オタク
クラベル校長から、レイラが謎のポケモンに襲われて行方不明になったと連絡が来て、状況を把握出来ないまま仕事をほっぽりだしてパルデアにすっ飛んできたら、もう夜の23時を過ぎていた。
クラベル校長が空港にお迎えに来て下さって、言われるがまま校長室について行くと、ジニア先生とレイラのお友達が集合していて、ジニア先生は隙あらば土下座しようとするし、お友達はみんなケロマツの大合唱のようにわんわん泣いていた。
話を要約するとレイラは、長らく使われていない、いわく付きの体育館に取り憑いていたいたムウマっぽいポケモンに襲われて、消えた。
レイラは、消える直前にムウマっぽいポケモンにボールを投げてゲットしたようで、ジニア先生が調べようとしてくれたそうなのだが、笑いながら四方八方に向かってシャドーボールをぶっぱなしてきて大変危険らしく、明日以降しかるべき施設で詳細に研究してくださるとのこと。
アオイちゃんは、そもそも肝試しを提案した自分せいだと言っていた。
ネモちゃんは、自分がテラスタルオーブを落としてしまったせいだと言っていた。
ボタンちゃんは、肝試しの話を聞いていたのに止めなかったし、ゴーストポケモンのことならレイラにお願いするのはどうかと提案したせいだと言っていた。
ただ、そんな事は取るに足らない問題だ。
そもそも、チャンピオンランクのトレーナーのアオイちゃんのポケモンを一撃で倒すようなポケモンを見つけておいて、学生だけでなんとかしようとしたのが間違いだ。
それに、レイラが消えた現場にいたのは、ペパーくんとレイラのボーイフレンドのシュウメイくんだそうで。
男の子がふたりもいて、何故レイラに危険なことをさせたのかと殺意が湧いたが、クラベル先生とジニア先生が隙あらば土下座しようとするから、少し冷静になった。
「みんな、集まっててくれてありがとうね。先生たちと話があるし、もう遅いから寮に帰ってね」
「あの......。でも......!まだアカデミーの中でも探せてない場所がたくさんあって......!私のミライドンなら......」
「帰りなさいっ!」
学生さん、しかも、女の子に対して怒鳴ってしまった。いかんいかん。冷静に冷静に......してられるかってんだ。ふざけんなよ。
ネモちゃんは涙を拭って俺に向かって深々と頭を下げると、アオイちゃんとボタンちゃんに「帰ろ」と声をかけて、ふたりの手を引いて校長室出て行こうとした。ネモちゃん、いい子だな。
一方のペパーくんとシュウメイくんは、ぼーっと突っ立っている。ぶっ飛ばすぞ。
「君たちは何をしているんだ。こんな時間に女の子だけで行動させるつもりか?」
ペパーくんはハッと我に返ると「申し訳ありません、失礼します」と言って頭を下げて、ネモちゃんたちについて行った。
シュウメイくんだけは、微動だにせずに俯いたまま突っ立っていた。
「シュウメイくん。レイラから話は聞いてるよ。詳しい話はまた聞かせてもらうけど、今日はもう帰りなさい」
シュウメイくんは動こうとしない。頼むから早く視界からいなくなってくれ。俺を殺人犯にするつもりか。
「脅しのようになってしまって申し訳ないけれど、僕も今はあまり冷静ではないんだ。今すぐに帰ってくれ。頼むから」
シュウメイくんが顔をあげた。
驚いた。涙と鼻水で顔がぐっちゃぐちゃなのに、写真よりだいぶイケメンだな。
レイラがパルデアに来てすぐにストーキングした王子様ってのも、きっと彼のことだろう。ぶん殴りたい。
「帰れ!」
「いくらお父上の仰せ付けであっても、我はレイラ殿を見つけるまで帰らぬ!」
父と呼ぶな。マジ殺す。思わず掴みかかってしまった。気がしたけど、手応えがなかった。躱された。シュウメイくん、只者じゃないな。
いや、躱してくれたと言うべきだな。学校内で、しかも校長先生の目の前で生徒さんに暴行を働いたとなれば、いろいろとえらいことになっていた。
シュウメイくん。なぜその身体能力があってレイラを守ってくれなかったんだ。
