【GBBBB雑談スレpart1314】
の後半に相談をしていた彼のちょっとした小話。
SS01『ショップユウガサキ』
漆黒の宇宙を切り裂くように、いくつものビームが軌跡を作る。小惑星や戦闘の残骸が漂うデブリ宙域にて、今まさに戦いが起こっていた。
1機は、全身を赤く染め上げられた高機動型ザクⅡだ。両腕をガーベラテトラのものに変更し、左腕にリーオーの丸いシールドを備えたその機体は、もう1機を追う形で、バズーカ付きのロングライフルによる射撃を続けていた。
FCSはよくある汎用タイプだが、やや中・近距離寄りに調整している。ロックオン速度も速い。バズーカ付きロングライフルも、神経を削るような丁寧な工作により銃身の僅かな歪みもないほどの完璧な仕上がりである。ビームの発射速度も高速戦闘向けに高めてある。
だというのに、まるで当たる気がしない。デブリ宙域は障害物になるものが多い。行く手を遮るデブリに赤い高機動型ザクⅡの絶え間ない射撃。追い立てているはずだ。今の状況は自分が主導権を握っているはずなのだ。
相手の逃げ道を塞ぐように、少し先に漂っている岩塊にライフルを撃ち込んで即席の散弾にする。しかし、それすらも、もう1機のZZベースらしい黒い機体は巧みなスラスターの切り返しで回避した。そのままスピードを落とすことなく、デブリの合間を縫うように飛行する。
「クソッ・・・!」
思わず悪態が漏れる。視界の端で刻々とカウントが減り続けている。もうあまり時間は残っていない。その事実が、赤い高機動型ザクⅡを焦らせる。バズーカを発射し、避けた先に腰に増設した5連装ミサイルポッドで弾幕を張る。そこにすかさず、ロングライフルでミサイルを撃ち抜いた。
撃ち抜かれたミサイルが爆発。さらに誘爆しいくつもの爆発が花開く。点がダメなら面で制圧というわけだ。ただでさえ多いデブリに、ミサイルの弾幕。いくら機動性に優れていようが、これならば無傷とはいくまい。
そう考えたが、次の瞬間には驚愕に変わった。爆炎を切り裂いて飛び出してくる黒い機体は、目立った損傷らしい損傷もない。ダメージを受けていたとしても、微々たるものだろう。なんて機体だ、呟きが漏れる。
「・・・時間切れ・・・だよ・・・」
通信機から少女の声が聞こえた。見れば、カウントはゼロを刻んでいた。時間切れだ。彼女の言う通り。これはハンデだった。バトル開始から3分間の間は一方的に攻撃してもいいという。
ZZベースの黒い機体が、青白いスラスター炎を尾のように引いて飛び上がる。青いオーラを放ちながら、МA形態からMS形態へとモードチェンジする。
両脚が展開され、開いていた胴体が折り畳まれ、格納されていた頭部が突き出す。青いV字のアンテナに、大きな一本の青い角。ツインアイは乗り手の少女と同じく、青と黄色の輝きを放つ。
「ファフニクス・・・飛翔する、よ・・・」
ファフニクス。財宝を抱いて守るという邪竜の名を関した黒い機体が、赤い高機動型ザクⅡを見下ろしていた。
「負けた・・・」
「お前はまだ持った方だって。帰りにМAID-МAIDEN*1寄ろうぜ」
「うぅ・・・コバトちゃんに慰めてもらう・・・」
「実はそんな凹んでないだろお前」
がっくりと肩を落としながらガンプラバトルシミュレータから出てきた、赤い高機動型ザクⅡを駆っていた男を、先ほどのバトルを観戦していた友人の男が慰める。
ここは〝ショップユウガサキ〟のガンプラバトルスペースであり、週末限定のガンプラバトルが行われていた。毎週5人だけが挑戦権を得られるその週末限定バトルは、ショップユウガサキの看板娘である
この限定パーツを目当てに、あるいは冬香を目当てにやってくる客で、週末は込み合うのだ。
「ふぅ・・・」
「あ、お疲れ。夕画崎さん」
「ん・・・また、来たんだ・・・」
「ま、まあ、家にいても暇だから。あはは」
ガンプラバトルシミュレータから出てきた冬香を出迎えたのは、冴えない感じの黒髪の少年だった。
彼は近頃、週末になればよくショップに来ている。名前は
冬香はそれを見て、四方田の顔に視線を移した。
「・・・挑戦、してみる?」
「えっ!? い、いや、無理だよ、俺なんかじゃ・・・!」
挑戦。その言葉の意味するところは一つしかない。四方田はすぐさま首を横に振った。
