パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

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強くてすごい

「あー!もう疲れた!」

 

ホクラニ天文台に着いて早々、パパの仮眠用ベッドに倒れ込んだ。

 

スクールのあるメレメレ島から、ホクラニ天文台のあるウラウラ島は遠すぎる。

船の時間がギリギリで走ったし、船は満員だしマリエシティは乗船場から人がごった返してて、なかなか前に進めないレベルだった。

早く島めぐりしてしまキングたちに勝って、ポケモンライドの免許を取りたい。

 

「お疲れ様。しんどかったら寝ててもいいよ。無理は良くないからね」

 

パパは望遠鏡から目を離さずに言った。

パパだって明け方まで寝ずに流星群を観測して、夕方には学会に行くためにホウエン地方に向けて出発して、学会が終わったらホウエンのトレーナーズスクールで特別講師をするなんていうめちゃくちゃなスケジュールのくせに。

 

「大丈夫だよ。パパだって今すぐメテノの殻も調べたいくせに、かわいい娘の顔すら見る余裕もないくらい手が離せない状態なんでしょ」

 

パパは何も言わない。集中するといつもこうだ。

 

私はただ星空が好きなだけで、天文学はまったく理解できない。パパの助けになりたいと思って少し天文学書を読んでみたけど、ちんぷんかんぷんすぎて、なんだか頭が痛くなってすぐにやめた。

 

私にできることと言えば、流星群と共に現れるメテノたちが落とした殻を集めることくらいだった。

 

それに比べてパパは本当に全部が完璧だ。頭もいいし優しいし、背も高いし多分若い頃はかなりモテたと思う。

それに、好きなことを仕事にしてちゃんと成果を出して、世界中から注目されてる。

おまけに世界中に教室がある名門バトル塾であるトレーナーズスクールの名誉講師で、特別講師としてたまに各地方の教室で教鞭まで振っている。

 

働きすぎて過労死するんじゃないかと思ったりするけど、スーパーマサラ人のパパは「ピンチはチャンスだ!」と訳の分からないことを言って、忙しい時の方がむしろ元気なくらいだ。

 

しかもお掃除もお洗濯も全部やってくれる。お仕事が早い日も忍ポケ乱プラーのキャラ弁作ってるし、遅くなる日も私の夕飯を作ってからお仕事に行くし、泊まりの時すら毎食分のごはんを冷凍しておいてくれるし、朝や夜に顔が合わせられない日でもおはようとおやすみなさいの連絡は必ず送ってきてくれる。

 

私だってもう自分のポケモンもゲットしたし、もっとお仕事に集中しなよって何度も言ったけど……。

 

「パパは星とポケモンが大好きだけど、レイラのことはもっともっと大好きだから絶対に嫌です!」

 

って渾身のドヤ顔をしてくる。

 

なんでそんなに夢中で一生懸命になれるんだろう。好きってだけでそんなに頑張れるのものなのかな?

 

私は好きなものはたくさんあるくせに、パパみたいに全部できるほど器用じゃないし、かと言ってひとつのことに集中することもできないし、私は他の人たちに比べて何かを好きって気持ちが足りない薄情者なのかな。

 

カバンの中身を全部出して背負った。今回はパパが困っちゃうくらい殻をいっぱい集めてこよう。ポケモンたちよし。スマホロトムよし。さて、頑張るぞ。

 

「キズぐすりは常に持ってるのが最強ポケモントレーナーの極意だよ」

 

こっちを見てないくせに、パパはエスパータイプなのかな。なんか恥ずかしくなって、こっそりキズぐすりをカバンにしまった。

 

「モンスターボールも持って行きなよ。いつどんな出会いがあるかわかんないからね」

 

「もう!わかってるってば!」

 

慌ててモンスターボールを数個掴んで適当にカバンのサイドポケットにねじ込んだ。

 

「パパ!行ってきます!大好きだよ!」

 

パパはやっぱりこっちを見なかったけど、親指を立てて見せてくれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私はマリエシティのはずれの岬に到着した。岬にはぽつんとリサイクルプラントがあって、アローラ中のゴミがここで処理される。

なかなかのニオイがするので、ほとんどの人やポケモンが近付かない。

 

アローラは観光地として有名で、年中ひっきりなしに観光客がやってくる。中にはどうせしばらく来ないからとゴミをポイ捨てしたり、映える写真を撮るためにあちこちで食べ物を頼んで食べ切れずに残したりする人もいる。

