仲良く
翌日。
「パパ、アローラ!」
そういえば、久しぶり『アローラ』って言った!
「あぁ、アローラ。朝ごはん準備できてるよ」
クロックマダムだ!キタカミにいたときは和食ばっかりだったから、トーストとバターの香りが懐かしい感じだ。
「ありがと!いただきます!」
「さてと。パパは研究室にいるから、ごはん食べ終わったらおいで」
「ん......?え!?なんで?」
「内緒!でも、すぐ済む用事だから、心配しなくていいよ」
「うん......?まぁいいけど、ママにお花をプレゼントしてから行くね」
「ゆっくりでいいよ〜」
パパは行ってしまった。
パパの研究室は家の一室なんだけど、まったくと言っていいほど入ったことがない。
窓もないし、扉は頑丈だし、パパが中にいる時すらカギをかけてある。
研究内容が流出するとよくないだろうし、そんなもんかと思ってたんだけど、ついに入室許可が出た!
やった!気になるから早く食べよっと。
「ごちそうさま!」
お皿をささっと片付けたのに、じっくりお花を選んでママにプレゼントしてから、パパの研究室に向かった。扉をノックしたけど、こっちからでも全然音が鳴らない。すごい防音性能だ。
でも、カギは開いてる。
「パパ......?入るよ......?」
そーっとドアを開け......
「ンガァ!!」
「ひゃっ!!!」
なにかが目の前に飛び出して来て、びっくりして尻もちついちゃった。いてて。
「レイラ!?どうした!?大丈夫か!?」
「ぬ!ということはお嬢......!?申し訳ねぇ。不届き者かと思って驚かしちまいました......」
「ゲンパチ!うちの娘になんて事を......!」
「ヒッ!オヤジ、申し訳ねぇ......!自分、ケジメつけます」
ゲンガーが右手でシャドークローを出して左手の指を切る......真似してる。
「......ん?......んえぇえ!ゲンガーがしゃべってる!?」
ゲンガーが普通に流暢に人語をしゃべってる。え、なに。なぜ。どうして?
「レイラ、大丈夫?ケガはない?」
「ない!っていうかパパ、それどころじゃないよ!このゲンガーさん、めちゃくちゃ普通にしゃべるじゃん!怖っ!!」
「ごめん、さぁ、入って。紹介するね。パパの相棒、ゲンガーのゲンパチ」
「お嬢、お久しぶりです!ついこの前に見た時は、まだあんよもできない赤ん坊だったのに......。こんなに大きくなって......」
「親戚のおじさんみたいになってるじゃん!っていうか研究室広すぎない!?スクールの教室よりよっぽど広いし......。いや、それよりも、このゲンガーさんなんでしゃべれるの!?パパ!どういうことかいろいろちゃんと説明して!」
パパの話はこうだ。
研究室は、いろいろな加工がしてあって、ガブリアスがげきりんしてもビクともしないし、オンバーンのばくおんぱも外に漏れないくらいの防音性能があるんだって。
天井も4mくらいあって、伝説のポケモンを含め、現在確認されてる9割以上のポケモンが普通に生活できるように設計されてるらしい。
パパの研究ってそこまでする必要あるのかな......?まぁ、それは置いておくとして、問題はしゃべるゲンガーさんよ。
ゲンガーさんについては、パパがカントーのジムを巡り始めた頃に、群れから追い出されてお腹を空かせて行き倒れてるところをパパが助けたらしい。
それからパパがゲンパチってニックネームをつけて、相棒として一緒に旅をしてたんだって。
で、そこからなんやかんやあって、パパとママが結婚して。
ママのポケモンもしゃべれて、ママと一緒にゲンパチに言葉を教えたんだって。
「......いやいや!おかしいおかしい!そうはならんやろ!」
......いや、なっとるけども。
「ふふふ。それをそうしちゃうのがママなのさ。ママの相棒は今、パパの手持ちになってるんだ。リオ、出ておいで」
パパが投げたボールから、ルカリオが出てきた
「レイラさん。お久しぶりです。僕のこと覚えていらっしゃいますか?」
やたらイケボじゃん。でも割と受け入れ難い光景だな。
