ゼイユちゃんとスグリくんのお家でお風呂を借りた。私がここに来たときに着ていた服は、ヒエさんがお洗濯してくれていて、自分からユキノシタさんやヒエさん、ゼイユちゃんやスグリくんと同じ、のどかでやさしいおひさまみたいな香りがする。幸せ。
「ユキノシタさん、ヒエさん、お風呂いただきました!ありがとうございます!」
「今日は本当にお疲れ様。身支度できたらわしとばーさんで公民館まで送っていくからね」
「そんな、すぐそこですし、ひとりで大丈夫ですよ!」
ユキノシタさんは険しい顔で首を横に振った。
「レイラさんはポケモンに連れ去られて鬼が山で遭難しまったんだろう?そんなポケモンに大人気のお嬢さんを、ひとりで夜道に放り出すなんて、とんでもない」
笑った方がいいのかと思ったけど、ユキノシタさんは真剣だ。
「もう二度と、お父さんにあんな顔させてはいけないよ。こう見えてわしのポケモンは結構強い。わしより強いばーさんも一緒だから、心配しなくていいんだよ」
「ありがとうございます......。すぐ支度しますね」
2年前、顔をぐちゃぐちゃにして泣いていたパパの姿を思い出して、胸が痛んだ。
そっか、そういうことだったんだ。私、あの日のパパと、今日のパパが結びついてなかった。
私からしたらもうだいぶ前の出来事みたいだけど、パパからしたらつい最近のことみたいに感じてるのかも知れない。
ごめんね、パパ。心配してくれてありがとう。パパが安心できるくらい、強くなるからね。
身支度を終えたら、スグリくんはお風呂に入る前に居間で寝落ちしちゃってた。おやすみ。今日はありがとう。
お風呂上がりのゼイユちゃんにバイバイして、ユキノシタさんとヒエさんと一緒に外に出た。
風が稲を揺らして心地よい音が鳴って、コロトックの歌やポチエナのとおぼえで、オーケストラみたいだ。
そんなこんなで、やっぱりすぐ公民館には着いたけど、パパがユキノシタさんに分厚い封筒を渡そうとして押し問答を始めた。
「あら、有難いわ。今ちょうど入り用だったのよ。シナミさん、確かに。ありがたく頂戴しましたよ」
ヒエさんはゼイユちゃんそっくりの笑顔でパパから分厚い封筒を受け取った。
「はい!ほんのお気持ち程度ですので、お気になさらず!」
「ば、ばーさん、ちょっと......」
ユキノシタさんは『我が妻ながらさすがにドン引き』って感じの顔をしていたが、ヒエさんはルンルンしながら分厚い封筒を私に押し付けてきた。デジャブ。ゼイユちゃんからボールを押し付けられたときのやつだ。
「これ、今日の歌のおひねり。本当に素晴らしかったわ。臨時収入があったから気にせず受け取って。若い女の子が持つにはちょっと多すぎるから、お父さんに預けておきなさいね」
呆気に取られていると、分厚い封筒がパパの手にテレポートしてヒエさんの目の前に差し出された。
「そんな、できません!どうか受け取って......」
ヒエさんはわざとらしい「にへへ」って音が聞こえて来そうな笑顔を作った。
「あら?じーさん。わたし、ついさっき確かに受け取りましたよね?」
「あ、あぁ.......」
「やだわぁ、もう、シナミさんったら。ボケが始まっちゃったかと思ったわ。さ、帰りますよ、じーさん」
ヒエさんはユキノシタさんを引きずって公民館を出ていった。
すかさずパパも私を引っ張って外に出て、ユキノシタさんとヒエさんが見えなくなるまで頭を下げ続けていた。私も、笑顔で手を振り続けた。
さすがに疲れたので、すぐに部屋に戻って布団に潜り込んだ。でも、なんだか興奮してて全然眠れる気配がない。
こういうときの『ポケモンお悩み相談所』だ!
夢中で見てて、気付いたら寝落ちしてることも多い。
今日は私も相談してみよう。
..........
