プロデューサーの娘になってしまった   作:だだ甘鏑木Pすこ

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思惑通りにいかないでイライラしてるかなちゃん、カワイイw 補足説明しておきますと、今ガチは原作通りにあかねとキスしてカップル成立となってます。


苺プロカラオケ大会?

「あーあ……」

「マジさいあく……」

 

 事務所で黄昏れる私。

 と、何故か横で同じように目の光を喪わせて俯く月代ちゃん。

 

「死んじゃえ、バーカ」

「……それは言いすぎですよ、かなさん」

「そうね。そうだったわ、ごめん」

 

 歳下の、それも小学生の子供に諭されるとか落ち目もいいとこ。ますます気分が落ち込む。

 

「……ところで、なんでアンタまで落ち込んでるの?」

「かなさんとは違うかもしれないですけど、同じですー」

「なによ、それ……」

 

 まあ。それも分かる気がする。

 役者って撮影してる間は擬似的な関係を引き摺ることが多い。

 恋人同士の役をやった奴らがゴールインして、暫くしたら破局とかよく見る光景。

 

 この子は『アクアの妹』として出てた訳だし、劇中でも仲の良い兄妹の別離というテーマを演じてしまった。

 

 マジの妹じゃなくても、あかねとくっついた所を現場で見てたら……そうなるのもわかる。

 

「つーちゃん、元気ないね〜♪ よしよーし」

「ば、ばぶぅ……」

 

 その横で小学生を赤ん坊にしてる本当の妹の方は、あっけらかんとしてるし。ていうか、イヤならやめろ、その赤ん坊のフリ。

 

「先輩にもしようか? よしよーし」

「やめぃっ!」

 

 手を伸ばしてくるのでそれを叩く。二人の間には稲妻が轟いたっ!

 

「月代ちゃん、こっちに避難しようね」

「はい、MEMちょさん」

「あー、メムちゃんズルいっ!」

 

 するとそっちに意識が動いたルビー。

 一人でポーズ決めててもしょーがないので、ソファーへと戻る私。

 

「女の子四人もいると、(かしま)しいを通り越して(やかま)しいわね」

 

 ため息吐きつつ、ミヤコ社長がそう呟く。

 

 ここの応接室は事務机が側にあるし、はっきり言えば狭い。事務所兼住宅だし、レッスン場まで併設してる訳だから狭くて当たり前なんだけど。それにしても、狭い。

 

「社長、住むとこ変えろとは言いませんけど、事務所くらい別に借りた方がよくありません?」

「先立つものが少なくてね。一応、考えてはいるけど……」

 

 苺プロは、事業をかつての規模から縮小している。ネット中心の活動に移ったのもそのためで、所属するタレントの殆どは地上波、BSCSなどの放送波には乗らない。

 

 アクアが時折、役者として端役をやってたくらいらしいけど、それもスタッフロールで一緒くたに扱われる程度の仕事。

 

「でも新規にアイドル事業を始めるのなら、ここじゃあ手狭ですよ?」

 

 今までの業務に加えて新生B小町のサポートを考えなきゃいけない。私たちの活動自体に支障が出かねないのだから。

 

「何件かは絞りこんでるけど……どこもお高くてね。年内はこのままになると思うわ」

「マジですか……」

「その代わりレッスンとかはバシバシ埋めるから」

「それもマジですか……」

 

 妥協案になってないんですが。

 

「ミヤコさん、新曲の方はどうなってるの?」

「オファーは出してるけど、向こうも何件も掛け持ちでね。これもJIFには間に合いそうもないわ」

「てことは……」

 

 三人が目を合わせる。

 当然、私じゃないわよ。

 

「「「B小町の曲でいこーっ!」」」

「まあ、そうなるわよね」

 

 ていうか。

 まるでメンバーのようにそこに居る月代ちゃんだけど……まさか。

 

「あの、社長」

「なに?」

「月代ちゃん、なんでここに居るんですか?」

 

