Acxis   作:ユ仲

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Chapter1-6

 ハンガーからでも聞こえる砲撃音。

 ここからでは小さくしか見えないが、リズムを刻むように響き続けるその爆音は搭乗者の心情を著実に表しているようにも感じる。

 

「うっへぇ、ジャックさんってば、かなり張り切ってますねぇ」

 

 声の方に目を向ければ、若い整備員の姿。テストが行われているその光景を見ながら、何やら呟いている。

 

「そりゃそうだろうよ、ジャックにとっちゃ、ずっと待ち望んでた物だからなぁ」

 

 そう、ジャックの乗るガイアに欠けていた最も重要だったピース。

 それがようやく到着したのだから。

 

「そういう物ですか」

「そういうもんよ」

 

 近くに設けられたディスプレイはそのテストの状況を映し出し、それがパイロット視点のものへと切り替わる。

 

「ほらな」

 

 そうしてディスプレイを指し示した瞬間、流れ出す大音声。

 

『はっはー!最高だ!最高だぁぁぁ!!』

 

 ……。あまりのテンションに若干引きながら沈黙する俺たち二人。

 

「楽しそうっすね」

「漢のロマンだからな」

 

 どんどこどん、どこどんどんと太鼓のように撃ち鳴らされる砲撃音をバックに二人は遥か遠くの小さな機体を見つめる。

 

「……ところで班長」

「……ん、なんだ?」

 

 砲撃音と大音声は鳴り続く中で、視線を変えずに交わされる会話。

 

「いい加減にあの二人をどうにかしてくれませんか?」

「……はぁ」

 

 その嘆願の言葉に思わずこぼれる大きな溜め息。

 彼らの後ろの黒い機体――クロノスの足元では、黒と金の少年による冷戦が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 二人が喧嘩をしたらしいと初めて聞いた時は、ただ単にそりゃ珍しい事もあるもんだと思うだけだった。

 

 この基地に滞在している中で最年少の(俺達からすれば)幼い二人。

同年代だからか仲が良く、時間が合えばいつも一緒に行動している。そんな光景をよく見かけていたし、そんな話がよく語られていた。

 そんな彼らを見守る大人達としても、その光景を見掛けては、よきかなよきかなとその影響を良いものだと受け止めていた。

 どちらも(大人達からすれば)利口で素直な優しい子であり、性格に差異こそあれど、相性の良いコンビなのかもしれない。

 それはそんな事を思っていた矢先だった。

 

 

「おーい、二人ともー、飯食いに行かないかーい?」

 

 テストが早めに終了し、整備の方も一段落。腹は確かに減っているが、一人で食べるのも味気ないので、ちょうど双方より歩いて来た少年二人に声をかける。

 

「あ、良いですよ」

「はい、行きますよ」

 

 声に対する反応は同時。

 

「……すいません、まだ腹が減ってないので」

「……すいません、用事を思い出しました」

 

 その後の反応も同時。

 

「え?ちょっとちょっと、二人とも!?」

 

 どうにもおかしい。

 去っていく二人を疑問と共に見送りながらも、残された自分としては何となく疎外感のような、哀愁のような、そんなちゃちな物じゃない何かを感じていた。

 

 

 

「ん、あいつら?ああ、なんか派手に喧嘩したらしいぜ?」

 

 二人に逃げられた?その事で少し凹んだ後、PXで偶然一緒になったジャックに尋ねると、どうにも、激しく口喧嘩をしていたのが確認されていたらしい。

 

 口喧嘩が確認された日付はあの日。金髪少年シャルちゃんがちょうど調子を悪そうにしていた時だった。

 調子を崩していたこと、それが喧嘩と関係しているのどうか。そういえば確かに最近笑顔が減っているという、整備班有志からの報告がある。

 その日のその喧嘩について、どのような状況で、どのような内容で、どんな風にして行われたのか、調べてみる必要があるかもしれない。

 

 

 今日は珍しく雨。

 それでも、テストは絶賛実施中。むしろそっちの方が運用データとしては貴重な物だ。

 ハンガーに設けられたディスプレイの中、映像は、雨に打たれながらもせわしなく動く白い機体を捉えている。

 

