プロデューサーの娘になってしまった   作:だだ甘鏑木Pすこ

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これでようやく東京ブレイド編が終わります……飲み会回が長すぎる件について(笑)

追記:時期的に合わない部分を修正しました。


先輩のお宅にて 三幕目

 都内某所。まあ、港区のどこかと言えばだいたい知れるであろう場所にある高さ六階ほどのマンションに姫川が入っていく。その間、俺がおっさん(金田一)を背負うことになる……女の子ならともかくだけど、心ときめくものが何も無いな。まあ、無下には出来ないが。貴重な情報源だからね。

 

「わり。意外と力あるんだな」

「まあ、いちおう鍛えてはいるし」

「でも、おっさんとかおんぶしても面白くないって顔してるぜ」

「それはそうでしょう」

「それな」

 

 ……こんな雰囲気だけの会話なんて久しぶりな気がする。メムと初見で会話した時くらいかな? 探りながらだからこういう話し方になるんだけど、本来俺は好きではない。

 

 ……筈なんだが、妙にしっくり来るのが不思議だ。売れっ子なのに鼻につかないせいだろうか。このマンションだって家賃相場としては二十以上はいくだろうに、そんな所に住んでいるというオーラを出してない。敢えて消している可能性もあるが、金田一の言っていた言葉が小骨のように気になる。

 

『お前は欠けている』

 

 何かが欠けた人間同士だからこそのシンパシー……なのかもしれない。だから、誘われてほいほい他人の家にお邪魔する事態にもなってる訳だし。まあ、今更別の所に泊まるというのもおかしいので気にしないようにしよう。

 

 もし、月代が好きな展開になったら?

 

 そん時は強行突破しかない。乱闘になろうが構うものか。警察沙汰になっても拒否する覚悟で御座るっ!

 

「そっちに転がしておいていいぜ」

「ベッドとか運ばなくていいのか?」

「万が一、吐かれたくないしw。あと、親父の匂いが移る」

「さいで」

 

 指定されたリビングのラグの上に下ろして横たえる……よく寝てるなあ。

 

 ちなみにラグは毛足が長くてふわふわだ。吐かれたらクリーニングも大変そうだが、そこまで折り込み済みだろうか。まあ、冬場だしフローリングに直置きはさすがに寒かろう。

 

 しばらくすると暖房が効いてきた。これなら毛布とか無くても風邪は引かないだろう。

 

「飲み直す? バカ高いのとかは無いけど色々取り揃えてるぜ」

「いや、自分未成年なんで」

「ホントか? やけに老成してるからサバ読んでるかと思ってた」

「野郎がサバ読んで得します?」

「……さあ?」

 

 そう言いつつグラスを二つ置いていく。冷蔵庫からミネラルウォーター、氷を取り出して。さらにコーラやジンジャーエールなども並べる。こちらへの配慮かと思いきや棚から出した酒と混ぜ始めた。

 

「なんとかモーチョ完成♪」

「カリモーチョでしょ」

 

 長くなってるの草。ちなみにコーラと赤ワインを1:1で混ぜるだけのチューハイ気分で作れる。

 

 てか、甘くて悪酔いするんだけどそれ平気? とか思ってたら一口で半分くらい減ってる。体に良くない飲み方するなあ。

 

「おっふ」

「……なんかツマミとか無いんスか?」

「渇きもんなら。冷蔵庫は、あんまり見てない」

 

 呆れつつもキッチンへ行き冷蔵庫を確認。納豆、わさび、刺し身醤油……手早く食えそうなのは無さそうだ。冷凍庫を見るとラップに包まれたご飯を発見。置いてあった炊飯器は電源が入ってないらしい……いつからのだ? まあ、手前側から使えばいいか。奥の方はなんか怖い。

 

「こんなんでいいスか?」

「おおって、朝食メニューじゃねえか」

 

 