 そう聞くと、きょとんとされた。

 

「あれ、有馬さんに伝えてなかったかしら」

「そういえば、ここに来る時は上に直接行ってましたから……」

「そうだっけ?」

「あ、そういう……」

 

 ミヤコさん、月代ちゃん、ルビー、MEMちょと順番に言うけど。私としては要領を得ない。

 

「えっとね。月代ちゃん、このところ放課後はこっちに来てるの」

 

 は? MEMちょの言葉に疑問しかない。

 

「パパラッチもどきが出てるから、危ないって鏑木さんがね。だから、私が迎えに行ってるの」

 

 はあ。アンタ自身もパパラッチの対象になりかねないけど、そこはいいのとツッコみたい。

 

「今日もお夕飯作って待ってるんです♪」

 

 屈託のない笑顔の月代ちゃん。

 

「まあ、今ガチ終わったから……暫くしたらやめることになるとは思うけど。でも、家事手伝ってくれるから私としてはいつまでも居ていいのよねぇ」

 

 ミヤコさんはほっこり笑顔でそんなこと宣ったりしてる。……てことは、なに?

 

「アンタ、ほぼ毎日家の方に足踏み入れてるわけ? 私ですら遠慮してるのに?」

「あ、えへへ♪」

「笑ってごまかすなっ!」

 

 くそう、かわいいなぁ。

 じゃなくって。

 

「それじゃ、ホントに妹みたいじゃないっ!」

 

 ほぼ絶叫のように叫ぶ。

 

「つーちゃんは、妹だよ?」

「実の妹ぉーっ!」

 

 お前がそんなんでどうすんのっ!

 

「私からすると、ルビーのほうが妹よ? 家事とか料理とか、月代ちゃんのほうが全然出来るもの」

「上下の関係じゃなくて、ですねぇ」

 

 社長すら問題に気付いてない。

 

「私は部外者だけど、何か問題なの?」

「そ、それは……」

 

 そう言われると、とても困る。

 

 社長とルビーは別としても、MEMちょがそこに加わらないとしても。

 

 アイツの傍に可愛い女の子が常にくっついてるなんて……とてもじゃないけど、言えやしない。

 

「も、もういいわよっ」

 

 居心地の悪さを覚えた私は、事務所から逃げ出した。

 

 今日は特に予定も無いし。アイツも来てないんだから、別にいいや。

 

 どっかで時間潰そうかな……

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

「かなちゃん、行っちゃいましたけど……」

「また情緒不安定か。更年期っての?」

「るーちゃん、それは大人の女性がかかるものですよ」

「あなた、よくそんな言葉知ってるわね……」

 

 口々にそう話している女性陣に、俺は怪訝になる。有馬の大声が聞こえた気がしたのだが。

 

「なに、どうしたの?」

 

 入ってくるなりこちらに向けて駆け寄ってくる奴。腕を前に伸ばして顔面を押さえる。

 

 わしっ。

 

「むー、むーっ!」

「いい加減抱きつくのはやめろ、月代」

 

 リーチの差があるので手を振り回しても俺には届かない。女の子の顔面にアイアンクローとかヤバい絵面だけど仕方がない。

 

「つーちゃんの愛情表現に文句言うな」

「やかましい」

 

 実の妹(ルビー)を怒鳴りつけ、体力の尽きたニセの妹(月代)から手を離す。

 

 へたりと座り込むのを見ると若干の気不味さを感じるが、いつまで経っても慎みを覚えないほうが悪い。

 

「お兄さま、ヒドい……」

「俺はもうお前の兄貴じゃない」

 

 瞳に涙を潤ませてるけど、それが演技なのは始めから分かっている。実際、すぐにけろりとして立ち上がると腕組をして(無い)胸をそらせた。

 

「今日はこれで勘弁して差し上げますわ、アクアさんっ!」

 