あと、そのしゃべり方がデフォルトなの?普通にかっこいいからやめてほしい。
レイラは俺の娘だ。俺と妻の間に産まれた、至って普通の女の子だ。
事実そうなんだけど、産まれる前はそうじゃなかった。
やっぱり俺が守らなきゃならなかったんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺の妻......。レイラの母であるレイは『願い星の守り人』だった。
レイから聞いた話によると、願い星の名はジラーチ。1000年に1度、7日間だけ目を覚まし、誰かの願いを叶える、小さなポケモンだ。
ジラーチは眠っている間、たったひとりで星のように宇宙を流れ続けていた。
何千年だか何万年だか、何億年も前だったかにジラーチが目覚めたとき、ジラーチには『友達』ができた。
なんの変哲もない、平々凡々な人間の少女。
その少女は、もう二度と会うことのない友達にこう願った。
『友達が寂しい思いをしませんように』
それからジラーチはその少女やその子孫を通して世界を眺めて、寂しさを紛らわしていた。
いつしかその人々は『願い星の守り人』と呼ばれるようになっていった。
そうしていても、まどろみながらとはいえ、ひとり宇宙を漂っているのは、途方もなく長すぎる時間だった。
そんなときに、なんの変哲もない星屑のひとつに付着した、生命とも呼べないほんの小さな遺伝子のかけらに出会ったジラーチは、それにデオキシスと名付け、大切にしていた。
ジラーチは友達の星に存在する生命の営みが大好きだった。それに習って、デオキシスを慈しみ抱きしめながら、途方もない年月を過ごしていた。
ここからは、さっきまでの話とは別に聞いたんだけど、1000年ごとにジラーチを奪い合う戦争が起こり、多数の人やポケモンが死ぬようになった。
今から1000年と少し前、その戦火のひとつの爆発がデオキシスの遺伝子を変化させ、デオキシスはひとつの生命として形を持つようになった。
だがジラーチは、大好きな星の悲惨な状態に悲しむばかりで、デオキシスが生命として誕生したことを喜ぶ間もなく、また眠りについてしまった。
デオキシスは母たるジラーチに自らの肉体を抱きしめて欲しくて、1000年先のジラーチの目覚めを待ち続けた。
そして次にジラーチが目覚めた時、たくさんの人々と、まだ幼かった守り人の少女が、こう願った。
『戦争が二度と起こりませんように』
ジラーチは自分が戦争の火種であった事を知っていた。
途方もなく長い時間、多数の愛する生命を失った寂しさに押しつぶされそうになっていた。
願いを叶えなければならない。
遠い昔の、あの少女の友達たる自分が、もう二度と寂しい思いをしなくてもいいように。戦争の火種が消えてなくなるように。
ジラーチは自らの破滅によってふたつの願いを叶え、消えた。
母であるジラーチを失ったデオキシスは、ジラーチが大好きだった生命の営みにヒントを得て、ジラーチを復活させようと思い立った。
ジラーチとほど近い存在である、守り人であった人間の女を見つけて、その遺伝子に自らに残るジラーチの遺伝子を上書きした。
だが、人間は人間だった。ジラーチにはなり得なかった。
そこで、まだ生命とも呼べない、守り人の小さな遺伝子のかけらを探すことにした。それは、また別の守り人の女の胎内で見つかった。
その遺伝子のかけらにジラーチの遺伝子を書き込んだデオキシスは、宇宙に戻ってジラーチの帰りを待つ事にした。
そこからかくかくしかじかあって、その小さな遺伝子のかけらは、なんだかんだで至って普通の人間の、俺とレイの娘として産まれた。
願い星の守り人の子ではあったけれど、願い星の守り人だって普通の人間だ。
ただ、娘を普通の人間の女の子として幸せになれるよう育てたいという俺とレイの当然の願いを叶えるのは、困難の連続だった。
普通の女の子らしく、王子様との恋に憧れる娘は、いずれ愛する誰かとの遺伝子のかけらから生命を産み落とすことになってしまう。
