パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

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文化の違い

パルデア行きの飛行機の中で、パパはずっと泣いている。なんだかんだ周囲に気を遣って小声で泣く理性が残ってるみたいだけど、ものすごく恥ずかしい。

 

「レイラが......!ひとりでパルデアに行ってしまう.....!えぐっ......。ぐすっ」

 

「今まさにパパも一緒にパルデアに向かってるじゃん」

 

「ガチレスしないでよぉ。ひぐっ......!パルデアに行ったって、1週間でレイラの帰って来ない家に帰らないといけないんだぞ?ずびっ......」

 

酔っ払いみたいになってるけど、至って正常な状態でこれである。困ったもんだ。

 

「もういっそパパもパルデアに引越して、グレープアカデミーの先生でもやれば?」

 

「先生になるくらいなら生徒になってレイラと宝探しするっ!でも、まだお家のローンが残ってるから働かないと.......。ママにカッコつけたくて莫大な額のローン組んじゃったんだもん......!必死に繰り上げ返済してるけど、あと5年はかかるもん。ぐすんぐすん」

 

そういうセンシティブな話はツッコミにくいからやめてほしい。

 

「それに、パパが是非とも師事したい先生がグレープアカデミーにいらっしゃるんだよね」

 

急に普通のテンションになった。怖っ。

 

「どんな先生なの?」

 

「校長先生のクラベル先生。お会いしたことはないけど、クラベル先生は少し前まで博士をしていらっしゃったんだ。他の博士のお手伝いが中心で世間にはあまり注目されていなかったけれど、クラベル博士の論文はどれも本当に素晴らしいものでね。パパの推し博士なんだよ」

 

パパの推しってママと私以外にもいたんだ。初めて聞いた。

 

「クラベル博士の論文って、例えばどんなのがあるの?」

 

「パパが1番感銘を受けたのは、『さみしがり』な性格のポケモンの成長の研究の論文だ。さて、突然ですが、問題です。『さみしがり』な性格のポケモンのつよさの育ち方は......」

 

「はいっ。こうげきが育ちやすくてぼうぎょが育ちにくい!」

 

「......ですが、それ以外にこうげきが育ちやすいポケモンはどんな性格の子?......あぁっと、レイラ選手っ。ここで痛恨のお手つきだぁーっ」

 

「なにそれ。むかつくー。『いじっぱり』『やんちゃ』『ゆうかん』の子でしょ」

 

「さすが。そういう子たちはイメージからしてこうげきが高くなりそうだろ?でも『さみしがり』な子がこうげきが育ちやすいのって、なんだかイメージと違うと思わないか?」

 

「確かに」

 

『さみしがり』は『おくびょう』とイメージが近い気がする。

でも『おくびょう』な子はむしろ、他の子よりもこうげきが育ちにくくなってしまうのに。

 

「気になるけど、その理由が解明されたとしても、友達に披露できる豆知識が増える程度のものだろ?だから全然注目されなかったんだ。でもパパはクラベル博士のその論文が大好きでね。クラベル博士のような心の在り方をご教授願いたいよ」

 

「ふーん。それで、その論文は何がどうなってたの?」

 

「グレープアカデミーの書庫はすごいぞ。そこに論文集があるだろう。調べてわかることは自分で調べなさい。それができる素晴らしい環境に行ける事に感謝するんだよ」

 

「うん。グレープアカデミーで学べるの、本当に嬉しい!」

 

でも別に、教えてくれたっていいじゃん!けち!

