「スグリくん、ありがとう。私、明日帰っちゃうけど......。これからも仲良くしてね」
こんなことしか、言えないや。
「......うん。手紙書くべ」
スグリくんは「にへへ」と笑った。ゼイユちゃんは、ずっと黙っている。なんか......寂しそう。ごめん、ゼイユちゃんと話しにきたのに、ないがしろにしちゃった。
「長話してごめんな!レイラさん、ねーちゃんと話にきたんだったな!」
「うん、ゼイユちゃん、ごめんね。話してもいい?」
「別に、いいわよ」
明らかに怒ってる。ごめんね。
「あ、えっと。ボール投げのおっちゃんがタマゴくれて、そこからうまれたんだけど、私もパパもチャデスのことよく知らなくて......」
「とりあえず、見せなさいよ」
なんか変な空気のまま、チャデスをボールから出した。
チャデスは何故かゼイユちゃんの頭上に乗っかった。空気読んでよぉ。
「わやじゃ!色違いだべ!」
「なるほどね。こっちおいで」
チャデスはゼイユちゃんの手にすっぽり収まって、フィット感に安心して幸せそうだ。
さすがゼイユちゃん。
「ふふ......かわいいじゃないの。なんでも教えてあげるわ。感謝しなさいよ」
「よろしくお願いします!」
ゼイユちゃんの話によると、この子は『マガイモノのすがた』で間違いないそうだ。
ゼイユちゃんのヤバソチャのとくせいは『おもてなし』だけど、この子は『たいねつ』で、熱に強いからほのおタイプも怖くないみたい。シャンデラ、よかったね。
チャデスやヤバソチャの生態や、お世話のしかたなんかも、細かく教えてくれた。
「ここからが重要よ。この子の『ちゃわん』をゲットするのよ。チャデスがヤバソチャになるには専用の『ちゃわん』が必要なの」
「えっと、どこで買えるの?いくらくらいするの?」
「ヤバソチャの『ちゃわん』は謎の職人の手作りだから売ってないの。でも、手に入る場所は知ってるわよ。早くしなさいよ。もう行くわよ」
「そうなんだ!わかった!お願いします!」
ゼイユちゃん、歩幅広くてかっこいいな。早足じゃないと追いつかないや。
「ねーちゃん、レイラさん、まってぇ!コップさ片付ける!」
「あ、スグリくんごめんね!手伝うよ!」
「大丈夫!ちょっとだけ待っててなー!」
スグリくん、本当にいい子だな。
……うん、なるほど。なんか、わかってきた。
そういえば、『恋』の前には『異性として意識する』という段階があるんでした。
少女マンガなら、今まさに「ふふっ......。おもしれー男......!」って言うべき雰囲気。
......なんか違うかな。でも、そういう感じ。
さっきまで『仲良しのお友達』だったスグリくんが、なんだか違って見えるような......。
「またせてごめんな。いこっか」
スグリくんはにへにへしながら、ぽてぽてと早歩きでこっちに来た。
......うん。スグリくんはやっぱりスグリくんだ。
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キタカミセンターに来た。まだお祭の出店が出てる。
また何かのゲームの景品になってるのかな?
「よし、やるわよ、鬼退治。これの景品セットに『ちゃわん』が入ってることがあるの」
「鬼退治!?」
「『鬼退治フェス』だべ。鬼のバルーンさー割って、きのみさあつめてお供えするゲームだべ」
「え?鬼さまを退治しちゃうの?風船、割っちゃうの?」
「あ......。昔は本当に鬼さ退治しようってゲームだったけど、今は心の中の鬼さ退治して、新しいキタカミの幸せを願うゲームになったんだべ」
「そうなんだ。素敵なゲームだね」
どうやら、景品セットの中身はランダムらしい。
3人で『ちゃわん』をゲットできるまで何度でもやっちゃおうってことだった。
「まずは、村一番の鬼バルーン割りキングのあたしがお手本を見せてあげる。モトトカゲ、出といで」
見たことないポケモンだ!モトトカゲ......。バイクみたいでかっこいい!
