パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

54 / 75
6つめの星〜パルデア留学編〜
ポーズ


月曜日。

 

スクールに行くの、なんか気が重いな。

 

いつもの集合場所に行ったら、いつもの登校メンバーと、マーマネくんと......カキくんもいる。クラスのみんな、大集合じゃん。

カキくんとマーマネくんはスクールの反対側に住んでるはずだけど......。

 

カキくんと目が合った。どんな顔しよう。なんて言おうかな。えーっとえーっと。

 

「みんな、アローラ!」

 

笑顔になれてるかわからないけど、元気だけはいい感じにみんなに挨拶。逃げの一手だ。

 

「レイラ、アローラ。その.......。えっと......」

 

カキくんが1歩前に出てきて、何か言おうとしてる。どうしよう。やんわり警戒態勢を取る。

 

「大会の時、失礼な態度を取って、ひどいことを言って、申し訳ありませんでした!」

 

カキくんは140度くらいの角度で頭を下げてる。さすがダンサー。身体柔らかいんだね。

 

「素直に負けを認められなくてあのようなことを言ってしまい、きちんと挨拶もせず......。本当は、レイラが不正をしているはずないとわかっていたんです。本当にごめんなさい」

 

カキくんは泣き出してしまいそうな顔を無理やり歪めて笑顔を作って、右手を差し出した。

 

「優勝おめでとうございます。対戦、ありがとうございました」

 

「カキくん......。対戦ありがとうございました」

 

カキくんの手をしっかり握って、握手をした。

 

「カキ!対戦開始の挨拶もしてなかったよ!」

 

マーマネくんがヤジを飛ばした。

 

「そうだった......!えーっと、対戦よろしくお願いしていました......?」

 

「ぶっ......!なにそれ!あはは!」

 

思わず吹き出して、爆笑してしまった。みんなも笑ってる。カキくんも、やっと普通の笑顔になった。

 

「本当は昔から、ダンスに集中できるダンス留学でパルデアに行きたかったんです。でも、お金のことで諦めていて......。正直、グレープアカデミーに行きたいって思ってたわけじゃなかったんです」

 

「そうだったんだ......」

 

「それをマーマネに打ち明けたら、すごく怒られました。『ボクだってグレープアカデミーで学びたかったし、レイラはきっとグレープアカデミーで就職活動したくて頑張ってたんだよ!それなのに、そんな中途半端な気持ちでボクやレイラのチャンスを邪魔しようとするなんて、ひどいじゃないか!』って。トゲデマルにもびりびりズタズタされました」

 

ズタズタ......。トゲデマル、恐ろしい子。

 

「すごく反省しました。それで、自分でお金を貯めて、スクールを卒業したらダンス留学でパルデアに行こうと思ったんです。それを盗み聞きしてたスイレンが漁のアルバイトを募集しようと思ってるところだって教えてくれて、すぐに働かせてもらえることになったんだ」

 

「昨日初めて来てくれたんだけど、漁は力仕事ばっかりだから、いきなり大活躍してくれたんだよー!こーんな大きいカビゴンみたいなコンテナも、片腕でひょいってして、同時にふたつも運んでくれたの!」

 

スイレンちゃんがとびはねながらコンテナの大きさを表現している。

 

「それはさすがに大袈裟過ぎるが......ダンスには鍛えられた肉体が必要なんです。漁は筋力も付くし、体幹のバランス感覚も鍛えられる。オレにピッタリのアルバイトです」

 

マオちゃんは何か閃いたようだ。

 

「バランス感覚を鍛えたいなら、うちのレストランでもアルバイトしてよ!両手にトレーを持ってお料理をこぼさないようにバランス取るのってとっても難しいんだ。それに、まかないも出るから食費も節約もできるよ!」

 

「それはありがたい!漁の仕事は早朝だけなんだ。漁が終わったらマオの家のレストランで働かせてもらえませんか?」

 

「ランチタイムは大忙しだからとっても助かるよ!パパとママに伝えておくね!」

 

リーリエちゃんは少し迷いながらも口を開いた。

 

「あの......エーテル財団はポケモンを保護してすぐのときだけお手伝いしていただく、登録制のアルバイトさんを常に探してるんです。保護したばかりの子は暴れたりして危険が伴う分、お給料は弾むんです。小さくて危険の少ないポケモンさんを保護した時だけ来てくださってもいいので、登録してみませんか......?」

 

「そんなアルバイトがあるのか!時間が合うときなら巨大なホエルオーだって、げきりんしているジャラランガだってお世話するぞ!よろしくお願いします!」

 

「ダンサーさんなんですから、絶対におケガしないようにしてくださいね!」

 

リーリエちゃんに叱られて、カキくんは唇を噛んで下を向いてしまった。

 

「オレ......絶対に世界的ダンサーになります。マーマネ、そしてレイラ。本当に申し訳ありませんでした。それと......みんな、本当にありがとう......!うおぉぉおおおん!」

 

カキくんが泣き出してしまった。

 

「ちょっと!泣いてる場合じゃないよ!そろそろ行かないと遅刻しちゃう!」

 

マオちゃんが怒ってるのに、マーマネくんも私もカキくんからもらい泣きしてしまって、スイレンちゃんは爆笑してるし、リーリエちゃんはあたふたしてるし、もうめちゃくちゃだよ。

 

「みんな!行こってば!!」

 

みんなマオちゃんの前に集まって、姿勢を正して整列した。

 

「「「「「ウルト......ラジャー!!」」」」」

 

ゼンリョクでポーズをキメた。

 

私、アローラのみんなと出会えてよかった。

 

結婚したらアローラに住みたいと希望したのはママだったらしい。

神様に守られた豊かな自然が溢れて、様々な人種の人々やポケモンが陽気に元気に過ごすアローラで子育てしたいって、まだお腹にすら来ていない私を想ってのことだったんだって。

 

パパとママがアローラに住むことを決めてくれて、本当によかった。

 

アローラには素敵な思い出がたくさんある。そんな思い出たちを持って、歩いていける。

 

これからつらいことや苦しいことがあっても、アローラのみんなを想えば、なんだって笑顔で頑張れる。

 

立ち止まりそうになっても、逃げ出したくなっても諦めずに、星たちみたいにまっすぐ夢に向かって進み続ける。

 

そして、またアローラに戻ってきて、私の大好きな人やものや、それらに出会わせてくれたアローラにたくさん恩返しするんだ。

 

 

よし。行かなくちゃ!

