プロデューサーの娘になってしまった 作:だだ甘鏑木Pすこ
とか抜かしてますが、更新遅れて申し訳ないです。m(__)m
「やあ、お待たせ」
中折れ帽の鍔を少し斜めに上げて声を掛けてくる品の良い紳士。私はその気障な台詞回しに吹き出す笑いを堪えた。
「お久しぶりです、鏑木さん」
「ああ。最近はそっちに行けないからねえ。やっぱり綺麗だね、ルビーちゃんは」
「そ、そんなあ(テレテレ)」
お世辞だって分かってるのに嬉しそうなルビー。ママとしては嬉しいけど、腰が軽く見えるような言動をするパパには、ちょっとお灸を据えようかな(笑)
「娘みたいな歳の子には手は出さないっていつも公言してたでしょ?」
ジトッとした目で睨むとタジタジになるパパ。「こ、これはリップサービスというやつでね……」なんて言ってるので、くすりと笑って許してあげる。
「まあ、るーちゃんが綺麗なのは本当だから許しましょう♪」
「ははー」
恭しくお辞儀をするパパ。ブランド物のダブルのスーツに品の良いステンカラーのコート。首回りのマフラーは私が去年あげたお手製のやつだから少し浮いてるけど、そこも含めて御愛嬌だ。
「それにしても二人とも変装うまいね。本当に姉妹にしか見えないよ」
「あらあら♪」
「お褒めに預かり光栄ですわ♪」
るーちゃんと私はいつもの姉妹コーデ。今日はお揃のふわふわダッフルコートを見つけたからそれを中心にコーディネートしてみた。
トップスはブラウスに、てれーんとしたジレを合わせて、ボトムスは幅広のワイドパンツ。冬だから暖かにしないとね♪ 靴もそれに合わせてスニーカーにしてみた。実のところあんまり履かないから少し新鮮だ。
それに引き換え、ルビーの方はほぼ膝丈の巻きスカートに生足だよ。JKの気合いの入り方は凄いなと感心しつつも、ママとしては少し心配。確かに長めのブーツとニーハイ、スカートとの組み合わせはなかなかに見応え有るけど。
ちなみにウィッグも同じ茶色のミディアムボブのを付けている。髪の色を揃えると姉妹に見える。不思議だねw
「さて、じゃあ行こうか」
パパの声に頷く私たち。アクア達と同じようにキャリーケースを買いに来たのである。
ちなみに、ルビーはまたしても尾行しようとしていたので抑止力(あと資本として)パパを呼び付けたのだ。
『娘の為なら仕事なんて放り出すさ』
二つ返事で受けてくれたけど、本当に仕事に穴があったから受けてくれたというのは分かってる。幾ら何でも、そんな事は……しないよね?
買い物自体はすんなり終わった。店員さんのお薦めのを色違いで。特にこだわりもないけど、持ちやすさと手前のシリンダーロックが五桁の奴を選んだ。
「やっぱ自分のカラーになっちゃったね」
「分かりやすいですから♪」
ルビーは赤、私は藍色。どちらも自分のパーソナルカラーとして周知されている。私の色が藍色なのはどうしてかって? そりゃもちろん、
髪の色で言えば白に近いんだけど、それはかなちゃんのカラーだし。
「では、お嬢さま方。ご夕食でも如何ですかな?」
鷹揚にパパが言ってくるので、私はご令嬢のように口に手を当てて答える。
「あら、わたくし達を満足させるプランでもありまして?」
「育ち盛りの君たちを満足させるのは間違いないかと」
にこり、と笑うパパ。こういう芝居じみた事は時々してるけど、他の人がいる時にするのは初めてだ。
「おお〜、鏑木さん、役者みたい!」
「そ、そうかい? ハハハ」
ルビーの拍手に、素に戻って照れるパパ。
「じゃあ、行こう。予約はしてあるからネ」
新宿●島屋から三丁目方面へと歩く私たち。ちなみに荷物(キャリーケース)は配送してもらう事にした。荷物持ちがいるなら平気じゃないかって? 空でもキャリーケース二個はさすがに嵩張るし、パパにも悪いし、ね。
「ここだヨ」
「うわ、ここって予約無しだと厳しいって噂の……」
「ちゃんと取ってあるから平気だよ、ルビーちゃん」
気さくに笑うパパ。ルビーともかなり砕けた会話が出来るようになってるのが嬉しい。
中に入ると、お洒落なエントランスに受付をしているカップルの姿……あれ?
「ぐえっ!」
ルビーが咄嗟にパパのネクタイを引っ張って身を隠す。私は反対側だ。
「ん?」
「どしたの?」
「なんか、くぐもった声がした気がするんだが……気のせいか」
「ご案内致します、こちらへどうぞ」
「あ、はい」
……
…………行った?
