プロデューサーの娘になってしまった   作:だだ甘鏑木Pすこ

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鮨の方で(笑)前半はかな、後半はアクアとなっております。


お泊まり会とすしざんまい、どっちがいい?

「やっぱり先輩がセンターだよ」

「そうだねー。センターって歌が上手くないと格好つかないし」

 

 次の日のダンスレッスンの合間に、ルビーとメムがそんな事を言ってきた。

 

「私はセンターって柄じゃないから」

「でも、先輩がセンターだと収まりいいんだよね」

「おう、誰がチビだって言った? 脳みそ揺らすぞ、コラ」

「わー、ヤクザみたい♪」

 

 完全にこっちを舐めてるのか、ルビーは怖がりもしない。まあ、ホントに殴るわけはないけど……ムカつく事は変わらない。

 

「私なんて可愛げのない女は端っこにいるのがお似合いなの」

「やさぐれてんなー」

 

 それは、正しく今の私を表す言葉。引き受けた以上投げ出せないけど、意欲的にもなれない。そもそもそんなに可愛くはないのだ。

 

 そういうのがお似合いなのは

 

「月代にでもやらせればいいのよ」

 

 ふと思いついた言葉が出てしまい、二人が凍りついたように止まる。

 

「せんぱい……?」

「えっと、かなちゃん?」

 

 二人の少し呆れたような顔に、少し恥ずかしくなる。子供に八つ当たりしてるようなものだ。

 

 でも、言葉は止められない。

 

「ああいう子のほうが稼げるわよ、私みたいな捻くれ女よりも。素直で、可愛くて、何でも出来て、歌も上手くて」

 

 涙が滲んでくるけど止められない。わたし、こんなに鬱屈してたんだ。醜すぎて、レッスン場の鏡も見られない。

 

 傍にいたルビーが、抱きついてくる。

 

「せんぱい、辛かったんだね」

「うう……」

 

 よしよしと私の頭を撫でて、落ち着かせてくれるルビー。年下のはずなのに、なぜか抗い難い。

 

 ああ。そういえば。

 誰かに頭を撫でられるのって、お母さん以来なんだな。

 

「ダンスレッスン、ちょっとキツかった?」

「うん……」

「じゃあ、すこーしだけ緩くしてみようか」

「それは助かるよ〜。私もけっこうキツかったし」

 

 ルビーの言葉にメムも同意してくる。そう思ったなら貴女から言い出しなさいよ。そしたら私がこんな……まあ、いいわ。

 

「でもねー、先輩。月代ちゃんはアイドルやらないんだって」

「え……」

 

 そうなの?

 あんなに向いてるのに?

 

「私も誘ったことがあるんだ。アイドル、やらないって? そしたら『やりません』って断られちゃって……えへへ」

 

 その言葉を聞いてメムが疑念を抱く。

 

「月代ちゃんにしては、随分はっきり答えたんだね」

「メム?」

 

「いや。あの子、様子を見ながら答える事が多かったのよ。顔色を見るっていうのかな、そんな感じでね」

 

 それは、私も気がついてた。

 

 それは小さい頃から業界に居る子供特有のスキル。かくいう私だって人の顔色見る事は出来るのだ。そうでなくちゃ、生きていけない世界なのだから。

 

 あの子は鏑木さん(プロデューサー)が小さい頃から連れ出していた可能性がある。子供を置いて外出出来ないなら、現場に連れてきた方がマシな事だってある。あの人ならそういう機転もしただろうし、利用もした筈だ。

 

 だから、人からの頼み事をきっぱり断るというのは得意じゃないはず……と言いたい所だけど。私自身がなあなあにアイドルやらされてるんだよなぁ。この理屈は少し甘いかも。

 

「でも、つーちゃん。『B小町はぜったいやらない』って」

「んん〜? でも、月代ちゃん。B小町の歌、歌ってたよね?」

「うん……もしかして」

 

 自分の発言に何か気付いたようなルビー。私は気になったので先を促す。

 

「ど、どうしたのよ? なんか、気付いたの?」

 

 すると、今度はルビーの方が泣きそうな顔になった。

 

「もしかして。B小町嫌いだったのかな?」

「「はあっ?」」

「嫌なこと、無理にさせちゃってたら、嫌われるかも……どうしよ先輩」

「知らないわよ……」

 

 正直どうでもいい……かと思ったら、メムが顎の下に手を置いて考え事のポーズを取った。

 