ジラーチが生まれなかった事を知ったデオキシスが再び最後の守り人の血を引く娘の遺伝子を狙わぬよう、俺は毎日宇宙を睨み続けた。
妻と眺めた思い出の星空をたったひとりで見上げるのは、ひどく寂しく辛く、俺は星空が心底大嫌いになった。
毎日苦しみながら、それを娘に気取られぬよう笑顔を貼り付けながら、来る日も来る日も大嫌いな星空を睨み続けた。
いっそ娘が誰かを愛さず、誰かに愛されなければ、守り人の遺伝子は無くなり、デオキシスはジラーチの復活を諦め、この星に平和が訪れるのかと思ったりした。
だけど、誠に残念ながら、娘は妻に似て超絶かわいくて、世界を慈しむ優しい心を持って生まれてきてしまっていた。
挙句の果てには、他の人より頑丈だからと言って無茶しがちな俺のダメなところが似てしまった。
娘は誰かの幸せの為に無茶ばかりしてしまうせいで、誰からも愛されてしまう、本当に本当に素敵な子になってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日から2日ほどいろいろと調査をして、一度パルデアを離れることにした。
空港には、校長室にいたメンバーがお見送りに来ていた。
「クラベル先生。ご心配、ご迷惑おかけして申し訳ありません」
「いえ......なんと申し上げたら良いか......。謝罪の言葉もございません......」
「ジニア先生、レイラの捕まえたポケモンの調査、よろしくお願い致します」
「はい。あのポケモンは『ハバタクカミ』と呼ばれる今のポケモンの進化とは違った、もっと根本的な、人類が進化してきたのと同じ生物としての進化をする前のムウマです。ぼくが研究していた古代のポケモンの一種で、パルデアの大穴から出ることはないと思っていたのですが......。本当に申し訳ございません」
「はあ!?前も別の時代から来たポケモンをロースト砂漠で見たっつったろ!?なんとかしてくれるって言ってたじゃねーか!」
ペパーくん、その話初耳だよ。
気付くとペパーくんの胸ぐらに掴みかかっていた。ペパーくんは驚くでも抵抗するでもなく、ただただ怒りと悲しみに満ちた顔をしていた。
「申し訳ない。君に八つ当たりしても、君も僕も悲しい思いをするだけで、状況はなんら変わらない」
「......別の時代を研究していたのは、オレの両親なんです」
「知っているよ。フトゥー博士とオーリム博士だろう?君の両親は素晴らしい博士だ。レイラがいなくなったことを両親のせい......ましてや自分のせいだと思う必要はない」
ペパーくんは不服そうな顔をしている。
「君の気持ちがどうあろうと、それのおかげでレイラが帰ってくることはない。ネガティブな感情を持ち続けるのは周囲を不快にするだけで、なんのメリットのない、無駄なことだ」
ペパーくんは納得しつつも悔しそうな顔をしている。この子、レイラと同じくらい顔に出るタイプだな。
そうだ。でも、俺がその他の星と全く違う軌道を辿る星......デオキシスを発見して論文を出したとき、俺のイケてる写真が表紙になった科学雑誌『ハードプラント』を妻の祭壇に飾って報告しようと思ってたのに、フトゥー博士が表紙になったことだけは、理不尽かもしれないけど可能ならお父さんの代わりに謝罪してくれ。
「みんなも、レイラがいなくなったことで心身を病んだり留年してしまったりしたら、レイラが帰ってきたときに悲しむことになるだろう。レイラと僕に対して申し訳ないという気持ちがあるなら、しっかり寝てしっかり食べて、勉学に励みなさい」
シュウメイくんはげっそりとやつれて目の下にドス黒いクマを作って突っ立っていた。レイラがいなくなってからマジで帰ってないし、寝てないな。
学生が無茶をするのは、たまにとは言え講師を務める身としては叱り飛ばしたいが、ひとりの男として、その心意気は悪くないと思うぞ。
「シュウメイくん、聞いているか?君のことだぞ。レイラを悲しませたくないなら、帰ってしっかり休みなさい」
「お父上......。かたじけない」
父と呼ぶな。でも、このタイミングの『かたじけない』は言葉遣いとして100点満点だ。素晴らしいぞ。
