日米同盟召喚   作:パスタ〜マン

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懲りずに新たな小説を書き出すアホは私です()
なんか知らないんですけど筆が進むわ久しぶりにリベンジも兼ねてやろうと思っていたらガチで書き上げてしまいました許してください()

こんな駄作でも良ければ見ていってください…………。


第一話

"歴史とは一つの糸のつながりである"

 

誰が言ったか、全くもってその通りであると筆者こと私も感じる。もし、ナポレオンが世界を征服したら?大ドイツ主義者が勝利したら?イギリスが植民地政策に失敗したら?

少し例を挙げても、それが実際に起こったら今の世界は全てが異なってしまう。それは、日本も同じである。日露戦争で敗北したら、アメリカと友好関係を築いたら、幕府が早期に崩壊したら……………そう考え出すと、思考の坩堝に嵌ってしまう。だが、こんなことを考えたことはないだろうか?

 

もしもーーーーーー

 

 

 

大日本帝国が勝利したら?

 

 

 

これは、第二次世界大戦に勝利しアジアの覇者となった日本の異世界録であるーーーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

 

 

「…………ははは、どうしてこんなことに。」

 

 

当代大日本帝国総理大臣の"神田 信治郎"はぼやく…………どうしてこうなった、と。ことの始まりは元旦から十分もしないうちのことだった。

突如として地震が発生し、各地で小規模な混乱が起きたがそれは問題ではない。その後に起きた………異世界への転移が問題だった。非現実的なことで場合によっては精神科すら勧められそうな話だが、歴とした事実であることが高官達の胃を締め付ける。

 

 

「……の、そ…り……あの、総理?報告を…………」

 

 

「あぁ、すまない。少しぼーっとしていた。続きを頼めるかな?」

 

 

「はい、では………今から約二十二時間ほど前、緊急発進した二◯式超長距離噴進爆撃機"富嶽"が大陸を発見しました。それと同時に既存の国家や地域と合致しない未知の文明を発見し、高高度撮影を行いました。続いて、第四◯一飛行団所属の偵察機がさらに低空で第二次偵察を行ったところ、中世頃の文明であることが判明しています。」

 

 

「わかった、それでその他には?」

 

 

「外務省からは国交や関係を樹立し、友好関係を結ぶべきとの声が上がっております。そのための外交官の斡旋等の用意は済ませているようです。」

 

 

「その件についてはわかった。国防総省に話を通して艦隊を護衛として派遣しよう。だが、もし相手方が攻撃をしてきた場合に備え海兵隊による救助作戦と占領作戦の立案も検討するように指示を。あと、これから一時間以内に緊急会議を行う。各大臣の招集も頼む。」

 

 

「そちらについてもわかりました。すぐに会議室を準備をしておきます。」

 

 

「うむ、では頼んだ。」

 

 

「はい、では私はこれで…………」

 

 

そう言うと、報告をしにきた人間は退出する。閉じられた扉を見つつ、神田はまたため息を吐いてしまう。ポケットからタバコを取り出し、ライターで火をつける。今日はいつにも増して吸う本数が多くなった。

なんで日本が貧乏くじを、と嘆いていたがその直後にさらに情報が入って来た。

 

 

 

 

「そ、総理!!」

 

 

「どうした、核戦争でも起きたのか?ならここは天国なのか?」

 

 

「そんな場合ではありません!!先程、樺太総合電波探知基地から連絡がありました!!」

 

 

「ははっ、まさかジャックスパローの船でも見つけたのかね?」

 

 

「い、いえ、それが、その…………」

 

 

「………勿体ぶらずに言いたまえ。何があったんだ?」

 

 

 

 

「べ、米海軍第7艦隊の信号をキャッチしました…………」

 

 

「は?いや、待て。第7艦隊はロスサンゼルスを母港にしていただろう?なぜ樺太、しかも異世界の筈なのに信号を捉えられたんだ?」

 

 

「い、依然として調査中です………」

 

 

この後に判明することだが、樺太から東に進んだところに北アメリカ大陸…………それを統べる覇者ことアメリカ合衆国が転移していた。

前世界では一時的な敵対関係だったが、ドイツの躍進とイギリスの崩壊、民主主義の孤立が不思議で強固な縁を結びつけた。

 

それこそが、半世紀にも続く日米同盟こと"共栄圏"

 

