疾走する黒い機体。それは立ち並ぶオブジェクトの間を左右にスラロームで駆け抜けていく。
旋回。ブースター点火。急加速。今度はそのまま加速をしながらスラロームへ。
最短の軌道、最速の機動。最適の動作。イメージは脳裏に。握り込まれるスティックと踏み込まれるペダル。システムはそのイメージを精確に瞬時に伝え、機体の運動を理想通りに補正する。
それは何時しかのテストと一見すれば同じものであった。スラロームを駆け抜ける基本機動のテスト。
しかし、このテストを見守るスタッフ達と機体を操る自分にとってそれは、以前のものとは全く意味合いが異なるものとなっていた。
「では改めて。今回、ミラージュ社からのアドバイザーとして着任しましたシャルル・デュノアです。よろしくお願いします」
濃い金髪、それを後ろで纏めた彼が、各搭乗者とシゲさんを代表としたメインスタッフが集められた会議室の中、前方の大型スクリーンの前でその名を名乗る。
「では早速ですが、今回新たに組み込まれたパーツについて説明します」
室内の明かりが落とされ、プロジェクターが起動。スクリーンには映像が浮かび上がる。それは起動を始めるISの姿だ。
自信はあまりないが、たしかあれはフランスの第二世代機だと思う。
それが空中に上がっていき、ストップ&ゴー、上下左右にとせわしなく動いている様子が映し出されている。
「始めに言っておきますと、このパーツはあるシステムを構成する為の演算装置に過ぎません。重要なのはそれによって完成するシステム自体なのです」
Allegorical Manipulation System
「通称AMS。私達はこのシステムをこのように名付けました」
彼はそういって画面の映像を移し替える。次に現れた画面はまたもIS。しかし先程の機動映像と違い、今度は無人のものだ。
鮮やかな青のカラーリング、背部に見える四枚のフィンアーマー。その全身はまるで騎士甲冑を彷彿とさせるかのようなデザインが為されている。
搭乗者は映ってはいないが、様々な角度から撮影されているフレームの映像。
そして、画面の右上にはその機体の所属を主張するユニオンジャック。
「こちらは先日、イギリスから正式に発表された第三世代型IS、そのメインフレームの映像です」
再び映像が移り変わる。
今度は分割された映像群。小さな枠の右上に各国の国旗が現れ、その下で多くのISが映し出されている。
「皆さんも知っての通り、今現在、世界では競うように第三世代機の開発が行われています。その特徴についても既にご存知であるとは思いますが、今はまず、その第三世代型の特徴、そこから説明していきましょう」
小さな枠の一つが拡大される、それは先程の青い機体だった
あい変わらず搭乗者こそ映ってはいないが、フレームのみのその機体と、その出力や速度などの機密的な情報を除いた簡単なスペックデータが流れている。
「第三世代型、その最大の特徴はなんといってもイメージインターフェイスを活用した特殊兵器の搭載です」
画面内、青い機体のフィンアーマーから各部一枚ずつ、花弁のような物が切り離されるのが見て取れる。
「例えば先程も見せたもの。イギリスの最新機体、機体名ブルーティアーズは、イメージインターフェイスを活用した自律機動兵器を装備しており、それを思考操作する事で、戦闘距離を選ばないオールレンジ攻撃を可能にしています」
Blue tears。青い雫。先程の画面の説明によると、自律兵器自体もブルーティアーズという名前らしい。
つまりあれは、花弁ではなく雫だったのか。言われて見れば何となくそんな気がしないでもないが。
「このようなイメージインターフェイスも、元を辿ればIS本体の操縦系に利用されているものであり、当初はISの機動制御を実現させているシステムの一要素であるという認識しかありませんでした」
突然ではあるが、ISの誇る高機動性について補足しておく。
その機動性は三つの要素で成り立っている。