おかげさまでアローラのゴミは栄養満点らしく、ゴミを栄養源とするコラッタやベトベターはあくタイプを得たアローラ特有の姿をしている。

 

ここではコラッタもベトベターもヤブクロンもとってもイキイキしている。おかげでコイルは天敵になるポケモンが来ないので、生え変わって抜けた古いねじをベトベターやヤブクロンに食べさせてあげる共生関係のようだ。

 

でも実は流星群の日だけはメテノも来てくれる。メテノの殻探しマスターの私が数年かけて見つけた穴場スポットだ。

 

「わぁ、今回は大漁だぁ」

 

あちらこちらにメテノの殻が落ちている。夢中になって拾っていたらすぐにカバンがパンパンになった。一度戻って大きいカバン持ってこようかな。これはパパも喜ぶだろうな。

 

それにしても。

 

ちょっと多すぎやしないだろうか?その割には辺りを見回してもメテノの数はそれほど多くない。

 

岬の先端の方は危ないから行っちゃダメって言われてるけど、少し嫌な予感がして先端の方に向かおう......と思ったんだけど。

 

「メテーッ!!!」

 

殻の外れたメテノがこちらに向かって吹っ飛んできた。

受け止めようと一瞬身構えたけど、私の本能が冷静にそれを拒否して「ひょぇ!」なんて危機感の無い悲鳴をあげながら、スーパーマサラ人の娘ムーブでさらっと躱してしまった。

 

メテノは墜落して地面にめり込んでしまった。

 

メテノは小さいけど私と同じくらいの体重がある。本当に申し訳ないけど、受け止めなくて本当に良かった。私の内臓にメテノがめり込むところだった。

 

メテノはすごいキズだ。でもまだひんしじゃない。キズぐすりで治せそうだ。持ってて良かった、キズぐすり。……どこに入れたっけな。

 

「嬢ちゃん、大丈夫か!?」

 

後ろから男の人の声がした。

 

「あ、はい。ありがとうございま……」

 

振り返ったらとんでもない光景が広がっていた。殻の外れたメテノたちが山のようになってぐったりしている。みんなひんしギリギリのところで持ちこたえているみたいだ。

 

少し離れた場所で、金色のハッサムが息を切らしてこちらを睨んでいる。

色違いだ。珍しい!いやそんなことより、ハッサムも身体がボロボロだ。この子がメテノたちを攻撃してるんだ。

 

「お兄さん、大変です!ハッサムが……!」

 

お兄さんがハッサムの方を睨むと、ハッサムは慌ててメテノのことを攻撃し始めた。

 

「あいつは俺のポケモンだから大丈夫。さ、危ないからあっち行ってな」

 

「え……?なんで?なんでこんな酷いこと……」

 

「いやいや嬢ちゃん。酷いだなんてとんでもない。お兄さんは自慢のハッサムを育てるために頑張ってるんだ」

 

嘘だ。ハッサムだってあんなにつらそうなのに、わざわざひんしにならないように攻撃している。そのくせお兄さんはメテノを捕まえる様子もない。これじゃあ経験値も入らないし、ただハッサムとメテノを苦しめてるだけだ。

 

そうか、なるほど。

 

「色違いコレクター……」

 

「おっ、嬢ちゃん勘のいいジャリガールだな。メテノは攻撃して殻を外さないと色違いかどうかわかんないから仕方ないな」

 

ハッサムはヒメリのみを食べてヘロヘロになりながら、申し訳なさそうな顔で戦意のないメテノに対して攻撃を繰り出し続けている。きっと、そうしないと自分がひどい目に合うんだ。

 

怒りで手が震える。どうしよう、ジュンサーさんに通報……いや、野生ポケモンとバトルしてるだけだ。危ないと思ったので逃げましたって言われたらジュンサーさんも手を出せない。

 

どうしよう……どうしよう……!

 

……と思ったらハッサムが手を止めた。

 

「ッシャーム!」

 

「おっ、ついに見つけたか?」

 

ハッサムが鳴いたのを聞いて、すごく悪い人がハッサムの方に向かって行った。

 

「おっと、棚からイモモチたぁこういうことか!」

 

少しわかりにくい色違いだけど、色違いのミミッキュがいた。なんでミミッキュがこんなところに?いや、そんな事は今はどうだっていい。

 

ミミッキュはもうばけのかわが剥がれててすごく怯えている。きっとこの人以外のコレクターにも危険な目にあわされて逃げてきたんだろう。

 

「みねうちは効果がないな……まぁいい。とっとと捕まえるか」

 

すごく悪い人がボールを投げた。どうしよう。どうしよう……!