太平洋に面したほぼ全ての国々………前身の自由国家連合共同体や大東亜共栄圏の加盟国、そのすべてが加盟し失われし秘宝のインド共和国、南米の盟主ブラジル、中東の王国も参加する巨大で包括的な同盟だった。

その規模も存在意義も………欧州を支配し、ソ連を下したドイツを真正面から叩きのめす為にあり己と己の子孫が何の憂いもなく過ごす為に作られたものでもある。

 

 

さて、話を戻そう。

 

 

 

 

「はははっ、まさかこうして再び連絡が取れるとは思いませんしでした………大統領閣下」

 

 

『えぇ、そうですね。Mr.カンダ。こうして貴国と再び対話を交わせることを喜んでおります。』

 

 

「早速ですが、貴国のお力をお借りしたく…………」

 

 

『わかっています。この世界についての情報共有ですね?』

 

 

「はい、それで貴国は何か情報を………?」

 

 

『…………残念ながら。我々も貴国が転移して数日後に来たので何もわかっておりません。』

 

 

神田と電話を繋いでいる男………"ファニー・F・ハート"はアメリカ合衆国現大統領だった。彼は諸外国との協調と対独への牽制を唱える彼は国民や諸外国から高く評価されており、実際に"2018年パナマ危機"にも迅速に対応していた。

ともあれ、彼の国のCIAを以てしても情報は断片的でほぼ無いに等しかった。それもまた転移により保有していた衛星の消失が原因だ。

 

 

 

そうしている中、さらに情報は入ってくる。

 

 

 

 

「……ん?どうした、会談中だぞ………は?……わ、…かった」

 

 

『Mr.カンダ、どうされましたか?』

 

 

「……ははは、いやはや更に面倒ごとが起きるとわかったのですよ………」

 

 

その後、ハートは何も言わず机にある腹痛薬に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

時は遡り、この階段から三時間ほど前

 

"クワ・トイネ公国領海付近

大日本帝国海軍第三艦隊 旗艦[富士]"

 

この時、派遣されていた第三艦隊はクワ・トイネ公国の臨検を受けていた。その時の臨検を対応した船員達は目の前に跨る300mに迫る城に見惚れて一瞬気が抜けてしまう。

しかし、そこはプロというべきかすぐさま気を持ち直して甲板に上がっていた帝国軍人の助けを得ながら昇ってゆく。

 

 

 

「………こ、これは、白兵戦ができてしまうのではないか?」

 

 

「ははは、確かにこの艦艇は大きめな方ではありますがまだまだ居るものですよ。」

 

 

案内役の下士官は朗らかに笑いながら応接室へと彼を連れる。この時、臨検へと来たクワ・トイネ公国の軍人達は見知らぬ兵装に加え規律の行き届いた兵を見て侮れない国とひしひしと感じていた。

 

 

———こんな国に祖国が挑んだとして勝てるだろうか?

 

 

それが彼らを支配する。頬に冷や汗が流れ、その現実を直視し改めて考えると、ひと吹きで散り行く祖国に勝ち目はないと諦めていた。

 

 

「失礼します、臨検に来た公国の方々を連れて参りました。」

 

 

「うむ、入ってくれ。」

 

 

中から壮年期ほどの男の声が聞こえた。それを合図に下士官も扉を開き、自分達を部屋の中へ招く。そうして、自分と連れて来た部下二人を座らせ目の前の男に目を向けた。

 

 

 

 

「初めまして。私は大日本帝国外務省の外交官………"朝田"と申します。以後、お見知り置きを。」

 

 

 

それが、クワ・トイネ………ひいては異世界全体と日米の初めての接触でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央歴1639年3月22日

クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ

 

 

この二ヶ月はクワ・トイネと隣国のクイラ王国にとって激動とも言うべき日々だった。

まず、日本と呼ばれる国の使者は先の領空侵犯を詫び、国交を結んだ。そして、そこから流れる民生品はクワ・トイネを豊かにした。鉄道と呼ばれる馬車の倍以上の輸送力を持つ機械が国土を網目上に覆い、物流革命が起きた。そこから、各都市間の移動時間は大幅に縮まり民衆の生活も豊かになり始める。

また、隣国のクイラ王国は別の意味で重要な国であり、クワ・トイネ共々……現実世界で言うホワイト国判定を下されていた。そうして、日本とその友好国のアメリカ合衆国からさまざまな支援を得ている。農作物の輸出で黒字が積み重なり、首相の"カナタ"はホクホクとした顔で執務に励んでいた。