「ママはレイラがお腹にいるときにはもう病気で、レイラを産んですぐしんじゃったから......。ゲンパチもリオも、しゃべれることをレイラに隠して、パパと一緒にレイラの面倒見てくれてたんだよね」
「レイラさんは本当に愛らしくて......。その頃からママそっくりでしたね」
「べっぴんさんになるとは思ってたが、激マブになっててビビるよな」
なんか、ポケモンたちが私の昔話で盛り上がってる。異様な光景だ。
「なんで隠してたの?」
「人語を理解するポケモンなんていたら、大騒ぎになっちゃうだろ?本当はずっと内緒にしておくつもりだったんだけど......」
「だけど?」
「海に落っこちてもスーパーマサラ人のパパの娘だしきっと大丈夫って思って海を探したんだけど、ポケモンに連れ去られてたみたいだし......」
「うん、ヨノワールさんが助けてくれた」
「連れ去られたのさ。キタカミでレイラの歌を聞いて野生のポケモンたちが集まって来たのを見て、レイラもママと同じで、不思議なチカラがあるんだなって思ったんだ」
「でも私、ポケモンとおしゃべりできないよ?」
「ママも、レイラと一緒で、人間にもポケモンにも異常なまでにモテモテだったんだ」
少なくとも私は人間にモテた記憶はないけど。パパ、自分が異常だっていう自覚はあるんだ。
「本当はずっとパパが守ってあげたかったけど、レイラもあっという間に大人になっていくから......そろそろ子離れしないとね。でも、いざというときにレイラを守ったり、状況を説明できるポケモンを渡しておいた方がいいと思ったんだ」
ゲンパチもリオもレベルが高そうだ。
「その役目はゲンパチに任せたいと思ってるんだ。他の地方に行って、マツバくんみたいなゴーストタイプのジムリーダーになりたいんだろう?」
「え、なんでそれを......?」
「もう16年もレイラのパパやってるからね。わかるさ。本当は心配で心配で仕方ないけど......。ゲンパチが一緒なら、きっと大丈夫」
「オヤジ......!自分、お嬢のこと、しんでも守りますんで!ゴーストタイプだから既に1回しんでるのかもしれないっすけど!」
ゲンパチくん、ギャグセンス高いな。
「っていうかマツバくんて......友達かよー」
「え?うん。ママを探してたとき、エンジュのおどりばで舞妓はんやってるのを突き止めて、当時まだ3歳くらいのマツバくんもママの大ファンだったから、通いつめてるうちに仲良くなっちゃった」
「んえぇええ!?」
「最後に会ったのはママのお葬式のときだから、もう15年以上会ってないけど、今もちょくちょく連絡取るよ。マツバくんは千里眼の持ち主だから、遠くを見ることができるんだ。マツバくんのおかげでママの居場所もある程度、目星がつけられたんだよね」
「マツバさん怖っ!」
「いやいや。悪い事に使うような人じゃないよ」
女性の住所を特定しようとして、女性と面識のない男性におおよその居場所を教えるのは悪いことじゃないんだろうか。
マツバさんがちっちゃい頃の話だし、仕方ないのかな。それに、パパとママは結婚したわけだし、結果オーライってことでいいの?
「レイラが海に落っこちた時もレイラを探せないか相談したよ。場所までは特定出来なかったけど、絶対生きてる!って教えてくれたよ」
「すご......!他の社員ちゃんも知り合いいる!?」
「いや、さすがにいないかな......。でもメタル役のダイゴくんのお父上......デボンコーポレーションの社長のツワブキさんにはいつもお世話になってるよ。パパの天体望遠鏡はデボンと共同開発だしね」
「えぇ!!!メタルも推しなんだが!!!!
!」
「ダイゴくんはあちこち旅してるみたいでほとんど会ったことないけど、ツワブキさんと一緒にママのお葬式には来てくれたよ。赤ん坊のときのレイラは、マツバくんにもダイゴくんにも抱っこしてもらってるし」
マジで......?赤ちゃんの頃の私、ポケモンにお世話してもらってマツバさんとダイゴさんにだっこされてたとか......。
ママの記憶が無いことで何度も何度も自分を恨んでたけど、更に恨みが増した。なんで覚えてないんだ。ちくしょーめ!
