パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

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ファースト手繋ぎ

翌日。

 

ヒナギク博士が、ヒスイから来たという人を連れて訪ねてきた。

 

「シナミ博士、初めまして。お会いできて光栄です。ヒナギクと申します。こちらがヒスイから来た、セキとカイです」

 

ヒナギク博士は女性だ。髪型がネコミミみたいになってる。セットのしかた教えてほしい。

 

セキさんは青髪のイケメン、カイさんは金髪のボブの可愛らしい女の子だ。

 

「ヒスイ地方から来た、コンゴウ団のリーダー、セキだ」

 

「同じく、シンジュ団の長、カイです」

 

「初めまして。シナミです。こちらは娘のレイラ。セキくんとカイさんがボールを作っておられる動画、拝見しました。ライヤーくんから許可はもらってるので、中でお話しましょう」

 

ダイニング的な場所に移動した。

 

しばらく談笑したあと、ヒナギク博士が「そろそろ本題ですが」と言って真剣な顔をした。

 

「今回パシオの上空に現れた『時空の裂け目』に関しては、世界中のポケモン博士や各研究所に意見を求めました。ありがたいことに、多数のご意見が集まった中で、シナミ博士のご意見であれば体験した事象に説明がつくのではないかと彼らは思ったそうです」

 

「恐縮です......。しかしまだ実物を見ていませんし、全く見当違いの可能性もあります。このあと観測させて頂けるということですが......」

 

「はい、シナミ博士ご指定の場所に簡単な観測キャンプを設営しておきました。そちらに向かいましょう。外に出る前に、おふたりにはバディを決めて頂かないといけません」

 

ヒナギク博士はバディについて説明してくれた。

パシオでは、トレーナーと、バディとなる相棒ポケモンのふたりのことを『バディーズ』と呼び、バディーズ3組でチームを組む、特別なルールでバトルするようだ。

 

「原則、パシオではバディ登録されていないポケモンを野外でボールから出すのは禁止されていますので、慎重に選んでくださいね」

 

「パパは誰をバディにするの?」

 

「ヒートロトムにする。トムって言うんだ。カワイイだろ?電子レンジなくて困ってたところだし、観測中にコーヒーとか温めてもらう」

 

なるほど。かしこい。

 

「じゃあ、私はポットデスにしようかな」

 

好きな時に紅茶飲みたいし。

 

「オーケー。じゃあ登録しますね。......よし。これがおふたりの『バディストーン』です。バディーズとチームのキズナのチカラに反応し、一定のチカラが集まったとき『バディーズわざ』という必殺技が出せるようになります」

 

「わぁ!かっこいい!ありがとうございます!」

 

バディ登録が終わり、晴れて私はポットデスと、パパはロトムと『バディーズ』になった。

 

「これからバディーズだよ!よろしくね、ポットデス!」

 

「ポデース?ポデース!」

 

ポットデスはよくわかってなさそうだけど、うれしそうだ。

 

「なんだ......?カラクリにポケモンが入ってんのか......?」

 

「見たことないポケモン!これは陶器......?殻なの......?」

 

セキさんとカイさんはロトムとポットデスを見て驚いている。

 

「セキさんとカイさんのバディはどんな子ですか?」

 

「オレのバディはリーフィアだ」

 

「わたしはグレイシアだよ」

 

セキさんはリーフィアを、カイさんはグレイシアを出した。2匹ともカワイイ!でも、ヒスイのすがたのポケモンじゃないんだ。ちょっと残念。

 

「よし、じゃあシナミ博士たちのご準備が整い次第、行きましょうか!」

 

「はい!」

 

私は軽く髪を整え直して、すぐに準備した。

パパは......私が入れそうな大きさのバックパックを背負って、双眼鏡やらなにやらをいくつも首から下げて、やまおとこみたいになっていた。

 

「お待たせしました!行きましょう!」

 

「シナミ博士、荷物デカいですね。持ちましょうか?」

 

セキさん、優しい。

 

「あ、いいのかい?お願いしちゃおうかな。ちょっと重たいけど......」

 

パパはバックパックを下ろした。

 

「大丈夫です。任せ......ようかな。オレのポケモンに。オレ、バディもう1匹いるんで」

 

セキさんはパパのバックパックを持ち上げようとして、速攻で諦めた。あれ、何キロあるんだ?