 

そんなこんなでパルデアでの生活への期待を高めながら、飛行機は着陸に向けて高度を下げ始めた。

 

「着いたーっ!!」

 

「レイラはいま!パルデア地方への第1歩を踏み出した!さて、学校の方がお迎えに来てくださるみたいだけど......」

 

キョロキョロしていると、白髪の穏やかそうなジェントルが陸上選手みたいに美しいフォームでこちらに向かってきた。

 

「遅れて申し訳ありません。シナミ レイラさんとお父様、はじめまして。グレープアカデミー校長のクラベルです。長距離移動、本当にお疲れ様でした」

 

クラベル先生は社会人のお手本のような綺麗な会釈をして、優しくにっこりとほほえんだ。すごくいい人っぽい雰囲気が出まくっている。

 

「はじめまして、レイラです。お世話になりま......」

 

「わざわざ校長先生が来て下さったんですね!!お会いできて光栄です!シナミと申します。娘がお世話になります。どうぞよろしくお願い致します」

 

パパはアイドルの握手会に来たみたいなテンションで名刺交換してる。スタッフさーん!割り込みするヤラカシ系のファンがいまーす!タスケテー!

 

「実は私も、レイラさんがお越しくださることと同じくらい、お父様とお会いできるのを楽しみにしておりました。私も以前は研究者をしていたんです」

 

「もちろん存じ上げております!以前からクラベル博士の論文を拝見させて頂いておりました!」

 

「おや、お恥ずかしい。私名義の論文はあまり大したものはありませんが......」

 

「とんでもない!クラベル博士の『他者との関わり方が変えるポケモンの成長ーさみしがりなポケモンのこうげきの深層心理ー』。この論文に感銘を受けて、すべての論文を拝見させていただきました」

 

「ははは。嬉しいです。あれは私のポケモンさんの育成日記みたいなものですからね」

 

「『ポケモンの特性の相乗効果ーかがくへんかガスのあくしゅう、そのとれないにおいー』の着眼点も大変興味深く......すばらし......!なんと......で......」

 

なにその論文。とんでもなくくさそうだけど、内容めっちゃ気になる。

 

「んジャカ パーン!レイラ!待ってたよー!」

 

あっ!クラベル先生の後ろから、小麦色の肌の元気な女の子がとびだしてきた!

 

「ネモちゃんだ!うわー!来てくれたんだ!嬉しい!はじめまして!」

 

写真は強そうなオーラが出まくってたけど、実物はとっても優しそうだ。

 

「すぐ会いたくて!みんなも来たよ!」

 

「アオイです!長旅おつかれさま!」

 

あっ、アオイちゃんは写真では素朴で優しそうだったのに、ついてないはずのタマタマが縮み上がるくらい只者でないオーラが出てる。

 

「うち、ボタン。よろしく......」

 

ボタンちゃんは普通にいい子っぽい。髪色すごくオシャレ。地毛なのかな?

 

「あ。それ......。もしかして、忍ポケのアローラ限定のピンバッジ?」

 

ボタンちゃんが私のカバンについてるピンバッジをキラキラした目でじーっと見てる。

 

「わぁ!よくわかったね!私、アニメと特撮が好きなんだ。ボタンちゃんもアニメ好きなの!?」

 

「うん。レイラもオタクだったんだ。意外。陽キャだと思ってた......」

 

「元気なアッパー系オタクです!そうだ。ピンバッジね、おひとり様5個まで買えたから、まだ4個あるんだ。観賞用は荷物と一緒に寮に送ったはずだから、よかったらあげるよ!」

 

「え......マジ?いいの?うち、ガラル限定持ってる。もしレイラが持ってないなら交換しよ」

 

「え!欲しい!ちょー欲しいっ!やったー!ボタンちゃんありがとう!」

 

思わず抱きついちゃった。

 

「うわっ!うわーっ!アローラ人の距離感ってやべー!」

 

ボタンちゃんと仲良くなれるか心配だったけど、忍ポケみたいな熱い友情物語が生まれそう!

