【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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47話 アルテマウェポン〜ハイン半神討伐戦〜

 

大海のよどみ。

それは人工島の地下に秘匿されている発掘現場である。

機械によって階層を管理されたその施設は専門の知識が無ければ先に進めない、言わば封印だった。

 

 

「あの魚、美味い奴だもんよ! このままだと逃げちゃうもんよ!」

 

水族館のような強化ガラスで周りの海を見渡せる空間。

雷神がそれを見てどうにかして魚を取れないかと悔しそうな声で悶えている。

 

私達はここで、各フロアに通ずる扉を開ける為の燃料を計算しつつ下へと降っていった。

それ相応の教育を受けた4人の頭脳と私の事前知識を持ってすれば、最下層まで辿り着くのは必然だったと言える。

 

 

そこは遺跡のような空間だった。

青緑に光る石と結晶がそこらじゅうで街灯の役目を果たし、本来なら暗闇に覆われている筈の世界でもその空間を見渡せる。

 

まるで海の中にある滅びた都市だ。

いや、これは実際にそうだったのだろう。

大昔に何らかの異変でこの古代都市は滅び、海の底の地底奥深くで眠っていた……。

そんな想像を掻き立てる世界は、思いのほか空間として成り立つ程度には広い足場が存在していた。

 

何故こんな所にモンスターがいるのかはわからない。

ルブルムドラゴンのようなお馴染みとなってしまった上級モンスターから、鉄巨人やベヒーモスといった見覚えのある月から来た者まで。

数は少ないが、地上より何倍も強さの濃度の高いモンスター達が住んでいる。

もしかしたら遠い昔、ここに月の涙が降って来た名残なのかもしれない。

 

 

それらを容易く切り伏せて進む私達もまた、異常な存在なのだ。

まるで傭兵同士が新しく組む時に、肩慣らしとして実力をすり合わせる為の雑魚退治。

彼等と居ると自分がここまでやれるのかと、逆に驚いてしまう始末だ。

思えば今まで、サイファー以外に肩を比べて戦えるような実力の拮抗する人間が居なかった。

 

一人だった事もあり、知らず知らずの内に安全圏を多めに確保する。

危険を極力回避しながら狩りをする中で、本当の自分の実力を理解してなかったのである。

 

 

背中を預けられる相手がいるというのはこうまで違うものか。

ミスを気にしなくていい私は、自由にガンブレードを振るう。

例え複数に囲まれようとも、相応の実力でカバーしてくれる仲間がいる。

 

特に私とスコールとサイファーの戦闘における相性は最高だった。

道中遭遇した幾度かの戦いによって手の内を完璧に理解していると言っても過言では無い。

結局ガンブレードという異質な武器を扱う人間が、最もガンブレードを知り尽くしている。

つまりそれに合った戦術を即興で構築出来るセンスが、他の誰よりも磨かれているのだ。

 

既に私達は『イケメンガンブレード三銃士』では無い。

バハムートの試練を乗り越え、上級職である『最強イケメンガンブレード三銃士』にクラスチェンジしたのである。

 

 

 

 

遺跡を積み上げた様な空間を降りていく。

その機械は最も深い層に設置されていた。

最下層の広間の端にある泉には頑丈な鉄線を束ねてできたワイヤーが張られ、上層階と水の底に繋がっている。

水溜りの底の何かを引き上げようとしている装置は、時が経って表面が錆だらけでも作動出来る程に、しっかりとした作りになっているようだった。

 

 

「多分お目当ての物はこれだ、風神も雷神も撮影するなら離れていたほうが良いと思うよ」

 

「本当にそれらしき物があるんだな…………。まるで予め知っていたみたいだが」

 

スコールの鋭い指摘に「物知りだと言ってくれ」と誤魔化しながら辺りを見回した。

モンスターが周囲に一匹も存在しない……。

最下層だからだろうか、それとも力の塊に怯えて近寄らないのかも知れない。

今更になって恐怖心が湧いてくる。

 

「やっぱりやめない……?」

 

自分でも無いなと思う逃げ腰の提案に当然サイファーがキレた。

 

 

「ちっ……今更怖気付くな。一度お前を認めた事実が馬鹿みたいでガッカリするだろうが……。

なんでもいいからさっさとやるぞ、ビビってる暇があるなら今から武器でも構えてろ!」

 

彼は私に対する叱咤激励と共に、古びた巻き取り装置を作動させた。

 

