ウラウラ島までポケモンライドでひとっ飛び!2年前とは違って楽ちん!
本当にいろんなことが変わった。私もオトナになったし、いろんな経験をして考え方も変わった。
ジムリーダーを目指すかどうかは迷い始めちゃったけど、2年前から変わらないのは、みんなを守るヒーローになりたいってことだ。
マリエシティが見えてきた。大きい街だけど空から見ると小さく見える。今なら海からでもミミッキュを全力投ッキュして、マリエシティのはずれの岬まで帰してあげられそうな気がする。
色違いちゃん。救ってあげられなくてごめんね。私、強くなった。違うな。私たち、強くなったんだよ。
マリエシティのはずれの岬が見えてきた。岬のがけの辺りに何人かいる。どうしてそんなところに?落ちたら危ないよ。岬に向かおう。
近付いてみると、ガラの悪い2人組が普通のおじさんに崖まで追い詰められていた。ガラの悪い人の後ろには、おとなしそうな男の子が怯えてぶるぶる震えている。
もしかして、誘拐とか?おじさんは追い詰めることができたんだろうけど、ヤケになったガラの悪い人が男の子を突き落としたりしないだろうか。
「ゲンパチ!リザードンの影に潜んで!男の子を安全なところまで連れてって!」
リザードンで集団の上を滑空すると、ゲンパチが男の子を安全なところまで移動させることに成功した。リザードンから降りて男の子の安全を確認する。
「大丈夫?ケガはない?危ないところだったね」
「おねーさん誰だよ!びっくりしたじゃないか!もういいんだ!崖から飛び降りてやる!」
えぇ。予想外の反応。どうしたものか。
「なんだお前は!あいつらの仲間か!?息子を返せ!」
更に予想外なことに、普通のおじさんの方が拳を振り上げて飛びかかってきた。勘違いしてるから仕方ないかも知れないけど、女の子を殴ろうとするのはよろしくないぞ。
おじさんを躱して、男の子を守りながらおじさんの背中側に回りこんだ。
おじさんはバランスを崩して情けない声を上げながら転びそうになったけど、おじさんの服の裾を引っ掴んで、なんとか顔面から地面に追突するのは防げた。
「なんだ今の動き!?このねぇちゃんバカつえーぞ!」
ガラの悪い人たちがビビッている。バカ呼ばわりするなよ。ちくしょーめ。
でも、問題はこのおじさんだ。
「いきなり危ないじゃないですか。私は息子さんを助けたかっただけの通りすがりで......」
体勢を立て直せずにじたばたするおじさんに説明しようとしたところで、男の子はおじさんの背中を何度も蹴飛ばし始めた。予想外がすぎる。
弱々しすぎて、ぽすっぽすっと間の抜けた音が鳴ってるだけだけど、死体蹴りはマナー違反だよ。
「パパはいつもそうやって突然キレてくるだろ!?勉強以外なんにもさせて貰えなくて、友達もできなくていじめられて......!スカル団はこんなぼくを仲間だって言ってくれたんだ!家に帰るくらいなら......スカル団から離れるくらいなら、ここでしんでやる!」
なるほど。男の子はお父さんに厳しくされて逃げ出して、不良集団であるスカル団の仲間になろうとしてたんだ。これは難しい問題だ。
スカル団たちは、未成年なのにお酒を飲んだりタバコを吸ったり、コンビニのゴミを漁って廃棄のお弁当を盗んだり、観光客に道案内をして小銭を要求する程度とはいえ、犯罪は犯罪。明らかな不良集団だ。
男の子は痩せててげっそりとしている。虐待を受けているのかも知れない。そういうことなら悪いのはこのおじさんだ。だからと言って悪いことをする不良集団の仲間になるのは、やっぱり悪いことだ。
不良集団と言えど、行き場を無くしていた子を受け入れて、乱暴な人から仲間を守ろうとするのは私の憧れるヒーローそのものだ。
でも、親なんだから子供がガラの悪い人とツルむのを止めるのは当然で、子供を連れて帰ろうとするのは至極真っ当な行為だ。
感情論で言えば乱暴なおじさんをやっつけたくなるけど、それをすると私が不良集団と一緒に真っ当な行為をする一般市民をシバいてることになってしまう。
わからない。どうすべきか。
「後輩!今のうちにアイツと一緒に逃げろ!」
「パイセンはどうするんスカ!?」
