痛ッ......!くは無いけど、なんかふらふらして気持ち悪いなぁ。やっぱりシャドーボールって変な感じのボールなんだ。
ゲンパチもシャンデラもヤバソチャもポットデスも使いまくってたけど、これまでぶつけてきた数々のポケモンさんたち、ごめんね。
で、えーっと。ここはどこだろ?
真っ暗だ。寒くないし暑くもないな。うーん。今度こそしんじゃったのかなぁ。いや、でもミミッキュはあったかい。よかった。生きてる。
ポケモンたちのボールは......。あるな。とりあえずミミッキュをボールに戻した。
スマホロトムは......。圏外みたいだ。ネットも繋がらないし、電話もできない。それに、スマホロトムの明かりだけでは、全然明るくならない。
ラウドボーンやソウブレイズのほのおワザで照らすのは危険だ。周囲の状況がわからないし、火事になったらえらいこっちゃになってしまう。
それにしても、パパの使ってるウォーターベッドの上にいるみたいに、足元がやたらぐにゃぐにゃして、平衡感覚がおかしくなる。
どうせ真っ暗で何も見えないし、フトゥー博士の言ってた通りその場で動かないことにしよう。
数分だったような数十分だったか、それよりもっと長いような短いような時間が流れて、さすがに何とかしてみようと思い立ち、やむを得ずシャンデラを呼ぶことにした。
「ソウブレイズ、シャンデラを呼んできて。ヒトモシちゃんのこと見ていてあげて。シャンデラなら明るくできるかも」
ソウブレイズはボックスに行って、シャンデラを呼んできてくれた。
「シャンデラ、呼び出してごめんね。スマホロトムじゃ明るくできなくて......。一緒に出口を探してくれないかな」
シャンデラは不安そうだった。シャンデラは私が海に落っこちたときも一緒だった。ボールからは出さなかったけど、きっとあのときもすごく怖かっただろう。
ましてや今はヒトモシちゃんがいる。こんな訳の分からないところに来て、ヒトモシちゃんやヒトモシちゃんのママである自分に何かあったら大変なことになってしまう。
「何もないね。真っ暗っていうか、真っ黒な空間なのかぁ」
でも、何かの気配を感じた。
「シャンデラ!何かいる!すぐ戻って!ヒトモシちゃんのところに行ってあげて!」
シャンデラは急いで戻っていった。
足下になにかが落ちた。なんだこれ。踏んじゃった。ねちょねちょしてて最悪。
今度はいきなり大きな破裂音がした。でも、爆風を感じない。多分、パーティーとかで鳴らす、クラッカー的なやつだ。
でも残念ながら、お祝いしてほしい状況ではないし、歓迎してもらえてる気もしない。
むしろ、野生のリングマさんを遠ざけるためにビビらせようとしてる感じの、敵意とまでは行かない程度の拒絶を感じる。
「動かないでっ!」
女の子の声。他の子もいたのか。そりゃあこんな真っ暗なところでゴーストポケモンが出たら、普通はチビるし、可能なら退治しようとするよね。
「あの!驚かせてごめんなさい。ここに迷い込んじゃったんです。さっきの子は私のポケモンで......」
「人間......?」
「あ、はい。どうも、人間です。シナミ レイラって言います。アローラ生まれ、パルデア在住の学生です。暗くて姿が見えないんだけど、あなたも人間ですか?」
「レイラさん......!?どうやってここまで追いかけて来たんですか!?テルもいるの!?」
テルくんを知ってる!?この声......。
「ショウちゃん......!?ちょっと待って。落ち着いて。追いかけてきたんじゃないし、私ひとりだよ」
「......すみません。真っ暗で、お姿が見えなくて......」
とりあえず、その場に座った。
「ショウちゃんもさ、座ってお話しようよ」
「はい。あの......。本当に申し訳ありませんでした。その......。あのあと、皆さんは......?」
うーん。謝ってるし、許してあげようかな。
「テルくんは私のフクスローがジュナイパーに進化して助けたよ。私のことはパパが助けてくれたから、みんな無傷。でも、テルくんは書き置きだけ残して、どこか行っちゃった」
「そう、ですか......。本当に申し訳ありませんでした」
「みんな無事だし大丈夫だよ。私のことは......。何から話せばいいかなぁ。えっとね、私がパシオに行ったときからもう1年近く経ってるよ。その間、ショウちゃんはずっとここにいたの?」
「わたしはパシオの時空の裂け目を通って、ウォロさんとギラティナと一緒にここに来ました。ここは不思議とお腹が空かないし、時間の流れがおかしいみたいなんです。私はパシオにいたのがついさっきのことみたいに感じます」
「ウォロさんとギラティナはどこに行っちゃったの?」
「わかりません。ここに着いてすぐに、ここは安全だからここで待っていて欲しいって言って、すぐに出ていきました。わたしの時間感覚での話ですけど......」
