プロデューサーの娘になってしまった 作:だだ甘鏑木Pすこ
誤字報告、ありがとうございますm(__)m
『こんメムーっ! 皆さんこんばんはー、MEMちゃんねる、たった一人のパーソナリティにして代表、MEMちょでーす♪』
「あ、MEMちょ」
「わ」
クラスで暇してる時は専らネットの動画なんかを見てる。隣のみなみちゃんもご存知の
みなみちゃんにも聴こえるように少しだけ音を出してスマホを横にして。スマホケースにスタンド付いてないとこういう時不便だよね。
そして、この日は奇跡が起きていた。
「じー……」
「おっ……?」
「ひえ……」
「フリルだ……」
「不知火フリル……」
学校始まって以来居なかった生徒が、ひょっこり出てきてたのだ。しかも、今の私の最推し、不知火フリルだっ! それも、何故か私のスマホを凝視してピクリともしない。隣のみなみちゃんも驚いて固まっちゃってるし。
「……あの」
「ゴメン、ちょっと黙って」
「……はい」
凄い
そんなわけで。
私の机の横にかぶりつき、ついでにコンビニのおにぎりをぱくつきつつ、お昼休み中彼女はそうしていた。
「そろそろ授業……」
「あとで続き。見せて」
「……はい」
そう言って自分の机に戻っていく彼女。一応、授業を受けるつもりはあるらしい。
「なんや、スゴいわ……」
「ホントだね」
それが、彼女との
「あ、お兄ちゃん」
「よう、待ったか……友だち?」
待ち合わせに使ってる校内のベンチに来た兄は、怪訝そうな顔つきだ。
「ご無沙汰です、アクアさん」
「ああ、と言ってもそんなに前じゃないだろ」
「そうでしたね〜」
友だちのみなみちゃんと挨拶してるけど、その視線はこちらに、というかその横の彼女に釘付けだった。
「不知火、フリルだよな」
「そうだよ。おんなじクラスだったの」
「入学式からこっちおらんかったんですけど、今日のお昼に来たんです」
答えたのはみなみちゃんである。本人は私のスマホに夢中である。
「……どういう状況?」
「……なんていうか」
「ルビーちゃんが見てた動画を見てるんですよ。もうちょっとで終わるよってお待ち下さいね〜」
的確に説明してくれるみなみちゃん。とてもありがたい。
「……ん。ありがとう。昨日見逃してて、家まで待てなかったから」
「ど、どういたしまして」
そして彼女は立ち上がると傍にいた兄に視線を向けた。
「……どっかで見たことある」
「え?」
しげしげとアクアを見つめるフリルちゃん。こういうの、矯めつ眇めつっていうんだっけ。
「あ、今日あまの」
「!」
「?」
アクアはあんまり知られたくないらしく、私に釘を差している。まあ、クレジットをよく見るとなまえでてるんだけどね。
フリルがちゃんと気付いたのは流石だ。ちなみにみなみちゃんは気づいてない模様。
「あなた、ストーカー役の人でしょ。よかったわ」
「それは、光栄だな。ありがとう」
大真面目に返事をするアクア。クールにキメてるけど、少し緊張してるかな? 有名人だからね〜
「不知火フリル……さんだよな?」
「さん、は要らないよ? 同い年でしょ」
「……それもそうか。すまない」
むぅ……不知火フリルに認知されてる。うらやましい……。未だに自己紹介すらしてないのに。
「あ」
と、こちらを見るフリルちゃん。そしてぺこりと頭を下げる。
「どうもありがとう。昨日、帰れたの遅くて見れなかったから」
「い、いえ。私も観れなかったから……えへへ♪」
そう答えると、うんと頷いていた。
「そういえば、名前聞いてなかった」
「わ、私は星野ルビー」
「あなたは……ミドジャンで見た」
「寿みなみいいます。よろしゅうなぁ」
「……関西人?」
「みなみちゃん、エセ関西弁なんだって」
「……いいキャラしてる」
ぐっと親指を上げるフリルちゃん……え、なにこのコ。少し面白い。
「似てるけど、兄妹?」
「惜しい。双子だ」
「なるほど。これもいいキャラ」
私とアクアを見てそう呟く。
「これは兄の星野
「「えっ?」」
二人の驚く声。あ、そういやみなみちゃんには名前教えてなかった。
「……インパクト充分」
( ´∀`)bグッ!