「乱暴する奴に仲間が連れ去られそうになってんだ!とにかく行け!」
「パイセン......!任せてください!」
後輩さんと男の子は逃げていった。私は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
「待て!」
おじさんはじたばたしている。私が手を離すと体勢を立て直したが、後輩さんたちの姿はもう見えなくなってしまった。
「クソ!俺の息子をたぶらかしやがって!お前らみたいなゴミとつるんでるなんて周囲に知られる訳にはいかねぇんだよ!」
おじさんは今度はパイセンさんに殴りかかろうとした。
私は......何もできなかった。
パイセンさんはおじさんと揉み合い始めた。危ない!岬から落ちちゃう。
「アメモース!いけ!」
背後からアメモースが飛んできて、けたたましくさざめいた。耳を塞ぎたくなる爆音。このアメモース、かなり強い。
おじさんもパイセンさんも揉み合うのをやめて耳を塞いでいる。
誰かがパイセンさんを抱えてアメモースをボールに戻して逃走していった。
明らかにしたっぱにされるような強さじゃない。きっとさっきの人は幹部かボスだ。
おじさんはまだ耳がおかしいみたいで、ぐったりしている。やっぱりあくタイプのおじさんで、むしタイプのわざはこうかばつぐんなのかも知れない。
今のうちに私も逃げておくことにした。
......びっくりするくらい何もできなかったな。
正義のヒーローって、正義が何かわからないと何もできないんだ。無力感に苛まれる。
とにかく忘れものを回収して早く帰ろう。
とぼとぼ歩きながらでも、ホクラニ天文台の研究所についた。
......あれ。鍵が開いてる。パパが鍵を閉め忘れるわけない。
誰か、いる。
こっそり中の様子を確認する。中の研究室のドアは閉まっている。息を潜めて侵入して耳をすましてドアの向こうの音を聞こうとしてみた。ここの研究室は防音じゃないみたいだ。
「わぁ、最新型のパソコンだ!欲しい......」
「そんなもんより、みんな腹減ってるからよ。食い物とかトイレットペーパーとかをちょちょいと頂戴して、さっさとずらかるぞ。ちょっとだけなら案外気付かれないかもしれないし」
空き巣だ。でも、話がすごくみみっちい。それでも空き巣は犯罪だ。絶対的悪。やっつけてやる。
相手は男ふたりだ。ムキムキのマッシブーンみたいな人だったらさすがにふたり相手にするのは難しい。
電話は見つかってしまう。あまり気は進まないけど、パパにメッセージを送ろう。
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声だけしか聞こえないけど、天文台の研究所に空き巣が入ってるみたい。ジュンサーさんに通報して。
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「じゃあぼく、トイレットペーパーもらってきますね」
こっちに来る。どうしよう。怖くなってきちゃった。
大丈夫。落ち着け。シャワー室に隠れて犯人の顔を見てやろう。
「えーっと。トイレはここかな?」
シャワー室のドアが開いて、犯人と対面してしまった。
「きゃぁん!」
シャワー室のドアを開けられた私はだんまりなのに、なんでそっちがそんなにかわいい悲鳴をあげるんだ。そもそも、すりガラスとはいえガラス張りのドアがトイレなわけないでしょうよ。
悲鳴をあげた犯人は、ついさっきの男の子だった。もうひとりは後輩さんかパイセンさんな気がする。それなら正面からやりあっても、ぶっちゃけ余裕だ。スーパーマサラ人の娘をなめるなよ。
「どうした!?......うわ!さっきのバカつえーねぇちゃん!?」
パイセンさんだ。さっきはちょっぴりかっこよかったのに、見損なった。
「やべー。逃げるぞ!スカタンク、えんまく!」
「待てっ」
私は赤ちゃんの頃からここに来てるんだ。ここに侵入しておいて、えんまくごときで私から逃げられると思うなよ。
「別々に逃げるぞ!お前はあっち!」
「はいっ」
二手に分かれられた。男の子の方が捕まえやすそうだけど、間違いなく主犯はパイセンさんだ。パイセンさんを追う。
