プロデューサーの娘になってしまった 作:だだ甘鏑木Pすこ
追記:誤字報告、ありがとうございます。
大部屋の座敷での宴会という形は、今も昔も変わらない。長テーブルに並んで座り、一堂に会して酒を飲み合う。
並び方は様々だけど、今回は序列で決まってるのは演出の金田一の位置くらいで後はてんでんばらばら。気の合う者同士でクラスタを作るさまは、舞台と通づるものがあった。
「アクア君、どーぞ」
「あ、悪い」
コップに瓶のコーラを注いでくれるあかねに礼を言う。未成年組は俺とあかねくらいだ。メルトも明日の仕事に響くからと断ってきた。アイツも見ないうちに自覚が出てきているようだ。
テーブルの上には、やはりてんでんに頼んだ料理が並んでいる。飲み会のマスト、枝豆を一つつまみ口にする。なかなかに塩味が効いてて旨い。
「なにか取る? あっちに唐揚げあるよ」
「じゃあ、一つ頼む。あっちの揚げ出し豆腐、取るからな」
「うん、お願いね」
お互い食材を取って皿を渡す。その様子を見た
「連れ添った夫婦みたいなことしてんね♪」
「ちょ、めいさん」
慌てるあかね。料理を取り合うなんて同僚とかでもやるだろうに。取った皿をあかねに渡すと、化野にも取って渡す。あかねの向こう側に座る化野にはちょっと遠いからな。
「はい、化野さん」
「ん、あんがと♪」
小皿を受け取り満面の笑み。おそらく二十代前半だと思うけど、奔放な雰囲気のせいか話しやすいタイプ。あかねにとっての姉貴分、という所だろうか。
「カレシに取ってもらっちゃった♪」
「アクア君は誰にでも優しいんですー(ムー)」
月代と同じように頬を膨らませるあかね。少し年の差はあるけど、その仕草はよく似ている時がある。何故かは知らんが。
「いやー、お姉さんにも春が来て欲しいなぁ。アクア君て陽東なんでしょ? 知り合いにカッコいい男子とかいない?」
「俺が通ってるのは普通科なんで、どこにでもいるようなのしか居ませんよ」
これは本当。芸能科との顔面偏差値の格差というのは本当にひどい。余りにも酷いので普通科の人間は芸能科の人間には接触したがらない程だ。例外は俺くらいだろう。
「あかねんトコは女子校だし。使えない後輩達だねぇ〜」
「歳下ばっかり狙わないで下さい、めいさん」
「えー、だって若い子の方がいいじゃん」
まあ、わかりみがある。
若い体というのは本当に有り難い。肌は張りがあるし、徹夜してても辛くないし。運動で酷使しても次の日には回復してるし、飯もうまい。
若さというのは本当にいいものだ(ウンウン)
「ほら。カレシも頷いてるよ。あかねの若い体がいいって」
「ブッ!」
ものを食べてなくてよかった。危うく前面放出するところだ。言われたあかねが顔を赤くして(これがホントの茜色)化野に詰め寄る。
「そ、そういう言い方しないで下さいよおっ」
「えー、だってあかねいいカラダしてるじゃん」
「セクハラ親父ですかっ」
……同性でもセクハラは起こり得る話だし。
「そういやアンタまたサイズ増えたでしょ」
「ちょっ、」
「アクアくーん、この子いまEなんだよー」
「やめてぇーっ」
……騒がしいなぁ。ぼちぼち席動いてる人も出てきたし、動くか。
「ちょっと、回ってきます」
「おおー、あかねは任せとけー」
「違うからね、アクア君。私太ってなんかないからねぇ?」
誰も太ったなんて言ってないのに……胸が大きいのはいいことだろう?(←おっぱい星人)それはともかく、金田一の横が空いてるな。瓶ビールを回収しつつ彼の横に座ると「お注ぎします」と声を掛ける。
「おう……お前か」
少し驚いたような顔をしたが、すぐにそれはなりを潜める。残ってるビールを空けてコップを差し出してくるので、それに瓶から注いでゆく。
こう見えても前世では接待とかもあったので注ぎ方に関しては熟知している。泡を立てつつ増やし過ぎないように調節して注ぐ。
