「パパー!ただいまー!」
パパは私たちを見るなり、立ち膝でスライディングして頭を地面ギリギリまでつけてアローラの神様に捧げるお祈りのポーズをした。
「ちょ......!パパなにやってんの!?」
「はっ、あまりに神々しいから神様かと思ったらキタカミの『英雄さま』と『てらすさま』じゃないか!なんてこった!なんまんだぶ、なんまんだぶ......じゅげむじゅげむ......」
ゼイユちゃんもスグリくんもぽかーんとしている。もうやめてぇ!みんなの笑顔はゼロよ!
「ははは......。シナミさんは本当に面白い方ですねぇ」
キタカミのオジキはにっこにこだった。
「お祭に行くじゃろ?シナミさんにもじんべぇ着て頂いたよ」
「はっ、ギャグの為に大切な伝統衣装になんて事を......」
パパはいつもの完璧なパパ......じゃないな。膝がちょっと赤くなってる。じんべぇちょっと小さくない?
「いいんですよ、じんべぇは子供からじじばばまで、思いっきり遊んだり、ゆったりくつろいだりするために着るものです」
パパはなんだか小さくなって、今度はキタカミのオジキにお祈りするみたいに頭を下げてる。
「あ、えと、レイラさんのおとーちゃん。これもどうぞ」
スグリくんは赤い鬼さまのお面を差し出した。
「『かまどのめん』じゃないか!いちばん使用率が高いと伺ってるが......。本当にいいのかい?」
使用率。そうなんだ。なるほどわからん。
「レイラさんにも好きなものをお選びいただいて、失礼ながらわたしたちも先に選ばせていただきましたので......。ほほほ」
丁寧なすがたのゼイユちゃんだ。こんなパパにも敬意を払ってくれてるんだ。ありがとう。
「では遠慮なく......。どうだい?似合ってるかい?」
「レイラさんのおとーちゃん、すげーかっこいいべ......」
うーん?パパの無邪気すぎる笑顔と鬼さまの邪気溢れる表情はミスマッチで、じんべぇも小さいし、なんかちょっとかっこわるいべ?
「ささ、ご案内いたしますので、早速参りましょう」
「よろしくお願いいたします」
パパはゼイユちゃんにお祈りを始めた。ゼイユちゃんはさっきからぷるぷる震えてる。
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「わぁぁー!すごーい!!」
出店がたくさん出ている。やきそば、マーイーカ焼き、ナナのみチョコ......!食べたことないものばかりだ!
お面や不思議なおもちゃの売ってるお店や、ミニゲームで遊べる場所もある!
「まずは男女に分かれてまわりましょうよ。おほほー」
ゼイユちゃんに引っ張られて、パパとスグリくんは人混みに紛れてしまった。
「よし。てらす、これやりなさい」
さまざまなポケモンのぬいぐるみが棚にたくさん飾ってある。
「え、これなに?」
「ボール投げよ。ボールを当ててぬいぐるみを落としたら景品がもらえるの。あんたボール投げるの得意そうだったから、あれ取って」
ゼイユちゃんはそう言って、すみっこにある小さなピカチュウのぬいぐるみを指さした。
「小さいから難しいけど、ハイパーボール級の景品がもらえるのよ。あたしの為にオシャボセットをゲットしなさい」
ゼイユちゃんはお店のおっちゃんにお金を払って、ボールを5つ受け取って私に押し付けた。
「えぇー!?できるかな!?」
「ふたつ以上取れたら、ハイパーボール級の景品以外はてらすにあげるから。ほら、早くしないと他の人に迷惑よ」
「......がんばる」
私はピカチュウをにらみつけた。
ピカチュウは少し奥側で、少しだけ前のめりに座っている。すぐ落ちそうに見せかけて、重りか何かが入ってて正面に当てても簡単には棚から落ちないようになってるな。おっちゃんも悪よのう。
よし。できる。ゼイユちゃんのために、がんばるぞ。
私はボールを投げた。
ボールはピカチュウの右隣にあった大きめのヤドンのぬいぐるみの左側にこつんと当たり、ヤドンはそっぽを向いた。
次々とボールを投げてすべてヤドンに当たり、ヤドンはどんどんそっぽを向いていって、しまいには右隣のシェルダーをじーっと見つめ始めた。
後ろから「もう!なにしてんのよ!せめて最後の1球くらいはピカチュウに当てなさいよ!」ってゼイユちゃんが叫んでたけど、ごめん、今ちょっと忙しい。
私は少し立ち位置を調整して集中した。よし、ロックオンだ。
「いっけぇえーーーー!」
全力でボールを投げた。
ボールはそっぽを向いたヤドンにクリーンヒットし、ヤドンはシッポでピカチュウを道連れにしながら棚の向こうに落っこちていった。
ピカチュウとヤドン、ゲットだぜ。
カラカラカラカラーーーン!!!
いきなり大きい鐘の音がして、飛び上がった。
「ついに出たーーーっ!ダブルゲットーーー!!!文句無し!マスターボール級ー!!!!」
周りから歓声が上がり、振り返った。気付いたらギャラリーがいっぱいいて、パパとスグリくんも見ていた。スグリくんは拍手してて、パパは「あれ、うちの娘です!うちの娘!」と大興奮していた。恥ずかしい。勘弁してー。
「さ、マスターボール級は職人手彫りの鬼さまお面のレプリカか、ポケモンのタマゴだよ。嬢ちゃん、どっちがいい?」
「え、えっと。私ハイパーボール級のオシャボセットが欲しいんです」
遠くから「鬼さまお面......。ほしい......」って聞こえてきたけど、ゼイユちゃんのお金だからね、ごめんね。
「えぇー!?じゃあピカチュウのハイパーボール級とヤドンのモンスターボール級、それぞれの景品に分けちゃう?」
「はい!じゃあ......キズぐすりセッむごご」
後ろから口を塞がれた。
「何言ってんのよ!ハイパーボール級の景品以外はあげるって言ったでしょ!手持ち空いてるんだからタマゴ!タマゴもらいなさいよ!」
「え!?いいよ、ゼイユちゃんのお金でやらせてもらったんだし」
わちゃわちゃしてたらおっちゃんが割って入ってきた。
「わかった!じゃあ、ハイパーボール級の景品2こにしよう!ゼイユちゃんもお嬢ちゃんもオシャボセットでお揃いにしたらええ!」
「いいんですか!?やったね!ゼイユちゃん!お揃い!嬉しいね!」
「あ、うん!ありがとう。おっちゃん」
「いいのいいの!あ、おっちゃんのきんのたまセットも選べるけど本当にそっちでいい?」
ゼイユちゃんとお揃いのオシャボセットをもらった。使うのもったいないな。お部屋に飾ろうっと。