「やっぱりこっち来たー!!」
「残念!そっちは行き止まりだよ!」
「くそ!ポケモンバトルだ!いけ!ペルシアン!」
アローラのペルシアン。なつくことで進化するポケモンだ。パイセンさんはだいぶ痩せてるのに、ペルシアンはむっちりしていて綺麗な毛並みをしている。
さっきの話からして食べるものにすら困ってるんだろう。それなのにポケモンにはしっかり食べさせてあげてるんだ。
パイセンさん、きっと本当はすごくいいひとのはずだ。一度捕まって、安らかに更生してください。
「ジュナイパー!3ぼんのや!」
こうかはばつぐんだ。ちょっとやりすぎたかも。
「なんだそのジュナイパー!?やべー!ポケモンもバカつえー!」
パイセンさんはどこかに連絡し始めた。
「用心棒!すぐ来てくれ!バカつえー奴に見つかった!......そうか。ありがてぇ!頼むぜ!」
仲間を呼ばれたのか。早くケリをつけて、仲間も逮捕してもらうもんね。
「スカタンク!時間稼ぎするぞ!」
どくタイプのスカタンク。ジュナイパーとは相性が良くないけれど、ゴリ押し戦法だ。
「3ぼんのや!」
スカタンクは倒れた。
「くそぉ。強すぎるだろ!降参!降参しまーす!」
私はジュナイパーをボールに戻した。
「パイセンさん。更生しましょうよ。パイセンさんならやり直せますって」
説得して捕まえようとしたけど、するりと逃げられた。なかなかやるな。
「バカつえーねぇちゃん、お気遣いありがとうよ!でもこっちにはこっちの事情があるんだ。よし、用心棒!あのねぇちゃんだ!バカつえーから気ぃつけて!頼んだぜ!」
パイセンさんは用心棒さんを盾にして去っていった。用心棒さんを見て、私は絶望した。
用心棒さんはフードを深く被ってマスクをしている。でも、私の目は誤魔化せなかった。何かの間違いかと思ってなんとか誤魔化せないかと頑張ってみたけど、ダメだった。
「グラジオ......?」
フードの隙間から覗く綺麗な黄緑色の瞳が、何かを諦めたような視線でぼんやりとこちらを見ている。
「......ねぇ、グラジオ。あの人、パパの研究所に空き巣に入ったんだよ?ひどいよね」
「本当は悪い人じゃなさそうだし、大した被害はなさそうだけど、犯罪は犯罪だよね」
「......それで、なんでグラジオが犯罪者の仲間をしてるの?」
グラジオは黙ったまま俯いている。
「黙ってても顔隠してても、わかるもん。グラジオの歩き方、すごくかっこいいんだもん」
「グラジオはさ、家族もポケモンも大切にしてて、立派なお仕事を一生懸命頑張ってて、強くて優しくて.......」
「......好きだったの」
「......私の、初恋の人なんだよ?」
「そんなグラジオが......犯罪者の仲間だったなんて......」
私の中の大切な何かが、プツンと切れた音がした気がする。立っていられなくなって膝から崩れ落ちた。
呼吸がめちゃくちゃになって、涙だけのせいじゃなくて、目の前がぐにゃぐにゃしていく。
肩を抱かれたけど、抵抗できずにいる。やっぱりグラジオの匂いがする。快晴の日のアローラの海を思わせるような、爽やかで男らしいのにどこか甘い香り。匂いまでイケメンなのはズルすぎるよ。
グラジオは私を抱き上げて木陰に移動させてくれた。
グラジオは耳元で何か囁いた気がするけど、自分の嗚咽でよく聞こえなかった。
出来うる限り呼吸を整えて、涙を拭ってからゆっくり顔を上げてみたけど、グラジオはもういなかった。
グラジオは嘘をついていたわけじゃないし、グラジオがかっこよくて優しいのはさっきだって変わってない。
本気でしらばっくれてくれたら、人違いだと思い込んだ方が楽かも知れない。
でも、犯罪者の仲間をしているグラジオのことを好きなままでいたら、特撮ヒーローに憧れ始めたほんの小さい頃から今までに積み上げてきた大切な何かが全部、バラバラに崩れ去ってしまいそうな気がする。
触れられたところにグラジオの体温が残ってて、苦しいくらいに胸がドキドキする。
今もまだ、こんなにも好きなのに。
しばらくすると、ジュンサーさんより先にパパが到着した。きっとパパの事だからすぐに通報してくれた上で、テレポートして来た。
