プロデューサーの娘になってしまった   作:だだ甘鏑木Pすこ

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三が日過ぎて言うことじゃないですが、明けましておめでとうございます!(ヤケ)
気が抜けたせいか熱発してました(コロコロとインフルではない)
今年もよろしくお願いしますっ!


アツい炎と、仄暗い焔と

 稽古も始まると、ある程度グループが形成されるようになる。一番の大所帯はララライだから大きなグループになるかというと、実はそうでもない。

 

 演劇上での絡み、要するにクラスタ毎に大分別され、その中でも細分化されていく。

 

 俺はだいたい一人だけど、事あるごとにあかねや有馬、メルトとか絡んでくる。いま、近くにいるのは月代だ。

 

「では、最初から」

 

 演出の声に二人が構える。姫川と鴨志田。ともに芸歴豊富であり、このマッチングだけでもかなり稼げるはず。

 

 俺のような顔だけの人間よりも芝居の経験も豊富な鴨志田の方が適任の筈。稽古を見ているだけでも、それは分かる。

 

 俺のそばにいる月代も目を輝かせている。それは、決してカップリングとかそういうのでは無い……と思う。思いたいなぁ(諦観)

 

 

 二人が数度切り結ぶとセリフを諳んじる。実戦では有り得ないが、これはフィクションであり演劇。戦う理由や主張などをぶつけ合い、感情の発露を行う事も大事なことだ。

 

 今はマイクが無いからいまいちな気もするけど、声量としては十分。さすが舞台(いた)での活動がある人間は違う。

 

 東京ブレイドは剣劇アクションものなので殺陣(たて)は必須。そのため指導する先生を招待して、各々の殺陣を演出やプロデューサーを交えて稽古していく。

 演出が居るのは当然として、プロデューサーが居るのは何故かというと、舞台演出と関わってくるからだ。

 

「刀鬼はここでジャンプ、反対側までワイヤーで移動して反転着地。こんな感じですか?」

「そうだね、その方が映える」

「いけるか? 鴨志田」

「ワイヤーなら相当やってますから、よゆーッス」

 

 彼らが今やってるのは最終局面でのバトルの稽古だ。ブレイドと刀鬼のタイマンで、刀鬼は素手でのアクションになる。体術メインとなるため体力の消費はかなりありそうだが……なるほど。言うだけのことはしてるらしい。躍動感ある戦いぶりに稽古だというのを忘れさせるほどだ。

 

「鴨志田さん、結構出来ますね」

「コレの前のやつは某蜘蛛男を演じてたらしい」

 

 月代の言葉に、俺は調べた情報を語る。

 2.5次元舞台ではやりやすいだろうが、よく許可が取れたものだ。蛇足だが、原作準拠だったらしい。東●版だったら見に行ってたかもしれない。

 

「がああっ」

「ちいっ!」

 

 姫川の一撃を飛んでかわし、すたた、と走って反対側に移動して、着地したように動く鴨志田。

 

「この辺でイイっすか?」

「もう少し距離を取れ。あと、着地したら四つん這いだ。獣のようにな」

 

 演出の言葉に「こんな感じ?」と姿勢を低くする鴨志田。

 

「もっとだ。この場面は鬼の本能が勝ってるように見せんだから、人みたいに立つな」

 

 その言葉に鴨志田はより頭を低くして唸るような顔をする。

 

「うむ、そんな感じだ。距離、測定してくれ」

 

 スタッフが走り最初にいた所から今の鴨志田の位置までの距離を測る。ワイヤーアクションで動かす際に必要なデータである。

 

 佳境のシーン以外にもワイヤーアクションが使われるのだが、ここほど精密な調整は必要ない。殺陣と連動しての操作なので失敗は許されないから、何度も位置を測り、調整しているのである。

 

「簡単にやってるように見えますけど、大変なのですね」

 

 感心しきりの月代だが、他人事ではないと思う。

 

「お前。いま、アイドルやってるよな」

「は、はい。ガンバッてます♪」

 

 フンス、と小さくガッツポーズをする。まあそれはいいとして。

 

「ライブ程度だとやんないけど、単独コンサートとかだとワイヤー使った演出とかもやる筈だぞ?」

 

 昔のB小町ではやらなかったけど、昨今のアイドルは空から降ってくる演出とかもやるらしい。同じ事を要求されるかもしれないと釘を刺したのだが。

 

「へ、平気、ですわ……」

「めっちゃ震えてんじゃん……」

 

 高いとこ苦手かよ。

 まあ、そん時はその時で何とかするしか無いが、今回はそんなことはない。

 

「まあ、今回お前の出番ではそんなことはしないし。気にするな」

「なら、脅かさないで下さいよぉ……」

 

 大胆な割には繊細なところもあって、よく分からん。女というのは本当に面倒だと思うけど……それも愛嬌なのだろうな。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

「むー」

 

 なんだか面白くない。

 

「黒川ぁ、アンタなにフキゲン出してんの」

「か……有馬さん」

 