 

「ガチグマ!荷物運んでくれ!」

 

「ググァー!」

 

「おぉ!?ガチグマさん!?すごい......!本物だ!あぁ......ガチグマさんも観察したい......」

 

パパは大興奮している。確かにアローラでは見かけないポケモンだけど、そんなに珍しいポケモンなのかな。

 

「やっぱそういう反応になるんすね。キャンプについて時間があったら遊んでやってください」

 

「いいのかい!?ありがとう!レイラ、この子はヒスイ時代にしか存在しない、リングマの進化系なんだ」

 

「えぇ!?リングマさんって進化するの!?」

 

「あぁ、昔は進化したんだ。現代で進化させる方法は見つかっていない。とりあえず、キャンプに向かいながら、セキくんやカイさんにフクスローのこと話してみなよ」

 

「うん!そうする!」

 

ガチグマさんは荷物を背負ってくれた。重くてちょっとつらそう。

外に出て、私たちがいた建物の裏側に回ったところで、明らかに『時空の裂け目』って感じで空が裂けているのが見えた。

 

「うわぁ!見てパパ、すごいね!」

 

「なるほど。.......が......そうか......やはり......」

 

パパはひとりでブツブツ言いながら、マップに何かを書き込んだり、双眼鏡で何かを見たりしていた。

 

「......すみません。いつものことなんでほっといてください」

 

「あはは。ねぇレイラさん。さっきお父さんと話してるの聞こえちゃったんだけど、フクスローを持ってるの?」

 

カイさん、小さくて細くてめちゃくちゃかわいいな。それでいてなんとか団の長なんだ。すごいかっこいい。あと、服装がちょっと......目のやり場に困る。

 

「あ、はい。私のフクスローのご先祖さまがヒスイのすがたジュナイパーだったのを知って、ヒスイのすがたに憧れてて。でも、こっちでは違う姿になっちゃうから、進化するのを迷ってるんです」

 

私はフクコおばあちゃんの写真を出した。

 

「私のフクスローのひいおばあちゃんの小さい頃の写真なんです。ひいおばあちゃんのパパとママがヒスイのジュナイパーで......」

 

「そうなんだ!素敵なお写真だね。......ん?ちょっと、よく見せてもらっていい?」

 

「はい、どうぞ」

 

カイさんは写真をじーっと見つめた。

 

「このキズ......。セキ!セキー!ちょっとこれ見て!」

 

セキさんは「お?なんか面白いモンか?」と言いながら笑顔で写真を覗きこんで、ガッカリした顔をした。

 

「なんだ。テルのジュナイパーの写真じゃねーか。いつの間にメス作ったんだ?」

 

「やっぱりそうだよね!?これ、レイラさんのフクスローのご先祖さまなんだって!」

 

「本当か!?なんかすげー」

 

なんかふたりで盛り上がってる。

 

「レイラさん!このジュナイパー、わたしたちの知り合いのポケモンだよ!この顔のキズ......間違いない!」

 

「えぇ!そうなんですか!?その『テル』って方はどんな方なんですか?」

 

「テルはね、わたしたちの時代の時空の裂け目を通って未来からきてくれた、ヒスイの英雄だよ」

 

フクスローのご先祖さまが、ヒスイの英雄の手持ち!?なんかすごいことになってきた。

 

「その話、詳しく聞いてもいいかい?」

 

パパは右手で何かメモを取りながら左手に持った双眼鏡を覗いて違う方向を見ながら言った。

 

「なんですって!?」

 

今度はヒナギク博士が急に大きい声を出すから、ビクッ!ってなった。

 

「......ちょうどよかった。今一緒にいるわ。ええ。マップを送るから、そちらに連れて来てくれるかしら?はい。一度切るわね」

 

なんだ、電話か。それにしても、何かあったのかな?