まず一つ目、重力と慣性を中和し、加速までさせる高機動性の最大要因、パッシブイナーシャルキャンセラー。
二つ目は、それらを支える詳細不明の動力源、コア内部ブラックボックスの中にあるジェネレーター。
そして三つ目、脳波によって柔軟な機体制御を行うイメージインターフェイス。
これらを合わせた圧倒的機動性とその見た目に合わない強固な防御力によって、ISは従来兵器と一線も二線も画した戦力となっているのだ。
……考えている間にも画面は移り変わり、今度は優美さという点ではブルーティアーズとは比較にはならない、無骨なIS。アメリカ製の第一世代型であるソーラーウィンドの姿が映し出されている。
「そんな中、オーメル社傘下のアスピナ機関が付属端末等へのイメージインターフェイスの応用を考案、あまつさえそれの実現化に成功します。そしてその事をきっかけに、今のIS開発の主流が出来上がったのです」
それについても話だけは伝わっている。イスラエルに拠点を置く総合企業オーメルサイエンステクノロジーとその内に存在する特殊技術開発部門アスピナ機関。
特にそのアスピナ機関については、保有する先端技術が各国の技術の一歩二歩進んだレベルであるとも聞く。
「そのアスピナの技術応用、それを思い返し私達ミラージュはある事を考えつきました」
彼の説明が続く。
「そのイメージインターフェイスを、なんとか従来兵器にも適用できないか、と」
ISコアはその登場以来全くといって言い程に、その解析は進んではいない。現時点でコアについてわかっているのはコアへの入出力の方法と経路と、生産など夢のまた夢であるという事実のみ。
今回、焦点となっているイメージインターフェイス、機体や付属兵器を思考操作するその機能もまた、本来はISコア、それの持つ量子コンピューターの演算能力があってこそ実現する物である。
しかし、ISのように機動をコアに全て依存させるわけでないのならば、従来技術であってもそれは十分に実現が可能なのだ。
既存の技術によるイメージインターフェイスの形成、フルコントロールではなくセミコントロール。それによって実現したものこそがAMSであるとシャルル・デュノアはあの説明の中で言っていた。
ISのコアではなくイメージインターフェイス、思考操作の際に発生する情報の移動と交換。そこから機体制御に必要な脳波パターンとその電子的移動の伝達経路、伝達方法を解析し、機体を操るのに最適なシステムを推測し構成する。
それはクレストやキサラギでは為し得ない、IS技術を保有するミラージュならではの代物だった。
ISにはさすがに及ばないながらも実現を見せた思考操作。今こうしてオブジェクト間を駆け抜けている瞬間にも、イメージによって動作が補正されており、それは常に実行されている。
装着しているヘルメットから脳波が読み取られ、その情報――思い描いた機動イメージがAMSを介し、スティックなどの入力動作を補って機体に反映される。
初めはただただ違和感しかなかったが、慣れていく中でそれが大きな影響を持つのが解ってくる。
思考操作による繊細な動き、ペダルとコントロールスティックだけでは出来なかった動きを可能とし、また、機動の先行入力推測入力においても、常時の動作に補正をかける事で動作間に発生する入力ラグを解消させる。
これは地味に思えるかもしれないが、その影響は大きい。
確かにラグを解消させると言っても、それは数秒にも満たない短い時間だ。だがその一秒、コンマ一秒という時間は実戦においてはその生死を左右する重要な要素になる物なのだ。
特に、ISという馬鹿げた機動性と攻撃力を持つ相手との戦闘においては、その一瞬一瞬が即、死に直結するのだから。
『よし、次は目標をいくつか出すから、いつもの装備でそれを撃破してみようか』
「了解」
次の訓練の合図、そういえば武装はハンガーで準備されていたな、とふと思い出す。時間は限られている、早く取りに行かねば。
コクピット内、聞こえるのは歩行音と振動。