 

 

"コンコン"

 

 

「入ってくれ。」

 

 

「はっ、失礼します。」

 

 

秘書官が報告書を束ねながら喜びを隠しきれていない声色で入室する。その事を不思議に思いながらも日本とアメリカとの間で結んだある一つの条約を思い出す。

 

 

「おぉ!もしや、先の"日米桑技術支援協定"か!?」

 

 

「はい、その通りでございます。」

 

 

そう言うと、天にも昇るほどの喜びが湧き上がる。"これで、隣国のロウリア王国に怯えずに済む"と、カナタは思った。

 

では、この日米桑技術支援協定とはなんだろうか?

それは、クワ・トイネとクイラが隣国のロウリアに悩まされていると知った日米両国が提案した政治と軍事に関わる協定だった。

短期間でこの二国を庇護し、急進的な戦力の増強を目論むこの協定では旧型の軍需物資等の無償供与に加え、新たに再編された日米同盟の枠組みに組み込む話だった。

また、更に進むと日米両国からの師団派遣を行う手筈が整っている。尚、この協定はロデニウス大陸に存在するすべての国家と結ぶ予定だったが残りの一国…………ロウリア王国からは拒絶されていた。

 

 

「………話は変わるが、ロウリアの動きはどうなっている?」

 

 

「その事についても報告が…………」

 

 

クワ・トイネ、クイラの隣国のロウリア王国………その国是は"亜人の殲滅"忌々しきドイツ第三帝国と通ずる危険な国だった。

 

それは最初に聞いた日米両国は非常に苦い顔をしており………断られた際には"こっちから願い下げだった"と当時の外交官は語る。

そうして、膨れ上がった欲望の剣は彼等に向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

ロウリア王国王都ジン・ハーク ハーク城内"王の間"

 

 

「………国王陛下、すべての準備は整いました。あとは、陛下による裁可によって忌々しき彼の国を滅ぼすことが叶うでしょう。」 

 

 

白銀の鎧に身を包み、王へと平伏する男の名はパタジン………ロウリア王国の将軍である。そして、あたりには同じく国の要職につく人物が並んでいた。

皆々、顔は悦に浸るような恍惚とした表情をし今か今かとパタジンの報告………それを聞いたロウリア王国国王の"ハーク・ロウリア34世"の声を待ち侘びていた。

 

 

「二国を同時に相手取るとして、勝てるのか?」

 

 

威圧に溢れた気が辺りに充満する。ハーク・ロウリアはパタジンに問い掛ける。

その期待と疑問に応えるべく、パタジンは自信に満ち溢れる声で応えた。

 

 

「えぇ、もちろんです。一国は農民の集まり、そしてもう一国はただの荒地です。我が国、そして国王陛下が敗北する可能性はありませぬ。我らの国力はロデニウス大陸随一を誇ります、対するは孤立無援の小国です。勝負は既に決していると言うべき圧倒的な戦力を我らは持ち得ているのです———!!!」

 

 

「…………ははっ、くっははははははっ!!!」

 

 

静かな部屋に、高笑いが響く。王はそれ程までに歓喜していた………先祖が成し得なかった偉業を達成できると、王国に栄光をもたらせる、と。

そうして、最後につい一ヶ月前に接触をして来たある国々のことを思い出す。

 

 

「宰相よ、ひと月前に接触をして来た日本とアメリカという国については何かあるか?」

 

 

「情報は少ないですが、この大陸から北東に1000km進んだところにあるようです。ですが、ここまで距離が離れている上に軍事的影響は少ないでしょう。」

 

 

「国軍内の専門官も同じような見解を示しております………そして、御膳立てはもう終わりです。国王陛下。」

 

 

 

 

「…………今、ハーク・ロウリアの名に於いて宣言する。我が国の全力を持ってして亜人の国を破壊せよ!!!!」

 

 

 

 

 

「「「「「「うぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!!」」」」」」

 

 

瞬間、王城内に歓声が響く。ここにいる全員が今日までに様々な苦渋を飲んで邁進して来た。全ては亜人殲滅のため…………それがいま成就しようとする、口にするだけでも甘美な味に酔いしれてしまう。

 

 

「クックックッ、大王殿……成功の暁には対価を支払ってもらいますぞ。」

 

 

「…………わかっておるわ。」

 

 

