パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

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ビンゴだ!

..........

 

草テラス:キタカミのてらす池だ。ここ綺麗だよね

 

ルカ:キタカミってパルデアのあたりだっけ?申し訳ないけどさすがに遠いなぁ

 

はると:なんでそこに辿りついたのか、くわしく

 

..........

 

返事がある......!誰か......!

 

巨大電子掲示板の『ポケモンお悩み相談所』に書き込んでみた。

 

生活のお困り事からオカルト話まで、なんでも書き込めて、それに対していろんな人がコメントをしてくれる。

 

全世界の人が書き込めるから、きっと各地方にサーバーがあって、どこかには繋がるんじゃないかと思ったけど、ビンゴだ!

 

..........

 

レイちゃん:ちょっとトラブって野生のヨノワールさんに助けてもらったんですけど、ここに置いてけぼりにされちゃったんです。

 

草テラス:てらす池...ヨノワール......うっ頭が

 

はると:それはかなり危険ですね。周りに人はいませんか?

 

レイちゃん:フトゥー博士っていう白衣のジェントルがおられるんですが、その方も迷っちゃったみたいで......

 

ルビィ:言いにくいけど、フトゥー博士って確か先月くらいに亡くなったって報道あったレジ気ガス

 

XYZ:成仏してクレベース

 

オカルトマニア:今から凸します

 

.........

 

そんな。まさか。やっぱり。

 

全身から力が抜けて、へたりこんだ。

 

スマホロトムもしょんぼりしちゃって、手から滑り落ちてそのまま地面に転がった。

 

かろうじでミミッキュちゃんは落とさずに済んだけど、その場に優しく寝かせた。

 

もうダメだ。おしまいだ。本当にお終いだ。終了。完。

 

「大丈夫かい?」

 

フトゥー博士は突っ立ったままのんきに声をかけてきた。大丈夫なわけあるか。私もフトゥー博士もしんじゃったんだぞ。

 

それに、なんだその態度は。膝まづいて手を差し伸べるとか、なんかそういうのはないの?フトゥー博士は別に好みのタイプじゃないけど、私は初恋すらまだなんだぞ。最期くらいパパ以外の男性とこう......いや、冷静に考えたら所帯持ちはご遠慮願いたいや。

 

そう思い至ったのに、そういう時に限って黙って手を差し伸べてくるでしょ。

人生そういうもんだよね!いや、もう人生は終わってるのか。

もうどうにでもなれ。いや、もうどうにもならないからこうなってんのか、私。

......あぁもう!ちくしょーめ!

 

フトゥー博士は強引に私の手首を引っ掴んだ。見かけによらず、そういうタイプなんだ。

でもそんなことはどうだっていい。

一番の問題は、手首から全身に広がる悪寒。

 

フトゥー博士、体温が、ない。

 

博士はそっと、私を立たせてくれた。

 

「......冷たいです」

 

私は、博士の手を振り払った。

 

「なるほど。それは興味深い感想だ」

 

フトゥー博士は目を閉じて小さく何度か頷いて、勝手に何か納得した様子だ。

 

「例えば、気温が30度のとき、僕らは暑いと感じるだろう?でも、30度のお風呂はむしろ冷たいと感じる。これはね、熱伝導というのが関係しているんだ。水は大気よりも熱伝導率が高く、すぐに体温を奪ってしまう」

 

何が言いたいのかはわからないが、言っていることは理解できる。

 

「ボクら恒温動物は常に熱を作り出しては放熱する量を調整することで、生命維持に必要な一定の体温を保持しているんだ。熱を奪われ、放熱が多すぎると寒い、冷たいと感じて血管を収縮させて放熱を抑え、放熱が少なくなるとあついと感じ、汗を出すことで、水分が蒸発して熱を奪う力を放熱の補助として使う。つまり、こういった感覚は相対的なもので成り立ってると思ってくれていい」

 

博士は真剣な顔のまま、決めゼリフみたいに続けた。

 

「熱傷......、やけどについてはまた別の反応が発生するんだが、これは今は関係ないので、興味があるなら別途調べてくれたまえ」

 

うん、全然興味ない。でも、なるほど、わかるぞ。

フトゥー博士は難しいことのように言ってて説教くさいけど、スッと頭に入って、私でも普通に理解できた。

真剣な表情の横顔はちょっと素敵かも。いや、だからなんだって言うんだ。

 

「雪山で遭難してしまった凍死体が、極寒の中で裸になって発見されることがある。放熱を抑えても体温が上がらず、最大限のパワーで熱を作り出しても、深部体温すらもどんどん冷えて行くので、放熱できるほど外側まで熱が届かない。身体が全く放熱できていないので、とても暑いと錯覚してしまうんだ。これを、矛盾脱衣という」

 

なるほど。

でも今は、かなり気温が低くてゾワゾワするけど、生命の危機を感じるレベルではない。

もう死んでるからかもしれないけど、なんか大丈夫な感じ。

 

くそう。なんとか脱衣でなんだってんだ。

私はしんじゃったからって、そこまで自暴自棄にはらないぞ。

そりゃちょっと興味はある年齢になったけど。

こればっかりは、さすがに所帯持ちとは、ごめんこうむりたい。

 

王子様みたいな男の子と運命的な出会いを果たして、恋愛して、結ばれたかった。

それが不可能になった今、私は純潔を守って安らかに成仏するんだ。

 

「ボクはね。今まったく暑いとも寒いとも感じない。雲のような濃霧がかかっていることから、標高の高い山だと推察したのに、それはさすがにおかしな話だ」

 

スーパーマサラ人の血を引く私でも結構寒いのに。フトゥー博士ってどこ出身なのかなぁ。

 

「ここで、ひとつの仮説を立てた。それを早く裏付けたくなって、申し訳ないけど、了承を得ずキミに触れてしまった」

 

これは......どういう感情の表情なんだろう。

くそう。わかんないけど、もう少しでいいから見た目にわかりやすく申し訳なさそうにしたらどうなんだ。

うら若き乙女の純潔を汚そうとした罪は重いぞ。

 

「思った通り、温かいとも冷たいとも感じなかった。ボクの仮説は正しかった。これがどういうことかわかるかい?」

 

えーっと。えーっと。これだから科学的な、なんだかんだは嫌いなんだ。

 

「つまりね、ボクは熱を一切生産できていない」

 

つまり?

 

「結論、ボクは死んでいるんだ」

 

そうみたいだよ。さすが博士。ビンゴだ。

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