ハンガーへの移動中、ふと一つ溜め息がこぼれる。
何故だろう、いつもやっている事と変わらないのに、今日は妙に気が張ってしまっている。
AMSの影響だろうか?だが、あれは脳波を読み取るだけの装置の筈だ。精神に影響があるとは思えない。
……いやだけど、AMSは関係があるかもしれない。直接的にではないが。
先日のミーティング、AMSの説明の際に見た映像。映し出されていたもの。目下の仮想敵、IS。
その中でも特に気になったのがあの青い新型機体だった。
最新の越えるべき目的。いつかは挑むことになると思われる存在。
これまでにもISの脅威さというものは話に聞いている。
それは従来兵器では太刀打ちできないというただ一つの決まった解答。
だが、その答えは戦闘機や戦車など「過去」の兵器の話であり、僕らが扱う「現代」の兵器の話ではない。
スペックを比べてみても、攻撃力、防御力、速さその全てで劣っているだろうということを理解はしている。
それでも現時点の状況で、どこまでやれるのか、こちらの攻撃が機動がどこまで通用するのか、それを確かめたいと思うこの感情は間違っているのだろうか。
敗北の恐怖でなく、性能差による焦燥でもない、言うのであればそれ以外のまた何か。
「はぁ、何をやってるんだ僕は。……集中しろ」
考え事をしている間に機体はいつの間にかハンガーへ。
既に準備されている武装を装着し、再び試験場へと戻っていく。
夜。今日のテストも終わり、汗をシャワーでさっぱりと洗い流した後、僕はいつものようにPXへと来ていた。
ジャックとラナはAMSの操作に少し手間取っているらしく、もう少し残ってやっていくとのこと。二人とも、やはり今までの操縦感覚との違和感に苦戦しているのだろうか。
ほとんど操縦方法が変わらない、世界でも珍しい(販売数的な意味でも)MT乗りの僕と違って、それぞれ戦闘機と戦車からの編向組みだ。確かに新しく慣れた操縦方法がまた変わったら大変かもしれない。
さて、今日のPXの人波はまばら。多数派となる整備スタッフの姿は見当たらず、基地の管理運営スタッフの方々が中心となり、座席に着きながら食事に話にと花を咲かせている。
いつも使う席も空席。今日のオススメのサンプルを見ながらカウンター横へと足を向ける。
キサラギの調理スタッフ、かれらがここに着任して以来、料理の味やメニューは確かに向上し、その種類は豊富となった。
だがそれ以外にもPXに及ぼした変化があった。
注文カウンター横。ここに着任して来た当初はただのスペースだった場所に自動販売機のような姿をしたそれがそこには立ちはだかっている。
そもそも自身のいた北アフリカや中東辺りでは目にする機会がまったくなかった物。ジャックやラナさえ、実物を見たのは初めてらしい。
食券販売機、その機械はそう呼ばれている。その表面、料理の名称が書かれた押しボタン式のプレート。それが多数配置されている。それを押すことで現れる硬い紙、食券。そしてそれは多数の人員を抱える基地において、PXの混雑を効率化させるキサラギの切り札だった。
……大袈裟に言うとこんな感じ。でも実際に注文ミスなどは無くなったらしいからそれなりに有効に働いているらしい。
それはそれとて、さてさっそく。
サンプルにはオムライス、デザート付きの物があったので、今日はそれにすることに決定する。
だけど、そこで一つの障害が立ち塞がる。
その件の障害、その姿が目の前に。
視線を少し下げると金色の尻尾が揺れている。
何かに困ったように、首を傾ける度に揺れる尻尾。見覚えのあるような金髪。
これはたしか……、
「えーと、そこの人……シャルル・デュノアで良かったよね?」
「え?」
振り返る金髪、自分よりかは少し低い身長、同年代、どこか女性的、中性的とも言う顔付き、だがそれは今、少し驚くような表情が含まれている。
「あ、いや、そこでうんうん唸りながら何をしてるのかなぁ、と思って」
券売機に指で差し示しながら、問い掛ける。
