祠で祈る巫女達が見た、少し先の未来とは---
祠で祈る巫女達が見たものとは---
私の育った村には祠があった。
深い森の中にある、洞窟の奥。
其処にある祠に通い祈るのが、巫女である私の仕事だった。
村の巫女には、代々不思議な力を持つ少女が選ばれてきた。
少し先の事を見通す先見の力。
その力こそ、祀られた神様から与えられた神通力と信じられてきたのだ。
私に先見の力があると知った時、両親は喜んで先代の巫女様の所へと私を連れて行った。
先見の力は神様の力。その使い方は代々先代の巫女様に教わるもの。
それもまた村の掟で、私は祠近くの小屋で巫女様と二人。静かな暮らしを始めた。
ある日、何時ものように巫女様と祠で祈りを捧げていたら、不意に先見の力が発動した。
この世界を、真っ暗な靄が深く染め上げていく。そんな景色だった。
これが何なのかは分からないけれど、私はあまりの恐ろしさで大声で泣いた。
すると隣に居た巫女様が、震える手で私を優しく抱きしめてくれた。
温かくて優しい、何かを覚悟したような巫女様の腕の中。
-大丈夫。私が守るから-
そう告げる巫女様は、次の日村中の人達を集会させて、先見を伝えた。
-間も無く世界は暗雲に覆われる。今の私達に防ぐ術はない-
村の人達に囲まれた巫女様は、淡々と厳かに伝えていく。
先見の力は未来を見る力。未来を変える力ではない。
そんなこと、この村の人達はみんな知っている事だ。
それなのに次の瞬間巫女様に向けられたものは、酷い罵倒と暴力だけだった。
早朝からの集会が終わりを迎えたのは、空が赤々と焼けた夕刻だった。
村の人達が立ち去った広場の中心には、血と泥と埃に汚れた巫女様が一人倒れていた。
助けに行かなきゃ。そう思うのに、私の身体は震え、民家の陰から見守る事しかできなかった。
なんで。私達はこの村のために毎日祈り、先見を伝えて来たのに。
悲しみと怒りに震える私の瞳に、今にも命が消えそうな巫女様の唇が小さく動くのが見えた。
-誰も、恨まないで-
そう告げたのを最後に、巫女様の命が消えた事は遠くからでもわかった。
優しくて強い巫女様。村の人達をいつも愛していた巫女様。
その命を奪った奴等を何故恨んではいけないの?
そう思った瞬間。私の身体はあの暗雲に吞み込まれて、そこで意識を失った。
目覚めた時に感じたのは、優しくて温かい。懐かしいような温もりだった。
開いた瞳に映ったのは気高い少女達と、杖を持った優しそうなお兄さんが一人。
そして荒廃した村の痕だった。
ねえ、巫女様。私の手は穢れてしまったけれど、もう一度だけこの優しい人達の為に祈る事を始めても良いかな。
今度はきっと大丈夫。だって、私にはたくさんの仲間ができたから。