まだまだ語りたかったけど、アオイちゃんがボロ雑巾みたいな状態になった人間を引き回しながら連れて来て、その場に叩きつけてて、怖すぎてフリーズした。

 

「ほらっ、ペパーもちゃんと挨拶するっ」

 

うわー。この引き回しの刑に処されてるお方がペパー先輩か。会うの怖かったけど、アオイちゃんの方が怖くてペパー先輩がすごく小さく見える。

 

「わーったよ。......オレがペパーだ。つーか、校長センセはなにしてんだよ。ナンパちゃんか?」

 

ペパー先輩が睨みつける先には、パパがいた。

 

「え?......あぁ、あれ私のパパです」

 

「は?あれは......。オマエの父ちゃんは博士なのかよ?」

 

え。なんか怒ってる.......?どうしようどうしよう......。

ペパー先輩はフトゥー博士いわく論文読める系男子だ。パパってやっぱり有名人なんだ。

 

えーっと。ペパー先輩は先輩だし、丁寧に接さないと......。

 

「さ......左様でございます。拙者のような若輩者の父をペパー殿にご存知いただけているとは......。誠に恐縮でございます」

 

「ハッ!なんだそれ。家来ちゃんか?オレは殿様じゃねーぞ!」

 

うん。知ってる。フトゥー博士の息子さんでしょ。焦ったのと忍ポケの話してたから、方向性がおかしくなった。失笑されちゃった。恥ずかしい。

 

「レイラ大丈夫?なんかドえらいイモ引いとらん?どんな下劣なガジり方されたらそんなんなるん......?」

 

ボタンちゃんもテンパって任侠言葉使い始めちゃったじゃん。

ガジるって脅迫するってことだよね。アオイちゃんに変なことしたら承知しないぞってガジられたよ。

 

「なっ!?なんもしてねーよ!でもメッセージもさっきも、ちょっと感じ悪かったよな。ごめんな。ペパーでいいぜ」

 

全然ちょっとじゃない感じの悪さだったけど、少し感じが良くないかな?くらいに進化してくれた。

 

「ありがとうございます。仲良くしてください。よろしくお願い致します」

 

90度にきっちりビシッと頭を下げた。

 

「そういうのいいから!ふつうにぬぁっ!!!」

 

怒鳴られたかと思って顔を上げたら、パパがペパー先輩と私の間にテレポートしてきて、ペパー先輩にこわいかおをしながら、にじり寄っていた。

 

「こんにちは。はじめまして。レイラの父のシナミです。博士やってます。レイラと仲良くしてくれてありがとうね」

 

しまった。頭を下げすぎたせいで、パパの『娘に対して異性がこれ以上接近するのは絶対に許せないゾーン』にペパー先輩を巻き込んでしまった。

ペパー先輩が両手をあげて変なことしてませんアピールしてんじゃん。やめてよぉ。お友達作りにくいよぉ。

 

「あ!やっぱり!天文学のシナミ博士ですよね!お久しぶりです。ネモです!10年くらい前にスマホロトムの新技術の発表パーティで......」

 

「あぁ!ヤーコンさんとバトルしてたお嬢さん!またお会いできて嬉しいです。お父様とお母様にはいつもお世話になってます」

 

パパが丁寧なすがたのパパになった。ネモちゃんは救世主だ。それで、なんでパパと知り合いなんだろ?

困惑していると、アオイちゃんがヒソヒソと話しかけてきた。

 

「ネモはスマホロトムの開発会社の偉い人のお嬢様なの。シナミ博士って、スマホロトムのGPSの衛星の打ち上げをやってたよね?前テレビで見たよ。若くてイケメンな博士だから覚えてた!」

 

あぁ、それでパーティに招待されたんだ。いいなぁ。

私ももっと早くネモちゃんとお友達になりたかった。

 

「ボタンの親戚にも大企業の社長さんがいるんだよ。ペパーの両親も博士だし、みんなのおうちはすごいなー」

 

「ペパー先輩のご両親は知ってるよ。フトゥー博士とオーリム博士だよね」

 

急にペパー先輩がすっ飛んできた。感じ悪いすがたに戻っちゃってる。

 

「なんで俺の父ちゃんと母ちゃんがフトゥーとオーリムだって知ってんだよ」

 

初対面でいきなり、あなたのお父さんの幽霊から聞きました。とは言えないな......。

 

「え、えーっと、ほら。オーリム博士が科学雑誌『ハードプラント』で取材受けたときに、一緒に写真が載ってましたよね?」

 

