ゲーム本編、ポケマス、アニポケ、独自解釈、独自設定を混ぜこぜにした闇鍋の中で、オリ主ちゃんが恋愛したりしなかったりします。
うつつの夢
何が起きてるんだろう。
体がふわふわしてどこにでも行けそうなのに、がんじ絡めで動けないような。
なんだか泣き叫びたいような、このまま黙って消えてしまいたいような。
ここはどこだろう。
病院のベッド。女の人が寝てる。お見舞いの男の人。
「ママ。いよいよだね……」
「そんな顔しないで。大丈夫よ。今も元気に動いてるのよ」
女の人が男の人の手を取り、お腹にそっと置いた。
「あ……!動いた!動いたの、わかった……!」
「よかった。パパが触ってくれたとき、毎回頑張って動いてたんだよ。『パパ、私、生きてるよ。元気だよ』って」
幸せそうな妊婦さんと旦那さん。見てるだけで私もとっても幸せ。幸せが涙になって溢れそうになって、叫びたい衝動に駆られる。
何か……。何なのかよく分からないけど、早く何かを伝えなくちゃ。
聞いて。
私は……!
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「ーーはっ!いま何時!?」
「ただいまの時間は 午前8時26分ロト!」
「ヤバッ!!」
慌てて飛び起きてのんきなスマホロトムを捕まえた。
やばい、急がなきゃ。滑り落ちるように階段を降りる。
「レイラ、アローラ!どうした?今日はスクールはお休みだよね?」
パパはのんきにコーヒーを飲んでる。アローラ!と言うのはおはよう、こんにちは、こんばんはの挨拶だ。
ちゃんと挨拶したいけど、私はもう一分一秒を争う状態だ。パパの方も見ずに適当に「アローラ!」と言った。
どうしよう、どこだ。どこにある?
ママが視界に入った。
「ママもアローラ!テレビのリモコンどこー!?」
テレビのチャンネルが変わった。
『忍ポケ乱プラー、このあと8時30分から!』
テレビから聞こえた声を合図に急いでソファに滑り込み、姿勢を正す。良かった、間に合った。
「ごめんごめん。チャンネルこれで合ってるよね?」
パパはリモコンで少しだけテレビの音量を上げて、ボールを2つ投げた。
機械音のような、ポン!と言う小気味よい音とほぼ同時に可愛い鳴き声がして、私の相棒のモクローとヒトモシがソファに飛び乗ってきた。
さすがパパ、何もかもが全部完璧だ。とりあえず心の中で「ありがとう、パパ大好き!」と言っておいたけど、ここからは集中力を高めないといけないので声に出すのは後にすることにした。
私、アローラ地方メレメレ島ハウオリシティのレイラ。アニメと特撮が好きな、ポケモンスクールに通う14歳。
この子たちは初めてのポケモンのモクローと初めて自分で捕まえたポケモンのヒトモシ。
『そうさ、100%もらいび、忍ポケ乱プラー!』
モクローとヒトモシは短い手足で一生懸命忍ポケダンスを踊って楽しそうにしている。
忍ポケ乱プラーは陰ながら世界を守る忍者を目指す、ポケモンたちの友情と努力と胸きゅんな恋愛を描いたアニメだ。
私のポケモンたちは忍ポケに憧れて日々バトルのとっくんを頑張っている。
オタクの力は凄まじく、私は同じ時期に初めてのポケモンをもらった同級生たちには負け無しだ。
集中していたら忍ポケ乱プラーはあっという間に終わってしまった。
『次は、まじかる☆社員ちゃん!CMのあと!』
よし、ここからが本番だ。まじかる☆社員ちゃんはこれまでの特撮ヒーローものとはひと味もふた味も違う。
なにせ社員ちゃんたち18人のキャストのほとんどが実際に各地でジムリーダーやチャンピオンをやってる方々で、アクションシーンは本当に白熱したポケモンバトルになる。
私は特にシャインゴースト役のマツバさんと、シャインメタル役のダイゴさんの大ファンだ。
マツバさんはジョウトのジムリーダー。
ダイゴさんはホウエン地方のチャンピオン。
「ジムリーダー、かぁ......」
まじかる☆社員ちゃんも終わり、伸びをしていたら思わず声が漏れてしまった。今週の社員ちゃんたちもかっこよくて可愛かったな。
アローラにはポケモンジムが存在しない。ポケモンリーグもない。つまりジムリーダーもチャンピオンもいない。アローラのポケモントレーナーたちは代わりに島めぐりに挑戦する。
島めぐりでしまキングやしまクイーンと呼ばれる存在が他の地方のジムリーダーにあたるのだろうけど、自分のジムを持っているジムリーダーと、そうでないしまキングやしまクイーンとでは、やっぱり違う。
自分のジムを持つってどんな感じかな。ジムチャレンジは誰が内容を決めるのかな。
島めぐりが終わってスクールを卒業したら、他の地方を冒険してみたいな。でも、パパをひとりでお留守番させるのは心配だな。