機械音と共に、上の方で警報装置が鳴る音が薄らと聞こえる。

泉の中に繋がっているロープが徐々に巻き取られて何かを引き上げようとしていた。

 

空間を震わせる微弱な共鳴音が鳴り出す。

周囲の光る石が輝きを増し、嫌が応にでもその場の全員に良くない事が起きる未来を予感させた。

 

 

「サイファー! 何か起こってるもんよ! ヤバそうだから逃げた方が良いもんよ!」

 

「不安! 退却推奨!」

 

離れた場所から撮影していた風神と雷神が異変を感じ取ったのか、大声でこちらに向かって警告してきた。

サイファーがそんな言葉で止まるような奴じゃ無い事は、此処にいる誰よりも彼等が知っている筈だ。

しかしそれでも言いたくなる程の見えない圧が、水の下からゆっくりと迫り上がってくる。

空間が圧迫感に包まれ、冷や汗が垂れた。

海の深い位置にある発掘現場という、周囲の環境以上に感じる寒気。

 

既にスコールとサイファーは覚悟を決めている様だった。

紛れもない生粋の戦闘者だ。

戦いしか手段を知らないまま生きてきた彼等に無様は晒したくないと、自分も覚悟を決めた。

何故なら私も経歴は違えど、同じく戦いに身を置いてきた者だからだ。

 

 

泉の中からゆっくりと引き上げられた得体の知れない紫色の塊は、水を垂らしながらロープに吊られて空中に浮かぶ。

その姿は見た事もない様な太い手足をした巨大な獣と言うべきだろうか。

見る者を威圧する圧倒的な筋肉量。

 

まるで四脚型の戦闘用兵器を生き物で無理矢理再現したかのような異形。

本来獣の頭があるべき位置に首が無く、埋め込まれる様にして身体と一体化した魔獣の顔があり、上部に巨大な人の上半身がついている。

その右手には何の素材でできているのかもわからない透明な大剣が握られていた。

 

カードに描かれていた姿形と一致する肉の塊は動かない。

しかし油断をするという考えは微塵も浮かんで来なかった。

 

私は今のうちに、コマンドアビリティであるドローでこのモンスターに秘められているG.F.を回収する。

予め知識がなければ、その様な行動を起こす気も余裕もなかったであろう。

しかしその行為は予想外の結末を迎える。

 

 

「ドローが弾かれた……!?」

 

魔力不足によるドローの失敗とは明確に違う何か。

理解の及ばない現象に戸惑う。

どうやら常識は通用せず、こちらの思っている通りにはさせてくれないらしい。

 

その時、項垂れるようにして動かなかったアルテマウェポンの上半身が急に仰け反り、己の体を持ち上げているロープを掴んだ。

 

 

「……余計な事をしたからお姫様がお目覚めだ。ほらクレイズ、責任取ってあの肉達磨におはようのキッスでもしてこいよ」

 

生命の危機を感じていた私は、そんなサイファーの軽口に反応する余裕が無い。

今まで切れずに、その役目を保っていた頑強な作業用のワイヤーが容易く片手で引きちぎられる。

それも上半身に存在している人型の握力によって、である。

その腕と比べて何倍もの太さを誇る下の獣の筋肉は一体どれほどの力なのか、想像もできなかった。

 

引き上げられていた巨体が落ちて着水し、広範囲に水が弾けて辺りを濡らす。

再び水中に逆戻りするかと思われたアルテマウェポンは、得体の知れない力で水面に立っていた……。

身体はまだ本調子では無いのか、幾度となくバランスを崩しながらも体制を保とうとしている。

足場が悪い事を嫌がったのか、魔力が広がるようにしてその足元の水が凍り始めた。

 

 

この隙を見逃す者はここには居ない。

人の形をしているから話し合いで解決しよう。そんなF.H.住民の様な気持ちなど微塵も湧いて来なかった。

相手の性格や背景は詳しく知らないが、戦う以外の方法を取る気になれない。

 

一足早く即座に切り掛かったスコールは、既に一通り自らに補助魔法をかけ終えている。

ヘイストとオーラで強化された身体能力上昇の相乗効果により、一瞬で接近したその『ふいうち』は決まると思われた。

アルテマウェポンが手に持った大剣を乱雑に薙ぎ払う。

一見しただけで技術を意識していないと分かる様なただの振り払いが、ライオンハートとぶつかった。

空間ごと武器と空気が弾ける音がして、切り掛かったスコールが跳ね返される。

 

