それは小さな祠と、二人の巫女のお話。
祠で祈る巫女達が見た、少し先の未来とは---

1 / 1
それは小さな祠と二人の巫女のお話。
祠で祈る巫女達が見たものとは---


メメモリ(Manisu)

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

私の育った村には祠があった。

深い森の中にある、洞窟の奥。

其処にある祠に通い祈るのが、巫女である私の仕事だった。

 

村の巫女には、代々不思議な力を持つ少女が選ばれてきた。

少し先の事を見通す先見の力。

その力こそ、祀られた神様から与えられた神通力と信じられてきたのだ。

 

私に先見の力があると知った時、両親は喜んで先代の巫女様の所へと私を連れて行った。

先見の力は神様の力。その使い方は代々先代の巫女様に教わるもの。

それもまた村の掟で、私は祠近くの小屋で巫女様と二人。静かな暮らしを始めた。

 

ある日、何時ものように巫女様と祠で祈りを捧げていたら、不意に先見の力が発動した。

この世界を、真っ暗な靄が深く染め上げていく。そんな景色だった。

これが何なのかは分からないけれど、私はあまりの恐ろしさで大声で泣いた。

すると隣に居た巫女様が、震える手で私を優しく抱きしめてくれた。

 

温かくて優しい、何かを覚悟したような巫女様の腕の中。

-大丈夫。私が守るから-

そう告げる巫女様は、次の日村中の人達を集会させて、先見を伝えた。

 

-間も無く世界は暗雲に覆われる。今の私達に防ぐ術はない-

村の人達に囲まれた巫女様は、淡々と厳かに伝えていく。

先見の力は未来を見る力。未来を変える力ではない。

そんなこと、この村の人達はみんな知っている事だ。

それなのに次の瞬間巫女様に向けられたものは、酷い罵倒と暴力だけだった。

 

早朝からの集会が終わりを迎えたのは、空が赤々と焼けた夕刻だった。

村の人達が立ち去った広場の中心には、血と泥と埃に汚れた巫女様が一人倒れていた。

助けに行かなきゃ。そう思うのに、私の身体は震え、民家の陰から見守る事しかできなかった。

なんで。私達はこの村のために毎日祈り、先見を伝えて来たのに。

悲しみと怒りに震える私の瞳に、今にも命が消えそうな巫女様の唇が小さく動くのが見えた。

 

-誰も、恨まないで-

そう告げたのを最後に、巫女様の命が消えた事は遠くからでもわかった。

優しくて強い巫女様。村の人達をいつも愛していた巫女様。

その命を奪った奴等を何故恨んではいけないの?

そう思った瞬間。私の身体はあの暗雲に吞み込まれて、そこで意識を失った。

 

目覚めた時に感じたのは、優しくて温かい。懐かしいような温もりだった。

開いた瞳に映ったのは気高い少女達と、杖を持った優しそうなお兄さんが一人。

そして荒廃した村の痕だった。

ねえ、巫女様。私の手は穢れてしまったけれど、もう一度だけこの優しい人達の為に祈る事を始めても良いかな。

今度はきっと大丈夫。だって、私にはたくさんの仲間ができたから。

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。