 後ろにいたかなちゃんがそう聞いてくる。見ればその後ろには今日あまの時の相方、鳴嶋メルト君も居た。

 

「愛しの彼氏を歳下の子に取られて悔しいって? プークスクス」

「ぅ゛」

 

 図星を突かれて呻いてしまう。だけど、それはお互い様だ。

 

「同じグループの子に取られるよりはマシだもん」

「ぐ……言うわね」

 

 かなちゃんも悔しそうな顔で呻く。ざまあみろだ♪

 

 私たちの目線の向こうには、稽古を眺める二人がいる。アクア君と月代ちゃんがなにかを話しているけど、詳細は分からない。

 

 でも、自然に寄り添う姿がとてもしっくりくる。

 

 私とのデートの時にはしないような笑顔。

 

 それは、どうしても分かってしまう。

 

「あの二人、仲いいよね」

 

 なんとはなしに、呟いた。

 その言葉を拾ってかなちゃんが答える。

 

「最近はルビーとおんなじ感覚みたいだし。本当に妹みたいな感じよ」

「いもうと……ほんとに?」

 

 確かに大事にしてる感じはする。

 

「事務所でもしょっちゅう顔合わせてるし、晩御飯も一緒に食べてるそうだし。もう家族みたいなもんでしょ」

「そ、そうなんだ……」

 

 プロデューサーの鏑木さんはなかなかに忙しい方らしいけど、そんな親密な付き合いをするほど? 訝しい気がする。

 

「かなちゃんは、それでいいの?」

 

 つい、馴れ馴れしく呼んでしまった。

 

 向こうも面を食らったような顔をしてるけど、とりあえず「しょーがないじゃない」と答えてくる。

 

「あの子は母親と死別。アクア達もそうらしいし」

「社長さんの、子供じゃないんだ」

「養子扱いなんだって。旦那さんの方、見た目によらずいい人らしいの」

 

 そういえば、アイの後見人もしてたって話だし。

 

「その、社長の旦那さんて、まだ失踪中なんだよね」

「もういないかもしれないけどね。社長は捜索願も出してないし、失踪の扱いにもしてないけど」

 

 その旦那さんは……どうして失踪したんだろう? 失意のため? 愛情が深そうだけど、守るべき妻がいるのにそれを選択するとは思えない。

 

 

 だとしたら、何のため?

 

 

 確か犯人は自宅で自殺という形で発見された。だから、社長が仇を打った訳では無い。

 

 共犯者がいる?

 彼はそれを知って一人で雲隠れしたのかも。

 

 守るだけなら傍にいる方が正しいけど、排除するためなら近くにいる方が難しい。身分を隠し、密かに潜伏して機会を持っているのかもしれない。

 

 でも、それも矛盾する。

 あの二人を養子として引き取ってしまうような人がそんな事をするか、という疑問。

 

 ひょっとしたら二人を保護したのはミヤコ社長で、旦那さんの方は関与してないのかもしれない。

 

 ただ、この場合も疑問が残る。

 

 養子縁組ってそんな簡単にいくものかな?

 

 里親になる夫婦が揃ってるとか条件になかった? 詳しい事はわからないけど、一つだけ可能性がある事がある。

 

 それは『すでに後見人をしている存在の家族』の場合。この場合は同一の存在として認められるかもしれない。

 

 それは、つまり。

 

 

 

「……どうしたの? いきなり怖い顔して」

「……わたし、こわい顔してるの?」

 

 かなちゃんがそう言うのなら、そうなのだろう。

 

 でも。

 可能性は高い。

 

 自分が『アイ』の演技を模倣する時に行った分析で、なにか言ってなかった?

 

 ──家庭環境に問題あり

 ──妊娠していた可能性

 ──一年に及ぶ長期休暇

 

 全て、合致する。

 

 それに、彼の妹、ルビーの容姿。

 

 髪や瞳の色は違うけど、その雰囲気は彼女に酷似している。

 

 おそらく、間違いなく。

 

『あの二人はアイの子供。そして──』

 

 旦那さんが失踪した理由もおそらくそれに関係がある。

 

 二人の父親か、それに近しい人。芸能界に居るであろうその人物を見つけ、追い詰め、断罪しようとしている。

 

 

「まさか、ね」

「……なによ?」

 

 自嘲気味に笑うと、かなちゃんが気味悪そうに聞いてきた。

 

 なので、私はこう答えた。

 

「出来の悪いミステリを思いついただけ」

 

 すると彼女はあっそ、と面白くなさそうに答え、また稽古に目を移す。

 

 私は、そちらではなく稽古を見つめる彼の方に視線を移す。

 

 真摯に稽古を見つめる碧眼の瞳。

 

 その奥に怪しげな(ホノオ)を感じたことが、幾度となくあった事を。

 

『……君も、そうなの? アクア君』

 

 彼との距離は、恋人とは言えないほどに遠く。それがもどかしく思えた。そんな気持ちを振りほどくように(かぶり)を振ると。

 

 

 歳下の子に笑いかける、彼の姿を見て。

 

 面白くないと感じる自分に。

 

 私は、気が付いた。

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