 

私とサイファーは一歩出遅れた事で自分達が命拾いした事実に冷や汗を垂らした……。

 

生半可な武器では、あの透明な大剣を受けただけで壊れてしまうだろう。

貴重な素材とエスタの技術を惜しげもなく注ぎ込んだライオンハートという武器だからこそ、形を保っていられるのだ。

同じ事を感じ取ったのか、スコールが体制を立て直しつつ自らの戦闘方針を叫んだ。

 

「あの剣は俺が引き受ける! 普通の武器では持たない! 絶対に受けて対処しようとするな!」

 

獣の口が息を大きく吸っては吐く事を繰り返している。

深呼吸で体内を動かして、長期間水に浸かり失っていた体温を取り戻そうとしているのだ。

 

 

「俺を殺したくて連れて来たのか?」

 

私に対するサイファーらしくない後ろ向きな文句は、彼が目の前の敵をそれだけ脅威に感じているという気持ちの表れなのだろう。

 

「まさか、実力を信じたからこそ連れて来たんだ」

 

ある種それは言い訳になるのかもしれない。

普通の人相手ならばここに連れて来る行為自体が、その人間を殺すのと同義だからだ。

 

アルテマウェポンの上半身が、剣を持っていない左手を上空に掲げた。

その仕草はまるで、スコールの過去で見た魔女イデアから放たれる冷徹なる一撃。

手が振り下ろされたその瞬間、魔法が顕現する。

 

 

クエイクと名付けられ、時空間操作に分類された地震を操る上位の魔法。

この閉鎖空間が崩れる結果にすら配慮せず、化け物はそれを発動させた。

 

 

擬似魔法が無い時代の、本来人間には扱えない真なる魔法なのだろう。

今までに見た事のあるクエイクとは比べ物にならない範囲で地面に魔力のヒビが走り、隆起させようとする。

私は咄嗟にストップを地面にかけて時間の停止による抵抗を試みた。

 

同じ分類に属する魔法同士での噛み合わせの良さが、交渉を可能とする。

これは賭けでも偶然でも無い。

毎朝の騎士就任の儀の中で、アルティミシアから教わっていた魔法の論理と戦闘における技術だ。

そんな彼女との愛の積み重ねが今の私達を窮地に陥れ、同時に窮地から救っていた。

 

アルテマウェポンは、自らが放った魔法が不発したという結果に、何ら驚きを示さない。

自我が存在していないのか、先程から一言も喋りはしないし、人間らしい感情や動きを見せる事も無かった。

しかしその魔法と剣による圧倒的な制圧力は邪魔だ。

自ずと私達は上半身に狙いを定めた。

 

 

深呼吸を繰り返していた下の獣が口に光を集約させる。

先程まで体温を上昇させる為だと思っていた呼吸は、この光を放つ為の準備でもあったのだ。

 

魔獣の口から吐き出された光の柱と言うべき極大の光線が私を襲う。

魔法でありながら物理的な力の塊。

それはおそらく、オーラと呼ばれる特殊な魔法の一種を束ねた物だった。

生き物の身体では耐えきれない程に溢れ出た気の奔流が、咄嗟に構えた『ぼうぎょ』を食い破ろうとする。

 

しかし、私の『ぼうぎょ』が撃ち破られる事は無かった。

グリーヴァが持っていたショックウェーブパルサーをジャンクションしている事により、埒外の抵抗力があらゆる攻撃に対する無敵の守りとなる。

アルティミシアから送られた御守りは、遺憾無くその恩恵を発揮した。

 

 

私が防いでいる隙を見逃すスコールではない。

切り掛かったスコールをこの場で一番の脅威と見做しているのか、アルテマウェポンは手に持つ透明の大剣でライオンハートの斬撃を幾度となく防いだ。

 

当然もう一人、化け物退治に来た刺客がいる。

 

人の姿をした上半身に、サイファーのハイペリオンが側面から撃ち込まれる。

人間の成れの果ては、せめて体だけは守ろうと左腕を盾にして抵抗したが、無意味だった。

エメラルドグリーンに光るサイファーオリジナルのブラスティングゾーン。

その輝きを纏った刀身は、腕の守りを容易く突破した。

身に纏う鎧に一瞬だけ引っ掛かりを見せるも、トリガーが引かれた刃は人体を強引に食いちぎる。

アルテマウェポンの人の部分を司る上半身が切断されて、ずり落ちた。

 