ん、券売機……?ああ、なるほど、疑問は自己解決。
「えっと……」
「いや、何となく理解した。PXに来ては見たけど、注文方法がわからないって所でしょ?」
「あ、うん」
やはり思った通り。券売機初心者にとっての壁、それはよくわからない変な機械が置いてあるという未知への……恐怖?というより単純な困惑。
券売機上級者、慣れ親しんでいるシゲさん曰く、「あ、そういやそっか。券売機ってのは、ほっとんど日本の独自文化らしいからね〜」とのこと。
さっきも言ったが、初心者にとってはよくわからない。プレートには日本語で「鯖の味噌煮」みたいに料理名が書いてあって、その下に英訳された料理名がテープで補足されてるって感じだし。
そもそも何これ?押すの?引くの?それとも、何?え?となること請け合いだ。
日本に旅行に行く人は多いらしいけど、たいていは宿に泊まって、そこで食事をしたり、外食したとしてもレストランや料亭で過ごしたりと券売機と接する機会があまりないらしい。
これもシゲさんの言っていた事だけれども。
それはともかく、デュノアにここの注文方式を説明する。
注文も実は無料ではない、まぁ値段は非常に安いものだが。それも現金ではなく、IDカードをカードリーダーに差し込む事で行う。
そして、差し込まれたカードからIDを読み取り、その注文分の値段をIDの持ち主の基本給から落としていくという支払方法だ。
なるほどなるほど、と横で頷いてはいるが、この人まだIDカードを持ってはいないらしい。
まずは発行してあげようよ、総務部?経理部?……とにかく担当スタッフの方。
はぁ、まったく。
「それじゃあ、何にする?」
「え?」
こうなったら手助けするしかないじゃないか。
「今日は奢るよ」
「でもそんなの悪いし……」
どうあっても、こちらに迷惑かけまいといった様子のデュノア。
なんとなく顔にも出てはいるけど、普通に良い奴なのかもしれない。
「それじゃあ、今日は何も食わずに過ごすのかい?カードの発行は少なくとも明日になると思うけど」
「うっ……」
これは本当。そもそも今の時間じゃ受付は開いてないんじゃないかな?もう夜だし。
「それに、だ。別に奢られるのが嫌なら後で返してくれれば良い。もちろん利息なんかは発生しない」
というか、こう言うと調理スタッフに失礼に当たるかもしれないが、一食分の費用なんかは、今の基本給からすればはした金にもならない。それ程の金額の契約をしてここに来ているし、元々有効な使い道もないし。
「……わかった、今日はその厚意に甘えさせてもらうね」
ようやく折れてくれる意思。と、まぁ、そうと決まれば早くしよう。本格的に腹も減ってきたし。
「よっ、と」
デュノアと自分、カウンターで料理を受け取り、いつもの席へ座る。
注文したオムライスのセットメニューを挟んで対面にデュノアが位置する。
彼が注文したのはリゾットとスープにサラダ。その量は極めて一般的。
……誰かとは言わないが、普段からおかしな量を食い荒らす奴らを見ていたので、なぜかとても安心した。
「本当に今日はありがとう、わざわざ奢ってもらっちゃって……」
「気にしないで良いって言ってるのに……まぁ、気持ちは受け取っとくよ」
感謝と返答。その後、どちらからでもなく自然と笑みがこぼれる。
「あ、そうだ。改めてになるけど、僕はシャルル・デュノア。これからよろしく」
互いに名乗り、テーブル越しに握手を交わす。やはり自分よりも小さな手。自分よりも小さい体格のせいかも知れないが、ちゃんと飯を食べているのか、少し心配になる。
あれ?なんか馬鹿食いコンビに影響されてないかこれ。
いや、忘れよう。……それよりも。
「そういえば、ミーティング以前にもクロノス……あの黒い機体の所で会ってたと思うけど」
「うん、覚えてるよ。シゲタツさんが言ってた本来のパイロットって言うのは君の事だったんだね」
あの日、MTを動かした後の帰り道、AMSが初めて導入された日、僕とジャックが見たクロノスはやはりデュノア……いやシャルルが操縦していたものらしい。
