パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

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抱っこにおんぶ

レイラと混ざった状態のデオキシスと、ウォロくんもショウちゃんもポケモンたちも、みんな一緒に連れ立ってアローラに帰ってきた。

 

長い長い時間が経った気がするけど、俺がやりのはしらについてから、ほんの数十分しか経っていなかった。

 

玄関には見覚えの無い鎖がぐちゃぐちゃに絡まって乱雑に置いてあった。拾おうと屈んだら、なんだかフシギなチカラに吸い寄せられるように、お義父さんからもらった小さな木箱がポロッと落ちてしまった。

 

木箱が割れた。やべ。やっちまった。

特級呪物が出てくるかと思ったら、なんの変哲も無さそうな石ころが入っていた。

 

「ママ......?」

 

デオキシスがそれに触れると、鎖がレイラに伸びていって、レイラは元の姿に戻って、鎖がデオキシスの形を成した。

 

力の抜けたレイラをおんぶした。本当におっきくなったな。

 

宇宙で観測したときは橙色と青色だったはずのデオキシスの身体は、金色と翠色のままだった。鏡で姿を見せてあげると、ぴょんぴょん飛んで喜んでいた。

 

「ママだ......!」

 

デオキシスは鏡を覗いてニコニコしたり、石ころを大切そうに撫でたり頬ずりしたりしていた。

恐らく、この石ころがデオキシスの元となった遺伝子のかけらがくっついていた隕石なのだろう。

 

「ママ、ずっとこうしてた。ママはずっとボクと一緒にいて、ボクのこと抱っこしてた......」

 

親を失った幼子の感動的なスペクタクル感を醸し出してはいるけど、俺と大して身長の変わらない目付きの悪い金ピカの生命体がこれをやっているのだから、何とも表現し難い、もんにょりした気持ちになる光景だ。

 

......よく見たらデオキシスの足元に、何かがある。

 

葉っぱ......?に包まれていたのは、割れた赤色のパワーストーンの粒と、緑色のパワーストーンの粒と、何度も結び直した痕跡のあるよれよれのヒモだった。

 

なるほどね。やっぱりカワイイ奴。

デオキシスが宇宙に放り投げた、ミュウが修復してくれたレイラの遺伝子を探しに行ってくれたんだ。

 

ミュウツーはなんだかんだ、ママのことが大好きなんじゃないか。

 

パワーストーン、早く直してハナダの洞窟に持って行ってやらないとな。新色の青色と黄色も持って行こう。

 

 

レイラは一瞬だけ目を覚まし「パパ、あと20分......」と言ったあと、すやすやと心地良さそうに寝息を立て始めた。

部屋のベッドに寝かせて、いつぞやみたいにリオとゲンパチに子守りを頼むと、リオとゲンパチはレイラの寝顔をずっと見つめていた。

 

 

ウォロくんはと言うと、いつの間にかショウちゃんにプロポーズしたらしく、ああでもないこうでもないとショウちゃんを気遣いまくっていて、ショウちゃんが逆に可哀想だった。

 

ショウちゃんはもう、お腹がふっくらしてきていた。

すぐにククイ博士の奥様のバーネット博士に健診していただいた。

 

「ウォロさん!見てください、このカラクリ!ここに写ってるのがお腹の中の赤ちゃんなんですって!かがくのちからってすごいですね!」

 

バーネット博士も嬉しそうにエコーを見ている。

 

「うーん、大きさからして妊娠5ヶ月くらいかしら。......あら!?ふたりいるわ!ひとりは女の子っぽいけど、......まだわかんないわね。こっちが頭でこっちが足。そして、ここが心臓。しっかり動いてる。今聞こえてるのが心音よ。ふたりとも元気そうね!」

 

懐かしい。俺も毎回レイの妊婦健診について行ったっけ。

っていうか18年しか経ってないのにエコーがすごく綺麗に写るようになってる。かがくのちからってすげー!