中を見て、受付のお姉さんがこちらを怪訝な様子で見ている……彼らは行ったようだ。
「いまの……」
「お兄ちゃんだよね?」
「かなちゃんもいた」
「……い、息が詰まるぅ……」
アクアとかなちゃんが、ブラジリアンバーベキュー食べ放題のお店に二人で来てる……なかなかやるじゃない。お腹の具合に合わせられるし、ここはお洒落な雰囲気のお店だ。さすが、私の息子である(ただ、ムーブが若干十五歳の子がやることでは無いとは思う)
「あの、……お連れ様が苦しそうですが」
「ハッ?」
受付の店員さんが声を掛けなかったら、ルビーの手によってパパは三途の川を渡っていた、かもしれない。
『手慣れてない? 女の子の扱いに手慣れすぎてない?』
『そうか?』
『やってる事が金持ってるアラサーの業界人のそれよっ!』
「ホント、そうよね〜」
「まさか僕と同じ店をチョイスしてくるとは……やるな、
それを聞いての感想が二人とも少し辛辣ぅ(笑)
向こうでアクアが言ってる通り、芸能事務所の社長の息子という
もちろん、そうでないのは明白だ。
つまり、これはアクアが自身で学んできた知識……なんてこと学んでるの、アクア!(ギリギリ)
「ど、どうしたんだい? 歯軋りなんてして……もしかして口に合わなかった?」
「!、お、美味しいわよ、パパ。ちょっと筋張ってる所があって」
「そ、そうか。なら良かったよ(ホッ)」
パパのいる前でなんて事しちゃったの、私。実際、お肉は柔らかくて筋張ってるとこなんて全然無いけど。
それもこれも、アクアが悪い。
頬を膨らませてお肉を食べていたら、ルビーが隣から頬をついてきた。
「そんな食べ方だとリスみたいに見えるよ♪」
「ぶっ」
「ふえ?」
ルビーの指摘に吹き出したパパ。どうも本当にそう見えてたらしい。常日頃から小動物的な扱いはされているけどね。
「口いっぱいには頬張ってませんわ(プンスコ)」
ちなみに隣り合った席(衝立有り)なので私たちは全員ヒソヒソ話のトーンで喋っている。たぶん、向こうは気付いてない、はず。会話は続いてるからね。
『芸能界に歳の差恋愛が多いのは、こういうデートに慣れちゃうからなんでしょうね』
『まあ……こういうのは金持ってから覚えるものだしね』
うんうんと頷いてるパパ。自分とママとのことなのかな? そういえば幾つだったのかは聞いてなかった。今度聞いてみようっと。
『まあ、でも。相手に楽しんでもらおうと思えば、自ずとこんな感じになるんじゃね?』
……楽しんでもらう、か。
つまり、かなちゃんを楽しませたいと思ってたわけだ。
いい傾向だとは思う。
ルビーは隣でお肉に目を輝かせている。元々明るかったこの子も、ようやく昔のような笑顔を見せてくれるようになったという。
そして、アクアも。
普通の男の子のように女の子に興味を持つようになって……その子を楽しませようとデートプランに頭を捻るようになった。
まあ、あかねちゃんとビジネス契約してるくせにかなちゃんにまで粉かけてる最低クズ男ムーブなんですけどねっ!
そう考えると、アナタよりも酷い子に育ってるのかもしれない……育て方、やっぱり間違えたかな(←育ててないです)
向こうではまだ会話が続いている。
『そんなこと言って、あかねとはどうするつもり……なの?』
『ん? 契約は終わりになった』
「「は?」」
私とルビーの声が重なる。
『え、それって……』
『ビジネス交際は終わりってこと。俺みたいなのと、いつまでも交際しててもあいつに得は無いからな』
『得とかって……黒川はそれで、引き下がったの?』
『ああ。明日にはSNSで報告するって言ってた』
『そっか……♪』
ビジネス交際の突然の終焉。
なんだろう。
心情的には有り得ないと思っていた筈なんだけど……こうもあっさり別れるというのも、許容し辛い感じがする。
あかねちゃんは、納得したのかな?
隣のルビーに聞いてみようと思ったら。
「あのクソボケアニキがぁ……」
「ひっ」
瞳に黒い輝きを湛えてお汚い言葉を吐いていた。
「あのお」
「ビジネス交際とかフザケたことして、あまつさえ別れたとか、マジ有り得ないんですけどぉ? 地獄に堕ちて血の池で溺れとけってよお、マジで」
うわあ。
ルビーが、暗黒面に落ちてしまっているぅ。
どどど、どうしよう。
ここには
とりあえず、正気に戻さないと。
「る、るーちゃん」
……ぐす
え……?
「クソ親父みたいに女の子引っ掛けて、必要なくなったら円満に別れたとか。ホント、ふざけんなよ。男って奴はよぉ……」
……これは。
ひょっとして、ルビー的にはあかねちゃんのポイント、めっちゃ高かったの? そんでもってそれを振ったアクアは自分たちの父親とおんなじくらい最低な男って認識なわけ?
て、天真爛漫な子だと思ってたら……思った以上に拗らせてたよ、うちのコっ! 二人ともっ! あと、お口がすごく悪いですわよっ? ひょっとしてそっちが素なの? だとしたら、ママずっと騙されてたんだけど? なんか、悲しくなってきたぁ(混乱)
こちら側の雰囲気の悪さを気にすることなく、向こうは話を続けている。
『じゃあ……この行動の意味って』
『ん? キャリーケース選んでくれただろ? そのお礼に決まってるじゃん』
『え……』
ブツン
私の隣から、そんな音が聞こえた気がした。たぶん気のせいだ。堪忍袋の緒が切れる音なんて聴こえるはず無いんだから。
でも、隣の我が子は。
まるで夜叉のような顔をしていた。
すっと、立ち上がるルビーの袖を掴んで止めようとするけど、きっと睨まれて手が竦んだ。
パパ、なんとかしてっ!
そう思って対面に座るパパを見たけど……それは無理だと分かってしまった。二周り近く離れた歳の子供に、圧倒されていたのだから。
「……ああ」
すたすたと歩いていくルビーを、止める手段はもはや無い。
あとは。
せめて流血沙汰にならなければいいなあ、と願うだけ。
パパと二人で無力感に苛まれつつ、店内にスパーンッという音が響き渡った。
なお、お店には出禁になりました(笑)