異質なローブを被る男はねちっこい笑みを浮かべながらハーク・ロウリアへと話しかける。それを、忌々し気に返すハーク・ロウリアは亜人殲滅後にフィルアデス大陸………その盟主たるパーパルディア皇国を攻めようと計画する。だが、今は目の前の目標に集中しようと改め直し各高官に命令を出す。

 

 

 

 

 

 

しかし、彼らは気付かない。相手をしてはいけない国に喧嘩を売ってしまった事に。

 

 

 

 

 

大日本帝国帝都東京 首相官邸大会議室

 

 

「………それで、ロウリアは戦争を起こすというのかね?」

 

 

「はい。おそらく、遅くとも一ヶ月以内には行動を起こすとの試算です。」

 

 

神田を含めた各大臣及び、臨時で同席しているアメリカ合衆国高官達も非常に険しい顔をしている。

重苦しい空気にはロウリアに対する怨嗟とドイツへの恐怖が思い出される…………前世界でドイツは欧州の全てを破壊した。国家は潰え、命は散り、暗黒の大地は嗤っていた。栄光も意思も等しく食い潰された欧州には長い恐怖が、憎悪が渦巻く地獄となっていた。それを全世界へと拡大しようとする愚者に、国民は恐怖し、嫌悪し、その全てを打ち払おうとしていたのだ。

それを一番知る日米両国は怒りに震え、国民が知れば激怒するような情報に続きがある。

 

 

「………そして、ここからが本題ですが今戦争に於ける我が国とアメリカの介入をどうするかですがーーーーーー」

 

 

「無論だ。ロウリアが攻め込めば集団的自衛権に基づき我が国は参戦する………彼のモノ達をのさばらせば我が国に対する脅威となる。」

 

 

外務大臣が即答する。それを他の大臣も頷き返していた。各々、打算や目論見はあるが理念は一つに一致していた。

 

 

 

『ロウリアを潰す。』

 

 

 

ハート大統領以下合衆国の高官達も同じようにロウリアへの反撃と解体を同意していた。

 

 

 

 

 

 

数日後

クワ・トイネ公国 公都"クワ・トイネ"

 

 

「………ですので、日米両国としてはロウリアが攻撃を行った場合即時参戦をお約束致します。」

 

 

クワ・トイネ駐在日本大使館の大使が全権を委任され、此度の起こりうる戦争…………ロウリア解体戦争について説明をする。それをカナタと、同じく派遣されていたクイラ王国の全権大使が驚愕と安堵に包まれながら聞いていた。

 

 

「まず、クワ・トイネ公国首相として大日本帝国並びにアメリカ合衆国への感謝をさせて下さい。誠に、ありがとうございます。我が国とクイラ王国だけでははっきり言って負けていたでしょう。しかし、日本とアメリカのおかげでその可能性は潰えました。本当に、感謝してもしきれません。」

 

 

「同じく、クイラ王国を代表して私からも感謝を。我が国は以前までは荒地でした。しかし、貴国とアメリカによって類稀なる黄金の大地と化したのです。その事について非常に感謝しています。そして、今回のロウリア戦役に関しても誠にありがとうございます。」

 

 

途中から涙ぐみながらも感謝を述べた彼らは引き続きこの会談を続ける。そうして、最後にロウリア王国の戦後分割案が提示される。

 

 

「あ、あの、一つ質問をよろしいでしょうか?」

 

 

「えぇ、どうぞ。」

 

 

「ロウリアにある我が国とクイラ王国が請求権を持つ地域を割譲するのはわかるのですが、それ以外のほぼ全ての地域は戦後にどのような処分を?」

 

 

よく見ると、大部分は共同統治と記され一部の軍港は日本とアメリカ領を記す色で塗られている。

 

 

「そこについてですが王家の解体と追放は確定的です。少なくとも、貴族達も財産没収と爵位取り潰しを行うことは確定です。しかる時が来るまでは日本、アメリカ、そしてクワ・トイネとクイラによる共栄圏軍による軍政を行います。」

 

 

 

 

 

 

 

中央歴1639年4月10日

"クワ・トイネ=ロウリア国境付近 ロウリア王国軍陣地"

 

 

「いよいよか…………」

 

 

東方征伐軍の将軍たるパンドールは遠目に見えるクワ・トイネの街………ギムを見ながら最後の準備を整える。

勝利を確信したその表情に、憂いはなくただただ現れる敵を轢き潰す覚悟を決める。

付近に待機するワイバーン部隊が150騎、歩兵と騎兵を合わせて約三万人の部隊を任されていた。対するクワ・トイネはこれの四分の一以下の戦力しか配備できていない。一方的な蹂躙劇を楽しみにしつつ、陣地に設けた仮説司令部に向かう。