「なるほど〜そういうこと?」

「メムちゃん、何か分かったの?」

「教えなさいよ」

 

 私たちの言葉に、メムはズバリと指をさしてこう言った。

 

「月代ちゃん。実はアイが嫌いなんじゃない?」

 

「「あ~?」」

 

 私とルビーの声が綺麗にハモる。でも、とすぐにルビーは異議を唱える。

 

「つーちゃん、お兄ちゃんと先輩が出てた映画のファンだって言ってたよ?」

「あ」

 

 それは、私も聞いた。今日あまの現場で。親子ともどもあの映画のファンだと言っていた気がする。DVDを買って、何回も観たと言っていた筈だ。

 

「ちっちっ。あの映画でアイの名前は広まったけど、そうとは限らないでしょ」

「あっ……」

 

 言われてみれば、その通りだ。

 少なくともアクアや私には好意を持って接しているけど、アイの事は何も話してはいなかった。

 

「そ、そうなのかな? アイのこと、嫌ってるのだとしたら……私、どうしたら」

 

 今度はルビーが弱気になっていた。お前、どんだけあのコ好きなんだよ。

 

 今度は私が手を伸ばして頭を撫でてやる。

 

「せんぱい……?」

「そんなの関係ないでしょ。アンタの好みとあのコの好みが一緒じゃなきゃいけない理由なんてあるの?」

 

 人の好みはそれぞれ。

 兄妹や親子でもそのベクトルは様々で、全く一致する方が珍しい。

 

「もし、あのコがアイのこと嫌いだって言ったら、アンタ、嫌いになれるの?」

 

 そう言うと、唇を尖らせながら首をふるふると振る。

 

「でしょ? 歳上なんだからそれぐらいは許容出来るでしょ?」

「……激しいアンチじゃなければ」

「そこは頷いておきなさいな」

 

 まあ、おそらくそんな事はないと思う。あの子が生まれた頃に亡くなっているのだから接点がある筈はない。

 鏑木さんがそうだったのならあり得るかもしれないけど、彼自身もアイに対しては協力的だったから違うはず。

 

「そもそも。嫌いならその人が出てる映画を何度も見やしないわよ」

「それも、そっか」

 

 ルビーがほっと胸を撫でおろす。

 

「でも……月代ちゃん入ってくれたら、間違いなくバズるとは思うよ」

 

 メムが目を光らせて言う。

 

「今ガチ公式SNSでも月代ちゃんの数字って凄かったんだよ」

 

 恋愛リアリティーショーなのに恋愛絡みでないキャラが興味を持たれると云うのはただ事ではない、と言いたいのだろう。

 

「でもね。本人がやりたがらない事は強制できないわ」

「そうだよねー」

「正論だよねー」

 

 契約がどうなってるのかは知らないけど、おそらく社長はそこまではしないだろう。本人の意思の尊重をするはずだ。それは社長という肩書もさることながら、親という側面からも間違ってはいない。仕事優先の人なら、違う選択もするだろうけど。

 

 

「今日、つーちゃんお泊まりだから、それとなく聞いてみるよ」

「え、そうなの?」

 

 わたし、聞いてないっ!

 

「なんなら先輩も泊まる?」

「行くっ」

「じゃあ、私もお世話になろっかな♪」

 

 アクアと一緒の所に泊まらせるとか、本当に警戒心のない子だな、コイツ。妹のアンタが守らないでどうすんのよ。

 

 

 

 

 そのあと、一度家に帰って色々済ませてからもう一度伺った。

 

 ちゃんとお風呂も入ってきたし、少し甘めなコーデだけどよそ行きにも着替えた。前髪のセットも完璧♪

 

「あ、今日はお兄ちゃん、カントクのところ泊まるんだって」

 

 ……それを、早く言えよ。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

「今日はお宅にお邪魔させて申し訳ないね」

 

 月代の事を言ってるのだろう。実に今更な話だ。

 

「構いませんよ。どうせ俺も監督のところに行きますし。明日納品らしいので」

 

 俺は悪い虫じゃないアピールをしておく。そんな気は無いし、この人の不興を買う理由もない。今日はその件で話があるのだろうし、ここでへそを曲げられても面白くはない。

 

「ほう。こんなところに居ていいのかい?」

「最近、俺に頼りきりなんで。少しは痛い目見てもバチは当たらないかと」

 

 監督と俺の関係は適当に話してある。それに本人とも話したらしい。抜かりのないことだ。

 