 

 

何度も通った道を新たな気持ちで、しっかりと1歩ずつ踏み出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから数週間経って、知らない番号から電話がかかってきた。

怖いし、しばらく無視してたら留守番電話が録音されていた。

 

「ねーちゃん!これって普通にしゃべったら、あとからレイラさんに聞いてもらえるんだよね!?......あ、あー。えーっと。レイラさん。お久しぶりです。スグリだべ。おれとねーちゃん、スマホさ買ってもらったんだ。ねーちゃんが『てらすからかけてくるのが礼儀なのよ!』って連絡するの恥ずかしがってっから、ねーちゃんの番号伝えるし、レイラさんから連絡してあげ......」

 

時間切れでその先は聞けなかった。

 

これがスグリくんのスマホの番号かな。メッセージを送ってみよう。

 

ーーーーーーーーーー

スグリくん、連絡ありがとう!レイラだよ。

スマホ買ってもらえたんだね!これでいつでも連絡できるね!

留守番電話聞いたけど途中で切れちゃってたから、ゼイユちゃんの番号送ってほしいな。

ーーーーーーーーーー

 

メッセージを送ったら、ちょうど電話がかかってきて思わず通話ボタンを押しちゃった。

 

「あ!やった!てらす出てくれた!......もしもし?ちょっとてらす!電話に出れるなら、なんですぐ電話してこないのよ!」

 

「ゼイユちゃんだ!ごめんね。スグリくんの声、途中で切れちゃってて......」

 

「ふーん。じゃあ仕方ないわね。許してあげるわよ。スマホ買ったから、登録しておきなさい」

 

「ありがとう!あとね、あのね......!」

 

「知ってるわよ。4月からパルデアに留学しにくるんでしょう?」

 

「え、やっぱりゼイユちゃんが賄賂を......!?」

 

「人聞きが悪いわね。ちょっといろいろあって、スグが他の学校に留学する話が出てたの。寄付金の使い道に、スグをキタカミの観光大使にして、他の地方でキタカミ観光の宣伝してもらうってのがあったのよ。それで、てらすのいるアローラはどうかって話が出てたのよね」

 

「そうなんだ!すごいね!」

 

「それで、こっちの校長に、あたしの強くてカワイイ弟をアローラのスクールに留学させるから、スグの留学先と交換留学って事で、誰かあたしの舎弟になれそうな子を連れて来い言ってやったのよ」

 

ゼイユちゃん、きっと一生懸命頼んでくれたんだろうな。

 

「そしたら校長が、ブルベ学園最強のスグを行かせるんだから、アローラのスクールで1番強い子なら受け入れるとか言い出したのよ。これでてらすが来られなかったら、いよいよ札束でぶってやろうと思ったわ」

 

「あはは......。大会で優勝できて良かったよ......」

 

「大会でてらすが優勝したって聞いたから、てらすと学校行けると思ったのに、いつの間にかアローラからの留学生はグレープアカデミーに行くことにされちゃってたのよ。ムカついたけど、てらすはパルデアに行きたかったみたいだし、札束でぶつのはやめてあげたの」

 

「えへへ。パルデアからならキタカミやブルーベリー学園には行きやすいから、たくさん遊びに行くよ」

 

「あたしが呼んだらすぐ来なさいよ。こっちにはグレープアカデミーの子が留学生として来るって言うけど、パルデアの人はみんな、アオイに頼んだらジムリーダーだろうが四天王だろうが、チャンピオンすらも誰でもすぐにすっ飛んでくるのが日常だからつまんないわ」

 

アオイちゃん、怖すぎるよ。仲良くなれるかなぁ......。

 

「じゃあ、私がパルデアに行く時にはスグリくんはアローラのポケモンスクールに来てるってこと?」

 

「そういう事になるわね。あの子人見知りだから、今のうちに布教活動しといてやってよ。留学に来る子のねーちゃんはものすごい美人だって事も、忘れず言っておきなさいよ」

 

「わかった!でも、そっちに行ってもスグリくんには会えないのかぁ.......」

 

「夏祭りの時にはスグも帰ってくるし、てらすのとーさんも招待するから、それで我慢しなさい」

 

「ありがと!パルデアに着いて、手続きとか荷解きとか全部終わったら、ゼイユちゃんに会いにいくね!」

 

「わかった。楽しみにしてるからね」

 

「うん!ありがとう!」

 

静かに電話が切れた。かがくのちからに感謝。

 

スグリくんからメッセージの返事も来てる。どれどれ......。

 

ーーーーーーーーーー

めつせーしてむつかしいな。またつかいかたよくわかんねけとれんしゆうしておくよ

ーーーーーーーーーー

 

これはなかなか重症だ。

 

スグリくんがこっちに来る前にアローラもみんなに連絡先教えちゃおうと思ったけど、もう少しメッセージが上達してからの方がいいな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。