 

少し歩き、その先に信頼を置く部下の顔が見えたーーーーー

 

 

「おぉ、アデムか。出迎え感謝する。」

 

 

「いえいえ、これくらい当然ですよ。して、ギムの街での戦利品は如何なさいますか?」

 

 

「うむ。無論、アデムの好きにして良い。」

 

 

悪どい笑みを浮かべながら尋ねてくるアデムに、こちらも満足気に返す。彼の残虐性、亜人に対する冷酷さはパンドールも知るところであり、絶大な信頼を寄せていた。

 

 

「えぇ、誠にありがとうございます。必ずや、憎き亜人の街を殲滅し将軍と王国に勝利を齎しましょう。」

 

 

その言葉を聞き、パンドールは自身の部下に期待を寄せる。これから先の栄光も既に約束されていのだ、怖いものはない………そう思った。

 

 

 

 

 

全ては愚者の思い込みだったが。

 

 

 

 

 

 

同時刻

クワ・トイネ公国 ギム郊外

日米桑共同防衛陣地総合司令部

 

さて、言うまでもなく日米両軍はロウリア王国軍の展開を予測し、その内実までもが筒抜けだった。

そして、侵攻する中で一番重要となるのがこの街、ギムだった。もちろん、当該地域の西部方面騎士団もこの情報を共有されかき集められる人員を全て宛てて防衛にあたる計画だった。

だが、どんなに集めたところで戦力としては圧倒的に少ない。一応は日本製の旧式小銃を標準として、こちらの世界で言うBMP-1に似た退役済みの歩兵戦闘車と装甲車で機械化を進めている。しかし、戦車の導入は遅れており戦列化は早くともギム攻防戦の後、遅ければこの戦争の終結ごろの見込みだった。

 

そんな中で、日米両軍が派遣され日本、アメリカ、クワ・トイネの三国で共同防衛の形を取るのは必然とも言えよう。

まず、先遣隊としてアメリカからは第二海兵遠征軍団の第二海兵師団を、日本からは第一装甲師団と機動第五師団が派遣された。

 

 

 

 

「この度は、誠にありがとうございます。日米軍がいれば百人力です。」

 

騎士団長のモイジは初めはお終いだと考えていたが、政府の素早い判断によりすぐさま援軍が送られてきた。

そのことに西方騎士団は歓声を上げ、士気の向上にも繋がる。

 

 

「えぇ、我々としても友人が亡き者とされかけているのです。指を咥えて見ているだけではいけません。」

 

 

「大内田中将と同じです。我が祖国アメリカは友人を見捨てはしない。その姿を見せるには口先だけで無く、このように有言実行で示して見せましょう。」

 

力強い言葉で、帝国陸軍桑派遣軍総司令官の大内田と第二海兵遠征軍団司令官のロドリゲスは言う。

しかし、問題がないかと言われるとそうでもなかった。

まず、早急な派遣のため元々の補給が少しばかり圧迫されていた。防衛に徹すればこの程度の圧迫は誤差の範疇として片付けられたが、いざ攻勢となるとやはり心許ない。

そして、そもそもの作戦立案が防衛優先のため攻勢計画はとりあえず後回しにされていた。

 

 

「では、遅ればせながら作戦の説明をしましょう。参謀長、説明を。」

 

 

「はい。ではまず、戦力状況について。現状の戦力を鑑みても、帝国陸軍は三万、合衆国は二万、そして貴国の騎士団は四千で対するロウリアはクワ・トイネ戦線に大部分の兵力を差し向けており最大で四十万ほどかと。」

 

 

同席していた参謀以下幕僚達が作戦に耳を傾ける。

大まかな手順として、以下のことが定められた。

 

1.国境を越えるまでは魔線を使った警告

2.斥候部隊による罠の敷設

3.ギムより後述する作戦位置まで近付いた場合、砲兵大隊による攻撃を開始。

4.クワ・トイネ公国西方騎士団機械化旅団による遊撃

5.遊撃から誘導に持ち込み、キルポイントに誘い込む。

6.機動第五師団所属の攻撃ヘリコプターによる対地攻撃をした後、第一装甲師団が最後の一撃を加える。

 