『かたじけない』はただの謝罪でもただの感謝でもなく「申し訳ありません。恐れ多いですが、お言葉に甘えさせて頂きます。お気遣いありがとうございます」くらいの意味があるからね。
ムカつくけど、俺の娘がボーイフレンドに選んだだけのことはあるとは思っておいてやろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はまず、ホウエンに飛んだ。
センター長......じゃなかった。お義父さん......というか、ホウエンのおじいちゃんに、レイラがいなくなったことを連絡すると『一刻も早く来い』と呼び出されたからだ。チビりそう。いや、それくらいならまだいい。漏らしそう。
「お義父さん、お久しぶりです......」
「これを持って行きなさい」
お義父さんは俺を見るなり、手のひらサイズの小さな木箱を取り出した。
「これは......?」
「『星のお守り』だ」
へえ。そうなんですね。なにそれ。
ちょっと間を取ってみたけど、説明してくれるわけじゃないんだ。変な沈黙になってしまった。
お義父さんは宇宙センターのセンター長だった頃からこうだった。
なんの説明もなく最新の設備を導入しておいて、これは何かと尋ねたら「最新の設備だ」としか言わない人だった。
うまく活用できないでいると怒るくせに......。
「レイラちゃんに何かあったら、シナミくんに渡してくれとばあさんが言っていたんだ。箱は絶対に開けないように、とのことだ」
手に取ってみたら、思ったよりもずっしりと重たかった。
いつぞや『ポケモンお悩み相談所』で流行った怪談話の『オトシドリバコ』的な特級呪物かな?
「大変かも知れないが、かわいい孫を......。かわいい娘の忘れ形見を、よろしく頼むよ」
孫、カワイイよね。娘、めちゃくちゃカワイイよね。
動揺していて泣くことすら忘れていたけど、泣くことを思い出して、少しだけ泣いた。
次に、カントーに帰ってきた。
母ちゃん......つまりマサラのおばあちゃんに、レイラがいなくなったことを報告したら「私の孫だし、たぶん大丈夫」と言いながら泣いていた。
お義父さんがくれた小さな木箱を見てもらったら「常に持っておきなさい」とのことだったので、肌身離さず持ち歩くことにした。
よく分からないけど、母ちゃんがたぶん大丈夫ってんなら、たぶん大丈夫だろう。
俺の孫のヒトモシちゃんも一緒なんだぞ。孫、カワイイよね。
次に、恐れ多くも、オーキド博士にレイラを探すレーダーを作れないか相談してみた。
「ワシが我が子と同じくらい大切にしている研究員の嫁であるシナミちゃんの娘は、ワシの孫みたいなものだからのう。上手くいくかはわからんが......。もちろん、協力させてもらうよ」
孫、カワイイよね。嫁のかわいさはよくわからん。少なくとも、俺はかわいくないし、娘のボーイフレンドはすごくムカつきました。
最後に、ジョウトに飛んだ。
「シナミ博士、お久しぶりです」
「おいおいマツバくん。久しぶりだからって、なんでそんなによそよそしいのさ」
「ははは。シュウ兄がレイさんと結婚する為に、博士にまでなっちゃうとは思わなかったからね」
マツバくんは、レイが舞妓さんだった頃のオタク仲間だ。
舞妓さんは凡人が易々と話しかけられるものではなかった。でも、レイを見たくて毎日通った。
当時、まだ小さいのに厳しい修行を積んでいたマツバくんは、レイの不思議なチカラを感じ取り、ずっと憧れて、毎日エンジュの踊り場にいて、マツバくんは15以上も歳が離れた俺のことをシュウ兄と呼んで慕ってくれた。
レイは舞妓さんを辞めて歌手になったけど、やっぱり歌手も簡単には近付けなくて、俺はあの手この手で全公演に通い、毎回最前列を陣取っていた。
レイが突然歌手を引退して姿を消したとき、俺があまりにも絶望に打ちひしがれてるもんだから、見兼ねたマツバくんはまだ拙い千里眼のチカラでレイを探し、満天の星空に近い高い場所にいると教えてくれた。