マーマネくんが言ってただけで、よく知らんけど。

 

「げっ。なんでそんな昔のしょーもない記事知ってんだよ。レイラも科学中毒ちゃんなのか?」

 

凄まじい嫌悪感を含んだ目で睨みつけられた。

いますぐ取って食われそうな、ヘルガーとかのあくタイプの四足ポケモンにターゲットされたような感じ。

これはもう、感じ悪いっていうレベルじゃない。怖いよー。えーん。

 

「いや、違うんです。その......。えと......。オーリム博士ってすごい美人でかわいいから目に止まって。お子さんが同じくらいの年齢の天才児って書いてあって、私とは大違いだなって思って名前覚えてて......。グレープアカデミーにいるんじゃないかなって思ってたんです」

 

あぁ。もう自分が何言ってんのかわかんなくなってきたくらいには嘘つくのは大嫌いだけど、割と辻褄は合ってると思う。パパのせいで嘘が上手になったよ。

 

「私は中毒になるどころか、ちょっと難しい話されただけで頭が真っ白のショック状態になる、重度の科学アレルギーのレベルで科学が苦手です......」

 

「......ハハッ!なんだよそれ!さっきからいちいちおもしれーヤツだな!オレも科学とかそういう話されると胃がムカムカしてくるから、同じアレルギー仲間かもな!」

 

親指の立てられた拳と、とびきりの笑顔を私に向けてくれた。

さっきまでの感じの悪さはアレルギー症状だったんだね。じゃあ仕方ないね。

 

あー。本当に怖かった。まだ心臓がドキバクして胸が苦しい。

 

でも、ついに感じの良いすがたに最終進化してくれた。ありがとうマーマネくん。ありがとうアローラ。そしてママ。私を科学アレルギーに産んでくれてありがとう。チビるところだった。

 

それにしても、ペパー先輩は好みのタイプじゃないけど、笑うとちょっと素敵かも。しかもあれだ!話題の『フッ......おもしれー女......』的なやつをいただきました。だからなんだってんだ。

 

「あはは!ボタンとすぐ仲良くなれたのもすごいと思ったけど、ペパーをこんなにすぐ手懐けるなんてすごいね!私でも手懐けるのに苦労したのにー!」

 

「確かに!アオイ以外に懐いてるの珍しいね!わたしとボタンのことなんか、今でもマフィティフと一緒にいかくしてるよね!」

 

「みんな、コミュ力オバケが出たぞー!逃げろー!」

 

「大丈夫、任せて!わたしがポケモンバトルで戦やってやるー!」

 

アオイちゃんとネモちゃんが冗談を言いながらお腹を抱えて笑ってる。

 

「えへへ。どうも!ゴーストタイプのポケモンばっかり使ってる、オバケを連れたオバケです!」

 

沈黙。

 

これ知ってる。面白くないし、なんて言ったらいいかわかんなくなってみんな盛り下がった空気だ。

 

「ハッ!オバケがガチのオバケ使ってんのかよ。割とマジでこえーな。デリバードポーチでおふだ買って帰るか」

 

「珍しくペパーと気が合った。うちも行こうと思ってた。ガチのオバケ連れたオバケはマジで怖いし」

 

「おう。せっかくだし、一緒にテーブルシティ案内してやろうぜ」

 

「私とネモも誘ってよ!みんなで行こー!私はおふだはいらないけど!」

 

「行く行くー!ところでアオイ。わたしのいまの手持ち、ゴーストタイプに有利なワザ持ってる子がいないんだ。ルガルガンにかみくだくを教えた方がいいかな?どう思う?」

 

「シャンデラはいわワザで弱点つけるし、オーロットやヤバソチャが来たらそもそも交代した方がいいし、なくても大丈夫じゃないかな。強いて言うならネモの手持ちでしんどいのはミミッキュだから、アイアンヘッドがあるといいね!」

 

違うぞ!なんだこの空気は!笑ってくれてないけど、すごくわいきゃい盛り上がってる......!

 

これが文化の違い。カルチャーショックってやつか......!

 

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