【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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5話 ドール

 

私にはアビリティ【くすりのちしき】ならぬ、ゲームのちしきというアドバンテージがある。

しかしゲームのちしきを持っているからと言っても必ずしもプラスになるとは限らないし、それが良くない方に作用する場面はあった。

 

 

レンガで出来た街並みとクラシカルなファッションに身を包む住民が洒落ている都市、それがドールだ。

その昔、栄華を誇った神聖ドール帝国はかつて大陸の覇権国家だったが、今やガルバディアの軍事力に押されその座を明け渡していた。

 

だが、今でもガルバディアに占領されず小さいながらも独立し、ガルバディア大陸に存在している歴史ある国である。

 

 

故郷から旅立ち数年後、そのドールを拠点にモンスターハンターの真似事をして暮らしていた頃の話だ。

 

 

彼女ができた。

パブで飲んでいた女性から声をかけられ何度か話す内に親しくなり、酔った勢いで自然と関係性ができていた。

 

 

 

私はモンスター狩りやこの世界に関する情報漁りに精を出す日々の合間、彼女とショッピングに出かけたり、おしゃれな店に美味しい物を食べに行ったりした。

 

カードゲームで笑い合い、ルプタンビーチで海水浴を楽しみ、

デリングシティに旅行に行ったり、一緒に娯楽施設に行ったりして、お互いの好きな話をその場その場で語り合った。

 

私がこの世界に産まれてから忘れていたような、なんの変哲もないごく普通の恋人同士がするようなやりとりを積み重ねた。

今まで体験してきたり考えて来た事とは違うFF8の世界の一面を見られて、とても新鮮で楽しい日々。

 

その末に彼女から「貴方に愛される自信がない」と言われた。

 

 

「自信なんて必要無いよ。そんな風に無理をして愛されようとしなくても僕は君を好きだし、何があっても嫌いになんてならない」

 

私は慰めの言葉を彼女に囁き、それでも納得してくれない様子に「何か後ろめたい事や心配事でもあるの?」と言葉の真意を探った。

 

そうしてお互いに話し合った末「上手く言えないけど……永遠に貴方の一番になれない気がするのが辛いの……。自分勝手でごめんなさい……」

そう告げられ私は振られた。

彼女とのデートを蔑ろにした記憶は無いし、自分なりに愛を育んでいたつもりだった。

 

 

 

 

私は彼女の事は好きだったつもりだが、本当に愛していたのだろうか?

彼女から見えていた私はどういう人間だっただろうか?

彼女の生い立ちから現在の考えに至るまでのバックボーンは、どんな歴史があったのだろうか?

 

だろうか……。だろうか……。だろうか……。

憶測でしか語ることのできない私は、愛する人に対する掘り下げが足りなかった。

 

当然可愛い彼女との別れは悲しい気持ちになった。

だが私は同時に、不覚にもこの世界を知れる時間が増えた事にも喜びを感じてしまったのだ……。

 

 

 

彼女との色々な体験が楽しかったのは本当だ、しかし……彼女が隣に居なくても私は心の底からなんの不満も物足りなさも感じず楽しく過ごしていただろう。

恋人と過ごす時間の楽しみは彼女のお陰で知れた物の筈なのに、私の視線は隣に居た恋人では無く目の前の世界に向いていたのだった。

 

 

FF8の世界を詳しく知ろうとするのは、私の生きる目的であり趣味だ。

まだまだ知り足りないぐらいだった。

 

私のFF8の世界をできる限り知りたい気持ちに比べ、恋人に割く熱意のなんと少ない事か。

今の今まで、私自身すらも気づいていなかったこの心の優先順位を、彼女はなんとなく理解してしまった。

その結果、彼女の若さはそれに耐えきれなかったのだ。

 

 

彼女は原作では名前すら登場しない、モブキャラクターとして出ているかどうかすらわからない。

当然そんな女性をゲームのキャラクターとは見る事が出来ず、無意識のうちに『FF8』より下に見ていたのだ。

 

どんな人間でもこのFF8世界の住人の筈なのに……だ。

彼女もFF8の世界を作り出している文化背景の構成要素のひとつだったのだと、今更ながら気付く。

 

恋人をゲームより下に置き、それを反省して出てきた本心が「貴女もゲームの構成要素のひとつでした、見くびっててごめんなさい」だ。

 

 

(こんな人でなしでは振られるのも当然だ、彼女には申し訳ない事をしたな……)

 

そう思いながらも、ゲームをプレイしてるだけでは絶対に知る事ができないFF8の世界の住人である彼女。

そのサイドストーリーを少しだけでも知れたと思うと、楽しさと嬉しさを感じている自分がいた。

 

ただ振られるという人生においてはありきたりな体験だったが、色々学び私自身成長に繋がる体験だったと思う。

そして周りの世界や環境に目もくれない程、リノアに愛を注いでいた終盤のスコールの凄さが少しわかった気がする。

 

このゲーム脳は反省してないどころか益々酷くなっていた。

 

 

 

私は基本的に3歳以降、この世界とFF8の事ばかりを考えてきた。

好きなFF8に関する記憶と情報だけは脳内でどんどん積み上げられていく反面、既にG.F.の副作用で前世の普通の記憶はほとんど無くなってしまっている。

 

今までは幼少期に過ごしたこの世界の記憶を失う代わりに、前世の私個人の記憶が身代わりになってくれている。そうポジティブに思う事にしていた。

 

 

だが、もはや私はただファイナルファンタジー8という作品が好きなだけではないのかもしれない。

前世という私の根幹、それを形成する物がもうFF8しか残っていない……。

『FF8』は既に私のアイデンティティとなっていたのだ。

 

まあ、それがわかったからといって今までとやることは殆ど変わらないモンスター退治の日々が続いていくのだが……。

 

 




いざ投稿してみると序盤、暗い話ばっかでビビるの巻
スローライフどこ行ったんだよ!むしろスローライフ失敗してんじゃねぇか!
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