 市街地を模したオブジェクトの中、白い機体――ウラヌスはその中を駆け抜けていく。

 目標はターゲットドローン。

 しかし、今回の物は、ただの目標ではない。今までの物と違い、ペイント弾によって反撃をするパターンが入力されている本格的な戦闘訓練の為の物だ。ペイント弾が命中するとダメージ判定が行われ、そのレベルによっては損傷部の使用が不可能になる。加えて、破損判定を受けると、機体のバランサーが自動的に調整され、破損部が本当に無くなったような感触になるという地味に高レベルな技術である。

 

 話は戻り、用意されているのは地上移動型と空中移動型、実戦では戦車とヘリコプターを想定とした代物であり、その銃口がたった一機に対して向けられている。

 ただウラヌスの搭乗者とて馬鹿ではない。

 ウラヌスは建造物を上手く盾にしながら、機動性を活かし、一撃離脱を繰り返していた。一瞬で建造物の影から飛び出し、射撃を加えながら再び建造物の影へ。

 一度に多数を相手にするのではなく、一体ずつ、堅実に、着実に仕留めていく。

 始めは厄介な空中型を。それをあらかた処理した後は対処のしやすい地上型を。

 

 結局、そうして全てのターゲットを撃破し終えた時、ペイントで染まっていたのは、コクピット部への至近弾を防いだシールドのみだった。

 

 

 

 綺麗な機体。仮想データ内でもダメージを受けていない機体をピットに着け、ラナが機体からほとんど飛び降りるように降機する。

 

「ふぅ……それで、話があるのでしょう、シバタ班長」

 

 ヘルメットを外し一息ついた彼女は待ち構えていたこちらに話しかけてくる。

 

「ああ、疲れてるとこ、スマンね、ラナちゃん」

「いや、大体の事情は把握していますから……というか、ちゃん付けは止めていただきたい」

「それは、そっちだってシゲで良いと言ってるのに、班長と読んでるんじゃないか」

 

 いつものように軽口を叩きながらも、ドリンクとタオルを渡し話を続けていく。

 

「いや、その話は置いといて。早速だけど聞かせてもらえっかな、あの二人の事、その時の喧嘩の事をさ」

「別に構いませんよ、自分も気になってますし、……それでは、そうですね、あの日は確かその時……」

 

 そうして語られる本命、当時の状況説明。

 その始めはいつもの和やかな会話であった事。何かについて応答をしていてシャルルの様子がおかしくなった事。対人関係について何度も質問していた事。計画を無駄と言ったのを皮切りに口論になった事。

 彼女の口から語られる当時の情況。それがラナ自身の目撃とラナと同じく騒動を目撃していた者達との情報を合わせた、彼女自身が知る全てだそうだ。

 

「……成る程ねぇ。いやありがとう。参考になったよ、ラナちゃん」

「だからちゃん付けは止めて、と……。いや、とりあえず自分が知っている事はこれだけです。実際に目撃したのは最後だけですし。しかし何か重たいものを抱えていた様子ですね。『彼女』は」

「そうだねぇ……でも、それを上手く見てやれなかったというのは俺達大人の責任だからなぁ」

 

 本来であれば、戦場や兵器などが似つかわしくない幼い二人。

 国や地域によっては大人として認められる年齢かもしれないが、ここではあまりそれを認めたくはない。

 彼らの技術、力量を認めてはいても、本当は硝煙の匂いがするような場所ではなく、平和な世界に居て欲しいというのが基地の大人達の総意であり本音だ。

 

「まったく、人の人生にあれこれ言いたくはないんだけどねぇ……聞いてみる必要がありそうだ」

「……ミラージュにですか?」

「まぁ、ね。でも本社の方じゃなくて、派遣されて来てるスタッフの方だよ。彼らも何かしらは知っているだろうしね」

 

 人の過去を探る何て言うのは本当に嫌な事だ。それは人の心に土足で踏み入れる行為だし。

 

「いや今日はほんとありがとう。ラナちゃん」

「……はぁ。いや、何かあればまた呼んで下さい。私の方でも何とか調べてはみますから」

 

 そうして立ち去っていくラナの姿、かなりの時間を引き留めてしまって、なんだか申し訳ない。

 

