プロデューサーの娘になってしまった 作:だだ甘鏑木Pすこ
ツクヨミの「あ゛?」で〆るとかおもしろかったです。
というわけで、久々の更新です。申し訳ないです(平身低頭)
「お主が
「? なにいってるの?」
パパと夜中の密会とか抜け駆けもいいところだ。虫の知らせというべきか(生理現象とも言う)
私も交ぜてもらおうと思って入ったけど、
まるで別人のようだ。この子、演技も出来るのかと思ったけど……メソッドにしては出来が良すぎる。黒川さんよりも精度が高いとか、この年齢の子供が出来るとは思えない。
その口角が僅かに上る。不敵な笑みというやつだ。私は威嚇するように言う。
「笑ってるの?」
「……そのようだな」
答える黒の言葉は、黒のものとは思えない。あの子はそう……もっと考えない言葉しか言わない。時折考えようとするけど、それが足りなくなる残念な感じなのだ。
「つーちゃんも飲むかい?」
「う、うん」
パパがそう言って席を立つ。リビングには私たちだけが残った。
「そう警戒しなくてもよい。お主の父親を寝取るつもりなどないわ」
「ね、寝取るっ……?」
黒らしくない言葉に動揺してしまう。それを愉しそうに見つめる彼女が、たまらなく憎らしい。
「……なんなの、いったい?」
悔しまぎれに呟いた言葉に答える彼女。それは私の予想を超えるものだった。
「私に名は無い。黒とは違う存在だ」
『それは、どういう……』
考えにふける瞬間に彼女は距離を詰めて耳打ちしてくる。おそらく、パパに聞こえないようにするために。
「黒と同じなのだろう?」
「!」
私の顔色を伺う、黒とは違うなにか。その口角がまた上がった。
「図星か」
ニヤニヤと笑う姿が、黒とは似ても似つかない。アイツとは全く違う存在なのだと再認識させられる。
「正体は隠したままのようだな」
「……それが、なにか。悪い?」
こちらを見透かしたことを言ってくる。憎らしいことだ。
でも、ソイツは一笑に付しただけだった。
「なにが悪い?
認めてくれる、らしい。
私が長年抱えてきた嘘を、認めてくれる人がいるとは思わなかった……こんなわけのわからない存在じゃなければ。
「お待たせ」
台所から戻ってきたパパは、お盆を携えていた。三つの器と、買い置きの袋菓子。
「夜食はあまり良くないけど、そちらのお姫様は何か食べたいようなのでね」
「よい心掛けだぞ、パパ殿」
うんうんと頷くアイツ。こうして喜ぶ姿は黒と変わらない。それは当たり前だ。姿は彼女のままなのだから。
「はい、つーちゃん」
「うん」
渡されるマグカップを、何故かアイツも手に取ろうとする。
「なによ、邪魔ね」
「私もつーちゃんだからの」
「はあっ?」
そこで、パパは額を叩いた。
「そっか。ツクヨミちゃんだと、つーちゃんになっちゃうか」
「え?」
いまいち話が分からない私の方を見て、口元をニヤけさせるアイツ。
「パパ殿に命名してもらったのだよ。私の名はツクヨミだ」
「はあっ!?」
ニンマリと笑う、よく分からん存在。くっそ、ムカつく!(おくちワルワル)
・・
それから少しの間、パパと黒じゃない何かを交えて夜食をした。ツクヨミと名付けられたソイツは、ピザ味のポテチに甚くご機嫌であり。ほとんど一人で食べてしまっていた。
「体は黒のものなんでしょ? 暴食はやめときなさいよ」
「なんのなんの。此奴はこの程度ペロリだぞ? 先ほどの夕餉では遠慮していたようだが、本来の食欲はもっとスゴいのだからな」
「そ、そうなんだ」
ていうか、やっぱり遠慮してたんだね。これから家族になるっていうのに、そんな他人行儀とかいらないっての。
「二人とも、まだ育ち盛りだからねぇ」
のほほんと言うパパ。まあ、確かにその通りなわけだし。しっかり食べてくれないと、こちらが困る。
とは言え、いまは深夜だし。袋菓子を食べ終えてしまえばあとは眠るだけだ。
「それじゃ、お休み。二人とも」
「おやすみ、パパ♪」
「うむ」
二階へと上り、私は自分の部屋へ入る。
「なんで入るの?(イラッ)」
一緒に入ってくるツクヨミに、私は苛立ちをぶつける。だけど彼女は気にした様子もない。
「余人を交えずに話をしたいからの」
「……」
それは、パパには伝えたくない話について。私も気になることがあるので、ため息をついてからドアを閉めた。
「もう遅いんだから、手短にね」
そう言うと、彼女は私のベッドに腰掛けてから大きく伸びをする。
「なに。大したことではない。黒の言う“ゴロウ”という男に関してだ」
「え」
……アクアのこと?