ーー私が物心ついた時にはもうママはいなかった。病気だったらしい。私にはママの記憶がひとつも無い。
私のママは、いつも写真の中でほほえんで見守ってくれている綺麗な女性という認識だ。
自分で言うのもなんだけど、私の顔はママそっくりだ。パパから聞いた話によるとママは歌手だったらしい。私も歌うのが大好きだ。
自分の中に確かにママを感じている。寂しいと感じたことはほとんどない。
「よし!」
無駄に気合いを入れて庭に出た。よし、今日はこのお花にしよう。
庭に咲いてるお花をママにプレゼントするのが私の日課。
「ママ。私、今日も頑張るね」
そっと花を置く。
笑ってるママの写真が、すごく喜んでるみたいに見えるから、この日課が大好き。
「よし、モクロー、ヒトモシ!朝ごはん食べたらお庭でとっくんするよ!」
「モルォ!」「モシィ!」
ポケモンたちは元気に返事をして食卓についた。
「レイラはジムリーダーになりたいのかい?」
パパは笑顔で聞いてきた。一瞬迷ったが「わかんない」とだけ言った。口の中の朝ごはんが邪魔して、なんだかかなりぶっきらぼうな感じになった。
ポケモンたちは大好物のポケモンフーズをたっぷり頬張ってる。この子たちにはどんな夢があるのかな。
「夢を声に出すことは大切だよ。やるぞ!って気持ちになるし、自然と周りの人が応援してくれるようになる。レイラはどんな大人になるのかなぁ。ママみたいな歌手かなぁ。パパみたいな最強のポケモントレーナーかなぁ」
「まだわかんないってば!ポケモンもらったばっかりだし。それにパパは研究ばっかりでバトルしてるとこなんて見た事ないよ!私は博士にはならないからね!」
パパは天体の動きがポケモンにどう影響するのかを研究している博士だ。シナミ博士と言えば、誰でも知ってる界隈の第一人者だ。
パパはポケモントレーナーでもあるけど、バトルしてるところは見たことがないし、なんならポケモンを見せてもくれない。
でも、カントーとジョウトとホウエンのジムバッジをすべて持っているのできっと強いんだと思う。
「そういえば、パパはポケモンリーグには挑戦しなかったの?」
「そうなんだよ。リーグの入り口でまだ無名だったママが歌ってるのを見てね」
パパはニコニコしながら、少し寂しそうに続ける。
「一瞬で大ファンになっちゃって、リーグどころじゃなかった。ママのエンジュ弁を頼りにジョウト中を巡って、ホウエン出身なのがわかって今度はホウエン中を回って、ついでにジムバッジを全部集めちゃった。それで、ついにママを見つけたんだ」
パパは急にドヤ顔になって、オタク特有の早口になった。
「ホウエンのおじいちゃんは、昔はトクサネ宇宙センターのセンター長だったんだ。ママはいつもおじいちゃんの手伝いをしてて、なかなか仲良くなるきっかけがなくて。だからパパは必死に勉強して宇宙センターの研究員になって、ママと仲良くなった。そこからはもう天体とママの虜になっちゃて...!夜空に向かって歌うママはそりゃあもう......で......だったから......すばらし.......うつくし......それでパパはね......」
パパの話はだんだん頭に入ってこなくなった。私のオタク気質はパパそっくりだ。
「ごちそうさま!ポケモンたちととっくんするから準備してくる!」
私はわざと少し大きい音が鳴るように立ち上がった。
「おっ、やる気満々だね!頑張れ!でも明日はメテノ流星群だからね!遅くならないように!」
「わかってるってば!よし、みんないくよ!」
私はポケモンたちをボールに戻し、階段を上がった。
「ボール磨いてくれてありがとね!パパ大好き!」
言い終わらないうちに部屋のドアを閉めた。
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翌日。
「パパ、いってきます!」
「はいはい、スクール頑張って!パパは夕方からホクラニ岳の天文台にいるから、天文台の研究所に集合ね!」
「わかった!パパも頑張ってね!」
今日はいい天気だ。メテノ流星群も綺麗に見えそうだ。
「レイラ!アローラ!」
「みんなおまたせ!アローラ!」
スクールの同級生のリーリエちゃんとマオちゃんとスイレンちゃん。いつも一緒に登校している、仲良しで大切なお友達だ。
話していたらあっという間に学校に着いた。
「アローラ!女性陣!」
カキくんとマーマネくんはもう教室にいた。彼らも大切なお友達。素敵なクラスメイトと一緒に学べて毎日が本当に楽しい。
......なんて思っていると、突然胸に凄まじい衝撃を受けた。
「マァル!」