端的に言えば、スピード違反ですっ飛んできたんだろう。
泣きわめき続ける私を見て、パパはブッチブチにブチ切れていた。
いつだって、パパの正義は『家族を守ること』から揺らがない。
表現がおかしい気がするけど、正義のためなら犯罪でもなんでもしちゃうような覚悟がある。
だからパパは強いんだ。
誤解の無いように言っておくけど、今まで犯罪しなくて済んでたと思う。
ブチ切れているところ申し上げにくいけど、これからも犯罪者になるのはご遠慮いただきたい。
その後すぐ駆けつけたジュンサーさんに事情を聞かれたけど、犯人たちはマスクをしていて顔はわからなかったし、パニックになってよく覚えていないと伝えた。実際、みんなマスクをしていたし、パニックになったし。
犯人の特徴を知っててジュンサーさんに伝えないなんてとっても悪いことだけれど、お腹をすかせたパイセンさんやその仲間たちと、グラジオやグラジオの家族を思うと、どうしても言えなかった。
パイセンさんと男の子はご丁寧に靴を脱いで研究所に入っていたのできっとすぐ捕まってしまうだろうけど、大した被害もなく私にケガもなかったので捕まっても補導されてしまうくらいだろう。
おじさんに怯えていた男の子の心を救ったのはパイセンさんだ。パイセンさんは間違いなくヒーローだった。
私の目指す正義ってなんだろう。
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泣きながら家に帰ったら、パパがコーヒーを出してくれた。さすがパパ 。わかってる。
「レイラ、少し落ち着いた?」
「涙が枯れただけ......」
「そうか」
パパは難しい顔をして黙っている。
「私がただのチンピラにこんなに泣かされるなんて変だなって思ってるでしょ」
「......よくわかったね。娘が犯罪に巻き込まれてしまったのにおかしな考えかも知れないけど、レイラは強い子だからね」
「うん。私強いよ。でもね、犯人たちは食べ物とかトイレットペーパーを探してたの。きっとお腹すいてたんだと思う。話を聞いて、あの不味いやつをあげれば良かった」
「レイラは正しいことをしただけだよ。犯罪は犯罪だ」
「主犯の人、まず仲間を逃がしたんだ。仲間の人からしたら、間違いなくヒーローだったの。私の方が悪人みたいで悲しかった」
「善悪は一方向から見て決めるのは本当に難しい。だから、客観的な善悪を明記した法律が定められてる。法律違反は絶対的悪だ」
「法律だっておかしなところはたくさんあるよ。やむを得ない事情だってあるだろうしさ」
「そうだね。パパだって家族を守るためなら犯罪でもなんでもするよ。幸い今のところその機会はない......いや、今日はぶっ飛ばしてスピード違反したな」
やっぱりね。知ってた。
「レイラもいつか、レイラの信じるべきものが見つかるはずだ。それまでは絶対に法律を遵守して、可能な限り犯罪に手を染めないようにしてね」
「当たり前だよ」
「それで、バッテリーは持って帰ってこれた?」
「忘れちゃった......」
思わず笑っちゃった。
「明日パパが取ってくるね」
パパは優しい顔で頭を撫でてくれた。
それから1週間、私は悩み続けた。もうグラジオとは会わな方が良いのはわかってる。
犯罪者なんか、大嫌いだ。犯罪者の仲間だって嫌いだ。
それなのに、会ったらまたグラジオの事が好きなのを思い知らされてつらくなるだろう。
......それでも会いたいよ。
あんなにグラジオに夢中になってた恋する気持ちは、どうしてこんなに支離滅裂になってしまったんだろう。
こんなにつらくて苦しい思いをするなら、最初から恋なんて......いや。そんなことない。私、グラジオのこと好きになって良かった。
楽しくて幸せで。正直言って、初めてのポケモンのモクローをもらった時と同じか、ちょっと上回るくらいドキドキワクワクした。
後悔したくない。グラジオの話を聞いてからこの先どうするかもう一度考えよう。
グラジオにメッセージを送ったら、すぐに返事があった。
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金曜日、会いに来てくれるの?