 

「なるほど………一応、我が騎士団の騎兵上がりの騎士達は遊撃や撹乱を得意としております。日本から供与された装備群によりその戦術は磨きをかけておりました。この作戦、私としては異存はありません。」

 

 

「海兵隊も異存はない。」

 

 

粗が多く、不確定的な部分があることも否めないが敵の慢心を突き容赦のない攻撃を加える分には十分と評価されたこの作戦は日米桑三カ国の将軍の承認により実行されることになる。

 

 

 

 

 

 

数日後

クワ・トイネ=ロウリア旧国境付近

 

 

この日、ついにロウリア王国は本格的な進行を開始した。

 

先遣隊は意気揚々と陣を出て、戦利品について考え出す者もいた程だ。王国の栄光、勝利をこの手に掴むと思いを馳せた若人もこれからの現実を知ることになる。

 

 

ドドドドドドドドッ!!

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

「わ、わかりませんっ!森の中から突如として攻撃g「せ、先行部隊、壊滅しましたっ!!!!」……なんだと!?」

 

 

ガガガガガガガガッッッッ!!!!

 

 

「あがぁぁぁぁっ!?!??」

 

 

「あ、あし、俺の足ぃぃいぃぃいいぃぃっ!!!」

 

 

「おいっ!早く回復魔法をかけてくれっ!!!」

 

 

阿鼻叫喚。

敵が何かもわからず、ただただ蹂躙されるだけの歌劇。このような状況、パンドールは許すはずもなかった。

 

 

「くっ!魔導士達は森へ向けて魔法を放て!!重装歩兵は盾となり時間を稼げ!ワイバーンを呼び急ぎ支援を回せっ!!全滅だけは防ぐんだ!!!!」

 

 

一応は場数を踏んできた将軍。まともな精神を保ち、直ぐに命令を飛ばす。副将のアデムもまた、麾下の部隊を率いて防衛に徹している。

爆音は血を奏で、命を粘土細工のように千切っている。

 

しばらくの後、それに怖気付いたのか敵部隊………おそらくはクワ・トイネ所属の敵は攻撃をピタリと止め、土煙を巻き上げながらギムの方向に撤退していくのが見えた。あからさまな遊撃と挑発であるにも関わらず、兵達はそれに怒りが頂点に達する。

栄ある王国への反抗と卑しい獣人如きが戦友の命を刈り取った事実に臓物が煮え繰り返るほど感情が昂る。

しかし、その中でも冷静に状況把握に努めている男もいた。

 

 

「クッソ、被害は?それと、ワイバーン部隊は何をしてたんだと送っておけ。」

 

 

「は、はっ!ま、まず、被害ですが部隊全体でやく五千ほどの死傷者が発生し、重装歩兵の損失が顕著です。また、魔導士にも被害が出ており部隊の戦闘能力が著しく低下しております…………」

 

 

「(……チッ、当初の作戦は無理筋か?いや、ここまで来ているんだ。情報を持ち帰らねば我々は斬首だな。)」

 

 

「ま、また、先ほど本隊より通信が入りました。」

 

 

「そうか、それで?」

 

 

「"数万の部隊を援軍として送る"との事です。」

 

 

「わかった。援軍が来るまではこの地で野営、兵を休ませておけ。」

 

 

そう言うと、パンドールは部下を下がらせた。先の戦闘を見るに、敵はムーやパーパルディアあたりの支援を受けているのは確実である。

しかし、ムーやパーパルディアでもあのような連射と威力を兼ね備えた武器を作れるとの情報はない。単に情報漏れがあるのかもしれないが、わざわざあの二国がこんな国に提供をするのか?と疑問が過ぎる。

自身が想定できないような蠢くモノをヒシヒシと感じながら自身もしばしの休憩を取ることにした。

 

 

 

 

 

同時刻

クワ・トイネ公国西方騎士団所属第一機動旅団

 

 

この時、怒りに震えるロウリアと反対にこの部隊所属の一人の騎士はある感情に呑まれる。

この感情はなんだろうか?昂る様に湧き出るこの気持ちはどうすればいい?

理性と本能が叫ぶ。

"この気持ち、わかっているだろう?"

いつの日だったか。若かりし頃に感じたこの感覚。

すると、あの時の記憶が洪水の様に溢れ出す。体は知っている。こんな時、どうすればいいか。

 

 

 

万歳!万歳!万歳!

 

 

 

 

 

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