「なるほど。放蕩な親のほうが子供はしっかりするようだね」

「親は無くても子は育つ、とも言いますよね」

「なるほど。出来れば、親としてはずっと傍に居てほしいものだけど、そういかない事もある。ままならないね」

 

 こいつ……俺のことに気付いたのか? 思わせぶりな事を言ってやがる。

 

「本題はそれですか?」

「いや。まあ、愚痴だよ。気にしないでいい。本題だったね」

 

 徳利からお猪口に酒を注ぐ鏑木。今日は車ではないし、家に月代も居ない。羽を伸ばすにはいい機会だろう。

 

「事務所の先輩だというのは分かるが、そこまで知りたがる理由は何かね?」

「ファンだからですよ。どうしようもないくらい。それじゃあいけませんか?」

 

 あまり多くは語りたくない。なのでファンというので押し通す。実際、俺はアイの奴隷(ファン)なのだから、嘘はついてない。

 

「ふむ……まあ、分かるよ。月代を見てるからね」

「……?」

「おや。分からないかい? あの子は君やかなちゃんのファンなんだよ。だからあの映画のDVDを何度も何度も見ていたんだ」

 

 それは、なんて言えばいいのだろうか。どちらかというと狂気を感じるのだが。少なくともアレは、子供が好き好んで見る(たぐい)の映画ではないのだから。

 

「光栄です、とでも言えばいいですか?」

「心にもないこと言うんじゃないよ。今、気持ち悪いと思ったろ? その通りだと思うよ、僕も」

「はあ……」

 

 確かに、気持ち悪いが正しい印象と言うべきか。

 

「そんな所も可愛いのだがね」

「……矛盾、してませんか?」

「してるわけないさ。そんな所も含めて、あの子なんだから」

 

 気持ち悪いと可愛さの同居。少なくとも俺には理解しがたい。

 

 盛り板に握りが載せられる。コハダのようだ。手にとって醤油をちびりと付けて口へ放る。味を吟味していると、彼が口を開いた。

 

「君のした仕事に対しての報酬なのだから、あれこれ詮索するのは筋違いだね……アイ君の個人的な事と言ってたけど、それは恋愛関係、ということで間違いないかな?」

「……はい。そのとおりです」

 

 妙齢の女性の個人的な事と言えば、大体異性関係。直球で聞いてくるとは思わなかったけど、話は早い。

 

 それから、彼はアイと知り合った頃の話をした。

 

「とある劇団のワークショップを紹介してね。その辺りから劇的に彼女は変化した。何かあったとすれば、そこだと僕は思う」

 

 劇団のワークショップ……話を聞くとそれは『劇団ララライ』。あかねの所属する劇団だった。

 

「あそこの代表とは大学時代からのは知り合いでね。よかったら紹介するけど……僕よりあかね君に頼んだほうがいいかもな」

「何故ですか?」

「金ちゃん、あまり僕のこと好きじゃないみたいだからね。ほら、僕って拝金主義だから」

 

 それは笑って言う事ではないと思うけど、別に言うつもりはない。

 それに拝金主義と云うモノ自体悪い言葉ではない。何をするにも金が必要な世の中なら、それを集めて利用するのも必要なこと。ただそれだけの話だ。

 

「まあワークショップなんて小手先の仕事は彼には難しかったよね。不幸な事件もあったし」

「不幸な事件?」

「君の歳くらいだと知らない筈か。あそこの劇団員の夫婦が心中騒ぎを起こしてね。マスコミからの問い合わせもあって忙しくなったんじゃないかな。ワークショップはもうやってないんだ」

 

 あるのなら潜入も楽そうだったのだが、そうとなれば仕方がない。

 

「あかねの紹介で、代表とは会えますかね?」

「彼も中々忙しい人だからね。まあ、僕がセッティングしてもいいけど……」

 

 と、こちらを覗き見る鏑木。

 はあ、とため息を吐き答える。

 

「今度は何をやらせるつもりです?」

「いや、大したことじゃないよ。ごくごく個人的な話でね」

 

 

 

 彼から出てきた言葉に、俺は少々混乱した。意味が分からなかったからだ。

 

「あの、もう一度、言ってもらえます?」

「……月代を、B小町に加入させてやれないか?」

 

 ……ますますもって、意味がわからなかった。

 




よく知らないんだけど一人前四万の寿司って、安い方なの?(←回らない寿司屋はほとんど行ったことない中の人)
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