・・・そうだ、無理だ。四方田は心の中に諦めの言葉を落とす。彼もついさきほど行われていたガンプラバトルを見ていたのだ。冬香と戦っていた人のガンプラ、ミキシングされていたし、見たところかなり丁寧な作りをしていた。日々学園で様々なガンプラを見ているからこそ、ぱっと見でもそのガンプラの完成度がある程度はわかる。
ちらりと腰のガンプラケースを見る。中に入っているのは、ミキシングのされていない素のヅダ。掲示板に相談した時のアドバイスを受けて、会話の切っ掛けにでもと買ったものだ。せっかく買ったのだしと、自分なりに丁寧に作ったガンプラでもある。なんとなく愛着もある。
だがこのヅダはミキシングもしていない。そんなガンプラで冬香に、ファフニクスに挑戦をしたところで・・・。
「・・・その子は・・・挑戦してみたいって・・・言ってる」
「え?」
「ガンプラバトルは、やってないとわからない・・・でしょ?」
冬香の
「俺は・・・」
この一週間を振り返る。自分がやってきたことは何だったのか。それを思い返す。拳を強く握りしめた。そうだ、最初から無理だと決めつけるよりも、何よりも、
「俺は、挑戦・・・してみたい。君に」
「・・・うぃ・・・。それじゃあ、始めようか・・・」
ふっと微かな笑みで返して、冬香は筐体型のガンプラバトルシミュレータに入っていった。あのファフニクスを相手にどこまで戦えるかわからない。けれど、今できる精一杯をするだけだ。ガンプラケースから取り出したヅダを手に四方田は頷いた。
TIPS:
【四方田(ヨモダ)】
新台場ギガフロートにある〝私立聖ドミニオン学園〟に通う中学生。
週末にはコンビニ〝アークエンジェル24〟で買ったコロッケを持って〝ショップユウガサキ〟に通っている。使う機体はジオン系が多く、最近はヅダをよく使っている。
【夕画崎冬香(ユウガサキ・フユカ)】
【挿絵表示】
新台場ギガフロートにある〝私立聖ドミニオン学園〟に通う中学生。
輝くような銀髪に、青と黄色のオッドアイの少女。中学生ながらそのスタイルはよく、健全な中学生男子の何かを危なくさせる。同学年の男子生徒たちには「夕画崎を好きなのは俺くらいなんだよな」と密かに思いを寄せられているが、本人は無自覚。
夕画崎家は夜ノ森家の遠縁に当たり、こちらの〝ヨノモリ・レイ〟とは親戚の間柄。常に眠そうにしており、昼休みはカバンを枕代わりにしてよく寝ている。しかしガンプラバトルでは普段のほわっとした感じから一転、鋭いマニューバを見せる。
ガンプラに対しては妙に感覚が鋭い。そのガンプラに込められた思いを〝声〟として読み解くこともある。
【ファフニクス】
【挿絵表示】
【挿絵表示】
冬香が可変MS〝ファーヴニル〟をイメージしてビルドしたガンプラ。
ギャプラン系の可変機構を有するファーヴニルに対し、こちらはそのベースになったZZ系の可変機構を有する。頭はSガンダム、背部はZZ、脚部はトライオン3になっており、両腕はムーバブル・シールド・バインダーを意識してブースターを増設したAGEー2ダブルバレットのツインドッズキャノンを装備する(最初はギャプランから流用する予定だったが、可動範囲やパーツの干渉を考慮し、ツインドッズキャノンになった)。
カラーリングは全身黒に染められているが、黒一色というわけではなく、所々に青や黄色が入っている。ツインアイは冬香と同じく左側が青、右側は黄色になっている。
武装は手持ち武器のダブル・ビーム・ライフル、背部バックパックにはビームキャノンを兼ねるハイパー・ビーム・サーベルと21連装ミサイル・ランチャー、両腕はツインドッズキャノン、両脚にラプターブレイカー。
【ショップユウガサキ】
冬香の実家でもあるガンプラショップ。ガンプラだけでなくガンダム系のアーケードゲームに、今やG-BASEやガンブレ学園、私立聖ドミニオン学園といったガンプラ特化の学園にしか設置されていない、筐体型のガンプラバトルシュミレータも置かれている。
週末は5人限定で冬香と戦えるガンプラバトルが開催される。他にもガンプラバトルシュミレータのランキング更新を目指したり、週末だけ店に出てくる冬香目当てに来る学生たちで賑わう。