 もう時間もかなりが経っていて、何だか少し腹も減って来ている。

 でも今はそんなことよりも。

 

「さてと。次はミラージュの人に聞きに行くかなぁ、と」

 

 子供達の為にやるべき事がある。

 

 

 

 

 今日も今日とて、冷戦は続いている。顔を合わせれば一触即発。

 かつては仲が良かった二人の心、その間には壁ができていた。冷戦の象徴、ベルリンの壁。

 どうだろう?何か上手いことを言ったような気がする。

 

「班長ー!馬鹿な事、言ってないで手伝ってくださいよー!」

 

 馬鹿とはひどい。まぁでも、やる事をやってなかったのは事実なので否定はしない。

 いや、それにしても……。

 

「最近調子悪そうだね?大丈夫かい」

「……いや、全然大丈夫ですよ、シゲさん。僕も人間ですからこんな日もありますって」

 

 彼も大分重傷なようだ。先程行われたクロノスのテスト。明らかにそのデータが最近になって落ちて来ていた。

 攻撃は外し過ぎているし、回避率も悪くコクピット付近に直撃弾さえ受けている。

 しかもそれが出始めたのが、喧嘩をしたあの日からだって言うんだから。

 

「……あ、シゲさんすいません、自分、先に上がりますね」

 

 額に手を当てて考えていると、逃げるように去っていく後ろ姿。

 まさか、と振り返るとそこには、こちらの方をいや彼の背中を見つめるシャルちゃんの姿があった。

 そんなじっと見つめているその表情はやはりあまり優れた物じゃない。

 

 ……壁は確かに強固なんだけど、双方から歩み寄れば直ぐに壊せる。そんな物なんだけど、やはりきっかけがなぁ。

 

 どうしようかと彼が去って行った方角を再び見れば、そこに見えたラナとジャックの二人が、なにやらこちらに伝えようと身振り手振りと口を開閉しているのが見えた。

 

 ん?何々……ああ、成る程そうだよねぇ。

 

 二人に向けて了解、とサムズアップ。それを見た向こう二人も返答代わりのサムズアップ。そうして二人は去っていく。

 

 簡単に壊せるけど、壊せない壁。壁越しの住人がその気になれば壊せる壁。

 でも壁に近付くのは非常に恐ろしく、とても不安だ。

 確かにその壁は簡単に壊れると分かっている。分かってるけど、不安。不安だけど分かっている。

 なら、その住人を動かすにはどうすればいいのか?それは簡単な事だ。

 動機があれば良い。きっかけがあれば良い。

 

 それが無いならば作ってしまえば良い。

 

「シャルちゃん、ちょっと良いかな?」

「え?」

 

 急に話し掛けられた顔に浮かぶのは、困惑?それとも……。

 

「少し話さないか?」

 

 

 

 

「えーと、シャルちゃん。コーヒーと紅茶どっちが良い?」

「あ、はい、紅茶でお願いします」

 

 ハンガー横、休憩室。

 普段であれば整備員でたむろするそこも、今は自動販売機の光と俺とシャルちゃんがいるだけで、他の誰の姿もない。

 

「はい、安もんのストレートだけど」

「すいません、いただきます」

 

 注がれた紙カップを機械から取り出し、零さないように手渡していく。

 続いて、自分用のコーヒーも。

 

「熱っ」

「あははは、ちゃんと飲むときは気をつけてね」

 

 そそっかしいシャルちゃんの行動に笑いを浮かべ、ベンチに座りながら、少し冷ましたそれを一口。

 はぁ、ミルクと砂糖を増量しておくんだった、少し苦い。

 

 互いに少しずつ飲み進めて行きながらも、その空間には無言の時間が続く。

 

「……あの」

「ん?どうしたの?」

「お話というのはなんですか?」

 

 その少し重い空気にシャルちゃんは、それに耐え切れなかったのか最初にこちらへと話を切り出す。

 その表情はどこか暗い様子ではあったけれど、瞳にはある種の意志が浮かんでいる。

 準備はできている、か。ならこっちも大人の役目をちゃんと果たさなければいけない。

 

「話は聞いたよ」

「!」

 