 

「キュキューーーーッ!!」

 

別のミミッキュが飛び出してきてボールを弾き返した。通常色のミミッキュ。だけど色違いの子としっぽの感じが似てる。きっと家族なんだ。

 

「くそっ、邪魔すんな!」

 

すごく悪い人は次々とボールを投げる。通常色の子はそれを次々と弾き返していった。

 

「ミミキュ!」

 

通常色の子が叫ぶと色違いの子は逃げ出した。でもダメだ。そっちにはハッサムがいる……!

 

「キュ!」

 

通常色の子はハッサムに気付いて急いでハッサムを驚かした……つもりだったんだろうけど、ハッサムはほとんどダメージもないし、ひるむ様子もない。レベルが違いすぎる。通常色の子はバレットパンチをモロに受けて岬の先端の方にかなりの距離を転がっていった。

 

「いいぞ!ハッサム!通常色の方は始末しておけ!バレットパンチ!」

 

ダメだ、フェアリータイプのミミッキュがはがねタイプのバレットパンチを食らったら、効果はばつぐんだ。絶対ひんしになっちゃう。

しかもあの方向からもう一度あの距離を吹っ飛んだら、岬から落っこちてしまうんじゃないだろうか?

ひんしの状態で海に落ちたら……とんでもないことになってしまう。

 

「きゅきゅ!」

 

色違いの子が通常色の子に駆け寄っていった。最悪だ。このままじゃ色違いの子も捕まってしまう。

そうだ、ヒトモシなら……いや、あのハッサムは相当レベルが高い。私のポケモンたちでは全く歯が立たないだろう。

 

つまり、結局……!

 

「私がいちばん強くて!すごいんだよね!!」

 

頭の中にシャインメタルの決めゼリフが浮かんで飛び出した。

メテノの殻がパンパン詰まったカバンをすごく悪い人に向かって放り投げた。開けっぱなしだったから散らばっちゃったメテノの殻が顔面にクリーンヒットして、すごく悪い人は相当やな感じになったと思う。

 

間に合え、私。助けなきゃ。なんとか通常色の子を抱きかかえた。

横からものすごい衝撃。強烈なバレットパンチだ。

 

痛ッ……!!!!くないな、意外と。私、スーパーマサラ人のパパの娘で良かった。

 

いつの間にか通常色の子も色違いの子を必死に掴んでいた。よかった。ふたりとも無事だ。

 

でも、ちょっと詰めが甘かったかな。岬が遠ざかっていく。私の体重でも落ちちゃうんだ。

マーマネくんならこんな無謀なことしなかっただろうな。いや、したとしてもあの安定感のある体重なら落ちなかった。

 

ミミッキュたち、ごめんなさい。今から君たちを岬に向かって全力投ッキュしても、岬より上に投げるのは難しいや。

 

モクロー、ヒトモシ……は、ボールの中にいるから大丈夫か。素敵なトレーナーさんに拾ってもらってね。

 

そうだ、モンスターボール!

ミミッキュたちをモンスターボールに……!ダメだ、カバンは投げたんだった。

 

私は強くもないしすごくもなかった。

行き当たりばったりで全部が中途半端だ。

パパだったら強いしすごいし完璧だっただろうな。

 

さすがにこの高さから海に落っこちたら、スーパーマサラ人のパパの血を引く私でもさすがにちょっと厳しいかなぁ。

 

パパ、ごめんなさい。

いつかママに会いたいと思ってたけど、こんなに早く会えるとは思ってなかったよ。




ぼくが いちばん強くて すごいんだよね!

筆者はRSドット絵のダイゴさんのあまりの可愛さに脳がバグったので、ダイゴさんのことを考えるとダイゴ戦BGMよりも、初めて会ったムロタウンのいしのどうくつのBGMが脳内再生されるので、脳内がずっと『ピョロロッピョロロッ!ピョロロン↓デデッデッデドォーン↓↓』でした。

ポケモン公式YouTubeチャンネルの、ルビー・サファイア BGM集の概要欄のタイムスタンプからトウカの森(同じBGMが使われてます)を聴いてみてください。
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