元気で可愛い鳴き声。マーマネくんのトゲデマルだ。いつも飛びついて思いっきりびりびりちくちくしてくれる。この子も大切なお友達。
「わ、ごめんねレイラ!こら、トゲデマル!危ないだろ!」
マーマネくんは急いでボールを構えた。
「大丈夫だよ。トゲデマルもアローラ!今日もびりびりでちくちくだね!」
私はほっぺですりすりした。トゲデマルもほっぺすりすりしてくれる。かわいいなぁ。
「まぁ......レイラがいいならいいけど。トゲデマルに飛びつかれて平気なのは、レイラとカキぐらいだよ......」
「あはは!スーパーマサラ人の娘だからね!」
トゲデマルは満足したようで、今度はカキくんに飛びついた。
「うぉっ、今日は急所に当ててきたな......油断した。ところで、レイラは今回のメテノ流星群もシナミ博士の手伝いですか?」
「うん、そうだよ。みんなは?」
いや、カキくんは聞くまでもなく、流星群の日はアローラの神々に奉納するファイヤーダンスを踊る。これのおかげでメテノたちが迷わないとされてる。
ファイヤーダンサーは神々に選ばれた人にしかできないとっても名誉なことなんだけど、カキくんは更に自分を磨いて世界的ダンサーになるのが夢みたい。
カキくんならなれると思う。今だってダンス留学することを目指してバトルも勉強も頑張ってる。カキくんとのバトルはいつもヒヤヒヤさせられる。
リーリエちゃんはお母さんとお兄さんと一緒に見るみたいだ。
リーリエちゃんのお母さんのルザミーネさんは傷付いたポケモンたちの保護を行うエーテル財団の代表だ。リーリエちゃんもポケモンが大好きでとっても優しい。ポケモンが傷つくのが怖くて、バトルは本当に苦手ってくらいには優しい。
いざという時はバトルが強いお兄さんもいるし、きっと立派な代表になるんだろうな。関係ないけど、お兄さんはすごくイケメン。
マオちゃん家は食堂で、スイレンちゃん家は漁師さん。マオちゃん家の食堂の魚介類はすべてスイレンちゃんたち家族が採ったものだ。
流星群の日は食堂がとっても忙しいので、マオちゃんもスイレンちゃんも食堂を手伝うみたい。
マオちゃんの料理は斬新でとってもおいしい。スイレンちゃんは釣りの達人で、噂によると伝説のポケモンのカイオーガを釣り上げたこともあるらしい。
マオちゃんとスイレンちゃんは家族のお仕事をずっと手伝っていて、もうその道の達人だ。
マーマネくんは......
「ぼくもシナミ博士のお手伝いしたいけど......今回の流星群は試作の観測機の最終調整するんだ」
そう言って付箋だらけでボロボロの天文学書を開いた。
「ぼくの計算によると、今回は流星群の軌道がかなり近いみたいなんだ。きっとこれまでよりもっと綺麗に見えるよ」
マーマネくんは天文学者になるのが夢。
前回の流星群のときは一緒にパパのお手伝いをしてくれて、パパと難しい話で盛り上がっていた。
マーマネくんは天才だ。その上コツコツ努力もできる。パパも「スクールを卒業したらウチに婿に来ないか?」なんて言ってひとりで大笑いしてた。
正直言って、マーマネくんみたいな恰幅のいい男の子は全然好みじゃない。マツバさんやダイゴさんみたいなスマートなイケメンがいい。
......それに、マーマネくんは私のコンプレックスをちくちくと刺激してくる。
私もちっちゃい頃は、パパのような天文学の博士になりたかった。星はじっと見てると少しずつ動いてるのに、翌日には元の場所に戻ってくる。でも本当は少しずつ、毎日ほんの少しずつゆっくりゆっくり水平線に向かっていて、いつかは見えなくなってしまう。
でも次の年にもアローラに帰ってきて、また同じ水平線に向かって進んでいく。とっても不思議だ。星たちは何を思って、何のためにどこを目指してるんだろう。
いつかわかるといいなぁ、なんて思ってスクールに入学したけど、マーマネくんはすでに天体の軌道について完璧に計算できていて、今は観測機や望遠鏡を開発している。
私なんかとは才能と本気度があまりにも違いすぎた。
私は色々興味はあるけど、全部が中途半端。
ポケモンが大好きだからポケモンのことをもっと知りたいな。
バトルも楽しい。勝てたら私もポケモンたちも大喜びだ。
ポケモンの幸せそうな顔をもっと見たいし、ポケリフレサロンを開こうかな。
ポケマメ農家もやってみたいし、パティシエもいいな。マラサダはもちろん、ポフィンとかポロックとか、世界中のスイーツを作りたい。
ポケウッド女優はどうだろうか。マツバさんやダイゴさんと会えるかも知れない。そうだ。漫画家やアニメーターもいいな。私、オタクだし。
あとやっぱり......歌うのも星を見るのも大好き。ずっと星空の下で歌いたい。
私には何ができるのかな。
私はどこに向かって進んでるんだろう。