「さて、この結論が決定的だとすると、ボクの手を冷たいと感じたキミは、今どのような状態か」
博士は私のスマホロトムを拾い上げ、私に手渡した。
「これはとっても簡単なことだ。キミも、わかるね?」
なるほど。そっか。そうなんだ!
一気にやる気、勇気、元気が湧き上がって全身を駆け巡った。
私、生きてる!間違いない!科学のちからってすげー!
「はい!!」
私はスマホロトムを受け取り、勢いよく立ち上がってポケットにねじこんで、急いでミミッキュを抱き上げた。
ミミッキュは人間よりひんやりしてるけど、確かになんだか温かいような、生きるって意思を感じられる。その手には、しっかりと握りしめた、色違いちゃん。
「いい返事だ。キミはここからなるべく遠くまで行った方が良さそうだ。でも、今後もし普通に山で遭難してしまった時は、一般的にその場で動かず救助を待った方が生存率は高いということは覚えておくんだよ」
フトゥー博士は説教くさく言ったあと、やっちまった感を出して咳払いした。
「でも、今のキミなら必ず、この霧の中でも進路を見失わずに進めるはずだ。根拠は提示してあげられないがね」
フトゥー博士は冗談っぽく笑った。
ぎこちないけど、素敵な笑顔だった。
「宿題を出そう。健康的な人間の体温の平均はおおよそ36.6度で、誰しも大きくは解離していない。この温度というのは、気温なら暑く、水ならなんだかぬるくて、どちらも不快に感じる」
フトゥー博士は、ぎこちない、へたっぴな笑顔のまま続けた。
「でも人間同士が触れ合ったとき、じんわり温かく、なんだか心地よく感じるだろう?しかも、多少なれ体温に違いがあるはずなのに、お互いがどちらも温かいと感じるんだ。不思議だと思わないかい?」
確かにそうだ。
パパがギュッてしてくれたとき、とても温かくて幸せだ。パパも「レイラはあったかいねぇ」と幸せそうにしている。
「それが何故なのか、キミなりの答えを探して、いつかまた会えたら聞かせてくれないか?ボクは科学的に説明をつけてしまって、つまらない答えしか出ないんだ。キミはきっと、特別で素敵な答えを見つけられるはずだ」
目を閉じて、パパとママの顔を思い浮かべた。
温かい。触れてもないはずなのに、とても温かく感じる。これは科学的に説明するのは絶対に無理だろう。根拠はないけど、絶対そうだ。
これは、私だけの特別な答えだから、それでいいんだ。
よし、行かなくちゃ。
決意をして目を開いたら、もうフトゥー博士はどこにもいなかった。
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私が地元の人に発見されて救助された時、海に落っこちてから2週間も経っていた。
さすがに疲れ果てていた私は意識が朦朧としていた。
自分の住所と名前、パパの連絡先を伝えたあと、意識を失ってしまった。
気が付いたら、ふかふかのベッドで寝かせてもらえていて、様子を見にきてくれたおじいちゃんが、ここがキタカミ公民館で、パパがこちらに向かってくれているということを教えてくれた。
良かった。安心した。これでゆっくり寝……られなかった。
「レイラ!しっかりしろ!!目を覚ましてくれ!!!」
公民館のおじいちゃんの制止も聞かず、駆けつけたパパが大声で叫んで揺さぶってきた。
「パパ……。アローラ……!」
パパは、顔をぐちゃぐちゃにして鼻水を垂らしながら涙をボロボロこぼし始めた。パパのこんなかっこ悪い顔、初めて見た。
パパはそんなことなんか全然気にせず、涙やらなんやらで私の服をベチャベチャにしながら、思いっきり抱きしめてくれた。
「パパ、さすがに痛い……」
そう言ったのに、パパは更に力を込めるもんだから、思いっきり泣いた。
すごく痛いし、パパはとても温かくて、安心したら涙が止まらなかった。