 レンジで温めたご飯に納豆。日本の朝食の代表的なメニューに売れっ子俳優もノリツッコミだ。

 

「インスタント麺でも良かったんスけど、ご飯見つけちゃって」

「あー、……アイツが作り置いてったやつか」

「……彼女さん?」

「いんや。一夜限りのお相手になったよ」

「そらご愁傷さま」

 

 ツマミとして置いたんだけど、いきなりガツガツ食い始めた。

 

「いや、うめえ。やっぱ日本人はコメだなっ!」

「そうッスね」

 

 この人、本当に長生き出来なそうだな。いちおう炊事道具とか揃ってるけど、自炊しようって感じが無い。わりと早めにお相手見つけて、その辺を改善してかないと身体を壊すの確定だわ。

 

「……お前、いい奴なんだな」

「どうしたんスか、急に」

 

 脈絡のない話のフリだ。

 

「いや。人んちの冷蔵庫漁ってメシ出してくるとか、いい奴じゃね?」

「褒めるつもりで言ってますかね、それ」

 

 前半だけ聞くと不審者なんだが。残ったカリモーチョを飲んでから、彼が呟く。

 

「人に手間かけて食事出すってな、わりとやれねえんだよ」

「手間って程じゃ無いですけど?」

 

 レンジかけて、納豆混ぜて醤油かけただけ。ただそれだけだ。それでも、彼には大したことらしい。

 

「ここに来る女ぁ、だいたいウーハーとかなんちゃら使って呼ぶだけだったぜ?」

 

 ああ、やっぱり何度も連れ込んでんのね。だからベッドにおっさん寝かせたくないのか。

 

「……いっちゃん最初の、あの子くらいか。名前も顔も忘れちゃったけど。このメシの味だけは覚えてるよ」

 

 ……それ、何年前の話ですかね?

 オレ、……食っちゃってるけど。マジで平気だよね。

 

「その子とは、何年前だったか憶えてます?」

「んー……忘れた。まだ学校行ってる頃かも」

「ちょっと吐いてきますね」

 

 

 

・・

 

 

 

「大袈裟だなぁ。俺ぁ別に何ともねえぞ?」

「……それなら、いいですね」

 

 冷凍処理してあるとはいえ年単位は許容出来ない。しかも学校行ってる頃とか少なくとも二、三年は経ってるじゃねえか。

 

「そういや。俺が養護施設の出だって言ったじゃん?」

「いきなりですね」

 

 ああ、この人。やっぱどこかズレてるのかもしれない。話題の転換が突拍子も無い。それとも自分語りが出来る人間として認められたという事なのか。それはそれとして面倒臭いな。

 

「俺が五歳、いや四歳かな? よく覚えてないんだが両親が心中してな」

「……」

 

 軽くジャブかと思ったら重い一撃。会話としては盛り上げて言うところじゃね? と思うところだが。

 

「……もしかして苗字もそれで?」

「ああ。本名は上原大輝。姫川は母方の姓だな」

 

 なるほど。そういった事情だったのか。表札が違うから愛人の家かと思っちゃってた俺のほうがゲスなのかもしれない。

 

「んと、まだ検索に出てくるな。これだよ」

 

 と、渡されたスマホに出ているのはニュースサイトの記事。俳優と女優の夫妻が軽井沢の別荘で心中したとの記載があった。男の方はよく知らないけど女の姫川愛梨に関しては覚えがある。

 確か昔、朝ドラの主演してたはず。まだ吾郎として生きてた頃にテレビで見た覚えがある。

 

「お前も、似たような感じなんだろ?」

 

 自分から手札を切ってこちらを誘導するとか案外マトモな手を使ってきたな。こうされると断りづらい。

 

「そうですね……詳しいことは伏せますけど、母親は死んで父親は誰とも知れず、ですよ。今は事務所の社長の世話になってます」

「ふぅん……どっこいどっこいみたいなもんか」

 