「お取り込み中に申し訳ねぇんですが......。自分、お嬢についていけばいいんすか?」
「あ、ゲンパチ、ごめんね。パパ、本当にいいの?」
「もちろん。ただ、人語をしゃべれることは絶対誰にも言わないように。会話をする時は鍵のかけられる場所でね。ゲンパチは慣れてると思うけど......。頼んだよ」
「うっす!」
「あ、じゃあここで私のポケモンをゲンパチに紹介していいかな?」
「そうだね。そうしよう」
「よし、じゃあみんな、出ておいで!」
ポケモンたちも、ボールの中でちゃんと話を聞いてくれていたみたいで、みんなゲンパチの方を見ながら出てきた。かわいい。
「今日からお嬢のお世話させてもらう、ゲンパチっす。よろしく頼んます」
あ、私が世話される側なんだ。うん。ゲンパチの方が私より歳上だもんね。そうかもね。
ミミッキュとヤバソチャは、ゲンパチのことが気に入ったようだ。じゃれついたり周りをくるくる回ったりして、歓迎ムードだ。
「へへへ......。ありがとうございやす」
フクスローは、人語をしゃべることに興味があるようだ。
「フスゥ!ロォー!」
「え、人語を教えて欲しいんすか?いやぁ、自分そういうの苦手なんで、リオのアニキに教わった方がいいっすよ」
フクスローが残念がっていると、リオがポケモン語でフクスローに話しかけに来てくれた。なにやら盛り上がっている。なるほど、わからんけど、よかったね。
シャンデラは......なんかモジモジしてる。
オタ活の時はイキイキしてるけど、普段はひかえめな感じなんだよなぁ。
「ゲンパチ、この子はシャンデラ。ちょっと恥ずかしがり屋で......」
シャンデラはぷいっと後ろを向いてしまった。
「ちょっと、シャンデラ!ちゃんとご挨拶して!」
「いや、いいっすいいっす。シャンデラな。へへへ......」
ゲンパチは私の影に潜んですーっと消えて、シャンデラの影から飛び出した!
「ンガ!」
ゲンパチのおどろかすだ!シャンデラに効果はばつぐ......ん?
「シャラァー!」
シャンデラのシャドーボールだ!効果はばつぐんだ!ゲンパチは倒れた!......え、一撃で!?
パパは頭を抱えている。
「あぁ......。シャンデラ、ごめんね。ゲンパチは君と仲良くなりたいだけなんだ。それにしてもゲンパチを一撃で倒すなんてすごいね。いつもとっくん頑張ってるもんね」
パパはシャンデラのほっぺたをなでなでして、棚からげんきのかたまりを取ってきてゲンパチに与えていた。さすがパパ。フォローも完璧だし、準備がいい。
うーん。明らかにゲンパチの方がレベルが高かったのに倒しちゃったのは確かにすごいと思うし、トレーナーとして鼻が高いけど......。
「シャンデラ、すごいね!でも、仲良くして欲しいなぁ」
「シャンッ」
シャンデラはまたそっぽを向いてしまった。困ったなぁ。
「ンガガ......。マジ、パネェっす......」
ゲンパチは元気を取り戻したかと思うと、スライディング土下座をした。
「シャンデラ......いや、シャンデラの姐さん!自分が間違ってました!姐さんの子分として、お嬢の組の仲間にしてください!どうか、お願いしやす!」
「......シャラ」
「はい、申し訳ありやせん、承知しやした!」
あれ、なんか解決したぽい?
ゲンパチは「お嬢、姐さん、キョーダイのみんな、これからお世話になりやす!よろしくお願いいたしやす!」と叫びながら私に向かってスライディング土下座をした。
「あぁ......。うん、こちらこそよろしくね」
「よかったー!ホント、お嬢も姐さんも、生意気言って申し訳ありやせんでした!」
パパが吹き出して、大爆笑し始めるもんだから、私もポケモンたちも、ひーひー言いながら大爆笑した。
シャンデラ、ゲンパチがお世話する側なのが気に入らなかったんだ。ゲンパチがいなかったらそういうのわからなかっただろうな。
これからとっても賑やかになりそうだ!