空間と能力によってチート並みの力を発揮している木偶をなんと憧憬で無理くり突破したホシノさん。すごい愛だ…
まぁ、そんな簡単に攻略できたら苦労しないんですけどね
今になっていうことではないですし、前回のお話を見てくださった方はやんわり思ったと思うんですが、こちらの世界のホシノさんは本編ホシノさんより4~5倍ほど身体スペックが上です。
そうです、アビドス三章ホシノさんより盛ってます。
盛りたかったんだもん。ゆるして
またまたお知らせなんですが、原本に推敲と加筆をして投稿しているこちらの作品ですが、実は完結しきっていません
ということはですね、原本が尽きた瞬間更新が一時的に超スローペースになります。
『やっと一撃通した…けど…』
のたうち回っていた木偶が人間ではありえない動きで立ち上がる。
『そうだよね。能力の代償で簡単に倒れてくれるものかと思っていたけど、そうはいかないか…
さっきと同じことを何回もできるかと言われれば不可能だしな…どうしよ』
脳内で次の手への解決策を探る。
『今攻撃が通ったのは自分の中の思考がすべてユメ先輩で埋め尽くされた刹那に生まれた一撃に過ぎない…次はそれができる気がしない。
頭の中はもう"そこ"には至れない』
「ん?」
先ほどまで立ち上がっていた木偶がいつの間にかいなくなっている。
「どこへ……」
あたりを見回すが、見当たらない。しかし、その存在自体はこのフロアの中にいることがわかる。
ガコッ!!
「上!?」
上から来た超重量級の攻撃を間一髪かわす。天井からの垂直降下による一撃はタワー全体を大きく揺るがすほどの威力を秘めていた。
『なんて出鱈目な…!』
サンクトゥムタワーの建築技術はキヴォトスにある建造物のどれよりも頑丈に作られていると聞いたことがある。
例に挙げるとするなら、核ミサイルが数発撃ちこまれたとしても一切揺れることはなく、また傷がつくこともないらしい。
真偽は定かではないが、もし仮にその噂が真実なのだとしたら。
あの一撃は威力だけなら核ミサイルの攻撃を優に超えるということになる。
『あんな攻撃、腕で受けたとしても骨が砕ける気がする。もらったら不味い…!』
再びゆっくりとこちらを振り返る木偶。その肉体は常に脱力した形となっており、人間で言う通常のリラックス状態であった。
完全な脱力状態からの攻撃は自分の持つエネルギーの全てを威力に転用できる。
通常、殴る際には力を入れるため力む。しかし、この"力む"という行為が無駄なものとなってしまう。それを完全に排するのが"脱力"である。
脱力からの一撃は主に速さと体重が威力に上乗せされるため、威力が上昇する。
そして、脱力する際に乗せた力は横向きに転用することができない。それを踏まえてのあの落下攻撃である。
『あの木偶はそれを100%の転換率で行っているんだ。だから、あれほどの威力が出せる…』
『それと…もう一つ解せないことがある…』
頭の中に浮かんだ疑問を一時片隅にのけると、木偶のいる場所に向き直った。
『今度はいる…天井まで移動したあの速さが自前のものなのか見極めないと…』
敵を見据える。眼前に存在する敵を。
そして、その敵は…
その場から音もなく消えた。
「!?」
そして再び、天井に現れる木偶。
再び間一髪でかわす。
『空間跳躍!!』
木偶が行っていた音もなく移動してくる技術は神秘によってなされているもの。
それが"空間跳躍"と呼ばれるものである。
"空間跳躍"は自身の認識する範囲を三次元上に規定し、自分を原点。移動する座標と高さにそれぞれ一つずつの点を置き、その直線間を瞬時に移動するというもの。
事実上の瞬間移動である。
『けど、あれは扱い難いことこの上ない。座標の設定は寸分単位で行わなくてはならないし、その座標を設定するための空間把握能力も必要になってくる。おまけに、自分が出現する条件までを瞬時に設定した上で移動を行わなくてはならない…』
『何であそこまで瞬時に跳躍を行えるのか…いや、それに関しては考えても仕方ないか、そういうものだと思っておこう』
再び能力の分析を終えると、壮絶な打ち合いが始まる。
木偶の通常攻撃に加えて天井からの一撃必殺。さらに、こちらは能力の壁を突破するべく、新たな打開策を生み出さなくてはならない。
さながら小鳥遊ホシノといえど、なかなかの苦行であった。
打ち合いが10分以上続く中、攻撃を受ける寸前に無意識で放った脇腹への一撃が木偶の能力を貫通する。
『攻撃が通った!?』
また真後ろに吹き飛ばされる木偶。先ほど受けた小鳥遊ホシノの攻撃よりも威力は低いためそれほど後方への移動はなかったものの、それでもダメージはしっかりと入っている。
『なぜ通った…?何も変わったことはしていないはず……』
『さっきの攻撃との違いといえば…自分から差し向けた攻撃ではなく無意識のカウンターだったくらい…』
ここで小鳥遊ホシノに電流走る!!