 

 

瞬間、急激に暴れ出した魔獣の尻尾がサイファーを打ち付けて叩き飛ばした。

 

痛みを感じているのだろう、暴れ回る獣が口からヨダレを垂らしながら咆哮を叫ぶ。

先程のような魔法を使った戦術ではなく、ひたすら獲物に追いすがり、爪を叩きつける様に振るう。

その暴力は、ジャンクションで極限まで強化された人間ですら太刀打ちできない。

攻撃を受けきれず、スコールは叩きつけられながら地面を転がされ吹き飛ばされた。

 

私は襲いかかる魔獣の追撃からスコールを『かばう』。

『ぼうぎょ』アビリティと併用されたそれはアルテマウェポンの猛攻を一時的に凌いだが、同時に身動きも取れなくなった。

獣の前脚が私の持つガンブレードを押さえつけ、力のみで押し潰そうとする。

必死に耐えるしかないが、発動したアビリティが効果を失うまでの死のタイムリミットは目の前まで迫っていた……。

 

 

「任せるもんよ!」

「斬!」

 

風神の投げた円月輪がトルネドの回転を加えられ、獣と化したアルテマウェポンの顔に傷をつける。

 

「秘技! 雷神飛竜昇!」

 

同時に飛び出してきた雷神がカッコつけて技の名前を叫びながら、身の丈ほどもある棍を振り回し、獣の脇腹を突いた。

衝撃音。

堪らず肺の空気を吐き出した大型の魔獣は身悶えして、雷神を太い前脚で薙ぎ払った。

雷神が吹き飛ばされた先は、奇しくもサイファーが飛ばされたのと同じ方角……。

 

 

その時、彼の声が聞こえた。

 

「魔女に操られて狗になりたい訳じゃない……」

 

ボロボロになりながらも、雷神を受け止めて立ち上がるサイファーの姿が見える。

一手受けるだけで致命傷になりかねない圧倒的な暴力に晒され、本来なら剣を振るう事すら困難になっていてもおかしくない状態。

反骨心に溢れた表情でアルテマウェポンを睨みつけた彼は、気力を絞り出すように心の内を吐き捨てた。

 

 

「お前みたいに魔女の力が欲しい訳でもない……」

 

おまけ扱いされるかの様に異常に長い尻尾で攻撃されるが、その一撃はガンブレードによってしっかりと受け流されている。

戦いを直に学び、獣の動きに動体視力が追いついたサイファーは、数年のブランクをものともせずに受けきったのだ。

驚異的な頑強さ、肉体が危機に晒された事で生存本能が研ぎ澄まされ、ゾーンに入った彼の技量が極まる。

負傷した体で騎士の剣を構えて、今まで溜めていた緑色のオーラを解き放った。

 

 

「魔女を守る騎士になりたい、忘れかけてたガキの頃からの俺の夢だ……それは今も変わらねぇ!」

 

サイファーは自身を奮い立たせるために夢を宣言しながら跳躍し、上空から大地目がけて縦と横に魔力の斬撃を飛ばした。

それはモンスターの巨体を貫通して、十字の証が大海のよどみの地盤に浸透する。

ハイペリオンが地面に刻んだその十字架が、アルテマウェポンの運命を決定した瞬間だった。

 

 

「死に損ないの雑魚は散れ!」

 

その言葉は眼前のモンスターだけではなく、彼自身の事も指していたのかもしれない。

地面から巻き上がった火炎は、まるで私がいつしか味わったフェニックスの聖なる炎のようだ。

まさに彼は今この時、転生したのだろう。

ギラギラと火に照らされて輝くサイファーの眼が、アルテマウェポンの死に様を映す。

 

 

みんなが幸せになった世界で、悪役として追いやられた彼は細々と生きていた。

仲の良い友人と過ごす日常に満たされた振りをする毎日。

その裏で夢を諦め死んでいたサイファーの心は、肉体の死を間近に感じた事で熱を宿して生き返ったのだ。

追い詰められた時こそ真に力を発揮する、それが私の友人の真骨頂だった。

 

 

「サイファー……カッコいいもんよ……」

「サイファー……あんたやっぱ最高だよ……」

 

涙を流して感激している風神雷神、こいつらもなかなか頭のおかしい人種だった。

しかし、今の私にはその気持ちが痛いほど良くわかってしまうのだ……。

 

 

 

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