 こちらの一言。たったそれだけで、何か驚愕の表情を見せるシャルちゃん。

 

「あの時の騒動も、シャルちゃんがこっちに来る前にあった事も」

「え……」

 

 その顔に浮かぶのは悲哀と、そして何より恐怖。

 らしいというのはおかしいけれど、どうにも普段のシャルちゃんらしくない表情だった。

 

「色々と大変だったね」

「……」

 

 声を続けて掛けるとその頭が下がり俯く様な体勢に。

 

「本当に、本当にさ」

「……」

 

 「彼女」はこちらの言葉にそのまま動こうとはしなかった。ただただ何かを身構えるように、じっと耐え忍ぼうとしている。

 

「……」

「……」

 

 再び訪れる無音。

 紙カップを傾け、コーヒーを喉へと流し込む。やはり失敗だった。苦いのは好きじゃない。

 

「……シゲさんは、怒らないんですか?」

 

 先に口を開いたのは彼女。そしてその内容は、あの時の彼に対しての言葉を指すのだろう。

 

「怒らないよ、怒る必要がないもの」

「何でですか?」

 

 彼女は返された答えに対し疑問を抱く。しかし、その表情は聞いた話とはまったく違い、困惑と悲しみの表情が浮かんでいる。

 

「僕は……いや私はシゲさん達の努力を無駄だって言ったんですよ!?」

 

 それは自らを責めるような声と表情だ。

 ……まったく、そんな顔をしながらじゃ、もうこっちが答える事なんて何もないじゃないか。

 

「いや、確かにさ。言われたら少しショックだよ」

 

 そう、そんな事を言われたら誰だってショックを受ける。

 しかし、こっちが言いたいのはそんなことじゃないので、少し言葉を空けた後にさらに続けていく。

 

「……でも、自分で分かっているかい?君は今、泣きそうな表情してるんだぜ?……それを見ればさ、シャルちゃんが本心で言った事じゃないってのは分かるし、そもそも日頃の働きや性格を見ればそんな人間じゃないって判断できるし、俺達は皆それを信じるさ」

 

「でも……」

 

 シャルちゃんはまだ納得できていないが、伝えたのは確かな本心。

 でも自分がシャルちゃんに言いたいことは別にあった。

 

「まぁぶっちゃけると、俺にとっちゃ、それはどうでもいいんだよね。実の所、言われ慣れてることだし」

「え?」

 

 呆気にとられたような表情。そりゃメインディッシュがフィンガーボウルですって言われたら誰だって驚く。

 でもそれは、本当にどうでもよくて、

 

「俺はさ、シャルちゃんが彼、あの子に言った事をさ。少し訂正して欲しいんだ」

「私が言った事……?」

 

 シャルちゃんはどうも該当部分に見当がつかないようだ。確かに彼が怒ったのは「計画が無駄だ」って部分らしいから、印象には残らないのはしょうがないとは思うけど。

 

「シャルちゃん、彼に言っただろう?『私の事を何も知らないくせに』ってさ」

「……はい」

 

 小さな返事、それとともにこちらの言葉に耐えようとするかのように、体を身構えさせている。

 

「責めるわけじゃないけど、じゃあシャルちゃんがあの子の何を知ってる?」

「いえ何も……何も聞いてないです」

 

 こちらの質問に首を振ってみせる彼女。

 そう。何も知らないし、聞いていない。一応、基地の中では古くから知っている自分でさえも。

 

「でしょ?特に彼はさ、五年前から戦場で知られてるようなさ、そんな人生を送って来ててさ……確かに何も知らないとは思うけど、色んな事があったと思うんだ」

「……」

 

 それでも彼に何かがあったという事だけは分かっている。

 そうでなければ、あのようなまるで生きる希望を失くしていたような何も映さない瞳にはならないだろう。

 シャルちゃんはこちらの言葉に対して静かに耳を傾けてくれている。

 

「だからさ、シャルちゃんにはこれからはあんまり、そういった事を言って欲しくないな、というおっさんからのちょっとしたお願い事なわけさ」

 

 そこまでで自分のお願いと願望は終了。

 あとはシャルちゃんがどう受け止めるか何だけど……って、確認するまでもないか。

 

