「......よし、とりあえず散策してみませんか!」
いたたまれなくなって勢い良く立ち上がって、空を飛んでるみたいなシャインフェザーのキメポーズをとってみた。
シャインフェザーはお面をつけてるし、俳優さんの名前も隠してる。
シャインゴーストとシャインメタルの俳優さんがあんまりにも顔が良すぎるからシャインフェザーが推しってほどじゃないけど、キャラクターとしては一番好き。
シャインフェザーは些細なトラブルを誰よりも早く気付いて未然に防いじゃうからいつも暇そうにしてて、万年平社員のシャインヒラがだるそうにやってるような、シャッチョ女帝様の使いっ走りみたいなことすらも、何でもササッとこなして、次の任務と言う名の雑用を楽しみにしてるキャラクターだ。
いつもシャッチョ様の周りをうろちょろしてるから考察界隈ではスパイ説と黒幕説が有力視されてるけど、私はそっちこそミスリードだと思ってる。
シャインフェザーは、常に周りの人達を気遣って動いてるからすぐトラブルに気付けるし、どんなに小さなことでも誰かが喜んでくれるなら......いや、喜んで、感謝してもらえなくても、誰かが嫌な気持ちにならずに済むならそのために人知れず頑張れる人だ。
お面以外は地味で冴えない感じだけど、きっとシャインフェザーが真の天才ヒーローだと思う。
でも、もし仮にシャインフェザーが真の天才ヒーローだったとしても、本当にどうしようもできないことがあると思う。
例えば、フトゥー博士が表情ひとつ変えないどころかこちらを一切見てすらいなくて、あまりにいたたまれなさすぎて、穴があっても入りきらないレベルになっちゃった私の恥ずかしい気持ちを、どうにかする事とかね。
「......いや、気持ちはわかるが、それは得策じゃない。霧がかなり深い。下手に動くと進路も退路も見失ってしまう可能性がある」
普通にガチレスだ。
「ここまでの濃霧は雲と言っても差し支えないレベルだ。つまりここはどこか高い山の頂上だと推察できる」
本当に一瞬も見られてなかったのかな。それならまぁ.....いいか。
「これだけ大きな池だ。手入れされた橋もかかっている。人が訪れる可能性はそれなりに高いだろう」
「そうですね......」
私は平べったい、いい感じの石に腰掛けた。
「気を遣わせてすまなかったね。さっきのはなにかのヒーローのポーズかい?」
......あぁ、終わった。
何が終わったのか聞かれても説明できないけど、これは確実に終わった。
さっきの痛いくらいの静寂より、よっぽどつらい。フトゥー博士からもやっちまった感が出てる。
「あー......ところで。そのミミッキュは......?かなり疲れた様子だ。キミもずっと抱えているのはしんどいだろう。一度ボールに戻してあげたらどうだい?」
「あ、この子は......」
ミミッキュは泣き疲れたのか寝てしまっていた。
それでも、色違いちゃんのばけのかわを強く握り締めている。
自然と涙がこぼれてしまった。
私もなんだか、ギリギリ持ちこたえていた感情が決壊してどうにもならなくなった。
キョダイマックスまきびしのふみつけ合いになってしまった。
いろいろなものが溢れて、泣きながらこれまでの経緯をひたすら話した。
自分で話しながら、いろいろと頭の中の整理がついてきた。
さっきまでアローラにいたはずなのに、パルデアの近くの山にいるなんておかしな話だ。
アローラからパルデアはすごく遠かったはずだ。
やっぱり私もしんじゃったのかな。パパは私までしんじゃったらどうなっちゃうんだろう。
そういえばパパの顔は今朝見たのが最後だ。もうなんだか遠い昔の事みたいだ。
「うわーーーん!!パパーーーーー!!!」
こんなに大声で泣いてるのに、声は全然響かないまますぐにかき消された。
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「.......お恥ずかしいです。すみませんでした......」
しばらく泣いたら急に落ち着いてきた。感情の波がとんでもないことになってるな。
「いや......よく考えてみたら、こんなことになったのに、まだ学生の女の子がここまで冷静でいられた方が不思議なくらいだ」
沈黙。
「ボクも何か話せることがあればいいんだけど......。ボクの研究について話そうかな。ボクのいたパルデアはテラスタルという不思議な力があってね。一時的にポケモンのタイプを変えることができるんだ」
また、沈黙。
「......テラスタルの力を秘めた結晶体が多数ある『エリアゼロ』が......であり......テラスタルの力は......時空が......ので......過去と未来を......」
全然面白くない。
