽きしたルーチンワークでしか無かった。

 

「芸が無い、ガルバディア兵でももっとマシな宴会芸を披露するぞ」

 

『……自ら死を望むか』

 

中央に柱のように聳え立つ巨大なガラス菅が割れ、多数の半透明な四角で構成された円の結界が広がると、俺達三人ごとこの場を飲み込んでそれは顕現した。

 

それは空間に羽ばたき浮かぶ御伽噺の竜。

ルブルムドラゴンのような粗雑な野生動物とは全くの別種。

必要最低限に収められた体積は先程まで戦っていた無駄に大きなドラゴンとは似ても似つかない。

金属のような鈍い銀の光沢に包まれ、まるで鎧と皮膚が一体となったかのような姿。

見た事の無い洗練された存在が、確かな知性を携えて澄んだ瞳で俺を見下していた。

 

 

『我が名はバハムート……。恐れを知らぬ貴様のような人間には驚嘆させられる』

 

その青い眼が俺から逸れてクレイズを見る。

 

 

『魔の者に招かれし哀れな人間よ……。自らの意志を手にして尚、己が定めに流されるか』

 

何を言っているのかわからないが、クレイズを憐れみの目で見るこいつにムカついた。

切りかかった俺のハイペリオンが翼についたナイフの様な鉤爪で弾かれる。

 

しかしそんな事は予想の範囲内だ、むしろこのぐらいで終わっては面白くない。

羽ばたきで身体ごと吹き飛ばされて、地面に着地しながらも敵からは目を離す気は無い。

スコールが吹き飛ばされた俺と交代するかのように跳躍して切りかかった。

抜け目なくオーラを纏っている。

どうやら先程俺が飛び出した一瞬に戦闘補助魔法を準備していたらしい。ムカつくぐらいスムーズな状況判断だ。

 

 

竜が悲鳴の様な鳴き声をあげて飛び上がるが、それをクレイズは見逃さない。

上昇を見越して先読みし、既に頭上に魔法が発動されている。

空から現れたグラビデの黒い球が、押し潰すようにして翼に重力の負荷をかけ、竜の行動を阻害した。

 

バハムートの纏う鎧に傷が連続して刻まれていく。

スコールの振るうライオンハートが高速で幾度となく叩き込まれた。

剥がれ落ちる銀の鱗が粉雪の様に飛び散り、幻想的に舞う。

ルブルムドラゴンの鱗を容易に切断出来るその刃が、皮膚の下まで通りきらないというだけでも驚愕かも知れない。

 

(……無意味だがな)

 

鱗の硬さを瞬時に見切ったスコールは肉を切るのでは無く、鱗を剥がす事を意識してその太刀筋を変化させていた。

 

 

堅牢な防御を剥ぎ取られた竜は堪らず後ろに飛び去り、スロウでこちら側の動きを遅らせようとしてくる。

時間を操る類の魔法を扱えるのは高位の存在である証だ。

しかしスコールが即座にヘイストを掛け直し、その目論みは泡となって散った。

元から竜はスロウには期待していなかったのか、それを囮に溜めていた蒼い炎が喉の奥で集約する。

溜めきれないほどの蒼が放出される準備は既に整っていた。

 

だが、またしても不意打ちでクレイズのグラビデが発動され、竜の口元をピンポイントに歪ませてブレスの邪魔をした。

明後日の方向に吐き出された蒼炎が中央のガラス菅の跡地に着弾し、中心の足場を消し去る程の破壊力を見せつける。

しかし竜は自らの口にもダメージを受けたのか、息も絶え絶えとした様子だ。

 

はぁ……簡単に終わらせすぎだ、これじゃ歯ごたえが無いだろうが。

 

「最後の一撃は俺が決める、お前ら手を出すんじゃねぇぞ!」

 

俺は先程から剣に溜めていた魔力の刃を解放して飛ばす。

緑に輝くそれは三つに増えて、鱗を失った竜の胴体と翼膜を切り裂いた。

あれ程ベラベラと偉そうに喋っていた竜は死に体で地に堕とされ横たわり、即座に敗北を認めた。

 

 

『グゴゴ……恐るるべきは人間共よ……』

 

バハムートの姿は景色に溶けて行き光となった。やたらと喋ると思っていたがやはりG.F.だったか。

光は俺とスコールを素通りして、何故か1番遠い場所にいたクレイズに収まりやがる。

 

「強力な助っ人としてここに呼んだのは私だけどさ、正直言ってちょっと2人が強すぎて引いてる……。

バハムートも容赦なく押せ押せで切り掛かってきた二人を怖がってるよ……」

 

「……悪かったな」

 

「ちっ、情けない言葉で俺を失望させるな」

 

格付けを終えたG.F.はともかく、一度認めた奴にそんな泣き事を言われるのは気に食わない。

テメェも嫌らしい魔法の使い方で補助してただろうが。

そろそろまったりとした余生を過ごそう等と考えていそうなスコールに、腑抜けた態度のクレイズ。

苛立ちを感じる、何となくその理由はわかっていた。

 

こいつら二人が俺には無い物を持っているからだ。

夢、目標。

こいつらは何食わぬ顔でそれを叶え続け、俺は必死に追っていたそれを諦めた。

 

この三人で肩を並べて戦うという非日常に身を置いた事で理解する。

クレイズに呼び出されなければ、今もF.H.で風神雷神と緩やかに過ごそうと考えていただろう。

本当に腑抜けていたのは俺自身だ。

そんな情け無い事実に気づいたからこその苛立ちだった。

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