パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

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よっしゃいくぞ

「さて。ここがジブンの知るところの『破れた世界』と呼ばれる場所なのですが、シュウシさんのお眼鏡にかないますかね?」

 

「うーん。ここが神が気に入らなかったものを追放する場所であるなら、もしかするとここに探してるもののひとつはあるかも知れない」

 

確かにギラティナが貫いてくれたし破ってきたけど、宇宙とは程遠いな。

宇宙ってのはでっかい石ころとゴミクズとチリカスとドガースの屁みたいなガスが充満する、クソみたいにとっ散らかった場所だ。

だけど、ここには何もない。俺は散らかってるのはムズムズするから大嫌いだが、ここまで何も無いのはさすがに怖すぎてゾワゾワする。

 

どのくらい何もないかと言うと、空気も引力も遠心力もないから重力も発生してないのに、四肢爆散せずに生命活動の維持が可能であるので、科学的に説明をつけられる事象を探すのが困難なくらいには何も無い。

 

「ジブンはショウさんをお迎えにあがるのですが、シュウシさんはどうなさいます?」

 

暗闇にウォロくんの声が響いた。空気がないのにどういう方法で音が届いているのかわからなくて怖いけど、多分まだ俺はギラティナくんの上にいるし、前にはウォロくんが乗ってるハズ。

 

「そうだな......。せっかくだしお供させてもらおうかな。っていうか、真っ暗過ぎて自分の身体すら視認できなくて怖いから、一緒にいてくれないと泣いちゃう」

 

「......ソウデスカ」

 

ウォロくんの時代では電話がないからわからんのかも知れないけど、相手の姿が見えない会話の時は声に大袈裟なくらい感情を乗せないと、すごくすごーく素っ気なく聞こえるんだぞ。マジで泣くぞ。

 

「シュウシさん、見てください!あれは......!?」

 

あれは。

 

星が衝突した際に放つような眩しい光。逆立つ金髪。ふわりと揺れ動く翠色の帯。細く美しい四肢。胸元から溢れるオーロラのような煌めき。

 

あれは、間違いなく女神だ。夕方と夜のグラデーションの中の1番暗い色の部分の空で燦然と輝く金星のような、圧倒的ヴィーナス。美と愛を司る、マジ女神だ。

 

「ショウさんっ!ウォロです!!無事ですか!?今助けに行きます!」

 

ウォロくんは女神と全く別の方向に方向転換した。真っ暗過ぎて俺には輝く女神しか見えないけど、多分ウォロくんにはどこかにショウちゃんが見えているんだろう

 

......愛じゃねぇか!!

 

「ファイヤー!乗せてくれ!」

 

ボールが火を吹いたようにファイヤーの全身が火柱のように燃え上がり、周囲を照らした。絶対やけどするけど、急いでファイヤーに乗って状況を確認する。......なるほどね。

 

「ゲンパチ!いるんだろ!?」

 

「オヤジ!?申し訳ねぇ!スターインパクト号がビクともしなくて!今、自分がヘタこいたらアレみたいになっちまいます!天文台の新入りがヘタこいたやつ!」

 

天文台の新入り......?ノズパスのことか。

近所のメスのノズパスちゃんと仲良くなって観測をサボってる現場を目撃したゲンパチがおどろかしたら、ノズパスが振り向こうとしてノズパスちゃんとお互いの鼻が持つ斥力が反発し合って、ふたりともぶっ飛んで地面に叩きつけられて、こっぴどくフラれたやつだ。

 

スターインパクト号と『何か』が反発する斥力が働いてる。

 

ノズパスは吹っ飛んだあと、星の重力によって引き寄せられたことで地面に叩きつけてもらえたけど、ここには重力がない。

ゲンパチの引力を無くしたら、この虚無の中では一度動き出したスターインパクト号は遥か彼方まで延々とぶっ飛び続ける可能性がある。さて、どうしたもんか。

 

......うん。オーケー。どんな結果なるかわからないし、今より状況は悪くなるかも知れないけど、どうにもならなさそうな今の状況はどうにかなる。

 

「トム!でんじはで磁力を生み出して......。なんかこう......。引力かなんか作って、いい感じにうまいことやって!」

 

「サンダー!ファイヤー!フリーザー!協力してさ、ここ、空気ないけど気流を作って!ファイヤーは燃えてるし、多分氷も出せる!水になればサンダーの電気分解で......こう、何とかして無理矢理にでも斥力を突破するぞ!」

 

昔のドルオタの掛け声みたいになった。

 

「よっしゃ!いくぞーっ!」

 

これ、最近の子は知ってるのかな。

 

「リオは......レイの代わりと言っちゃ申し訳ないけどさ......。俺と心中してずっと一緒にいてくれ!愛してるよ!」

 

なんかいろいろどうにかなって、女神を捕まえた。

 

強く、強く抱きしめた。

 

温かい。

 

幸せ。

 

妻に似た黒髪と漆黒の瞳。毎日毎日、バランスの取れた健康的な食事を用意して、健康的にちょっとだけむっちりした、俺の超絶カワイイ娘。とはだいぶ様相が違うけど、それでも超絶カワイイ、俺の娘。

 

「ゲンパチ、もういいぞ!お前は自分のキョーダイと嫁子供のこと、きちんと守ってやれ!」

 

レイラのポケモンたちとボックスを回収して放り投げた。

 