「私はさっきまで留学先のパルデアの学校にいたはずなんだけど、ポケモンの攻撃を受け止めたらここまで吹っ飛んできちゃったみたい。ショウちゃんはここがどこだか知ってるの?」
「ここは『破れた世界』と呼ばれてるみたいです。神の逆鱗に触れたギラティナがたったひとりで放り込まれた、何もない世界です」
「ギラティナってあの、でっかい空飛ぶマルヤクデみたいな子だよね。ウォロさんはギラティナの事を大切な相棒ポケモンって言ってたけど、ウォロさんとはどんな関係なの?」
「ギラティナはこんな場所に自分を放り込んだ神に復讐したいと思ってるみたいなんですが、ウォロさんはむしろ神が大好きなんですよ。何としても神を手に入れたくて、ギラティナと共に神を屈服させようとしているそうです」
やべぇ。ウォロさんは重度の神オタクなんだ。しかも、ガチ恋ヤラカシオタクの域を超えて、犯罪どころか、推しを傷つけることすらもやってしまう、危険思想のやべぇオタク。
「ウォロさんは、私のことなんかより神が大好きなんです。今だって、わたしをほったらかしにして神を探してるし......」
「そっか......」
「なんなら、わたしがギンガ団にいて、神の祝福を受けているテルから信頼を得ていたので、都合よく利用していただけの気すらします」
そういう悪い男の子の話、いくらでも聞いたことがあるな。
特にウォロさんは、正直言ってめちゃくちゃイケメンだ。オマケに口も上手い。
ウォロさんがその気になったら、イチコロどころかゼロの状態からでもぶっコロがされる女の子が多発しそうだ。
「ウォロさんとわたしは似た者同士なんです。きっとウォロさんはもう、神には敵わないことに気付いてるはずなんです。わたしもだいぶ前から、ウォロさんがわたしを心から愛してくれることはないと気付いているんですよ。それでもそれに気付かないふりをして、後に引けないところまで来てしまった」
「そんなこと......!」
「わたしのお腹の中、ウォロさんとの子がいるんですよ」
「えええ!?ショウちゃん今何歳!?」
「16歳ですけど......?」
「えぇ......」
私より年下じゃん!それ犯罪!ウォロさんはロリコンだ!サイテー!変態!!
「わたしの時代では16歳は立派なオトナです。自分の事は自分で決めなくちゃいけません。わたしは自ら望んでこうなっているんです。でもここにいてはいつまで経ってもこの子は大きくなれないみたいなので、少しだけ困ってます」
なんてこった。ショウちゃん、ウォロさんのちんちんを見たんだ。ダメだ考えるな。話題を変えよう。
「ところでさ。私は気付いたらここにいたんだよね。ショウちゃんは自分でここに来たから違うと思うんだけど、もしかして私って、神様を怒らせるようなことして、ここに放り込まれたのかな?」
「......わかりません」
そりゃそうだよな。
沈黙になってしまった。真っ暗で姿が見えないから、またひとりぼっちになっちゃったみたいな気がする。
「あ、あのね。私のシャンデラとゲンガーのゲンパチの間にタマゴができて、この間ヒトモシの女の子がうまれたんだ」
「わぁ。おめでとうございます」
「ゲンパチは元はパパのポケモンで、私よりずっと歳上ですごく頼りになるんだけど、むかーしからスペシャルアップっていう一時的に強くなれるお薬が大好きでさ。定期的あげないといじけちゃうから、お金がかかる困ったちゃんだったんだよ」
「そうなんですね」
「でも、ヒトモシちゃんがうまれてからは、お薬をやめて、その分のお金でヒトモシちゃんとシャンデラにあれを買ってこれを買ってあげてくれってうるさくてさ。もっとお金がかかる困ったちゃんになっちゃったんだよね。あはは」
「いいお父さんになったんですね」
っていうか、なんでこんな簡単な事に気付かなかったんだ。スターインパクト号なら......!
「あとね!ショウちゃんの方から見えるかわからないけど、みてほしいものがあるんだった!スターインパクト号、発 進 !」
スターインパクト号はシュウメイくんのアヴァンギャルドなおセンスのド派手なライティングで輝いた。目が痛くなるくらい眩しい。
「うわぁ!すごい!見えます!なんですかそのカラクリ!」
「これに乗ってゲンパチが動かしてくれて、空飛べたりするんだ!一緒に出口を探そうよ!ゲンパチ、行ける?」
「ンガ!」
この暗さなら、ゲンパチなら縦横無尽だ。
「よぉし。とりあえず合流しよう!誘導してもらっていい?」
「はい!まずはそのまま、まっすぐ......あ、もうちょっと右に.......ごめんなさい、レイラさんから見て左です。うんうん!近いですよ!レイラさん、そろそろわたしのこと見えますか?」
「あ!ショウちゃんいた!おーい!」
ショウちゃんは化け物でも見たような顔をして驚いている。ふふふ。スターインパクト号、めちゃくちゃかっこいいでしょ。
「レイラさん......ですか......?」
「え?レイラだよ?」
「どうしたんですか.......?そのお姿......」
え?私、どうにかなってる?