 確実に死んでるよりはマシかもしれないけど、誰かも分からない父親というのは本当に厄介だ。分かったらすぐに殺しに行くのに(使命感)

 

 それはともかく。心中事件なのに何故、彼は生きてるのだろうか? そこを聞いてみると、彼は少し笑って答えた。

 

「母親の友人に預けられてた、らしい。その頃の記憶とか曖昧で、誰かも分からんけど」

「なるほど」

 

 母親の姫川愛梨の友人、ということは芸能関係者? 何にしても、彼女の功績で彼は生き長らえたということか。

 

「上原清十郎って奴は才能も無い売れない役者、だったらしい。そのくせ女遊びはお盛んだったそうだ。お袋の稼ぎのほうが多くなったのを妬んで凶行に走ったと記事では言われてるけど、そんな事だろうとは思えたよ」

 

 そう語る彼からは若干の憎しみと共感が感じられる。彼が“上原”ではなく“姫川”を名乗る理由は、そこにあったのだろう。

 

「優しかったんですね」

 

 そう言うと、彼は首をひねる。

 

「憶えてねえよ……お前、ガキの頃の記憶なんて憶えてるか?」

「はっきりと」

「……たぶん、お前のほうがおかしい。大抵ガキの頃の思い出なんて分かんねえよ」

 

 それはそうだろう。幼児期の記憶は定着しづらい。幼児期健忘なんて言われているが、まだ脳が完全に機能してない時期だから当たり前である。むしろ、俺やルビーがおかしいのだ。

 

「ただ……なんとなく優しかったんじゃないかって感覚はある」

「そうですか」

 

 言語化出来ない感覚というのもバカには出来ない。それが彼の生きる寄辺(よるべ)だったかもしれないのだ。

 

 俺にとってのアイのように。

 俺にとっての父親(復讐)のように。

 

 生きるための確かな道標なんて、人生には無い。何をそれにするのか、それを見つけることが肝要だ。

 

「だから、役者なんですか」

 

 そう聞くと、彼は頷きもせず答えた。

 

「分かんね」

 

 答えは見つからず、それを探すだけ。

 

 それも人生なのかもしれない。

 

「でも、後悔はないぜ? こんなトコにも住めるようになったし」

 

 そして彼はグラスを差し出してきた。

 

「お前みたいな奴にも会えた」

「……どうも」

 

 コツン、と軽くグラスを当てる。

 

 同じ世界に似たようなやつが居る。

 

 それは俺も奇妙な縁だと思ったし、代え難いものだと感じた。

 

 思えばこんなふうに酒を酌み交わすなんて、本当に久しぶりだ。前世でも、そんなに無かった気がする……ん?

 

「……アンタ、酒入れたろ?」

「ちっとは慣れとかねえと、綺麗なおねーさま方にお持ち帰りされちまうぜ?」

 

 ……そんな事は、ありえないと思うが。

 

「コレだけですからね」

 

 本当に久々の酒精は。

 思ったより旨く感じた。

 

 

 

 

 夜が明けて帰ったら、ルビーと月代に二人してダメ出しされた。

 

「朝帰りなんて不良なんだからっ」

「そんな子に育てた覚えはありませんよっ」

 

 いや。ルビーが怒るのは分かるんだが……俺、月代(お前)に育てられてないよね?

 

 姫川さんのお宅にお邪魔してたと伝えると、ようやく彼女たちの怒りが収まってくれた。

 

「男同士の友情を育んでいたっていうなら、まあ」

「お、おとこどうしの友情……ゴクリ」

 

 マテ、月代。

 お前の考えるようなことじゃねえからな(迫真)




月代:クンクン……お酒、飲んでないですよね?
アクア:移り香だよ、あと近いから(グイッ)
月代::アアン、恥ずかしがらなくてもぉ
ルビー:仲いいなぁ、ふたりとも(ホッコリ)
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