元ヤン
寝る前にベッドでゴロゴロしながら、ヒスイ時代についてやタイムスリップについてネットサーフィンしてみたものの、やっぱり難しいことを調べるのは難しい。頭痛くなってきた。もう寝ようかな......。
「メッセージが届いたロト!」
びっくりした。こんな時間に誰だろ?
......グラジオだ!起き上がって姿勢を正して深呼吸する。
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夜分遅くにすまない。最近日中は忙しくてなかなか連絡できなくてな。
レイラに折り入って頼みたいことがある。来週の月曜日、レイラのスクールが終わってから、時間があれば少し付き合ってくれないか?
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折り入って、付き合ってほしい......!?違う違う。落ち着け、私。
......落ち着いてみたけど、もしかしてこれってデートのお誘い!?
どどどどうしよう!?うん、とりあえずオッケー。全然余裕でオッケー。
しかも、パパいない日じゃん!ちょっとくらいなら遅くなってもいいし......。でも初デートから遅くまで遊ぶのは良くないのかな......!?あぁ、どうしよう!?
待てよ、舞い上がるな。頼み事ってなんだろう。『マラサダ買って家まで持ってきて〜』みたいなパシリだったら泣いてしまう。
落ち着いて返信しよう。
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時間は気にしなくていいよ。頼みたいことってなにかな?
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もうすぐ母さんの誕生日なんだ。これまでは毎年リーリエと一緒にプレゼントを選んでいたんだが、今年はリーリエと都合が合わなくてな。
だが、女性が喜ぶものがわからない。プレゼントを選ぶのを手伝ってほしい。
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わかった!任せて!
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感謝する。ハウオリシティのショッピングモールに行こうと思っているから、差し支えなければシナミ博士の研究所まで迎えに行くが、どうだろうか。
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ありがとう!スクール終わったら連絡するからグラジオがこっちに向かって来てくれてる間に、家で準備して待ってるね。
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わかった。よろしく頼む。
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うわー!やっぱりデートだったー!!
パパ以外の男性と2人っきりでお買い物なんて初めてなんですけど!!!
着ていく服決めなきゃ......!デートってお化粧した方がいいよね!?ゼイユちゃんに相談してみようかな。でもナマコブシ電話にかけるの嫌だな。
リーリエちゃんに知られたら恥ずかしいから、スクールの友達には相談出来ないし......。
......ママがいればいいのにな。
こういう時は!というわけで『ポケモンお悩み相談所』で聞いてみたら、PokeTubeで美容系PokeTuberの動画を見て勉強するようにアドバイスをもらった。おすすめは『ルチアのキラくるちゃんねる』とのことだった。
ルチアちゃんはホウエン地方No.1のポケモンコンテストアイドルで、めちゃくちゃカワイイ。テレビで見た事はあったけど、PokeTuberもやってたんだ!
ルチアちゃんのお母さんの弟さんのミクリさんって方はホウエンジムリーダーで、何回かゲスト出演してたんだけど、ダイゴさんやマツバさんと同じくらいイケメンだった。
動画でルチアちゃんがレビューしてた『むっちりムチュールリップ』を、ミクリさんが「
なんとワンダフル にくらしいほどエレガント だけどとってもグロリアス!」って褒めまくってたから、明日買ってみよう。
過去動画まで遡って見ちゃって、いろいろ欲しくなっちゃった。『でんきぶくろチーク』も買う。
気付いたら朝だった。
スクールが終わったあと、ショッピングモールに行ってみた。コスメ売り場には似たようなものとか、何に使うかわからないものもたくさんあって、見てるだけでドキドキわくわくした。
「何かお探ししてんの?」
お化粧の濃い、派手髪でいかついお姉さんが声をかけてきた。名札つけてるし、怖い人かと思ったけど店員さんだ。プルメリさんって言うんだ。名前かわいい。
でもこの店員さん、絶対元ヤンだよぉ。やっぱり怖いよぉ。でも相談できる人もいないし、思い切って聞いてみよう。
「はい、えっと、PokeTubeで見た『むっちりムチュールリップ』と『でんきぶくろチーク』が欲しいんですけど......」
「そんなバズコスメ、入荷しても速攻で売り切れちまいますよ」
「そうなんですね......」
どうしよう。もうどれ買ったらいいか全然わからない。
「お客さん、普段化粧しないの?」
「そうなんです。ごめんなさい......」
なんか謝っちゃった。えーん。もう帰りたいよー。
「なんで謝んのさ。大丈夫。試しにつけてみながら選んでやりますから」
「あ......!ありがとうございます!」
店員さん、怖い人かと思ったけど笑顔かわいいし、いい人だ。
「毎日メイク用?デート用?スクールにも化粧していくのかい?」
なんか違うの!?デート用だけど......。恥ずかしい!どうしよう、顔が熱くなってきちゃった。
「ははっ。お客さん、わかりやすくてかわいいじゃないか。じゃあこの辺りの色がいいかな......」
オススメのメーカーのコスメを使って簡単にお化粧してくれてから、リップとチークは何色か試しにつけてみてくれた。
パッケージで見ると似たような色ばっかりなのに、つけてみると全然違う雰囲気になるんだ。面白い!
店員さんは話してみると本当に優しくて、メイクについていろいろ質問したら、細かいところまでしっかり教えてくれた。頼れる姐さんって感じだ。
「気に入ったのはあったかい?」
「はい!これとこれが好きです!」
「いい組み合わせじゃないか。センスあるね」
「わーい!これください!」
店員さんはとびきりの笑顔で「あいよ!」と言って、お会計してくれた。お小遣い貯めておいて良かった。嬉しい!
「店員さん、ありがとうございます!はじめてのコスメ、店員さんと一緒に選べて良かったです!」
店員さんは何故か、泣き出しそうな顔をした。
「あたいさ......。お客さんも最初ちょっと怖いと思っただろ?昔はハンパなことばっかやってて......。真面目に働こうって覚悟決めたけど、なかなかうまく行かなくてさ......」
店員さんは言葉を詰まらせてたけど、笑顔を作り直した。
「実はあたいにとっても、あたいから商品買ってくれたはじめてのお客さんなんだよ。デート、頑張んなよ!ご購入ありがとうございました」
「えへへ......。また来ますね!」
店員さんは手を振ったあと、深々と頭を下げてくれた。
きっと本当に元ヤンだったし敬語は怪しかったけど、一生懸命やってるんだな。
デートがうまく行ったら、アイメイクも教えてもらおっと。