今日はパパと一緒にいろんな場所を観光することにした。
「パパ、見て!石が丸く並んでるよ!」
「あれは『ありがたい輪』だね。これは......どうやら......で......それから......」
「わぁー!ノズパスさんがいっぱい!ノズパスさーん!こっち向いてー!」
何匹か私の方を向いてくれたけど、やっぱりすぐに北の方に向き直った。
「うわー!ありがとー!!」
パパはノズパスを見つめて何やら難しい顔をしてる。
「レイラ、パパはノズパスさんをゲットしてみることにするよ」
「わぁ、パパのポケモン見るの初めて!頑張れ!」
「ありがとう。パパ頑張っちゃう。いけ!メタン!」
メタグロスだ!パパ、メタグロス持ってるんだ!シャインメタルの相棒じゃん!えー!もっと早く見せてくれればよかったのに!
うわー!パパのメタグロス、かっこいい!強そう!メタンってニックネームをつけてるんだ。かわいい。
「ふむ、ふむ。オッケー。君、バトルしよう!」
パパは一際大きいノズパスに声をかけた。
「ヌズゥ!?プヮァ!!」
少し驚いた様子だったけど、ノズパスもやる気だ!
「メタン、娘の前だ。かっこいい所見せてくれよ。いけ!コメットパンチ!」
え、コメットパンチ!?効果はばつぐんだよ!メタンくんの方が明らかにレベルも高い。ノズパスさんがひんしになっちゃう!
私はぎゅっと目を瞑った。
ものすごく激しい音がした。うぅ、ノズパスさん。パパがごめんなさい。
「ズ、ウ......!」
え、ギリギリだけど、ノズパスが耐えてる!すごい!
「思った通りだ!きみなら耐えてくれると思ってた。とっても『がんじょう』だね!俺と一緒に来ないかい?」
「ズパァ!」
ノズパスは褒められて嬉しそうだ。ドヤ顔をしている。ちょっとパパに似てるかも。あと、パパが自分のこと『俺』って言ってるの、初めて聞いた。
パパは私の事をチラッと見たあと、ボールを投げた。
「ぶっ......!」
吹き出しちゃったよぉ!
乱プラーのごすずんの忍者フォームじゃないか!しかも、完全再現!捕獲クリティカルだ!パパすごい!
ノズパス、ゲットしてるぜ!
「メタン、少し動きにくかっただろう?ごめんな。頑張ってくれてありがとう」
パパはメタンくんに駆け寄ってボールに戻すと、ノズパスをボールから出した。
「ノズパス、よく耐えてくれたね。さ、いいキズぐすりだよ。あとでジョーイさんにも見てもらおうね」
ノズパスはそっぽを向いた。あ、あっちが北なだけか。
ノズパスは何か思い出したかのようにパパに向き直って、何かを差し出した。
「おっ、これは『かたいいし』かい?ありがとう。これからよろしくね」
「ズパズパァ!」
ノズパスは嬉しそうにボールに戻って行った。パパはもうノズパスと仲良しだ。すごいな。
「パパ、なんでここでノズパスを捕まえることにしたの?ノズパスはアローラにもいるよ?」
「そうだね。でも、アローラのノズパスと比べて、キタカミの子は人間に対して興味がありそうだったからね。レイラの方を見てくれた子ならゲットしたいなって」
確かに、アローラのノズパスは、人間が近付いても、動かずに石のふりをしてやり過ごそうとする子ばかりだ。
「あとは、はがねタイプのメタンに出てきてもらって、特性が『じりょく』か『がんじょう』か判断して『がんじょう』の子に挑むことにした。パパのポケモンだと、勢い余ってひんしにしてしまう可能性が高いからね」
『がんじょう』はどんな攻撃でも一度は耐えられる特性だ。授業で習ったのに忘れてた。
待って?あの一瞬でこっち向いてくれた子とそうじゃない子を覚えて、そこから更に選んだの?すごくない?
「トレーナーがポケモンをゲットしたいのと同じように、ポケモンもトレーナーにゲットしてもらっていろんな所に行ってみたいと思ってる子もいるからね。それに、自分がどんな人間か、どんなふうにポケモンと接しているかを伝えるには、バトルが一番なんだよ」
「そっか。そういうものなんだ。パパすごいね!」
「まぁね!何せ『てらすさま』のパパだからね!」
「もうっ!やめてよ!」
知らなかった。バトルしてポケモンをゲットするって、そういうことなんだ。
ふざけてばっかりでオタクだけど、パパは、やっぱり完璧だ。
あっという間に時間が過ぎて、今日行く予定してる観光地はすべて周り終えた。
公民館への帰り道、パパと話すことにした。
「パパ、昨日はごめんね」
「えぇっ!パパに隠れて、謝らないといけないような事をしたの!?そういうことなら、許しません!」
えーっと、ツッコミはいいか。
「昨日、パパの気持ち考えずにワガママばっかり言ったこと。ごめんね」
「ううん。パパも反対ばっかりしてごめんね」
「んーん。その時はパパがなんで反対したのか、よくわからなかったんだ。でもユキノシタさんと話して、パパが心配して言ってくれてたって、気付いたんだ」
パパは「うん、うん」と頷きながら話を聞いてくれていた。
「でもね、私、これからいろんなことに挑戦したいんだ。これからも心配かけるかもしれないけど、パパがなるべく心配しなくて済むように、強くなるね」
パパは「ありがとう、わかった」と言ってなんとも言えない表情をした。笑顔のような、泣き顔のような、なんだか怒ってる顔のような......。私の語彙力じゃ表現できないな。
パパだって人間だ。いつも完璧で笑えてるわけじゃない。
つらい時や、しんどい時、不安で押しつぶされそうな時もあったりして、私の想像以上に、無理して笑ってた時がたくさんあったはずだ。
そんな簡単なことに気付くのに16年もかかってしまった。
パパ、ごめんね。ありがとう。大好き。
それでも声に出すことは出来なかった。
なんだか恥ずかしくなっちゃって、最近言えてないな。
そんな事を考えながらも、パパが変なことばっかり言うから、声を上げて笑いながら公民館に帰った。