 今度は高慢なお嬢さまキャラか。なかなかに多彩だな。

 

「それより、なんかあった?」

「アクアさん、スルー!?」

 

 さっきの声は有馬だったはず。なのにここに居ないのは何故かと聞いてみると。

 

 

「……全然分からんのだが」

「私たちも分からないもん」

 

 掻い摘んで話を聞いてもイマイチ分からない。最近不機嫌そうにしてたから、出来れば話をしたいと思ってたんだが。

 

 携帯を取り出しメールを打ってみる。『今どこだ?』……と。

 

 いつもならすぐ反応があるはずだけど、今回はどうだろうか。

 

「お」

 

 すぐに返信がきた。

 こういう業界人が染みついた所は嫌いじゃない。実にアイツらしい。

 

「『駅前のカラオケボックス●✕室』……丁寧なことで」

 

 これは、来いと言うことだな。まあ、アイツは無駄に自意識高いから人目のある所にはあまり行きたがらないからな。

 

 すぐに出掛ける用意をするとルビーがどこに行くのか聞いてくる。

 

「有馬を迎えに行ってくる」

「居場所分かったの?」

「ああ。駅前のカラオケボッ……」

 

 しまった。

 つい流れで言ってしまった。

 

「カラオケッ? イイねぇっ!」

「そうだっ、せっかくだし勝負と行かない? メムちゃん」

「勝負?」

「センター争奪戦だよっ!」

「あ、おー、なるほどね。歌が上手いほうがセンターってことね」

 

 ……額に手を当てて軽率を呪う。なんか付いてくる話になってるじゃん。面倒くさいし、有馬が逃げないとも限らない。

 

「お二人のどちらか、なのですか?」

「有馬ちゃんはやらないって言ってたよ?」

「先輩、自信がないから練習しに行ったのかな?」

 

 小娘三人が適当なことを言っている。そんな殊勝な奴とは思わないけど。

 

「でも、かなさん。歌お上手ですよ?」

 

 否定するのは月代。そういやコイツは有馬かなのフリークだっけ。

 

「そうなのか」

「はい。かなさん、ピーマン体操の後もソロで楽曲発表してました。私、全部持ってますよ?」

 

 CDから取り込んだであろう楽曲データを見せる月代。ご丁寧にスキャンしてアルバムアートまで足してある。

 

「へえー」

「かなちゃん、けっこう出してたんだね」

 

 おそらくシングルで三枚、ミニアルバムなら二枚程度の量。

 

 月代がスピーカーで楽曲を流すと、有馬の普段とは違う声色が聴こえてきた。

 

「……」

「おお」

「へえー」

 

 ミヤコは発言しないけど、俺たちは少し感心していた。ちゃんと声が出てるし、情感も乗ってる。少なくとも一般人とは隔絶したレベルであった。

 

「……むむむ」

「これは……」

 

 ルビーとメムが声を唸らせる。明らかな格の違いを理解したようだ。対して月代の方は、こっちも良い曲ですよと布教に熱心だ。

 

「それまでの明るくポップなものから一変してのムーディな曲で。私、大好きなんです♪」

「『Full Moon…』か。名前に月が入ってるな」

「……え、あ。そ、そうですね」

「気付いてなかったのかよ……」

 

 とりあえず、カラオケ行ってからのお楽しみが一つ増えたな。歌い手本人のカラオケなんて、なかなか見れるもんじゃない。

 

「……あの。アクアさん、顔が邪悪ですよ?」

「おっといけない」

 

 あんまり楽しみ過ぎて、つい顔に出てたか。

 

 

 

 

 

 そのあと。

 

 結局みんな付いて来てカラオケ大会になっていた。

 

「ぐぎぎ……」

 

 歯噛みしてる有馬の顔が面白かった。




かな:だから歌わないって言ってるでしょっ!
月代:じゃあ、私が歌いますね♪

一同:(なに、コイツ……歌うめえ……)
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