レイちゃん:相談させてください。学生トレーナーです。
野生ポケモンをゲットするのが怖いんです。克服する方法はありませんか?
優太:ポケモン自体とか、バトルとかじゃなくて、ゲットだけが怖いの?
ミドリモン:まずは理由を聞かないと、どうにもアドバイスできないね
レイちゃん:ゲットだけが怖いんです。わざと倒さないように何度もこうげきしたり、暴れて嫌がってるのに何度もボールを投げて捕まえてしまうのが残酷な気がしてしまうんです。
レイちゃん:野生ポケモンにも大切なお友達や家族がいるはずなのに、ひとりだけ連れ出してしまって、恨まれたりしないか心配になって、そもそもボールを投げられなくなってしまうこともあります。
レイちゃん:周りの友達はみんな6匹以上ポケモンを持ってるのに、私はもらったりした3匹しかゲットできていなくて焦っています。
なるべく早く克服する方法はありませんか?
メガメガニウム:そういう人、結構いるよ。かく言う私も結構苦手。そればっかりは仕方ないし、まずは焦らず野生ポケモンを観察したり、気長に何度か触れ合ってみたりして、仲良くなれたら「一緒に行こう」ってボールを見せてあげたらいいと思う。
ミドリモン:そっか、納得。じゃあ
・地域の生態系を壊す外来ポケモンや、人の安全を脅かすようなオヤブンやぬしポケモンと、とことんバトルしてゲットする
・ポケモンのタマゴを譲ってもらって、自分が親になる
こんなのはどう?
僕んとこのポケモンのタマゴで良ければ譲るけど。
優太:タマゴ渡しても大丈夫な人か見定めないとアカンやで
XYZ:新しくゲットしないで、ポケモン保護施設から引き取ってクレベース
ルビィ:まだ3匹しかポケモン持ってない子に施設のポケモンは荷が重い。お互い更に傷付くことになるレジ気ガス
..........
シャンデラとミミッキュは自分からボールに入ってくれた子だ。
シャンデラはヒトモシだった頃、私が落としちゃった忍ポケ乱プラーの缶バッジを拾ってくれた子だ。
落としたことに気付いて戻った時、私の缶バッジを他のヒトモシに見せびらかしてるのを見て、もうあげちゃおうと思ってそのまま立ち去ったんだけど、次の日私が通りがかったときに少し残念そうな顔をしながらも返そうとしてくれた。
「たくさん持ってるからあげる」って言ったら、たくさん持ってるっていう私のコレクションが見たくなったらしく家まで着いてきちゃって、そのまま居着かれたのでゲットして一緒にオタ活してる。
シャンデラみたいに、オタ活にフルコミットできる子なんてそうそういないと思うんだよなぁ。
外来ポケモンとかの危険なポケモンをゲットする発想はなかったな。他の野生ポケモンに迷惑をかけちゃう子と、とことんバトルして、ゲットする。
ゲットしたあとに、他のポケモンに迷惑をかけない方法をじっくり教えてあげる。
これならできるかも知れない。
それに、そうだ。
私が手持ちで温めてタマゴから孵化したポケモンは、親が私になるのか。
手持ちの他のポケモンと友達になってくれたら、家族と友達と一緒にいられるって事だ。これは盲点だった。
でも、基準は分からないけど、私がタマゴを渡されて大丈夫な人かは怪しい。
保護施設のポケモンかぁ。人間不信の子や、持病とかを持ってる子を面倒見るのは、確かに私には難しいかも知れない。
でも、エーテル財団を見学させてもらえないかな。アローラに帰ったらリーリエちゃんに相談してみよう。
ゲットしなきゃ、ゲットしなきゃって思ってたけど、いろんな方法があるんだ。
どれも難しいかもしれないけど、焦って視野が狭くなってたのに気付かされた。
顔も見たことない。このたった一度しか交流もないかもしれない。
でも、みんなが助けようとしてくれる。あったかい。
『ポケモンお悩み相談所』のみんな、本当にありがとう。
次に気が付いた時には、もう朝だった。