予想通り、スターインパクト号はすっ飛び始めた。やっぱりね。勉強なんか大嫌いなのに、頑張って勉強しておいて良かった。

 

「ウォロくん!ポケモンたちの帰りの交通費は足りるかい!?足りなかったら......。ずっとウォロくんの幸せを願ってるから!こんな『友情』で、お代は足りるかい!?」

 

「はい!確かに頂戴しました!アナタ、やっぱり商人に向いていますよ!お釣りをお渡ししたいので、必ずまた会いましょう!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、これは驚いた。どうした?とびっきりカワイイじゃないか」

 

デオキシス。以前観測できた時とは違う色をしている。金色と翠色。レイが描いたジラーチの絵と同じ色をしている。

 

 

 

「マ......ママ......」

 

デオキシスは自分を抱きしめて、幸せそうにしている。

その表情は、初めてレイラを抱っこしたレイの顔とそっくりで、泣きそうになるからやめてね。

 

「何をおっしゃる。どこからどう見ても俺はパパだ」

 

「ボクのママ!連れて帰るの!」

 

「その子は俺と妻の......純愛純度100%の人間の遺伝子を持って産まれた。ポケモンである君のママにはならないよ」

 

「ジラーチはボクのママなの!」

 

「言葉はしゃべれるくせに、会話のできない子だな。最近、人間にもそういう奴が増えていて、誠に遺憾である」

 

「守り人さんにボクの中にあるママの遺伝子を注いだの。でも、ずっと見てたのにママにならなかった。邪魔してた遺伝子があったみたいなの。守り人さんはケガもすぐ治らないし、100年くらいでしんじゃうの。寂しいの。だから今度はボクの遺伝子も全部混ぜて、ママになったの!」

 

「父親の前で、娘に対するすけべな行為を語るのはご遠慮いただこうか」

 

「......キミはなんでたくさんのモノから愛されてるの?」

 

「きっと脈絡のない質問なんだろうけど、全く笑えない冗談を言ってしまった直後にその質問をされると、すっごい恥ずかしいし、とっても傷付くからやめてね」

 

「......ボクはなんで、誰からも愛されないの?」

 

「それは君がまだ、何も愛せていないからだ。愛に幻想を抱いているところに残酷なことを言うかも知れないけど、愛ってのは先払いが必要なのさ」

 

「親ってものになって気付いたんだけど、親から子への無償の愛なんてのは幻想だ。みんな、本当は気付いているのに、気付かないふりをしている」

 

「俺だって、娘が妻のお腹の中にいるとき、娘をきちんと愛しているつもりではあったけど、今思えば到底愛せているとは言えない状態だった。当時の俺は余裕がなかったし、娘からはまだお代を頂いてなかったんでね」

 

「だけど娘はね、まだ娘を愛せてなかった俺に対して、一切の打算もなく全身全霊で叫ぶように、懸命に愛を伝えながら産まれて来てくれたんだ。一瞬で胸がいっぱいになって、受け取りきれなくて涙になって溢れちゃうくらいの、大きな大きな愛だ」

 

「子から親への愛こそ、本当の無償の愛なのさ」

 

「先払いしてもらった以上は、なるべくたくさん愛を返そうと必死になって頑張ってみたんだよ。そしたら娘は更に何倍にもして返してくれるもんだから、俺も更に必死になった」

 

「俺も娘もお互いにそうするもんだから、それを他の誰かに先払いする余裕が生まれた。愛とお金は全く反対のもののように語られることがあるけど、意外にも愛は金融経済と似ているのさ」

 

「君はジラーチを愛そうと生まれてきたのに、それを渡す前にジラーチが死んでしまったせいで、愛に困窮していて、生きていることもつらいんだろ?飢えている状態では、誰かに渡す愛がないのも仕方のないことだ」

 

「でもね、愛の受け渡しの輪から外れて身勝手なことをしていると、相対的貧困に陥るんだ。愛を渡し、返してもらって、また渡す。こうして循環させていくと、その輪の中にあるものは愛し愛され、どんどん豊かに幸せになっていくからね。ほら、経済と一緒だろ?」

 

「お金と違って愛は自分で好きなだけ生み出せるんだから、お前だって、今からでも輪に入れるよ」

 

「まずは、自分を愛してみるんだ。自分を愛せるようになって余裕が出来たら、何かを......誰かを愛してみるといいよ」

 

「それが難しかったら......。そうだ。うちに来ないか?俺たち家族はね、みんなで愛を育てて、身近な人に可能な限りの愛を渡していってるのさ。そしたらみんながみんな、何倍にもして返してくれるもんだから、うちには愛が溢れて溢れて、どうしようもないんだ」

 

「こちとら愛が溢れまくってるから、俺と娘はいくらでも先払いするよ。娘なんか、俺が溺愛しすぎたのを何倍にもして返してくれちゃうせいで、俺をどんどん必死に働かせるし、それをいろんなものや人やポケモンにどんどん振りまいていくもんだから、今やこの世界の全てを愛せちゃうし、この世界の全てに愛されるくらいの億万長者になったんだ」

 

「最近できた友達が言ってくれたんだけど、俺はやっぱり、商人に向いてるのかも知れないね。卸業者でもやろうかな」

 

「.....そうだ。今日は娘と一緒にロコモコ丼を作ろうかな。娘がハンバーグをハート型にしてくれるんだよ。君もお腹すいたろ?一緒に食べようか」

 

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