『あるじゃんか!頭を介さなくても攻撃を行う方法』
再び木偶がこちらに攻撃を仕掛けてくる。小鳥遊ホシノは攻撃を直撃寸前まで待ったうえで避けることに徹した。
その結果、小鳥遊ホシノの攻撃は変質を遂げる。
全ての攻撃が木偶に通るようになっていたのである。
小鳥遊ホシノが打開策として生み出したもの。それは"脊髄反射"による攻撃である。
人間は通常、脳からの信号を通して行動を確定する。それが通常の行動であり、不変の行動様式であるためである。
しかし、もう一つ人間には脳の信号を通さない反応がある。
それが先述の"脊髄反射"と呼ばれるものである。
脊髄反射とは、一般に認知、判断を必要とせず、反応が脊髄内で完結するものを指す(wikpedia抜粋)
中でも有名なものは、痛みや逃避によって引き起こされる反射であろう。
とても暑いものを触ったときに、反射的に手を引っ込めるアレだ。
小鳥遊ホシノは、この反応を攻撃に転じ、応用させた。
さも簡単にできるかのように語っているが、普通はそんなことはできない。
人間の本能と呼ばれる部分に備わっている無意識然の反応を己が思う形に転用させることは、人間の創造された仕組みを根本から作り変える行為に等しい。
簡単に言ってしまえば、我々が常時行っている呼吸が必要な体から不必要な体に変化させるといったことと同義である。
それはまさしく、神が行うに等しい行為に違わない。
通常ですらどのような人間にも行えないような行いを嵐のような攻撃を避け続ける中で成した。
正に天才。
小鳥遊ホシノは解釈した己の有する神秘の特性を理解しつつあった。
そしてそれは…
"一段階上のステージに立つことを意味する"
しかし、多大なる代償が伴うことも忘れてはならない。
木偶は打たれ続けていた。自分は攻撃を続けながらも、小鳥遊ホシノの打撃を常に受け続けていた。
しかし、その表情に変化は一つもない。
『おかしい、そろそろ倒れ伏してもいいくらいの傷を負っているはず…』
血も出ている。
痣も紫色に代わっている。
しかし、倒れる様子も。
ダメージを追っている表情もしない。
『なんだ、この違和感…』
違和感を感じた数舜。小鳥遊ホシノの思考が疑問にリソースを割いたことにより避けるタイミングがわずかにずれたのである。
ゴキッ‼
小鳥遊ホシノの体は宙に浮いていた。
油断
相手に対する思考が緩んだ瞬間。
木偶の右腕が小鳥遊ホシノの心臓部めがけて飛んできていた。
とっさに右腕でかばったはいいものの、右腕の骨が折れている。
加えて、吹き飛ばされた際に壁に激突したことによる脊髄へのダメージが大きく運動能力への大幅な低下要因となっていた。
『ッツ…!』
「カハッ…!!」
『攻撃が重すぎる…!』
『いや…普段はここまでのダメージを受けるようなことはないはず…』
そう、小鳥遊ホシノが想定していた自分の身体への致命傷を与える攻撃はあの落下攻撃のみだと想定していた。そしてその想定は外れてはいない。が、一つの変数がある。
『おそらく、反射を攻撃に転用した際の代償…!』
神業を成す。それも、己の肉体の根本的な性能の改変。
その代償は身体機能の大幅な悪化。
一つの壁を破るために支払った代償は、致命的な一打を残してしまった。
足が小鹿のように震え、移動がままならない。それほどまでに木偶の一撃は重かった。
木偶はゆっくりとこちらに向かってきている。空間跳躍を使う間もないのだろう。
獲物はすでに瀕死の状態であり、何も急ぐ必要はない。
あとは仕留めるのみ。
木偶が小鳥遊ホシノの眼前にたどり着いた。
そして…
その拳が、小鳥遊ホシノに振り下ろされた。
うへ?ピンチ?