年齢は同年代。その歳でミラージュからのアドバイザーを任せられるのだから、本人の知識や力量もかなりのものだろう。
ちなみにミラージュからのアドバイザーとして、機体が完成するまでクレストと行動を共にするとのこと。
そんな風に落ち着いて食事をとりながら、世間話や基地についての説明をしていると、こちらへと歩いてくる二人の姿。
「よう、隣良いか?」
「というか、失礼する」
馬鹿食いコンビの登場だ。シャルルもトレーの上、冗談のように形成されている山を見て唖然としている。
「はいはい、どうぞ」
僕はもう見慣れている(諦めているとも言う)ので、通常運行。
ジャックが横に、ラナがシャルルの横の席へと座る。
シャルルはまだ固まっているので、ほんの少し助け船を。
「えっと、とりあえずジャックさん、ラナさん、こっちがミラージュから来た」
「は、はい。シャルル・デュノアです。これからよろしくお願いします」
ふむ、再起動完了。
「そんでシャルル、この二人が……」
「俺はジャック・オドネルだ。ジャックで良いぜ、嬢ちゃん」
「ラナ・ニールセンだ、同じくラナでいい」
ジャックはどこまでも豪快に、ラナはあくまで落ち着いてクールに名乗る。
というか。
「ジャックさん、『嬢ちゃん』は失礼ですよ」
「そ、そうですよ!何を言っているんですか!」
「……そうだぞ、ジャック。確かにさっきのは軽率だ」
三方向集中砲火。いくら筋肉達磨の発言であろうとも、失礼な言動はきちんと正さねばならない。
しかし。
「ん、そうなのか?悪かったな坊主二号」
ジャックに通用するはずがない。
はぁ or ふぅ、と三者三様、三人同時にこぼれる溜め息。
「……何はともあれ、こんな奴もいるが、よろしく頼む」
ラナはこういった所はしっかりしている。他人の様子を伺いよくフォローなどをしたり、なんというのか気配り上手という所か。
そういう面を見ると確かに二児の母親っぽいなぁとは感じる。
子供の写真も持ち歩いているし。
そして始まるちょっとした自己紹介と世間話。機体の担当者や乗ってみた感想など話題は尽きない、食事を続けながらも共に笑い合いながら語っていく。
「ちょっとちょっと、何、パイロット陣だけで和気あいあいとやっちゃってるのさ〜?」
そんな所へ再び新たな来訪者。
細身の身体に野暮ったい眼鏡。キサラギ陣営、随一の技術者。キサラギ整備班のエース、キサラギの星、暴走機関車、超新星爆発……などなど数々の二つ名と高い力量をもった整備班班長、シバタシゲタツ、通称シゲさんの姿がそこにはあった。
「お前らもそう思うよなぁー!?」
『おおー!!』
気付けばそこにはようやく作業を終え、PXに来た整備班の姿。
「ならば、やることは一つ……」
シゲさんの独白が続く。
「宴会だ!!」
その言葉の瞬間に爆発する歓声。見れば整備班の中には、シャルルと同じく、派遣されて来たであろう人達も含まれている。
始まった馬鹿騒ぎの中、シャルルも初めは再び唖然としていたが、今は楽しそうに笑顔を浮かべている。
そういえば、忘れていたことがあった。
……おーい、シャルル。
「ん?どうしたの?」
掛けられた声に対し、シャルルはジュースが注がれたグラスを両手で抱え、こちらに視線を移す。
ジャックもラナもシゲさんも、その他整備班も今はグラスを片手に騒いでいる。
そういえば、言っていなかった言葉がある。
これを言うのがある意味、慣習みたいな物じゃないだろうか。
歓迎の言葉、新たな仲間を迎える言葉。
「ようこそ、シャルル。僕らの基地(ホーム)へ」
彼は一瞬、ぽかんとした表情を浮かべた後、花のように微笑んだ。
宴会と歓声。
それは夜通し続く。
翌朝、続けれた宴の後、酒やツマミ何もかもがその姿を消していた。
しかし、そこには残ったモノもある。
深まった友誼。
そして何よりも……。
死屍累々。
二日酔いで頭を抱えた開発スタッフと、ストレスで頭を抱えた基地上層部の姿がそこにはあった。