 

「ふふっ!赤ちゃんの心音ってすごく速いんですね。ウォロさんと一緒にいるときのわたしと同じくらいです!」

 

ショウちゃんは恋に恋する少女のような事を言いながら、もう既に母の笑顔をしていた。

 

「ククイくん。わたしたちも頑張らないとね」

 

バーネット博士は幸せそうに笑ってて、ククイ博士は顔が真っ赤だった。

 

ウォロくんは、ただただ静かに涙を流していた。

 

バーネット博士はそんな様子をしばらく眺めたあと、急に真剣な顔になった。

 

「出産は冬頃になるわ。それでね、双子の出産はかなりの危険を伴うの。医療の進歩したこちらで出産した方がいいと思うけど、どうかしら?」

 

「うーん......。でも、お金がありませんし......」

 

ショウちゃんはすんごい不安そうだ。現代でも、16歳の小柄な女の子が双子を産むのは、一般的な出産よりよっぽど危険が伴う。ヒスイ時代ならもっと大変なことになるだろう。

 

「それなら、うちにくるかい?レイラが出て行って寂しいんだよ」

 

「おぉ!それはありがたい!おいくらですか?」

 

ウォロくん、にっこにこじゃん。どうせ大したこと言われないと思ってるだろ。俺をナメるなよ。ちょっとからかってやろう。

 

「じゃあさ、まずアローラの遺跡の調査をしてよ。各島にひとつずつあって、計4つだ。そこには各島の土地神であるカプ神様がいらっしゃるんだ。そこで、コケコ様、ブルル様、テテフ様、レヒレ様、いずれかの神様から祝福を受けて、来年の春のアローラ相撲大会に参加して、参加賞の『ロイヤルなマスク』を僕にくれるかな?」

 

「ふむ。お受けする前に、ふたつほど質問があります。シュウシさんから見て、ジブンは神に祝福される可能性はあるとお思いですか?」

 

「アローラのカプ神様は、人々やポケモンと同じようにアローラに存在するものを愛していて、よく下界に遊びにいらっしゃるんだ。今のウォロくんなら仲良くなれるよ」......たぶんね。知らんけど。

 

「そうですか。好奇心が湧き上がりますね。むしろ、喜んで調べさせていただきますよ!」

 

「ちなみに、カプとは『禁忌』という意味であるので、秩序を守らなかったり、無礼を働いたりして禁忌を犯せば、即刻死刑だから。そこだけ気をつけてね」

 

「......頑張ります。あともうひとつ。何故シュウシさんはそのアローラ相撲大会とやらに参加されないのですか?」

 

「なんでかアローラでの武術大会のすべてに出場禁止にされちゃっててさ。アローラに来てすぐの頃は、有名なプロレスラーさんがすごく仲良くしてくれて、組手して鍛えてたのになぁ。まぁ、どちらにせよフンドシ一丁になるの超嫌だしね!でも、ウォロくんのとっくんにはいくらでも付き合うから安心して!」

 

「フンドシ......」

 

ウォロさんはすごくすごく嫌そうだ。

何故かククイ博士もぶるぶる震えている。

 

「そうだ!ウォロさん!わたし、赤ちゃんのおしめを縫わないといけないので、ウォロさんのフンドシも赤ちゃんとお揃いの布で縫いますよ!」

 

ショウちゃんいいぞ!もっとやれ!

 

「......あ、でもね、今の時代は紙おむつっていう便利なものがあるんだ。お洗濯せずに捨てていいんだよ。双子ちゃんの育児は大変だろうし、便利なものはどんどん活用して、無理しないようにね」

 

「そうなんですね!では、フンドシも紙で作って、終わったら捨てるんですか?」

 

ショウちゃん天才。その発想はこの時代では簡単には出てこない。素晴らしいぞ!

 

「そんなことないけど、それもいいね!赤ちゃんとお揃いの方がカワイイもんね!」

 

ウォロくんは卒倒しそうになっている。どうだ。参ったか。

 

「出産育児に必要なあれこれは、レイラのお古もあるし、ぜひ使って。寝るお部屋や食事は全部用意するし、それとは別に、ウォロくんにはお給料も出すよ。ショウちゃんの必要なものや嗜好品なんかは、ウォロくんをビシバシ働かせて買ってもらってね」

 

「ありがとうございます!お世話になります。ウォロさん、よろしくお願いしますね!わたし......とっても幸せです!」

 

ウォロくんが困ったように優しく微笑んでショウちゃんの頭を撫でると、今度はショウちゃんが泣いていた。

 

「えーっと......。おれ、もう入ってもいい.....?」

 

あれ?スグリくん......?そうだ。アローラにはスグリくんが留学に来てるんだった。

 

スグリくんはウォロくんとショウちゃんとすぐに打ち解けたみたいで『鬼さま』の話をして楽しそうにしていた。

ゼイユちゃんになんだかんだと言われてるけど、スグリくんってかなりコミュ力と適応力高くない?