「お前はまだ未成年だったか。にしては酌が上手いな」
「監督に仕込まれまして」
「そうか」
これは嘘なのだが信じてくれた。実は監督、家では飲まないのだ。たぶんおばちゃんの目が怖いからだと思う……やっぱりあの人、一回家を出たほうがいいと思うんだが。
「五反田はまだ実家なのか?」
「ご存じでしたか」
「いちおう後輩筋だからな。アイツも面倒な道に進んだもんだ」
映画監督というと大物ばかりのイメージがあるが、そんな事は無い。むしろ仕事が無くて副業のほうが忙しい人までいる。まあ、監督の事だけど。
それでもコメンテーターやら作家やらに転身しないだけ、監督はマシな方なのだ。映像関係のフリーランス、それが映画監督なのである。
「まあ、人のことは言えたもんじゃ無いけどな」
「金田一さんは劇団代表ですものね」
監督と違って看板を背負うというのはリスクが大きい。今回のような企画は滅多に無い大物であって、ララライ自体はそこまで大きなハコは使わないという。つまり興行的には厳しいのが常なのである。
「ああ。立ち上げてはやウン十年、は言い過ぎとしても。ようやく形になってきた劇団だ。色々と苦労はあったが」
そう語る金田一は少し誇らしそうだった。自分の作った映画を見て喜んでいる監督と似たような目をしている。
「お前は、確かアイと同じ事務所だったな」
「は、はい」
いきなり話を振られて驚いた。
「あれも面白い奴だったな。お前と違って演技のこと何も知らんできたけど……雰囲気はやたらと掴んでた」
「……そうだったんですか」
「あんなことが無ければ、一端の女優になれてた筈だ……惜しい女だった」
コップのビールをあおる金田一。彼にしても、あの事件は青天の霹靂だったに違いない。
「その頃の話、もっと聞きたいです」
「んん? あー、そいつはちっと難しいな」
言葉を濁す金田一。だが、俺としてはそこが一番聞きたい話だ。簡単には引き下がれない。
「そこを、なんとか」
「……なんだ。やけに食いつくじゃないか。昔の話だ、若いやつには面白くもない」
そう言って煙草を燻らせる金田一。ちなみにこの居酒屋は喫煙OKという今どき珍しい店だ。あかねが検索して見つけたらしい。まあ、そうじゃないとコイツが来ない可能性もあったから無理に探してもらったんだけど。
「自分は興味有りますよ」
引かないという姿勢を見せると、少し面白そうな顔をする。だが、やはり言葉を濁して話そうとはしない。
「……なんで拘る?」
「、事務所の先輩ですから」
「そんな理由なら事務所の奴らに聞いたほうがいい」
こちらを見据える瞳に、何かを知っていると確信を得る。コイツからは何としても話を聞かねばならない。
すると、後ろから忍び寄る手が肩を押さえる。
「!」
「面白そうな話してるな」
耳元でボソリと呟くのは、姫川大輝だった。すげえイケボだな、この人。
「協力してやる」
「代表、ヤサ変えて飲みましょうや」
「んん? 姫川か」
「おもろいトコ見つけたんスよ。かわい子ちゃんいっぱい居ますよ」
「酒は?」
「こないだ見た時にはヘネシーとかありましたよ。ブイエスなんちゃらっての」
v.s.o.pだろう。さすがになんちゃらっていうほど難しくはないと思うんだが、さてはもう酔ってる? この人。
「いいな。そうするか」
「お前も来るんだろ?」
そう言ってくる姫川の顔は、『決まってるだろ?』とでも言いたげだ。まあ、そうなんだが。
「お供します」
頭を下げると満足そうに相好を崩す姫川……わりと子供っぽい笑い方をする。
余談。
後でスマホを見たらメッセージ爆弾があかねから投下されてた……そういや、言わずに出てきたなぁ。
すまん、あかね m(__)mペコリ
月代:なんか、私の話ししてる気がするっ(ガタッ)
有馬:どうしの、急に(ヤサグレ中)
原作ヒロインと本作ヒロインが蚊帳の外とか草