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行ってもいいのか?
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グラジオさえ嫌じゃなければ話そうよ。
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オレも話したい。しかし、迎えに行きたいが、シナミ博士に合わせる顔がない。メレメレの花園で会わないか?
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わかった。スクールが終わったら行くね。
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ありがとう。
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あっという間に金曜日。スクールが終わって私は重い足取りでメレメレの花園に向かう。
やっぱり行くべきじゃないのかな。そう思いながらも足は止まらない。
花園に着いちゃった。端っこの方でグラジオが佇んでいる。
......やっぱりかっこいいな。
グラジオは私に気付いて駆け寄ってきた。
「レイラ、来てくれたか」
「うん」
「あそこのベンチに座ろう」
「うん」
何を言っていいかわからなくて、相槌しか打てない。
「ミルクティーとコーヒー、どっちがいい?他のものが良ければ買ってくる」
グラジオはペットボトルを2本取り出した。どっちもミルクとお砂糖がたっぷりのやつだ。グラジオは甘いのが好きなんだ。
「ミルクティーがいい。ありがとう。いただきます」
ミルクティーは濃厚で甘い味がする。それでも乾いた喉を潤してくれた。
「あと、これ。この間のお礼だ。受け取ってくれるか?」
「うん。ありがとう。開けてもいい?」
「もちろんだ」
一緒に見たガーネットのネックレスが入っていた。かわいい。想像通りだけど、想像以上に嬉しい。
「つけてくれなくてもいいんだ。オレはレイラの幸せを願いたい」
「ううん。つけたい」
ネックレスを取り出してつけようとしてみたけど、上手くつけられない。
「オレがつけてあげてもいいだろうか?」
「......うん」
優しい言い回しだ。でも、少しズルい。つけてあげようか?って言われたら、思わず『大丈夫!』って言って断れちゃうのに。
グラジオはネックレスを受け取ると、私の正面にから首の後ろに手を回した。
私に触れないように気をつけてくれてる。それなのに、グラジオの体温が伝わってくる気がして、すごくドキドキする。
「できたぞ」
「ありがとう。似合う?」
「あぁ。とても良く似合っている。秘めた強さを感じるレイラにぴったりの色だ」
「えへへ。嬉しい」
笑顔を作ってみたけど、グラジオはなんだかつらそうな顔をしていた。
「私もパシオのおみやげ持ってきたよ。なかなか買えない大人気のロールケーキなんだけど、特別に用意してもらえたの。食べると元気がわいてくる感じがするんだ」
「すごいな。ありがとう」
「あと、リーリエちゃんにもご家族でどうぞってクッキーを渡したんだけど、食べてくれたかな?」
「あぁ。とても美味しかった。以前のもちもそうだったが、レイラの用意したものを食べると不思議なチカラが湧き上がってくる感じがするよ」
「えへへ。中におみくじが入ってなかった?」
「あれ、おみくじだったのか。『初登場時BC加速1』だったかな。よく意味がわからなかったが......」
「わぁ。スペシャルPクッキーの大当たりだ」
「そうなのか......?」
「うん。必殺技の『バディーズわざ』を発動するために必要なポケモンとのキズナのチカラが早く集まるようになるの」
「バディー......?なんだそれは......?」
「レプリカだから本当になる訳じゃないから気にしないで。でも、グラジオらしい感じがするね」
「そうか」
沈黙。
花園の花たちを眺めてみる。
もうすぐ夏が終わる。夏の花たちはそろそろ元気がなくなってきて、しょんぼりとしている。
「「この間のことなんだ」」「が......」「けど.....」
同時に話し始めちゃった。恥ずかしいっ。
「すまない。言い訳になるが、まずオレから話してもいいか?」
「うん」
「ありがとう」
グラジオは最初の言葉に悩んでいたけど、話し始めたら止まらなくなっていった。