 

「......んでな、鬼さまが旅に出て割とすぐに、こんどは鬼が山のてらす池に、てらす池の精さまが現れたんだべ」

 

「なんと!それはどのような存在なのですか?」

 

「おれたちのともだち。キタカミの大切なお祭りでお歌を歌ってくれて、それに合わせて人もポケモンっこも、みんなで踊ったんだ」

 

「わぁ、素敵ですね!その精霊様にお名前はあるんですか?」

 

「『レイラ a.k.a てらすさま』だべ。にへへ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺は取り急ぎ、あちこちに連絡を取った。お義父さんと母ちゃん、オーキド博士、マツバくん、オーキド校長とクラベル校長。

 

仕事もほっぽり出してしまったので、膨大な数の場所や人に謝罪の連絡をした。

謝り倒し過ぎて「申し訳ありません」がゲシュタルト崩壊しそうだ。

ちなみに「ありがとうございます」は既にゲシュタルト崩壊した。

 

さて、次はエーテル財団に電話。

急ぎで頼まれてたパーツの納入期限を2日も過ぎてしまった。

 

「......はい。申し訳ありません。今から早急にお持ち致しますので......」

 

「とんでもございません。代表からご事情は伺っております。お忙しいと思いますが、こちらも可能な限り早急に頂戴したく思いますので、こちらからお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

「お気遣いありがとうございます。助かります。申し訳ありませんが、よろしくお願い申し上げます」

 

しばらくすると、家のチャイムが鳴った。エーテル財団の人にしては早すぎる気がしたが、インターホンを確認すると、グラジオくんが立っていた。

 

「お忙しいところ失礼致します。エーテル財団でございます」

 

気まずい。ひっじょーに気まずい。

 

パシオから帰ってきて割とすぐに、レイラの顔に『グラジオくんと上手く行きませんでしたが、それに関して触れたら金輪際口聞きません』って書いてあった。

 

当然グラジオくんはレイラにメロメロで、すごく大切にしてくれていたと思うし、レイラは家でもスマホロトムを見ては『グラジオくん大好き!』って顔に書いてたんだけど......。

 

まだパルデアに行く話なんて出てなかった時期のことだし、どうしてそうなったのか、さすがの俺でも全く検討がつかないな。

 

ここは『ポケモン天文学会 研究委員会長 完璧超人博士 シナミ』モード全開で行くぞ。

 

「......わざわざ専務がいらして下さったんですね。お忙しい中ご足労頂き、誠にありがとうございます。こちら、お約束の品です。お渡しが遅くなり、大変申し訳ございませんでした」

 

「とんでもございません。ご息女様が事故に遭われたと伺っております。多事多用の中ご対応頂き、ありがとうございます。こちら、心ばかりではございますが、お見舞いの品でございます」

 

グラジオくんも『エーテル財団 専務理事 しごでき御曹司 グラジオ』モードで来てくれた。

 

「ありがとうございます。恐れ入ります」

 

「それでは、失礼致します」

 

......よし。

 

それにしても、中身がすごく気になる。

 

紙袋は普通の白......。じゃない。ほんのり桜色だ。

袋の内側も可愛らしい桃色になってる。

オマケに包装紙は、お世辞にも御見舞に相応しいとは言えない、やたらとポップで可愛らしい花柄だ。

なーにが しごでき御曹司だ。ちくしょーめ。

 

これだけレイラの好みに合致したものをこの短時間で用意するのは無理だ。きっとレイラなら無事に帰って来ると信じて、あれこれ考えながら、いつか渡せたらと思って用意して待っていてくれたんだろう。

 

仕事に私情を挟むなど、誠に遺憾ではあるが......。

 

男として、その気持ちわかるー!めっっっちゃくちゃわかるー!!

 

なかなか近付けないけど、ずっと考えちゃって、いてもたってもいられなくなっちゃって、どうにかこうにか無理矢理にでも理由をつけて、ほんの少しでも想いを伝えたいと思っちゃうやつだー!

 

なんなら今も、連絡を受けて速攻で仕事を全部ほっぽり出して、スピード違反でかっ飛ばして来ちゃったやつだぁーっ!

 

不覚にも、俺がキュンとしちゃったじゃん!

 

パパはシュウメイくんよりグラジオくんを推したいぞ!

 

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