なぜかレイが山にいると思った俺は、カントーでオツキミやまに登り、ジョウトでスリバチやまとシロガネやまに登った。
ホウエンではえんとつやまとおくりびやまに登り、シンオウではテンガンざんとハードマウンテンに登ったあたりで、ハイスピードで世界の山々を登る、イカれたやまおとことして有名人になってしまった。
イッシュでネジやまに登ったとき、タワーオブヘブンが見えた。それを見て、俺はなぜやまおとこになってしまったんだと疑問に思った。
普通に考えて、山に女の子が住んでるわけがない。高い建物に住んでると考えるのが普通だった。
タワーオブヘブンを目の前にしてそれに気付いた俺は、もしかしてレイはしんでしまったのかと思い、とりあえず目の前のタワーオブヘブンの墓をチェックし、速攻でカントーに戻ってポケモンタワーの墓をチェックした翌日、すぐにイカれた墓おとことして有名になっていた。
それに気付いたマツバくんは、レイは生きてるから墓おとこはやめろとめちゃくちゃ怒っていて、さすがにチビりそうになった。
その後は、カントーのシルフカンパニーでアルバイトして最上階に潜入してスパイの疑いをかけられたり、ジョウトのラジオ塔の清掃員になって最上階に突入し、それがパーソナリティのおねえさんの着替え現場だったせいで、不服ながらイカれた変態野郎扱いをされたりしたが、俺はそれでもレイを探すのをやめなかった。
そして、ホウエンでトクサネ宇宙センターに行ったとき、ついにレイを見つけた。
というか、最上階から夜空に向かって歌うレイの歌声の空気の振動を察知した。
今思えば、人体の能力を超越した、凄まじい聴力を発揮していた。
レイはトクサネ宇宙センターの上階に住んでいて、体調を崩したお母さん......つまりホウエンのおばあちゃんをつきっきりでお世話をしていて、外に出ることがなかった。
トクサネ宇宙センターの上階は一般人は入れないので、オーキド博士に頼んでマグノリア博士にかわいがってもらって、すぐにタマムシ大学に入学して飛び級に飛び級を重ねて2年で卒業し、トクサネ宇宙センターの研究員になってついにレイに辿りついた。
そんなこんながあって。
「おかげ様で、ただのおっかけから、成功したオタクになりました」
無理矢理ドヤ顔を作ったけど、無視された。
「それで、レイラちゃんのことなんだけどね。何度かチャレンジしてみたけど、どこにも見えないんだよ」
「海に落っこちたときに見てくれたときと、どう違う?」
「あの時は、背景が全く見えなくてどこにいるかは分からなかったけど、生きてる姿は見えたから、間違いなく生きてると確信できたよ。しんでしまっていたら、それもまた見えるからね」
「なるほど。今回は一切姿が見えないのか?」
「うん。言葉を選ばずに正直に言うと、最初から存在しないものを探しているような感じがするんだ」
「うん、わかりやすくてすっごくありがたいけど、もう少し言葉を選んでくれた方が嬉しかった」
「ごめん。でも、レイラちゃんのことはちゃんとこの目で、直接見た事があるからね」
「赤ん坊の頃だろう?今は、レイそっくりの超絶カワイイ美少女に成長したよ」
今度こそ上手にドヤ顔を作ったけど、やっぱり無視された。
「ところでさ、単純な疑問なんだけど、シュウ兄はなんでわざわざ来てくれたの?」
「他にもいくつか頼みたいことがあるからね。とりあえず娘宛に、飾る用と保管用で2枚サインしてほしいんだ。娘は重度の『まじかる☆社員ちゃん』のオタクでね。シャインゴーストに憧れてゴーストタイプのジムリーダーを目指すくらいには、君の大ファンなんだ。俺の娘だから、何がなんでも取りに帰って来ると思うんだよね」
他にもいくつかお願い事をしたけど、全部快く受けてくれた。
帰り際、マツバくんは3枚もサインを書いて俺に押し付けてきた。
そのうちの1枚は「シュウシくん いつも応援ありがとう!」と書かれたサインだった。
さすがマツバくんだ。俺も『まじかる☆社員ちゃん』オタクなのがバレてたか。