てっきり、私の前世のことを聞いてくるものだと思ってたけど。それはそれで気になる話なので聞いてみることにする。
「あやつ。怨讐が強過ぎるな」
「……怨讐?」
ベッドに座り、足をブラブラとさせるツクヨミ。見た目だけは黒なのだから特に違和感もないけど、そのまま妙なことを言い出した。
「うむ。私は
さすが、わけの分からない存在なだけあるとでも言うべきなのか。
「……いまは、どうなの? 私のこととか、分かる?」
「ぜーんぜん分からん」
あっけらかんと言う姿は、黒そのものだ。
でも。
「あの人がそんな……ありえないわ」
「なぜ、そう言い切れる?」
そう問われると、答えに窮する。
「だって……とてもいい子じゃない」
思わず、そんな言葉が出た。
アクアは私の子供にしては出来過ぎた子であって、それは事実だから。すると、彼女はハッと笑ってから言ってくる。
「あれは前世の記憶を持ったモノだぞ? “さりな”とやらと同じく、な」
その言葉に、ルビーの姿が思い起こされる。そして、胸が苦しくなることも自覚する。
「あの者は、本当に“ゴロウ”のことを好いているようだな。見ていてこちらが恥ずかしくなるほどだったぞ」
コロコロと笑う彼女だが、私の心はざわめき立つ。あのホテルでの独白。その場面が思い出される。
「……その。ルビーの気持ちって、どんなのか、分かる?」
「ん? どうとは?」
「その、LOVEとかLIKEとか……」
私の言葉を聞き、彼女の口元が
「ほほう? アイドル様も人の子だなぁ。そうか、気になるか」
「い、いいや、今のナシ!」
人の気持ちをこんな方法で知ろうとか。下世話な人間になってしまったような気分になり、すぐさま否定する。
すると、彼女が語り出す。
「……ふむ。“さりな”の方はともかく。“ゴロウ”の方はそういうのではなかったぞ」
「……え」
「アレは思慕、じゃろうな。もしくは羨望? 少なくとも愛欲の類は一欠片も見えなかったぞ」
「……そんなもの抱いてたら、私が幻滅するほうよ」
“さりな”という子は、余命幾ばくもない子供だったはず。そんな子にそんな目を向けていたとか、あっていいはずがない。
「だろうな。あやつからは優しき感情が溢れていた」
「……そうなんだ」
ひとのことを思いやるのは変わらない。それは雨宮吾郎だった頃も、アクアになってからも。
だからこそ、こんなにも揺れるのだ。
「だからこそ、解せぬのだ」
「?」
顎に手をおいて考え込む彼女。言ってはなんだが、黒の姿だと違和感しかない。
「時折見せる黒い感情……あれは憎き者がいる者が宿すものだ」
「雨宮吾郎さんが、誰かを憎んでいるとでも?」
「殺した相手を憎むというのは分かるからの」
……それは、確かに。
あの時の話では、病院で不審者を追跡した時に崖から落ちたと言っていたけど……
「今でも其奴を探しておるのかもしれぬ。私は滅多には表には出られぬ。ゆえに、お主が気をかけてやれ」
そういう事なら、言われるまでもない。
「分かった。彼は私が守る」
息子を守る。
いや、アクアを守る。
そのためなら、どんなことも出来る気がする。
ツクヨミは当てにならないし、黒は全く無関係な存在……とは言えないかもだけど。でも、私にしか出来ない事だ。
「……ありがとう、ツクヨミ」
不可解な存在ながら、私では知り得ない事を教えてくれたのだ。感謝の意を告げると。
「……すぴー……」
すでに寝息を立てていた。
あろうことか、私のベッドを占拠して。
『どこで寝ろっていうのよっ!』
心のなかで、叫ぶ。
さすがに寝入ってしまった少女を起こすのは、憚られる気がしたから。
結局、私は黒の部屋に行って、そこで眠ることにした。
夢には、誰も出てきてはくれなかった。
ちなみに。
この作品の中でのアクア(吾郎)は、あかねとの関係を解消していて、しかもかなり依存度の低い状況でした。
つまり、名探偵あかねは爆誕してない(笑)
結果として、彼は『アイの敵はいるはずだけど、どこのどいつかはまだ分からない』という状況です。
アクア単独では辿り着けないとは(笑)