 自分の目の前、そこには恐怖も悲哀も無い、いつもの少女の姿があった。

 

「ねぇシゲさん、私なんて謝ればいいのかな?」

 

 しかして、そこには少々の困惑がある。

 けれどはっきり言って、そんなものは考える必要がない。

 

「なあにシャルちゃん、謝る必要なんてないよ」

「え?」

 

 更なる困惑というか、浮かんでいるのは呆然の色。

 それでも、こっちはこっちで伝えたい事を伝えさせてもらう。

 

「まぁ確かに、悪いことを言ったという自覚があるなら、謝れば良い。でも、過去の言葉は消えないし変えられない。ならどうすりゃいいのか……?」

「……」

 

 彼女は黙って言葉の続きを待っている。

 その表情は真剣その物。

 

「それは、今の自分の気持ちをただぶつけて行けばいいんだよ。今、何を思って、今、何を感じているのか。不安も望みも全てどどんと!……考えるのは全てが終わったその後。それくらいでいいんだよ」

 

 そう、それが俺自身の本音。

 正直、ケンカなんかはある意味大歓迎だ。

 若い内からぶつかっていれば、きっとそれは後々の笑い話にもなるし、お互いの理解を深めるきっかけにもなるだろうし。

 まぁ、今回はちょっと見てられなかったんだけど。

 

 そんな事を考えながら正面を見遣れば、そこにあるのは真摯な視線を持ったシャルちゃんの姿。

 もう、ホント、心配は要らないだろう。

 

「うん、……分かった。シゲさん、まずはこの間は失礼な事を言ってごめんなさい。そして……ありがとう。私、ちょっと行ってきます」

「はいな、行ってらっしゃい」 

 

 そう頷いて駆け出す、そんなシャルちゃんの背中を何だか暖かな感情を持って見送る。

 そうして紙カップに残ったコーヒーを喉に全て送り込んでいく。

 もう既に温くなってしまったコーヒー。

 

 でもその味は悪いものじゃない。

 空になった紙カップを小さく潰し、ゴミ箱の中へと放り投げる。

 

「おっと、そちらはどうでしたか?シバタ班長」

 

 その時、後ろからかけられる声と自動販売機の作動音。振り返りながらその質問、彼女へと答えていく。

 

「こっちは上々、ラナちゃんの方も言わずもがな、って所かな?」

 

 そこには紙カップのコーヒーを手に持つラナの姿があった。そして、それを一口飲むとやがてこちらに口を開いた。

 

「ええ、こちらも無事解決しました。正確には予定ですが」

 

 ならもう大丈夫そうだ。この騒動も、あの二人も。

 だけど、それにしても思うこと……。

 

「若いなぁ」

「若い」

 

 同時に吐き出される溜め息。考えていることは一緒だったようだ。

 

「まぁ、あの二人だから問題はないとは思ってたけどねぇ」

「早ければ早いほど良いという言葉もあるのではないですか?」

 

 まぁ、だからこそ、こうやってきっかけを与えたわけなんだけど。

 

「……でもラナちゃんはもう良いのかい?」

「何がです?」

 

 まったく、何を素っ惚けているのだか……。

 

「ジャックとの事」

 

 こちらの言葉と共にぶふぅ、とラナの口から噴出される、高温のコーヒー。

 

「熱っあちっぬおっ、ちょっとラナちゃん!?」

「な、何をいうのかと思えばまったく……!あの馬鹿は当分放っておけばいいんです!!」

 

 まぁまぁ、顔を真っ赤にしちゃって、はいはいご馳走様、ご馳走様。

 

「な、何なんですか!?その表情はっ!?」

 

 さてさて、問題は解決したし、俺はシャワーでも浴びにいきましょうかねー?

 

「シバタ班長ーっ!!く、そ、シバタぁー!!」

 

 

 浮いた気持ち、弾んだ気持ちで自室へと急ぐ。その胸にはちょっとした願いを。

 

 ――どうか子供達が幸せでありますように。

 

 

 

 

 そして、翌朝、再びちょっとした騒ぎがあったものの、普通に食事を摂る「少年少女」の姿が見られ、この騒動は無事、終結を迎えた。

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