プロデューサーの娘になってしまった   作:だだ甘鏑木Pすこ

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今回は短めです。

追記:原作と異なる楽曲名に変更しました。ここの新生B小町は三人ではなく四人なので、という理由です(2025/9/18追記)


南へ〜(行こう、ランララン♪)

 新曲『POP IN 4 』も出来上がり、ついでにその曲のMVも撮影することになった私たち。心待ちにしていた宮崎に出発する当日、そこには。

 

「なんでアクア(アイツ)がいないのよっ!」

「わたし、しーらないっ」

「どう考えてもアンタのせいでしょ、このおバカーッ!」

 

 私は、かなちゃんとルビーがやり合ってるのをメムちゃんと一緒にガクブルしながら眺めてます。

 

 空港なんだから少しは声を落として欲しい……外国人の皆様方が面白そうな厄介ごとを見守ってるのが堪らなく恥ずかしいぃ……

 

 例の一件で、アクアは宮崎への撮影旅行には同行しないと決めたそうで……まあ、ルビーのお怒りが解けるには時間かかるかもだし、旅程中ずっと顔を合わせてたら直るものも直らないと思う。

 

『一番歳下のお前に頼むのも間違ってるとは思うけど。アイツを頼む』

 

 出発間際の電話でのやり取り。

 

 基本的には優しいお兄ちゃんなんだよね。ただ、女の子関係が只管に怪しくなるだけで(笑)

 

『アクアさんも、家に誰も居ないからって羽を伸ばし過ぎないように、ですよ。学校だってあるんですから』

『やれやれ、ミヤコとおんなじ事言いやがるな。わかってるよ、心配すんな』

 

 ……本当なら。旅行なんてほったらかしてお世話したいと思うけど。彼はもう手のかかる子供じゃない。

 家事だって(ルビーより)出来るし、言われたこともちゃんと理解してる。

 

『ああ、それと。アイツが自由行動で動く時は付いててやってくれ』

『……? わ、分かりました?』

 

 なんだろう……温泉でも行くのかな? 確かにそれは楽しみかもだけど。

 

 私も用がないわけではないけど……今の私が行っても、たぶん彼は誰だか分からないだろう。

 

 アイドルオタクって言ってたから、新生B小町のことは知ってるだろうけど、アイではない私が行っても意味は無い……彼は喜ぶかもしれないけど。

 

 ならば、引き受けるしか無い。

 

 単純にルビーの事も心配だし。

 ああいう事言ってても、根はお兄ちゃん大好きっ子だからね。

 

「にしても。あかね、本当に別れちゃったんだネ……」

「メムさん?」

 

 心做しか、メムが気落ちしてるように見える。そういえば今ガチの時から彼女はあかねちゃんを応援してたっけ。

 

「あかねさんなら、もっといい男性が見つかりますよ。まだまだ若いんですから」

「そうだよねえ……私と違ってまだ余裕あるもんねェ……」

 

 あ、やば。

 地雷踏んだかも。

 

「メムさんもまだまだお若いですよ。なんたってJKなんだからっ♪」

「なんちゃってJKって言った?(ジトッ)」

「言ってませんよっ?」

 

 あーもう、面倒臭いなw

 こんなので、撮影旅行とか大丈夫?

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

「はい、どうぞ。次の方」

 

 手荷物の重量検査が終わり、俺は近くのベンチに腰掛ける。手荷物と言っても、ただのリュックが一つ。キャリーケースとか買ったけど、女と違ってそんなに荷物が嵩張らないのでこのほうが楽だったりする。

 

『あれ、白いから目立つしな』

 

 向こうでバッティングしたりするかもしれない。サングラスとフード付きのパーカー、マスクで誤魔化せるか?

 

 いや、撮影ってことは大半はスタジオ内だろうし、ロケと言ってもインスタ映えしそうな所だろう。あの病院や実家の辺りはそんなロケーションじゃないし。それでも、空港では気を付けないと。

 

 向こうは経費で落ちるけど、こっちは自費。選択としてLCCとなるのは自明の理だ。

 

 ちなみに学校には当初の予定通り休むと報せてある。

 

 なぜ、こんな回りくどい事をしてまで行くことにしたかというと……再確認のためである。

 

 再確認と言っても、吾郎の遺体のことではない。

 十年以上見つからないものが簡単に見つかるはずもない。あの時の不審者が、既に遺棄しているのだろう。

 

「マンガじゃあるまいし」

 

 そんな都合よくいくわけ無い。

 俺の場合、天涯孤独だったわけで親族や同居人は居なかった。基本的に捜索願というのはそういった近い人間が出すもので、職場が出してるとは限らない。そういう場合、警察は優先して探さないと思う。動くだけの理由が無ければ動かないのが警察という組織なのだ。

 

 まあ、今さらどうでもいい話だ。

 遺体が見つかっても雨宮吾郎として生き返る訳でもない。

 

 それに生き返ったとしても困る。俺はすでに星野愛久愛海(あくあまりん)であり、雨宮吾郎ではないのだから。

 

 ……本当に?

 

 この問題を考える時、いつもこの疑問が首をもたげてくる。

 

 あの時。

 メガネをかけた黒い影は、幼い頃の俺自身だった。ついに前世の姿すら忘れてしまったのかと疑問に思ったが、それは当たり前かもしれない。もう十年以上見ていないし、その間に出会った人間たちの濃すぎること。前世の姿は、はっきりいえば凡庸なアラサーの男だったのだ。

 

 実家には祖母と撮った写真があったはず。行方不明者の自宅などに誰も興味は無いだろうし、そもそも家があるとも知られていないような山の中だ。とはいえ、病院までは徒歩で行けるという好立地ではあった。

 

 あんな家を潰す理由は無いし、まだ残っているはず。誰か不法に占拠してる可能性もあるが、好き好んであんなとこに住む奴が居るならお目にかかりたいくらいだ。

 

 俺の旅は前世との邂逅。余計な人間は不要だ。MV撮影旅行に同行していっても上手く抜けられるとは限らない(頭に浮かんだのが月代なのは気のせいだ)

 

 このチャンスを逃すわけにはいかない。

 

 幸い、あいつらは羽田からの便のはず。こちらは成田だからここでバッティングすることは有り得ない。いつも使う携帯とスマホは家に置いてきてある。GPSでは東京から動いていない事になる。

 

「最近のスマホって高いな……」

 

 新たに別途購入したスマホを取り出す。前のスマホはルビーと一緒に購入した時の物で、名義はミヤコのものになっている。今回のは俺自身の名義だ。同意書を書いてもらうのに難儀したけど、日頃の行いのせいか許可してもらった。

 

 ちなみに、この契約はついさっき終わったばかりなのであいつらは誰もこの番号を知らない(ミヤコにだけは後で教えるようにとの通達があった。まあ、帰ってきてからでもいいだろう)

 

『……宮崎行き、発着準備が整いました』

 

 ……よし、行くか。

 

 かつての俺の故郷であり、生誕の地。高千穂へ。

 




同じ場所へバラバラに行くとかムダもいいところじゃん(笑)
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