 

「セキ、カイ、大変よ。今コウキとヒカリから連絡があって、自分たちにそっくりなテルさんとショウさんという方に出会ったそうよ。彼らもセキとカイのことを知っているって」

 

テルさん......!?テルさんって今まさに話してたヒスイの英雄のテルさん!?

 

「観測キャンプの場所を送っておいたから、連れて来てくれるわ。急ぎましょう。シナミ博士、レイラ、バタバタしててごめんなさいね」

 

少し歩くスピードを早めたら、パパのバックパックを運んでくれてるガチグマさんが、かなりしんどそうにしている。

 

「パパ、ガチグマさんが......」

 

「おや......ガチグマさん、ごめんね。ありがとう。セキくん、ガチグマさんが少し疲れちゃったみたいだ。ボールに戻してあげて。さ、急ごう」

 

パパはバックパックをひょいっと持ち上げて背負って、平然と歩き始めた。

 

「え......。はい、ありがとうございます。レイラも、気付いてくれてありがとな.......」

 

セキさんはドン引きしている。

カイさんを見たら、ドン引きを通り越しておびえていた。

 

「レイラさん。シナミ博士って......すごいね......?」

 

「スーパーマサラ人ですしね」

 

「え?すーぱー......?それってわたしと同じ種類の人間なの......?」

 

「どうなんでしょうね?」

 

冗談のつもりだったのに、カイさんは黙ってしまった。ごめんなさい。

 

とはいえ確かに、最近のパパは人間離れしすぎている。いや、前からか。

 

むしろ前はいつも笑ってたしなんでも完璧だったのに、最近は泣いたり怒ったり完璧じゃなかったりして、人間らしくなったかもしれない。

 

「あそこが観測キャンプです」

 

ヒナギク博士が指さした先に、大きなドーム型のテントが立っているのが見える。

 

「すごい......!僕は早速、観測の準備をしてきます!ほら、レイラも手伝って!」

 

「えー!?」

 

ガチグマさんがしんどくなる重さのバックパックを背負ってるのに、パパはスキップするみたいに軽やかに走りながらキャンプに向かって行った。

 

「もう......!すみません、先に行きますね。パパー!まってー!」

 

私が追いついた頃には、パパはすでに謎の機械で何かを初めていた。

 

「レイラ、これをこう持って、倒れないようにしておいて。ズラさないようにね」

 

パパが謎の棒みたいな機械を私の前に立てた。倒れないように適当に支える。

 

「オッケー。ありがとう」

 

私の持った棒を目印に、パパはあれこれ動き回っている。

しばらくぼーっとしていると、ヒナギク博士たちが追いついてきた。

 

「パパ、まだー?」

 

「あとちょっとー!」

 

手伝うにしても、もう少しやりがいのあるお手伝いをさせてほしい。棒を持ってぼーっとするとか、面白くもなんともない。

 

「おお!レイラ、なんか面白そうなことしてんな!」

 

セキさんが走ってきた。そう見えるんだ。カルチャーショック。文化の違いってやつだ。

 

ヒナギク博士とカイさんもキャンプに到着した。

 

「コウキたちも、あと数分で着くそうです」

 

ヒスイの英雄との初対面が、棒と一緒に棒みたいにつっ立ってる姿とか嫌すぎる。パパ、早くしてー!

 

「よし!レイラ、ありがとう。あとはパパひとりでやるね」

 

解放された!

 

「見て!あれ!コウキさんたちだ!おーい!こっちだよー!」

 

カイさんが手を振りながら走り出した。

 

「お、来たか!よし、レイラも早く行こうぜ!」

 

「え?ちょっと、待ってください!」

 

「時は急げ、ってな!」

 

セキさんに手を握られて、引っ張られるがままに走る。

私、棒みたいな機械持ったままだよ。パパ、ごめんね。

 

セキさんの手、パパよりも大きくてゴツゴツしてるな......。

......あれ!?私、男の人と手繋いじゃってない!?グラジオとも繋いだことないのに!!!

 

ファースト手繋ぎを強引に奪われてしまった。セキさんはすごくイケメンだけど、私はグラジオのことが好きだもん。えーん。ひどいよぉ。

 

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