「ポケモンと一緒にやるの?」
「ポケモンに乗ってやるのよ。てらすには私のモトトカゲ貸してあげるから安心しなさい。ねーさん。やるわ」
「ゼイユちゃん、今日もかっこいいとこ見せてよ!」
お店の人、お面つけてる。なんか動きはやたら可愛いお姉さんだ。
「頑張って!」
「ねーちゃん、けっぱれー!」
というわけで、ゼイユちゃんのお手本を見た。
モトトカゲって速いんだな。私乗れるかな。大丈夫かな。
一応、アローラの島めぐりは終わってポケモンライド免許は取ったけど......。
っていうか、ゼイユちゃんめちゃくちゃかっこいいな。ゼイユちゃんが男の子だったら絶対『恋』してるな。
俺様系ツンデレの高身長イケメン。うん、間違いない。お兄ちゃん属性とか最高じゃん。
そんなことを思ってると、ゼイユちゃんが戻ってきた。
「ふー。今日はなかなか調子いい感じ」
「6900点!ゼイユちゃん、さすがだね!はい、景品セットだよ」
「ありがと。さて、早速中身をチェックよ」
中には、色とりどりのおもちやきのみ、綺麗な色のはねがたくさん入ってる。『ちゃわん』は......なかった。
「仕方ない、そんなもんよ。次はスグ。やってみなさい」
「うぅ......。おれ、あんまり得意じゃないけど......。けっぱるべ!」
「スグリくん、頑張って!」
スグリくんは「にへへ」と笑って、位置についた。
スグリくんは、また真剣な顔になった。こういうギャップに『恋』する子も、絶対いるだろうな。でも、確かにあんまり上手とは言えないね。
「4260点。スグリくんもいつもより調子いいね!」
「にへへ......。ありがと」
スグリくんの景品セットには......
おもちやきのみの他にも、キラキラの不思議な石が入ってた。
「ノーマルの『テラピース』だべ。カイリューに使おうかな」
「てらぴーす?」
私の反応を見て、ゼイユちゃんがクスクス笑ってる。
「てらすさまのくせに、そんなことも知らないの?ポケモンのテラスタイプを変更できるの。結構集めるの大変なのよ」
「てらすたいぷ?」
「テラスタル。てらすの地方ではしないの?」
「どこかで聞いたことある気がするけど......。しないし、よく知らない。Zわざみたいなやつ?」
「あー......。テラスタルの方がすごいけど、うん、それは近いわね」
なるほど。テラピースはZクリスタルみたいなものなんだね。
「ねーちゃん、知ったかぶりは......」
スグリくんが何か言いかけたけど、ゼイユちゃんにぶたれた。
「さ、てらす。とっとと行きなさいよ」
「うん、わかった」
モトトカゲに跨ってみた。モトトカゲはやる気満々だ。
「ひぇぇ......。怖い......。大丈夫かな」
「あたしのモトトカゲを疑うんじゃないわよ。手ぇでるよ!」
「ごめんなさい」
ゼイユちゃんの方が怖いよぉ。
「レイラさん、けっぱれー!」
「てらすさまに参加してもらえるなんて光栄!頑張ってね!」
受付さんまでそういうこと言うでしょー。
「あはは......行ってきます......!モトトカゲさん。よろしくお願いします!」
「モギャス!」
というわけで、始まったわけだけど......。楽しいー!モトトカゲさんはやーい!けど、バルーン割るの、難しい......。
「2860点ね。......初めてにしては、頑張ったよ」
うー。気を使わせてごめんなさい。
私の景品セットは、おもちときのみ。あとは......。
「なんだろ、これ......」
黒っていうか紫って言うか、変な色のボロボロの布が入ってた。
色違いちゃんのばけのかわと重なる。ゾワゾワする。......なんか気分悪くなってきちゃった。
「あ、『れいかいのぬの』だべ。それ......わっ!どうした!?レイラさん、しっかりーー!」