「......ポケモンのタイプは、創造神『アルセウス』が与えたとされている。神の与えたポケモンのタイプを根本から変えてしまうテラスタルの力は、神の力と同等の膨大なエネルギーがある。ゆえにテラスタルの力が結晶化したものが集まる『エリアゼロ』の中で膨大なエネルギーを物体に集めることで、別の時空に飛ぶと仮定した」
なるほど。ちょっとわかった
「......別のパルスのファルシのルシみたいな存在になって、コクーンからパージされるようにする原理ってことですか?」
「......それはわからない」
フトゥー博士はおとなしくなった。
「......そうだな。ボクの学生時代の話をしようかな。パルデアのグレープアカデミーは知ってるかい?」
「有名な学校ですよね。でも名前だけは聞いた事あるって程度です......」
「そうか。じゃあ何から話そうか......」
科学の話じゃなかったので、私は静かにフトゥー博士の話を聞いた。
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ボクは、物心ついた時から勉強ばかりしていた。最初は両親に言われてやらされていたけど、気付いたらそれしか取り柄が無くなっちゃったからね。やるしかなかった。
特にボクは、科学的なものが好きだった。仮説を立ててそれを証明するのが楽しくて仕方なかった。
仮説が合っているのを証明できた時、ボクの思った通りの未来が訪れたような、驕った気分になった。
そんなことを繰り返して行くうちに、誰よりも先に、誰もが知らない未来を見られるようになりたいと思うようになった。
つまり、博士になりたいと言うか、何の根拠もなく当然そうなると思っていた。
立派な学校に行って首席で卒業して、博士になるものだと驕り高ぶっていた。
仮にも当然のように博士になる存在が、なんの根拠も無く結論を出すなんて、今思えばちゃんちゃらおかしな話だ。
グレープアカデミーに入学してからは、思い通りの未来はひとつも来なかった。
ボクよりも優秀な人がいた。なぜかあと一歩、いつも届かなかった。
あと少し届かないと勝手に思っていただけで、実際は資格取得の試験の点数なんかはだいたい同じくらいだったけど、本当に何もかもが正反対で、この人には敵わないと思い知らされた。
ボクは地味で根暗で仏頂面の冴えない男で、オーリムは豪胆で明るくて、八重歯の見える笑顔が可愛らしい、美しい女性だった。
ボクはいつもどこか詰めが甘くて、オーリムは細部まで緻密だった。
ボクは尊大な態度を取るくせに小心者で、オーリムは謙虚なのに芯が強かった。
ボクは、こんな自分が嫌いだった。オーリムは、こんなボクを好きだと言ったんだ。
ボクもオーリムも、時空間について強い関心を寄せていた。
ボクは未来を、オーリムは過去を。
どこまで行ってもボクらは正反対だ。
ボクは何か仮説を立てたとき、おおよそ正しいと思しき形に持っていくのが早かった。
1%から90%くらいまでを証明するのはボクにとってはそこまで難しいことじゃなかった。
オーリムはおおよそ正しいと思われる説を、時間をかけて抜け目なく裏付けをするのが本当に得意だった。
ボクが90%しかできなかったものを120%くらいまで仕上げてくれた。
アカデミーを卒業してからもふたりで研究を続けた。
オーリムとなら大きな何かを成し遂げられると確信していた。きっと、オーリムもそう思ってくれていた。
何かを作り上げようとしたとき、人間には大きく分けて3種類に分けられると思う。
おおよそ合ってると思うけど、あくまでボクの考えね。
まず、ボクのように1%から90%にするのが得意なタイプ。
工数は多いが、一度手をつけたらやることは明白だ。
次に、オーリムのように90%のものを100%にするのが得意なタイプ。
オーリムは、細かいことが気になって物事を進めて行くのが難しいと言っていたが、ボクにとっては最後を仕上げ切る事の方がよっぽど難しい。
ほんの、ほんの些細なミスで台無しにしてしまうこともあるし、100%まで出来ているのか不安になって、不必要なものまであれこれ付け加えて、いまひとつな出来栄えにしてしまう事も多い。
そして、0から1%を生み出すことができるタイプ。
たったの1%でも、ここが間違っていてはどうにもならない。
なのに、ボクもオーリムもここがあまり得意ではなかった。
こういうところだけ、ボクらはそっくりだった。
ボクらは何の成果も出せなかった。
博士としては間違っているが、ボクはそれでも良かった。オーリムと一緒にいられることがただただ幸せだった。
失敗ばかりでも、オーリムはボクを信じて同じ未来を見据えて共に歩んでくれた。
オーリムは自分は目付きが悪いと言って卑下していたが、ボクはその、強くてまっすぐな瞳が本当に好きだった。ボクらはやっぱり、こんなにも正反対だった。
筆者はフトゥー&オーリム夫婦説の信者です。
ファイナルファンタジー XIIIのミーム『パルスのファルシのルシがコクーンでパージ』、実はいまだによく分かりません。