「こ、個性的なお名前ですね〜」
(^o^;)
「……アクアでいい」
ため息を吐きつつ答える兄。毎度名前をネタにされるのご愁傷さま。私の名前も大概だけど、彼のインパクトのお陰で目立たなくて助かってる。兄よ、感謝しますっ!
その後、フリルちゃんとも友だちになれたけど。もう仕事してる二人に比べて、私は少し肩身が狭い。
「ミヤエもーん、なんとかしてよぉ」
「そうは言ってもねえ……」
今のご時世、アイドルを売り出すのも容易じゃない。開店休業になるのは目に見えてるから根回しとかも必要になるんだろうけど。せめて形だけでも整えたい。
「いっそのこと、ソロでデビューとか」
「やめとけ。お前、自分のカラオケの採点、忘れたのか」
「……」
嫌なことを思い出させる兄を睨みつける。涼しい顔してるのが気にいらないけど、実は本当のことだったりする。
わたし、ダンスはうまいけど(自画自賛)
歌はイマイチ(過大評価)なんだよね〜
「お前はセット売りじゃないと無理だ。少なくとも今のうちは」
「そ、そんなはっきり言わなくても……じゃ、じゃあ探してみるよ」
「歌の上手くて、可愛い子なんて、どこかの事務所の所属に決まってる。陽東で探そうとしても無駄だと思うぞ」
「むう……」
みなみちゃんとか、良さげなんだけどな。可愛いし、胸おっきいし。でも、確かに事務所に所属してる子に頼むのは難しいかもしれない。契約とかもあるし、イメージ戦略とかもあるし。いっそのこと、中学の友だちに声かけてみようかな、なんて考えてるとアクアが何かを思いついたらしい。
「いるじゃないか」
「え、ホント?」
「顔が良くて……歌もうまくて……可愛い子」
その言葉に、思い至る。まさか、コイツ……!
「
すると、彼はすごくげんなりした顔をした。なにゆえ?
「なんでだよ……」
「だって、可愛いし。歌もダンスも上手いって聞いてるし」
「鏑木さんの娘さん? 確かに良さそうではあるけど……」
「いや、あれはダメだ」
きっぱりと反対するアクア。少し頑なな態度だ。
「なんでよぅ?」
「ともかく、そっちじゃない。俺が言いたいのは有馬の方だ」
有馬というと、有馬かなのことか。
……言われてみると、アイドル受けしそうな素材ではある。さすが兄上、目の付け所がいい。
「有馬さんて、今はフリーなの?」
「聞いた限りでは。どうやって陽東に入ったかは疑問だけど」
そういえば
「アプローチしてみても悪くないと思う」
「そうねぇ……ウチも役者がいないわけじゃなし。最悪そっちで活動して貰うことにしてもいいかもね」
「有馬は世間的に再評価され始めてるから早いほうがいいな。明日にでも声をかける」
そう言って、彼は携帯を取り出すとペコペコとメールを打ち始めた。今流行りのスマホじゃなくて、折りたたみ型の古い機種だ。
「お兄ちゃん、スマホにしないの?」
「こっちのが慣れてる」
何度目かの会話だけど、いつもこの返答だ。
「明日、話をつけることにした」
「はやい……」
「営業に欲しいわよね……」
翌日。
事務所に連れてこられた有馬かな先輩は、いつの間にか契約することになってた。
うちの兄の、手が早すぎる……
ま、なにはともあれ。これで一歩前進だぁっ!
有馬:もう、なんか雑ゥーッ!
アクア:頼れるの、有馬しかいないんだ
有馬:あ。うん……
ルビー:(そのうち刺されないかな、うちの兄)